!この作品中には過激な性描写、残酷な描写が多々含まれています。
趣味に合わない方はお読みにならないことをお勧めします!
作者
《 婚約者のアルバイト 》 前編
作 Pz
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「変なビデオじゃないって。一度見に来てよ。クライアントも賢ちゃんのこと
一度スタジオに来てもらいたいって。」
夜の繁華街。小さな割烹料理屋に、彼、淵田賢一と彼女、山口智美は小さなテーブルを
はさんで向かい合っていた。
「おばちゃん、熱燗もうひとつ!」
仏頂面の賢一は刺身を口に放り込み、お猪口の間酒を一気に飲み干す。
「あ、の、ね。私の話を聞く気があるんですかー?」
智美がため息をついて両手をテーブルの上に組み、その上にあごを置く。
賢一は智美の大きな黒い瞳を見つめる。
黒髪に戻し、伸ばし始めた髪の毛は肩にかかっている。組んだ両手の上に乗せられた
小さな顔は、日本酒のせいであろう少し赤くなっていた。
控えめな化粧に素肌の白さが伺える。
ハイネックの白いウールセーターは胸の部分が大きく隆起し、
短めの黒いタイトスカートからはストッキングにつつまれた女性らしい丸みのついた
脚がにょっきりと伸びている。
智美の左薬指にはプラチナの婚約指輪が薄暗い割烹料理屋の蛍光灯を反射し
きらりと光る。
先週、賢一が智美の指に自分ではめてやった指輪。賢一が50万円も出して
買ってしまった指輪。
(そのとき、智美は感激のあまり泣きじゃくっていた。)
「水着モデルやっていたのは知ってるさ。今でもボディーは凄いし。」
ぶすっとした顔のままそれだけ言う賢一。
それを見て少しだけ笑う智美。
「でもさ、何で俺に黙ってビデオなんかに、それも今、出てるんだ?」
智美を見据える賢一。
「ギャラがね、とんでもなく良いのよ。それもただ歩き回るだけでよ。
そりゃ、水着だけど・・・。」
「ほら見ろ。」
「だーかーらー!スタジオにきーてーよー。」
おばちゃんが持ってきた熱燗を賢一のお猪口に注ぎ、さらに自分のお猪口に
手酌する智美。
智美が水着モデルをやっていたのは賢一と出会った当事のことだ。
賢一自身、智美のかわいらしさと、その見事なプロポーションに瞬時に魅了されていた。
「いくさ。自分の女が人に素肌さらしているなんて見たくもないがな。」
「賢ちゃん、モデルのこと馬鹿にしないって、言ってくれていたわよね。」
少しだけ真顔で智美が言う。
「馬鹿になんか。でも、自分の奥さんになる人が水着でビデオなんかに・・・。」
「賢ちゃんも私の写真集持ってたんでしょ!」
いたずらっぽく笑う智美。
終電も近くなったころ二人は家路に着く。三ヶ月前から同棲を始めたマンションに
向かって。
賢一の固い表情は、智美がベッドに誘うまで続いた。
「はじめまして。淵田賢一さんですね。」
土曜の朝8時、都内のオフィスビルの中。
賢一は智美の横に立ち、ビデオプロダクションの社長の前に立たされていた。
賢一の腕にぎゅっと、しがみつく智美。
身長180センチの賢一に比べ、160センチほどの智美はまるで
賢一の腕にぶら下がっているように見えた。
「あ、はじめまして・・・。」
「私、藤原ゆかりと申します。このビデオプロダクションの代表取締役を
勤めさせていただいております。」
賢一は藤原と名乗るプロダクション社長をただ呆然と見つめていた。
30代後半ぐらいの年頃か。とにかく美しい人だった。
