《 彼女とチェスをする時 》
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時々、ふと昔のことを思い出す時がある。
あの頃の俺はずいぶんと自分勝手だったと思う。
友人とチェスをしていても、負けそうになったらチェス盤をひっくり返していた。
あの時は世界で自分が一番偉いと思っていたからな・・・。
友人達には、迷惑をかけたと思う。 本当にスマンかった。
まぁ、そんな俺に天罰がくだったらしい。
いきなり縮小病になって、身長2センチの小人さんになってしまったよ。
ははははは、まぁ、生活には困っていないよ。
恋人のエレンが俺の面倒を見てくれるからね。彼女には本当に感謝している。
あぁ、趣味のチェスは今も彼女とやっているよ。
もちろん、もうチェス盤をひっくり返すような事はしないさ。
何しろ、今の俺はそのチェス盤の上に乗っているんだからね。
ははは、この身長だと自分のコマを動かすことだって難しい。 でも・・・、
巨大な彼女に見下ろされながらするチェスは、ゾクゾクするんだよ。
あまりにも小さな自分、いつでも俺を捻り潰せる彼女の巨大な指・・・。
そう・・・それが、とても快感なんだ。
でも1つだけ不思議なコトがあるんだ。
彼女がコマを動かす時、何故か俺のボーンのコマが頭を下げているんだよな。
いったい、どうしたコトなのか? 誰か教えてくれないかな。
(終わり)