超乳エイミー・1



作者不詳
笛地静恵・超訳


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1・モンスター


 エイミーのボーイフレンドは、怪物に変身していました。

 肉体的にも精神的にも、彼女を支配していました。
殴る蹴るの暴行を、加えていたのです。

 どうして、このような卑劣な男との関係を続けているのでしょうか。
分からなくなっていました。

 バシッ!
気が付くと、頬に鋭い痛みを覚えていました。 トッドに、平手打ちにされていました。

「なにをぼけっとしてるんだ。 おれが、夕方の六時半には、飯を食う習慣だって、
何度言えば、分かるんだ!! テーブルの上には、一皿も出てねえぞ。
乳がでかい女は、うすのろだっていうのは、本当だぜ!」

「……ごめんなさい。 すぐに作りますから……」
 エイミーは、キッチンに駆け込んでいきました。
急いで、夕食の支度をしました。
ダイニング・ルームのテーブルの上に、皿を並べていきました。

 彼はわざと床に、足を突き出すようにしていました。
焦っていた彼女は、つまずいて、転んでしまいました。
床にぶつかってしまいました。

 エイミーは、彼に殴られた顔と、咄嗟に体重を支えて、床に打ち付けた腕と膝と、
どれがいちばん痛いのかさえ、分からなくなっていました。

「よかったな。 胸の枕が、クッションになってヨォ!!」

 エイミーは、皿を運びながら泣いていました。
トッドは、その姿が無様だと、声に出して笑っていました。

 食事の後片付けが済むと、自分の部屋のある二階に上がっていきました。
ベッドに倒れこんでいました。

 彼が追ってくる気配がないことだけが、唯一の救いでした。
野獣のように犯されるのでした。


 エイミーは、十九歳の女子大生でした。 深い藍色の瞳と、金髪の持ち主でした。

 
巨乳が評判の、美しい少女でした。
いまでも車で、毎日、大学に通っています。

 夕方になる前に帰宅します。彼と顔を合わせます。
そんな生活を、日々、続けていました。

 彼との地獄のような同棲生活に、なんとか耐えてこられたのも、学校生活があるからでした。
もともとは、優秀な学生であったのです。
いまでは、中の中という成績をなんとか維持していました。

 トッドも同年齢でした。茶色い髪に、薄い青い瞳をしています。
この地方都市のガソリンスタンドで、自動車修理工として働いていました。

 あるパーティで知り合ったのです。 収入は、それほど多くはありません。
かつがつ郊外の一軒家を借りて、住めるぐらいの給料は、もらっていました。

 二人が知り合ってからの最初の数ヵ月間は、トッドも、いまとは、まったく違っていたのです。
優しく愛情を持って、エイミーと付き合ってくれていました。 彼女も同様でした。

 しかし、トッドに飲酒癖がついてしまったのです。
悪い先輩に誘われて、飲み歩いたのが切っ掛けでした。

 それからは、坂道を、石が転げ落ちるようでした。
すべてが、悪いほうへ悪いほうへと、転回していったのです。

 一晩に数本のビールは、よりアルコール濃度の高い酒へと変化していきました。
泥酔状態で、エイミーに襲いかかるようになっていきました。

 抵抗して拒めば、その時は、それ以上のことはしないのです。
傷つけるようなこともありませんでした。 眠ってしまいます。

 しかし、一度、酒が切れて目が覚めると、深夜でも、殴ったり蹴ったりの暴力が続くのでした。
朝になると、時には涙を流して、謝罪してくれます。
もう、こんなことはしないと、抱き締めてくれます。