上品な顔立ち、短くカットされた髪は端正な顔立ちを引き立たせる。
大きく黒い瞳は見ていると吸い込まれそうになるほどの美しさだ。
だが、賢一が驚いたのは彼女の大きさだ。
黒いスーツにスカート、黒いパンプスの彼女は、賢一と変わらぬ背の高さだったのだ。
「トモちゃん、いい旦那様ね。」
智美は顔を真っ赤にする。
「はい。かっこいいでしょ!」
まだ賢一の腕を放さない智美。
「じゃ、いつもどおり撮影に入って。旦那様にトモちゃんの綺麗な姿をお見せしなさい。」
満面に笑みを浮かべ、スタジオの中に消える智美。
「あの、智美はいつからここに来ているんですか・・・?」
賢一は藤原ゆかりの顔を見つめ、聞く。
「智美さんはここに来てまだ三週間ですよ。でももともとモデルさんだったんでしょ。
カメラ馴れしているわ。それにとっても素直だし。」
やきもきし始める賢一。
「では、こちらにお越しください。観賞席があるんですよ。」
藤原ゆかりに連れられスタジオの中に入る賢一。
小さな映画館のような部屋に通される。
正面にはスクリーン。ビデオプロジェクター装置は天井に埋め込まれているのだろう。
部屋の照明が落とされる。
「はい、トモちゃん、昨日の説明どおりよ。スタンバイ、5.4,3,2,1、スタート!」
スピーカーから男の声。
スクリーンに映像が映し始められた。
賢一はいすに腰掛け、スクリーンを見入る。
なんてことのない市街地の風景。オフィスビルに、商用ビル。
道路上は自動車でいっぱいだ。
歩道を忙しく歩く人々。
いつもどおりの市街地風景だが、そのとき、スピーカーからどーん、と爆音が響いた。
スクリーンには、突然の爆音に驚く人々の姿が映し出される。
賢一は仰天した。
道路上に突然、女性の巨大な脚が振り下ろされてきたのだ。
巨大な足首は停車中の都バスを簡単に踏み潰し、さらにアスファルトに
めり込ませていった。
道路上を、空を見上げながら逃げまどう人々。
巨大な脚はさらに道路上の自動車を踏み潰してゆく。
冗談みたいに巨大な足首。バスよりも大きい。
さらに、カメラがその巨大な女性の脚をなめるように撮り上げる。
エロチックな女性らしい曲線で構成される巨大建造物。
そうとしか言いようのない女性の脚。
画面が女性の腰を映す。
セパレーツの白い水着の下衣だ。むっちりとしたお尻を
白い布が張り詰めて覆い隠す。だが、巨大な脚の持ち主がその脚を
動かすたびにその白い布でつつまれた巨大な柔らかな肉の山はプルプルと
ゆれる。
お尻の大きさはざっと直径30メートルか。
スピーカーから大音響が轟く。
巨大な女性の脚が10階建てのオフィスビルに突き立てられ、それを三秒足らずで
瓦礫の山にしてしまったのだ。
映像はさらに女性の体を上に撮りあげる。
文字どおり山のような乳房が、白い布をはちきれんばかり張り詰め、その持ち主の
顔を隠さんばかりに突き出している映像を見たとき、賢一はその女性が智美であると
気がついた。
白いセパレーツの水着を着た智美。
スクリーンには、特撮セットの中に立っている智美の全身像が映し出されていた。
賢一は身を乗りだしてスクリーンを見入る。
腰の高さほどしかないビルを見下ろす智美。足元には自動車や逃げ回る人間、
張り巡らされた電線がはっきりと映っている。
「ミニチュアセット?細かすぎる・・・。デジタル合成かな・・・。」
地上に置かれたカメラは、智美を足元から仰ぎ見る。
小さなビルと比較すると、智美自身が高層ビルのように映るのだ。
