《 ネコの気ままな ひとり旅 》 もうダメぽ編

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 やあ、みんな元気かい。

 旅猫(たびねこ)のニャン太郎だよ。

 今日は、いきなりの大ピンチだ。



 いやはや・・・どうしてこんな「お先真っ暗な状況」になったのか。

 山の旅を楽しんでたら、タヌキを見つけてさ、猫族の習性で、
追いかけたら、勢いあまって滝つぼにダイブしちゃったんだ。

 おのれ〜タヌキめ〜、今度会ったら、ただじゃおかんぞ。
それにしても、土地勘の無い場所で無茶をしすぎたよ。

 これも旅猫の宿命、一人旅は楽しいけど、危険とも隣り合わせなのさ。

 とにかく今、僕は絶対絶命のピンチ!
どうやったら、この危機から脱出できるのか・・・。


 あぁ、前足が痺れる・・・もうあかん。落ちたら死ぬ。
山になんか来なけりゃよかったよ。

 「旅猫」なんて無理をせずに、家で「飼い猫」やってたらよかったのかな。
飼い猫は自由じゃないけど、暖かい寝床と美味しい御飯がもらえる。

 意識が朦朧とする。

 あぁ、ご主人様、助けて・・・。
僕のご主人様はね、とっても
綺麗な女の子なんだよ。

 ご主人様は優しくて、いつも僕とベッドで寝てくれるんだ。
ご主人様のカラダは暖かくて、いい匂いがするんだ。

 あぁ、ご主人様の御姿が走馬灯のように見える〜。





 薄れゆく意識の中、幻覚を見ていた。

 美しいご主人様が僕を助けに来てくれる光景を。

 夢の中のご主人様は、なぜか、とんでもない
巨人になっていた。


 ・・・・・・・・・・。



 ・・・・・・・・・・。




 え、何、「それからどうなった?」 と聞くのかい。

 誰も助けに来るわけねーだろ、こんな山奥に!





 前足が痺れる、あぁ落ちたら死ぬ。 誰かはやく助けるにゃー!!


 あぁ、もうアカン、力つきた、

 あ、落ちた、滝つぼに落ちました。



 ドドドドバッシャーン  ←(水のはね散る音)

 水の中は・・・僕の知らない世界だった。

 あばばばばば、ぐぼ、ぐぼぼぼ・・・。

 溺れる、死ぬ、死んだ。

 そのまま僕の意識は失われていった。




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 あれから2年の月日が流れた。

 運がよかったよ。気がついたら、僕は川岸で倒れていた。
奇跡的に助かったようだ。川の流れが僕を運んでくれたらしい。

 しばらくは家に帰って、へたれていたけど、そのうち元気になった。

 僕を滝つぼに落とした「宿敵タヌキ」とは、あれから会ってない。
タヌキは人を化かすと言うけど、あれほどの実力者(つわもの)とは思わなかった。
いつかまた、あのタヌキと闘う日がくるかもしれない。

 そう・・・ひとり旅は、確かに気ままで楽しいけど、
自分で過酷な運命と闘う時もあるんだよ。


 そして今日も僕は旅にでる。


 家でご主人様と楽しくやってるのもいいけど、
僕は自由な旅がしたいんだ。

 それが旅猫の宿命なのさ。





 さて、今日は何処に行こうかな。


(終わり)


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