 しかし、その約束は、二十四時間以内には、必ず破られるさだめでした。

 ほとんど日常茶飯に、エイミーは、この情況からの脱出の方法を考えて、暮らしていました。
しかし、まだ大学の教育期間が残っていました。

 両親は離婚していました。 父は失踪していました。
母に、娘の生活費の面倒までみてもらうのは、無理なことでした。
娘の大学への入学金は、払ってくれたのです。

 彼女は週末には、学費を稼ぐためのアルバイトをしていたのです。
巨乳をいかして、身体を売るような仕事でした。
小額ですが、奨学金も受けていました。

 いますぐにでも、脱走の計画を、実行したいと考えていました。
どこか、トッドから隠れて住めそうな場所はないでしょうか。

 しかし、その部屋を借りるための資金がないのです。
エイミーにもそれだけのお金を、手に入れることは出来ないということが、よく分かっていました。

 彼女の仕事も、トッドの怒りの種になっていました。
男の人の脇に座って、お酒を飲むだけです。
たまには、胸を触られることもあります。 それぐらいです。

 そんなに、ひどい職場ではないのです。 でも、誤解は溶けませんでした。
トッドはエイミーを、他に男を作っていると責めるのでした。 何の根拠もない話でした。

 もし、彼女が逃げ出したとします。
トッドは、どこまでも追い掛けてくるに違いありませんでした。

 田舎の母の家にまで、押し掛けていったとしたら……。
どんなに心配を、掛けてしまうことでしょうか。

 母は、娘が都会の大学で、まじめに勉強をしていると信じているのです。
それだけは嫌でした。
それに捕まって連れ戻されたら、今までよりも、ひどい折檻を受けることになるでしょう。

 翌朝になっていました。 エイミーは、目を覚ましました。
シャワーを浴びて、着替えをしなくちゃと、ぼんやりと思っていました。

 昨日から、ずっと同じ服を着たままで、眠ってしまっていました。 汗の臭いがしました。
昨夜は、夜着に着替える気力さえ、なかったのです。
右の膝と腕に、大きな青あざができていました。

 シャワーを浴びて、着替えを済ませました。
無地の白いTシャツに、ストレッチタイプのジーンズという、いつものシンプルな服装でした。

 通学用のブック・バッグの紐を掴むと、階段を駆け下りていきました。
幸運なことに、トッドは、リヴィング・ルームのソファの上で、いびきをかいて熟睡していました。

 抜き足刺し足で、前を通り過ぎました。
静かにドアを開けて閉めました。 そっと鍵をかけました。


 午後四時になって帰宅しました。 有り難いことに、トッドはまだ帰っていませんでした。
夕食の準備を始めました。

 もう一時間もすると、彼が帰ってきて、またあの暴力と恐怖の時間が始まるのです。
五時が近くなってくるにつれて、恐怖だけが彼女の心を満たしていきました。
いてもたっても、いられないような気分でした。

 五時を数分過ぎた頃です。トッドが家の玄関から、飛び込んできました。
もう僅かにですが、酔っ払いの千鳥足であることが、彼女には足音からわかりました。

 アルコールの臭気を嗅いでいました。
怒りがトッドの両眼に、火のように燃えていました。

「おい、おまえは、何様のつもりでいるんだ?」
 トッドは自分の「妻」(彼の濁った心の中では、そうなのでした)の豊満な胸元を、
嫌らしい目付きで、睨み据えていました。 大声で恐喝していました。

「おれが、帰ってきたときには、玄関で出迎えるようにと、あれほど教えたじゃないか」

「でも……」 エイミーの声は、震えていました。

「私、あなたのお夕食を、作っていて……」

「黙れ!!糞野郎!」
 彼は右の拳で、彼女の左肩を殴り付けてきました。

 鋭い痛みに悲鳴を上げていました。
すでに痛めた肘にまで、激痛が走りました。苦痛が錐のように、神経を走り抜けていったのです。

「どうか……。やめて……、ちょうだい、お願い……」
 涙が、頬をいく筋も流れ下っていきました。

 しかし、彼は耳を傾けてもくれませんでした。 腹部を、膝で蹴られていました。
彼女は、くずおれるように床に倒れていました。
身体のあちこちに加えられる打撃の痛みに、啜り泣いていました。

 エイミーには、何時間にも感じられた暴力も、現実には、わずか一分間足らずの出来事でした。
最後のキックを、巨乳に一発お見舞いした後で、トッドは冷蔵庫からビールを一本取り出しました。
キッチンから、リヴィング・ルームに出ていきました。

 エイミーは、そのまま長い時間、床に倒れたままでした。
なんとか、立ち上がろうとしていました。

 全身の苦痛に、うめき声を上げていました。
また、数分間が、ゆっくりと過ぎていきました。

 どうにか二本足で、立ち上がることができました。もう限界でした。
ついに、この家から出る決意を、固めていました。

 エイミーにも、トッドが、もう二度と元の彼に戻らないことが、はっきりと分かったのです。
彼女はお勝手のドアから、戸外に出ました。
できるだけ家から離れようと歩きはじめました。