賢一は見たこともない智美の表情に気がつく。
白くむっちりとした脚は曲線で持って構成される巨大な建築物のように
そびえたつ。その付け根に位置する丸い大きなお尻は,遠近法で小さく見える。
白いブラをパンパンに張り詰めさせている巨大な乳房はデッサンを
狂わさんばかりに突き出していた。
そして、見慣れたはずの智美の顔。
いつもは見下ろしている智美の頭だが、ここでは100メーター以上の高さから、
カメラを見下ろしているのだ。
自分が見下ろされているような気分になる賢一。
カットが変わる。
悲鳴をあげて逃げ惑う人々が道路上にあふれている映像。
高層ビルのようにそびえたつ智美が彼らの後ろにじっと立っている。
白い巨大な脚が動き出す。
巨人となった智美の歩幅は優に60メートルはありそうだ。
電線を引きちぎり、道路灯をけり倒し、ミニカーのような乗用車を踏み潰し
アスファルト道路にめり込ませながら歩き出す智美。
ズシン、ズシンと足音が重低音でAVルームに再現される。
彼女は道路いっぱいに押し合いながら逃げる人々に、たったの三歩で追いついた。
その次のシーンに賢一は卒倒しそうになる。
巨大な智美の脚が、逃げ惑う人々を踏み潰し始めたのだ。
スーツ姿の会社員風の中年男性や、若いOL,フリーター風の男性、必死になって走り逃げる
人たちの上に、智美の足首が迫る。
巨大な足首が陽光をさえぎり、彼らの上に影を作る。
踵からゆっくりと地上に降りてゆく足首。かかとの下にいた若い女性は
突き飛ばされるようにして倒れこむ。
悲鳴をあげる若い女性。だが、下半身はすでに智美のかかとに押しつぶされ始めている。
若い女性の絶叫。次々に道路上に人々が押し倒される。
彼らは両腕で智美の巨大な足の裏を押し返そうとするが、智美の足首は
無慈悲に彼らを踏み潰し始める。
巨人となった女性をのろう言葉、あらゆる悲鳴。
賢一は思わず目をつぶる。
真っ赤な血しぶきを上げて、智美の脚が一気に六人ほどの人間を踏み潰してしまったのだ。
めりめり、とアスファルトの陥没する音が聞こえた。
画面は巨大な智美を煽るようにして彼女の顔を映し出す。
足元を見下ろす智美。黒髪が彼女の白い顔を中心にして垂れ下がり、タテガミのように
彼女の顔を包み込んでいる。
その顔は何か照れくさそうに笑っているように見えた。
巨人となった彼女。人間を六人も踏み潰してしまった後だというのに。
そして、智美はまたゆっくりと歩き出す。
道路上を押し合いながら逃げ惑う人々を次々に踏み潰しながら。
白い水着の下衣に包まれた大きなお尻は歩くたびに、ぶるぶると揺れる。
巨大建造物のような脚がかわるがわる前後する。そのたびに小さな人間の小さな
絶叫が響く。
とうとう道路上の小さな人間たちをすべて踏み潰してしまった智美。
カメラに向かって照れくさそうな笑い顔を向ける。
賢一は画面の隅に移っている道路上の圧死体を凝視した。
「作り物?踏みつけられたカエルみたいだ。」
スクリーンのなかの智美は両手を腰の後ろに組んで、両足をぴったりと着けて
胸を張り、少し背伸びする。
モデル時代のポーズつくりであろう。
道路上の鉄板並みに潰されてしまった自動車、足跡で穴だらけになってしまった道路、
けり壊された信号機、道路灯、標識が無残な姿をさらす。
アンバランスな智美の表情、ポーズ。
「トモちゃん、OKだよ。はじめて!」
また男の声。
スクリーン中の智美は、彼女の腰ほどの高さもないオフィスビルを、次々に
けり壊し始めたのだ!
