《 世界迷作童話 赤ずきん 》
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むかしむかし、あるところに、とても可愛らしい小人さんが住んでいました。
ある日、小人さんの村に巨大女がやって来ました。
ものすごい大きさです。 彼女は山よりも大きく、空の上にそびえ立っていました。
「こんにちは、巨大女さん」
小人さんは大きな声で挨拶をします。
心の優しい彼は、人を疑うということを知りませんでした。
「こんにちは、小人さん」
巨大女は天空の彼方から、小さな彼を見下ろし、返事をしてくれました。
小人さんは彼女がどうしてこんなに大きいのか理解できません。
思い切って、尋ねてみました。
「巨大女さん、巨大女さんの体は、ずいぶんと大きいのですね?」
「そうよ、私の偉大さを、あなたに見せてあげるためなのよ」
巨大女はそう言いながら、大きな指で、地面から彼を摘み上げました。
小人さんは驚きました。
巨大だと分かっていたのですが、彼女は本当にとんでもない大きさです。
乗っていた車ごと、彼女の手の上に乗せられています。
彼女の指は、ちょっとしたビルくらいの大きさです。
手のひらは、サッカーグランドほどの広さがあります。
小人さんは驚いて叫びました。
「うわぁ、なんて大きな手のひらなんだ!」
「そうね。 あなたを持ち上げるために、こんなに大きいのよ」
小人さんは、彼女の顔を見上げて、なおも質問します。
「巨大女さん、巨大女さんの耳は、どうしてそんなに大きいのですか?」
「あなたの小さな声が、よく聞こえるように大きいの」
「巨大女さんの目は大きくて、きらきら光っています!」
「可愛いあなたを、よく見るために大きいのよ」
「巨大女さんのお鼻は、とても大きいです」
「可愛い小人の美味しそうな匂いを、嗅ぎ分けるためなの」
そして、小人さんは最後の質問をしました。
「巨大女さんの口は、どうしてそんなに大きいのですか?」
巨大女は微笑みながら言いました。
「それはね、あなたを食べるためなのよ」
巨大な彼女は、小人さんを口の中に放り込みます。
彼女の口は、彼にとって十分な広さがありました。
そのまま、彼女はごくりと彼を飲み込んでしまいます。
小人さんは悲鳴を上げながら、暗黒の巨大胃袋の中へと落ちてゆきました。
そして、小人さんが太陽の光を見ることは、二度となかったのでした。
(世界迷作童話 赤ずきん 終わり)
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