 少しの間だけでも、一人きりになりたかったのです。
家の裏手に茂る森の奥に、入っていきました。

 トッドと二人で、出来るだけ家賃の安い家を探していて、この物件に出会ったのです。
周囲の五キロ四方には、一件の家もありませんでした。

 エイミーは、自分の頭が混乱していないことが分かっていました。
むしろ、冷たいほどに、冴え返っていました。

 木々のざわめきや、栗鼠が枝から枝へ飛び移る音のひとうひとつが、くっきりと耳に
届いていました。 区別することができました。
その刺激が、かろうじて彼女の意識を保ってくれていたのです。

 森の奥へ奥へと向かっていました。 苦痛は、堪え難い程になっていました。
柔らかい落葉の積もった地面に、座り込みました。
森の作ったしとねに、倒れこんでいました。




 夢もない深い眠りに、落ちていきました。




2・白いペンダント



 エイミーは、白くまぶしい光に目を開けました。
もう、朝なのでしょうか。 ぶんぶんぶん。空から、大きな音が下りてくるのです。
蜂の羽音のようでした。 でも、こんな大きな音を立てるようでは、さぞかし大きな蜂でしょう。

 恐くて、立ち上がって走りだそうとしました。その瞬間に、白い光が彼女を貫いたのです。
直径数メートルの、小さな円盤のような飛行物体から、ほとばしった光線が、彼女に命中したのでした。

 意識を、奪っていきました。

 もう一度目を開いた時には、まだ頭の芯にクラクラするような感覚が残っていました。
目線だけを上げて、空を眺めていました。 何の姿も、ありませんでした。

 おかしな物体がいるような不穏な気配は、何もありませんでした。
夕暮の森の空には、残照も薄れかけていました。 一番星が光っていました。

 おかしなことには、何の痛みも感じていませんでした。
白いTシャツの袖口を、持ち上げてみました。 肘の青あざも消えていました。
ジーンズの裾をまくり上げてみました。 膝の赤あざも、何の痕跡もなかったのです。

 傷跡は、はじめから存在していなかったように、きれいになっていました。

 Tシャツの袖口を直しながら、立ち上がっていました。
胸元に新しい重みを感じていました。

 大きな白い円盤状のペンダント
でした。

 見下ろしながら、その物体を手に掴んでいました。 金の鎖で、首から下げられていました。
さっきまでは、なかったものです。 もっと瞳を寄せていました。

 森の薄闇の中で、なにかの文字が書かれてはいないかと、背後まで調べていました。
何もありませんでした。

 裏側に右手の親指の指紋が、触れたときです。
明るい白い光が、表の側から、ほとばしっていたのです。

 光線は、目の前の木を、先端から根元まで包み込むように、照らし出していました。
扇形の光が徐々に狭まっていきました。


 
それから、信じがたいことが起こったのです。


 木は、その背丈を縮小させていったのでした。 数秒間の内です。
十二メートル以上はあった木が、九メートルになっていました。
六メートル……。たっぷりと、十秒間が経過していました。

 白い光は、ぱっと消えていました。彼女は木のあった辺りの地面を、注視していました。

 十センチにも満たなくなった木を発見したのでした。
姿や形は、前とそっくり同じでした。 枝振りも同じです。
楊子のような枝には、微細な葉が、びっしりとついています。

 以前と比較して、小さくなっているだけなのです。 さらにいえば、元気そのものでした。
他に何かの悪い影響を受けたような様子は、まったくありませんでした。

 エイミーは、新しく手に入った不思議な道具を、もう少し試してみたくて仕方がなくなっていました。
慎重な彼女にしては、めずらしく気分が高揚していました。

 家の方に戻っていきました。
いつもの通い慣れた小道から、ちょっとだけ外れてみました。

 大型ダンプカーが、林間の空き地に捨てられていることに、気が付いていたからです。
白いペンダントの表面を、錆びて廃棄された鉄屑の山に向けていました。
親指で触れました。