スピーカーからは、倒壊するビルの大音響。智美の脚が全面ガラス張りの10階建て
オフィスビルに突き刺さる。
粉のように砕け散る全面ガラス。ガラガラと崩れるビルのスラブ。
股間すれすれの高さだったオフィスビルは数秒で崩れ去った。
賢一はその崩れるビルの窓から、地上に向けて人が飛び降りてゆくのに
気がついてしまった。
「まさか・・・。こんな合成技術なんてありえない・・・。」
スクリーン上には、次々にビルをけり壊す智美が大きく映し出されている。
小さな3階建て程度の戸建住宅など、一踏みで残骸となっていった。
もうもうと埃が舞い上がる。
スクリーンには智美の股下にも届かない商用ビルに巨大な脚が突き刺さり、
引きちぎるように歩く智美の足が映し出されている。
屋上の空調設備が吹き飛び、地上に落ちる。
智美の太ももがビルの外壁を砕いてゆく。
ビルを見下ろし微笑む智美。
彼女の股下から仰ぎ見るカメラ。
はにかみながら微笑む。
倒壊するビルの瓦礫の下敷きになる人々が、画面の隅に映る。
智美はカメラを見下ろし、ポーズをつけるたびに脚を動かす。
そのたびにこの大惨事から生き残った稀有な人々は、智美の脚の下に
悲鳴をあげながら消えてゆく。智美の足の指の間から踏み潰された人間の足が
突き出しているのを見つけてしまう。
賢一は絶句する。
カメラを見つめ、智美の声がマイクに入る。
「賢ちゃん、だーいすき!」
瓦礫の山となった市街地跡地に聳え立つ智美。
瓦礫を、道路上の自動車を、そして小さな人間を踏みつけながら。
智美は両足をぴったりと閉じ、少し背伸びをしながら、足元のカメラに向かって言った。
エロチックな曲線で構成される巨大な建造物のような智美。
白い水着がはちきれんばかりの胸は智美の顔を隠さんばかりだ。
画面上には無傷の建物が移っていない。
唯一無傷でいたのはJRと地元私鉄が乗り入れる大きな駅とそのロータリーだった。
智美がくるりと体をその方向に向ける。
ゆっくりとひざを折り、駅前のロータリーにひざまずく。
電線がここでも引きちぎられ、火花が飛び散る。
ターミナル内のハイヤー、タクシー、路線バスからドライバー、乗客たちが
いっせいに逃げ出してゆく。
智美はそんな彼らに気がつかないのか、カメラを見据えたまま、両腕を地面につけ、
四つん這いの姿勢をとる。
地面につけられた右の手のひらが、バスを押しつぶす。
左の手のひらはハイヤーを平たく押しつぶし、ボコッと、アスファルトを陥没
させる。
Gカップの智美の乳房は重力に引かれ、その大きさを倍加させてブラ下がる。
白い水着の上衣が巨大な乳房をつつみ、張り詰める。背中をわたる紐はもう限界と
ばかりにピンと引かれている。
賢一はスクリーンに映し出された自分の婚約者の美しさと、体の曲線美に圧倒される。
スクリーンに向かって、いや、カメラに向かって顔を突き出す智美。
黒髪が一瞬画面をさえぎる。長い髪を書き上げる彼女。
スクリーンいっぱいに広がる智美の顔。
「賢ちゃん、びっくりしてる?」
いたずらっぽく笑う智美。
少しだけ顔を引く。
巨大な乳房の谷間。智美は画面にそれが移っていることを十分意識しているのだろう。
両腕を胸に寄せる。
ぐわっと、音を立てるように寄せられる巨大な乳房。
スクリーンには賢一をじっと見つめる智美の瞳がきらきらと輝く。
カメラの前で、賢一のためにポーズをとり始める智美。
だが、賢一は画面上、駅とそのバスターミナルに多くの人間が映りこんでいることに
気がついていた。
カメラを凝視し、うっとりとした表情の智美。
スクリーンの前に賢一がいることを意識してのことだろう。智美は彼女の持つ美しさを
表現する手段を存分に発揮しようとした。
両腕を突っ張り、上半身を持ち上げる。彼女が自信を持つ大きく整った胸。
その重たさを強調するようにゆるゆると揺れる。
ゆっくりと智美は彼女の上半身を地面につけ始める。
地上の人間に気がつかないのか。
賢一は智美の白い水着につつまれた巨大な乳房が、バスターミナルを必死に逃げる
会社員風の中年男性を一気に押しつぶしてゆくのを目の当たりにする。
不運なその男性は懸命に走っていたのだが、智美の巨大な乳房の下から逃れられなかった。
丸く膨らんだ智美の巨大な乳房は、地面に到達するや、その巨大な質量を逃がすために
