《 ハードラック・ジミーと12人の恋人達 》 
その1

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 え、何だって、俺の話を聞きたいのかい?

 この俺、ハードラック・ジミー(凶運のジミー)の話を聞きたいとは・・・、

 いいだろう、聞かせてあげるよ、俺と12人の恋人達の話を。



 最初の恋人はリンディさ。

 俺と彼女は、心から愛しあっていた。

 結婚の約束もしたさ。

 小さくてもいい、家を買ってリンディと暮らすんだ。

 そして、可愛い子供達と、みんなで幸せな家庭を作ろうと・・・。

 お金はなかったけど、俺たちは幸せだった。

 しかし、俺達の運命を変えたあの日がやってきた。

 あんたも知っているだろ、異世界バードラードが、俺達の世界と接触したんだ。



 異世界との接触で、世界に異変が起こったよ。

 世界中で、女の子達が巨大化したんだ。

 そう・・・、俺のリンディも、とんでもない
巨人になってしまった。

 まさにジャイアンテスだな、

 巨大化した彼女は力に満ち溢れていたよ。



 え、「それからどうなった?」 って聞くのかい。

 どうもこうもないよ、「さよなら」も言わずに、逃げたよ。 彼女から。

 ・・・・・・あぁ、そうだよ・・・、俺は臆病者だ。

 自分の恋人を、ほったらかしにして逃げたんだから。

 でも、仕方ないだろ、彼女は俺の200倍の大きさになったんだぜ。

 俺の体は、彼女にとってアリのサイズもないんだ!

 彼女の鼻息だけで、俺は何処かへ飛ばされちまう。

 ちょっと足指を動かしただけで、俺は家ごと、ひねり潰されるんだ。

 いったい、俺にどうしろと言うんだよ。

 そう、リンディは、異世界に住む
巨人になった。

 もう・・・、いっしょに暮らせない。



 あれから、12年の月日が流れたよ。

 巨大化した女性の何人かは、異世界に行き、そこで住んでいるって聞いた。

 彼女達は大き過ぎて、俺達の世界では暮らせないんだから、仕方ない。

 一部の国では、巨人と人間が共存しているらしい。

 俺にとっては、もう過去の出来事さ。

 巨人となったリンディが、幸せに暮らしていることを願うよ。

 ・・・・・・・。

 でも、時々、彼女のことを思い出す


 どうして、俺は彼女から逃げたんだろうって・・・。

 ずっと、リンディと暮らそうと誓っていたのに。

 どうして、俺は恋人が困っている時に、いっしょに、いてあげなかったんだろうって。

 さぁ、俺の話はここまでさ、

 残りの11人の恋人達の話は、また今度な。

(終わり)


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