 白い光が、トラックを包み込みました。
またしても、即座に、そのサイズを縮小させていったのでした。

 光線が止んだ後で、足元の地面を見下ろしていました。

 大型トラックは、もう一個の子どものオモチャに過ぎなくなっていました。
片手に持ち上げてみました。

 ペンダントが持っている驚くべき力に、あらためて驚嘆していました。
ジーンズの
お尻のポケットに、証拠品の車をしまいこみました。


 突然、現実が、荒々しく心に舞い戻ってきました。
エイミーは、トッドとの暴力の日々を思い返して、恐怖に震えていました。

 しかし、自分が新しく身に帯びた力について、想像をめぐらしていました。

「そうよね、簡単なことじゃないかしら?」 自問自答していました。
 拷問と強姦の日々が、とうとう終了しようとしているのでした。

「縮小光線」が、大きな木とトラックに効果があるのならば、
人間に使えないということが、あるでしょうか。


 家まで走って戻っていきました。
白いTシャツの下で、
大きな胸を弾ませていました。

 待ちきれないぐらいでした。
トラブルのすべてに、これで終止符が打てるのですから。

 裏手のドアから、入っていきました。 焦げた臭いを、嗅いでいました。
ストーブの上の二ヶ所から、食物が焦げた煙が上がっていました。
火まで、ついていました。 すぐに鍋の蓋を閉めました。

 てきぱきと惨状の処理をしていきました。
煙を上げている食物を、キッチンのシンクに流していきました。 

 小さくなったトラックを、ジーンズから取り出して、テーブルの上に置きました。
靴を脱ぎました。

 ずいぶん上手になった、足音を殺した歩き方で、リヴィング・ルームに入っていきました。
トッドが、ソファに座ってテレビを見ていました。

「どこに、いってやがったんだ。 乳牛女。 おれさまの「晩餐」は、どうした?」
 トッドは、牡牛のように咆哮していました。
拳骨を握り締めて、立ち上がろうとしていました。

 エイミーは、首からぶらさげたペンダントを、両手に握り締めていました。
自分の前に、楯のように突き出していました。 正面をトッドの方に向けました。

 親指の腹を、強く押し当てていました。 白い光が扇形に照射されていました。
それから、角度が小さくなっていきました。

 同時に、彼が縮小していきました。 悲鳴を上げていました。
トッドにも、部屋と彼女が、どんどん大きくなる様子が、見えているのでしょう。

 驚愕に瞳を見開いていました。
真正面から、かつてのガールフレンドの姿を見上げていました。
エイミーの身体が、大きく、さらに大きくなっていることでしょう。

「くそったれ、畜生め!何が起こってやがるんだ?」
 エイミーは、トッドが小さく、さらに小さくなっていくのを、ただ微笑を浮かべて見下ろしていました。

 光線は薄らいで、消滅していきました。
木や車よりも、時間がかかったような気がしました。
人間は、はるかに組成が複雑な生きものであるからでしょうか。


 エイミーは、さっきまでの暴君の姿を、床の上に探さなければならなかったのです。
五センチメートルにも足りない程の背丈の肉体が、かろうじて残っているだけでした。

 人生最大の難問が、いまでは彼女の親指のサイズほどに、縮小していたのでした。
オモチャの兵隊さんに、そっくりな大きさでした。

 心の底から沸き上がる喜びを、押さえ付けていることは、とてもできることではありませんでした。
しかし、出来るかぎり、厳しい表情を作ってやっていました。

 ちっぽけなボーイフレンドの眼前に、ジーンズの長い脚を折り曲げて、しゃがみこんでいきました。
ミニチュア・サイズですが、両方の青い瞳を、覗き込むようにしてやりました。


「ねえ、気が付いていた? 最近。このあたりの森で、ちょっと変わった事件があったのよ」
 空飛ぶ円盤の目撃事件を、こと細かに説明してやりました。

「あなたは、殴ったり、蹴ったり、平手打ちにしたり、
ずいぶん長い間、私のことを、いじめてくれたわよね。今度は、私の番よ」
 彼は、悪態の口汚い言葉を、何度も、絶叫していました。

 エイミーは、何の警告もしませんでした。 その場所で、一気に立ち上がってやりました。

 それで巻き起こった空気の動きだけで、彼が床の上を吹き飛ばされたのです。
背後に倒れてしまったのです。 そんなことまでは、計算していませんでした。

 自分自身が、
途方もない巨人になったような気がしました。
倒れている彼の数センチメートル脇の床を、靴を脱いだ素足で、ずしんと踏み潰してやりました。

 彼が、飛び上がっていました。無礼なおしゃべりは、止んでいました。
頭を抱えて、床の上に蹲るようにしていました。

 背中が、震えているのがわかりました。
自分の途轍もないサイズへの、恐怖心からだということが、エイミーにも、はっきりと分かりました。



3・エイミーの復讐


 「あなたは、もう、そんな風に汚い言葉で、私を辱めることなんて、できないのよ。
トッド。 これからは、尊敬の気持ちをこめて、言葉を使うことね。
この哀れな虫けらめ!」
 再び、足を上げていました。

