《 真夜中の体育倉庫 》 第27話 ---------------------------------- (愛花の視点で) 狩りのゲームが終わった。 小さな健一さんが私から逃げられる訳がない。 健一さんは5回逃げて、私に5回とも捕まった。 私に囚われた健一さんは疲れはてて気を失っている。 |
しかし、狩りのゲームをした成果はあったの。 私の身体に力が漲っている。健一さんの始祖さまとしての力が私に流れ込んでくる。 あぁ、あ、気持ちがいい。 健一さんの行動を思い返す。 健一さんは、他の人の家に逃げようとも、警察に逃げようともしなかった。 一般人も警察も私に勝てないと知っていたのね。他人を巻き添えにしたくない・・・。 あぁん、人の事を思いやる心を持っているのね、健一さん。大好きです、結婚しましょう。 その時、私はこの町の都市伝説を思いだした。 この市の「中央公園」で満月の夜に恋人同士がキスをすれば、 その恋人たちは、いつまでも幸せになれると・・・。 何の意味もない都市伝説。 しかし、今夜は満月の晩。 「あはは、中央公園に行きましょう、健一さん、そこで私たちはキスをして、いつまでも幸せに暮らすのです」 この時の私は完全に、イッテしまっていたのだと思います。 気絶した健一さんを口に捕えたまま、中央公園に行く私。 明治時代の貴族が市に寄贈した公園は木々が茂る美しい森林公園。 森の中に入ると、そこには先客がいた。 20歳くらいの男女の恋人たち。他者を気にせずに濃厚なキスをしている。 この公園で満月の夜に恋人同士がキスをすれば幸せになれるという、 あのアホらしい都市伝説を信じてここに来たらしい。 男の方はずいぶん逞しい、夜道で暴漢に出会っても彼女を守る自信があるみたい。 愛しあう恋人の姿を見て、少し悲しくなる。 あぁ、私は何をやっているのかしら? 本当なら、私も人間サイズで健一さんに告白して恋人になりたかったのに・・・、 それなのに、私は健一さんを小人にしてオモチャにしている。 健一さんを元の大きさに戻したと思ったら、今度は自分が大きくなっている。 私が健一さんより強くないと不安なの、 そう、私は健一さんと恋人になりたいのではない。健一さんをオモチャにしたいのよおおお! 私って・・・なんて悪い子なの。 事態は進む。 私の前でキスをしていた見知らぬ恋人達が巨大な私に気がつく。 悲鳴をあげる男女。 私は気を失った健一さんを地面の上に置く。 恋人たちの女の人の方に手を伸ばす。 男が女を守ろうとしたので、左手で張り飛ばす。男は木にぶつかり動かなくなる。 10分の1サイズの小人の女に手を伸ばす私。 そして有無を言わさぬ力で両手で包み込むように捕らえる。 女の人は「あはうっ!」と軽く声を漏らす。 しかし、私のあまりにも強い力に抵抗できない。 細く小さな女の感触はひ弱で、かすかな心臓の鼓動がトクントクンと感じる。 そう、女の人は、まるで獲物にされた小動物のようでした。 「やめてえええっ!」 彼女が消え入りそうな声を振り絞る。 けれど私は止めない。 獲物の女の人の服と下着を、簡単に引きちぎる。 「や、やめてえええ!!!」 私は彼女の太もものかぶりついていた。 そう、私は肉食獣なの、肉食獣が獲物を襲って何がいけないの? この女が羨ましい。 恋人の彼氏と楽しい時間を過ごしている。 なんで、なんで、あなた達だけ楽しそうにしているの? 本当なら、私も健一さんと恋人として楽しい時を過ごしていたのに・・・。 ふと気がつく。 あれ、健一さんがいない。 見知らぬ女の人を捨てて、立ち上がる私。 いつの間にか身長30mくらいに巨大化している私。 公園の木々も、私の腰のあたりの高さ。周囲を見まわす。 視線の先の地面に、真っ赤なポルシェ。 健一さんはその車に逃げ込む。 遠目だけど運転席にいる男の顔が見えた、私は彼を知っている。 健一さんの友人の川田先輩だ。 そ、そんなあ、この状況で健一さんを助けようとする友人がいたのおおお。 そのまま、川田さんの赤いポルシェはぶっちぎりのスピードで、夜道を突っ走る。 あは、あはっは、あはは。 健一さんが逃げていく、 車に乗って逃げていくうううう! そんなヒドイ、私の事が、そんなに嫌いなのですか。 感情が爆発する そのとたん、私の身体は爆発的に巨大化した。
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