 トッドは、動きませんでした。 すぐ前の床を、もう一度ずしんと踏み付けてやりました。
彼が体験しているだろう恐怖に、興奮を覚えていました。

 自分も、そうだったのです。 手加減をしてやるつもりは、まったくありませんでした。


 もう一度、しゃがみこみました。
ちっぽけな男の様子を、詳細に観察してやりました。

 これまで以上に震えていました。
ズボンの腰のあたりに、黒い染みができていました。

「あらあら、そんなに恐かったの? おもらしをするなんて……、きたないわねエ」
 エイミーは、大きな声で笑ってやりました。

 
巨人の手で、トッドを背中から掴んでいました。
親指と人差し指で、腰骨のあたりを摘むようにしました。

 ちょっとの間だけですが、このまま握り潰してやろうかと、真剣に考えていました。
簡単なことでした。トッドは、それほどに華奢だったのです。

 しかし、思い止まりました。
いえいえ、それは、できません。 それでは、あまりにも安易です。

 最初は、今までの、暴力と恐怖のお礼を、しっかりとしなければなりません。
床の上から、持ち上げていきました。
自分の目線の高さよりも、少しだけ低い位置にくるようにしました。

 トッドが、息を吸ったり吐いたりする呼吸を、敏感な指先に感じていました。
生きものなのです。 人形ではありませんでした。

 ちっぽけな心臓が、急速なテンポで鼓動していることまでが、分かりました。
そのスピードからも、恐がっているのは明らかでした。

 トッドを手に持ったままで、キッチンに歩いていきました。
シンクの脇のカウンターの上に置いたのでした。

「さあてと。私の可愛いあなたは、ちょっと、お風呂に入る必要がありそうね。
だって。おもらしして、臭いんですもの!」
 からかうような口調でした。

 彼は沈黙したままでした。 言葉を忘れてしまったという様子でした。

「どうしたの?何も話してくれないの?
何も話してくれないと、つまらないんだけどなあ……」

 トッドの声は、甲高いキイキイというものでした。
何度もつまっては、言いなおしていました。 ひどく聞き取りにくかったのです。

「お願いだ……。」 「殺さないでくれ……。」
「おれを自由にしてくれ……。」 「何でもするから……」
 そんな言葉を、何度も何度も繰り返していたのです。

「もちろん、あなたは、私が、のぞむことは、何でもするのよ。
だいたい、それに反対することなんて、不可能なんじゃないかしら?」
 冷たく答えていました。

 
巨女エイミーは、トッドを入浴させる準備をしていました。
彼女の指は、彼のシャツを、まるで濡れたティッシュのように、引き裂いていきました。

 ズボンを脱がせ、下着も取りました。
リリパット人のコックは、惨めに縮み上がっていました。

 巨人の指先で、例の「巨根」を愛撫してやりました。
トッドは、これがいつも自慢だったのです。
指先の先端部分で、それを摘むと、上下に指紋で刺激してやりました。

 彼の意志に反して、勃起しているのだということが、分かりました。
男の自然な反応なのです。


「あらあら、私は、『縮小光線』が、あなたの自慢の男性自身までを、
縮小しちゃったんじゃないかと、心配していたのよ。
でも、そうでもないみたいね。安心したわ。
でも、もうこれ以上、あなたの楽しみのために、奉仕してあげるつもりは、ないのよ!」

 いきなり、巨人の人差し指の先端で、彼の睾丸を、軽くはじくようにしてやりました。
その後の反応を一歩しりぞいて、冷酷に観察していたのです。

 トッドは苦悶のために、身体を二つに折っていました。
ビールのような黄色い液体を嘔吐していました。
痛む胡桃を、両手で守るようにしていました。


 エイミーは、微笑を浮かべて、見守っていました。
完全なコントロールの能力に、性的な興奮を覚えていました。

 ミニチュアの男に、自分が奮うことのできる力の強大さに、快感を感じていたのでした。
実際のところ、ここ数年間で、こんなに興奮したことがあったでしょうか。

 これほど
高揚した気分になったことは、ただの一度もなかったような気がします。


 哀れな小さな男は股間を押さえて、まだ苦痛に悶えていました。
彼女は、優しく、しかし、決然と、彼の両手を痛む睾丸から引き剥がしていきました。
自慢の「巨根」は、小さくなってしまっていました。

「そうね。 今は、小さいほうがいいわ。 バスタイムなんですもの」

 彼は、「こんなことはやめてくれ」と、小さな声で哀願していました。
しかし、それが逆に、復讐の火に、油を注ぐ結果になってしまっていたのです。

 エイミーは、お湯の方の蛇口をひねりました。 ぬるいぐらいの温度に調節していました。
トッドを、台所用の消毒用の洗剤の下に、持っていきました。

 濡れた手の中で、まるでミミズのように蠢いていました。 気持ちが悪かったのです。
少しだけ
指に力をこめていました。

 彼は、すぐに、そのメッセージの意味を、理解したようでした。
静かになっていました。


 消毒剤を、小さな男の、すべすべとする濡れた肌に、擦り付けていきました。
蛇口の水流の真下で、全身をじゃぶじゃぶと、洗っていきました。

 自分の両手を洗うときと、同じ無造作な要領でした。
手加減は、一切しませんでした。
水流に溺れていようと、気にもしませんでした。

 キッチン用のペーパータオルの上に置きました。 早く乾くようにです。
全身の水を切った後で、素裸の男を、キッチンテーブルの上に持っていきました。
傍の椅子に座りました。

 トッドは、テーブルの上に斜めにあぐらをかいて、座り込んでいました。
変なかっこうなのは、痛む股間を、カバーしているからなのでしょう。
うつむいていました。

 巨人となった、かつてのガールフレンドと目を合わせるのを、避けているような様子でした。

「さあ、私を見るのよ。 虫ケラ君!」

 トッドは雷鳴のような声に、顔を上げていました。
目と目を合わせていました。 大きな女の、藍色の冷たい瞳を、見つめているだけでした。

 彼にも、さらに冷酷な復讐を、心に秘めていることが分かったようでした。
今までの、困難な人生の中でも、これほどの恐怖を抱いたことは、一度もなかったことでしょう。

 不思議なことでした。
エイミーには、彼と目を合わせているだけで、そこが素通しの窓であるかのように、
彼のちっぽけな心の中が、読み取れていたのです。


 彼は、考えていました。 どうして、こんな情況に陥ってしまったのか。
彼女からの脱走計画を、次々と思いついては、頭の中で却下していました。

 ガールフレンドが、今では彼に対する、
絶対的な生殺与奪の権を握っていることを認めざるを
得ないと、心に決めていました。

 エイミーは、もう一度、落雷のような声で、彼のつまらぬ物思いを、中断していました。

「私たちは、もう長い間。あなたが決めた生活のルールで、暮らしてきたわよね。
でも、これからは、私があなたに、命令する番なのよ。 わかったかしら、ちびの虫ケラさん。
そのルールとはね。あなたが。もし私を。不愉快な目に合わせたら……」

 エイミーは、テーブルの上の大型トラックを、片方の手のひらで無造作に叩き潰しました。
アルミフォイルで出来ているように、
ぺちゃんこになっていました。

 トッドには、爆弾が破裂したような轟音でした。 エイミーは、不気味に笑っていました。

「……その報いを受けなくちゃ、ならないってことなの……。
まあ、ともかく、これからは、私が楽しむ番ということよ。 それだけは、覚えておいてね」



4・シンプルなテスト


 エイミーは、まっすぐに立ち上がりました。 上半身の白いTシャツを脱いでいました。
Gカップのブラしか、身につけていませんでした。

 エイミーは、トッドの顔に浮かんだ、恐怖の表情を見逃しませんでした。

 何をされるか分かったのでしょうか。
彼女の計画を、何となく気が付いているような様子でした。
勘だけは、よい男でしたから。

 トッドは、本当は、初めてエイミーの首から掛けられた白いペンダントに気が付いたのでした。
エイミーは、あんな装身具を持っていたでしょうか。

 彼を、小人にした時に、その手に光っていたものは、あれだったのではないでしょうか。
彼にも、この不思議な事件の、根源がそれだということが、分かってきたのでした。

 もし、あれを自分のものにできれば、この窮状を、一気に逆転することができるかもしれないのです。
元の身体に戻り、エイミーを縮小し、この地獄の責め苦の何倍もの、復讐をしてやるのです。

 かすかですが、生きる希望が湧いてきていました。
目を皿のようにして、ペンダントを凝視していたのです。


 エイミーは、その間にも、ブラの背中の留め金具を悠然とした動作で、外しました。


 
たっぷりとした量感のある、しかし、固く引き締まった巨大な乳房を、
束縛から自由にしたのでした。


 解放された肉の隆起全体が、ぶるんぶるんと自由自在に動いていました。

 トップレスになりました。 爽快な気分でした。
トッドにもエイミーが、すでに性的な興奮状態にあることが、分かったでしょう。

 乳首が痛いほどに、勃起していましたから。
固い乳首が、彼を脅かすミサイルの先端のように、高く天に向かって聳えていました。


 トッドは、自分が、あの
巨大なおっぱいの谷間に挟まれたら、どうなるのだろうかと、
戦慄していたのです。

 想像力の豊かな男でした。 本当のところ、彼にとっては、それらは片方だけでも、
大型のダンプカーに匹敵する質量を持った、巨肉でできた塊なのです。

 エイミーはテーブルの方に、ゆっくりと重々しく、上半身を傾けていきました。
途方も無く巨大な乳房が、彼の方に向かって、下降してくるのでした。

 エイミーは、それをトッドの目から、眺めているような気がしました。
面白かったのです。 壮大な畏怖を覚える光景でした。

 傍若無人に、四方八方にゆったりと揺れながら、接近してくるのでした。
彼は、これから巨大な宇宙船が着陸する予定の場所に、立ってしまっているようなものでした。
危険でした。

「わかってくれているのかしら?トッド。
結局のところ、ブラを付けるのって、女の子にとっては、とっても不愉快なものなのよ。
それでね、私も、本当に自分が付ける必要があるのかって、試してみることにしたの。
 とっても、シンプルな方法があるのよ。 何日か前に、古い雑誌の記事を読んだの。
本当にシンプルなのよ。 乳房の下にえんぴつを挟んで、手を離すの。
もし、えんぴつが落ちれば、ブラは不要。 落ちなければ必要。これだけのテストなの。
 でも、トッド、このキッチンには、えんぴつが一本もないわ。
困ったわね。どうしようかしら。 そうだわ。
あなたは、鉛筆としても、ずいぶんちびっちゃいけれど、立派に代用品になれると思うのよ」


 トッドにも、自分にどんな運命が待ち受けているのか、分かったようでした。
弾かれたように、立ち上がっていました。

 キッチンのテーブルの上を、女巨人とは反対の方向に、脱兎のように走り出していました。
パニックに陥っていました。

 いきなり壁に激突していました。 尻餅をついて転倒していました。
表面は柔らかい癖に、中側はやけに固い壁でした。

 目の中に、火花が散っていました。 ようやく目を開きました。
短時間ですが、失神していたのかもしれません。

 ようやく壁の正体が分かりました。
それは、
エイミーの手のひらだったのです。


「だめよ。 ちびのトッドちゃん。 どこかに遊びにいっても良いなんて、許しちゃいないのよ」

 トッドは、テーブルから持ち上げられていました。
エイミーの指に必死にしがみ付いていました。

 エイミーは、新しいオモチャを、手のひらの上に乗せていました。
エイミーの藍色の瞳が、これが最後だとでも言うように、悲しそうな目付きで見つめていました。

 トッドは、手の縁から、真下をのぞいていました。絶望的な情況でした。
もし、ここから落ちたとしたら、あるいは、エイミーが落としたとしたら、間違いなく彼は死ぬでしょう。

 ゆっくりと右手の指が閉じていきました。
トッドを、親指と人差し指の二本だけで、挟んでいたのでした。


 右手がゆっくりと下降していきました。
形の良い、雄大な巨乳の山脈の上空を、通過していきました。


 自由な方の左手が、左の胸の山塊の凄まじい重量を、持ち上げていました。

 トッドを、その真下の位置にくるように移動していました。
ペンダントも、超巨大なおっぱいの影になっていました。 手が届きませんでした。

 今、エイミーが、どんな顔をしているのかすら、トッドには見えなかったのです。
いタずらっぽい笑みを、口元に浮かべているだけなのでしょうか。
それとも、真剣な顔をしているとでも……。


 荘重な声が、楽しそうに宣言していました。
「トッド、今こそ、私たちが長いこと待ち望んでいた時よ」

 トッドは、遥か彼方の真下の床を、見下ろすような位置になっていました。
裸の背中に、ずしん。 乳房の重量を、暖かく感じていました。

 エイミーが乳房を持っていた手を離したのです。
彼を支えていた手も、なくなりました。
背中の皮膚が、エイミーの汗の浮いた肌を滑っていました。

 トッドは、自分が虚空を落下していく時間を、永遠のように感じていました。
哀れな肉体が究極的な死に到達するまでの、長い旅でした。

 一生が、走馬灯のように心をよぎるといいます。 が、何も思い浮かびませんでした。


 床まで、わずか十センチメートルぐらいの距離でした。
エイミーの手が、トッドを、はっしと、キャッチしたのです。

 彼女は、運動神経には、自信がありました。 顔の前まで持ち上げていきました。
トッドは、気絶していました。 しかし、致命傷は、どこにも受けていませんでした。

 ふうっと顔に強く、息を吹き掛けてやりました。

 トッドの目が開きました。
そこから、つぎつぎと、小さな涙の粒が溢れて、頬を濡らしたのでした。
それでも、エイミーの行動に変化はありませんでした。


「……さてと、これでもう、私には、不愉快なブラが不必要だって、わかったわ。
あなたは、とっても役に立ってくれたわ。 協力に感謝するわね」

 トッドは感情が激していました。
自分でも、制御できなくなっていました。子どものように、泣きじゃくっていました。

 エイミーの「シンプルなテスト」に心身ともに、打ちのめされていたのでした。
たった今、死の淵を覗いて来たのです。

「さてと、私の可愛いぼくちゃん。
何が、そんなに悲しいの。 泣かないでちょうだい。
そうだわ。 寒いのね。 まっ裸なんですものね。 私の胸で、暖めてあげるわ」

 トッドは、再度、キッチンのテーブルの上に下ろされていました。
縁からすぐ近くの場所でした。 天井に顔を向けて、仰向けの態勢で倒れていました。

 
巨人のガールフレンドは、頭上に聳えるように立っていました。

 脱力感で、動くこともできなかったのです。
二つの山のように大きな乳房の間に、エイミーの顔が小さく見えていました。

 エイミーは、テーブルの方に、上半身を倒して来たのでした。
トッドの頭上、数メートルの距離にまで、クジラの腹のような
乳房の下半球が、
下降して来ていました。


 彼は両手で顔を覆っていました。
指の隙間から、頭上の怪物のような物体を見上げていました。 恐怖と戦っていました。


 エイミーは、さらにゆっくりと、乳房を下降させていきました。
トッドの上に軽く乗せていました。
彼女にとっては軽くです。 しかし、彼は空気を求めて、藻掻いていました。


 
タイタニックサイズの巨乳に、全身がすっかり隠れてしまっていました。
押し潰されていたのです。


 エイミーは、もう少しだけ、体重を乗せていきました。
トッドの肺から、すべての空気が、押し出されていることでしょう。
それに十分な圧迫を、かけてやったのです。


 もうこれ以上は、彼の呼吸が続かないだろうという、ぎりぎりのところまで、
その態勢を続けていました。
それから、背筋をまっすぐに延ばすようにして、上半身を起こしていきました。

 トッドは、予想どおり、息を喘がせていました。
金魚のように口をぱくぱくいわせて、不足した空気を飲み込んでいました。
全身の細胞が空気を求めて、悲鳴を上げていました。

 エイミーは、自分のプッシーが、今、経験したばかりの鋭い歓喜と興奮のために、
じっとりと内部から、濡れてくるのを感じていました。


 こんなに楽しい時間を終わりにするつもりは、まったくありませんでした。


 まだ息を切らしているボーイフレンドを、片手に持ち上げていました。
今では、彼にも親しみを増しただろう乳房に、近付けていきました。

 ちっぽけな男の青白い顔を、自分の方に向けました。
勃起して、固くなった乳首の上に、ひょいと跨がらせていました。



 トッドは、両手両足に力をこめて、必死にしがみついていました。
小動物のように可愛い動作でした。


 エイミーは、またトッドの心の中を覗き込んでいました。 どうやら円盤は、
彼女の身体ばかりではなくて、精神をも強靭なものに、変化させてくれているようでした。 



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超乳エイミー・1 了




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