横に広がり始める。
智美の乳房の谷間を必死に走って逃げようとする小さな数人の人間。
深い胸の谷間は、智美が上半身をさらにかがめるとその余地を少なくしてゆく。
巨大な乳房の直撃を避けられた幸運な彼らも、横に押し広げられてゆく白い布に
つつまれた乳房の山裾に次々に飲み込まれてゆく。
賢一を見つめるように微笑むスクリーン上の智美。
両腕を体の前に組、べったりと地面に体を着け、足を上げる智美。
賢一のためにポーズをとっているのだ。
賢一は鑑賞室の椅子から半身を乗り出していた。
自分の見ている映像が現実のものかどうしても確かめたくなったのだ。
スクリーン中の智美はポーズを変えて駅舎を大きなお尻で押しつぶし始める。
架線鉄塔をくにゃくにゃと折り曲げ、ホームに停車中の10両編成の列車を
太ももの間に挟む。
電車の中に、居るはずのない人影をスクリーン上に認める賢一。
両腕を後ろにつき、お尻をぺったりと残骸となった駅舎に着け、両方の足をハの字に
折り曲げる智美。
巨大な壁面のように見える智美の太ももは、まるで超大型のブルドーザーのように
プラットホームからあふれ出した小さな人間たちと駅舎のスレート葺きの屋根、
それを支えるH型鋼材を押し寄せる。線路上に停車していたステンレス製の銀色に輝く
電車もまた、智美の太ももに押しのけられ、彼女の股間に寄せ集められる。
電車のドアからぱらぱらと飛び降りる人間を賢一は凝視する。
お構いなしに太ももをぴたりと閉じる智美。金属がねじりつぶされる轟音が響く。
小さな絶叫はぴたりとやみ、かすかなうめき声がスピーカーから流れる。
うっとりとした表情でカメラを見据える智美の妖艶な美しさに
賢一は圧倒された。
一面、瓦礫の山となった市街地の中になんとも艶っぽいポーズで座り込む
婚約者。
「特撮に違いはないんだろうが・・・。でも智美が巨大怪獣にされる映像なんて。
誰が喜ぶんだろう・・・。」
賢一は気がついてしまった映像中の小さな人間たちをSFXと信じることに
していた。種明かしを智美と藤原ゆかりに求めるつもりでもいた。
「こんな合成技術、教えてはくれないだろうけど。」
スクリーンでは、智美がまたポーズをかえ、カメラに向かって身を乗り出していた。
またしても四つん這いスタイルをとり、瓦礫を蹴散らしながらカメラに近づく。
いたずらっぽい笑顔を浮かべる智美。
Gカップを誇る巨大な乳房は水着を引き千切らんばかりにはりつめ、その圧倒的な
存在感を誇示するようにゆさゆさと揺れる。
丸く大きなお尻は鍛えられた筋肉に女性らしい脂肪をたっぷりとつけ、智美が交互に
脚をうごかすたびにプルプルとゆれた。
またカメラを見下ろす智美。黒髪がばさっと、垂れ下がり、鬣のようになる。
「がおー。怪獣だぞー!」
いたずらっぽく笑いながらカメラに向かい、かわいらしい声でそういう智美。
顔を下げ、地上においてあるカメラの前すれすれに唇を持ってくる。
両腕を腕組みするようにして、上半身を地面につける。
巨大な乳房は道路上に残っていた無傷の二トンメタルボックストラックを
ゆっくりと押しつぶしてゆく。
めりめりと、車体をきしませ潰れてゆく2トントラック。
やがて巨大な智美の乳房はそこにトラックなぞ存在していなかったかのごとく
ぺったりと地面にくっつく。
乳房の重みだけで2トン車がぺしゃんこに潰れてしまったのだ。
「賢一さん、愛しています!」
スクリーンいっぱいに智美の唇が映し出され、スクリーンは真っ暗になる。
そして急激に画面が明るくなると、レンズに智美がキスしたのであろう、
画面が曇っていた。
微笑みながらカメラを見下ろす智美。
「カット!トモちゃん、ご苦労様!」
またスピーカーから男の声。
スクリーンの映像が消え、室内に照明が灯る。
賢一はぼんやりと座席に座ったままだ。
「怪獣映画用のソフトでもできたのかな。それにしても人間がリアルだったが・・・。」
「今日の智美さん、張り切っていたわ。いつもは歩いてくれるだけなのよ。」
背後で藤原ゆかりの声がした。
あわてて振り返る賢一。
「あ、ああ、そうでしょうね。グラビアアイドルのイメージビデオみたいでしたね。」
いつの間に入ってきたのだろう、藤原ゆかりは。
「賢一さんに自分の体が若く美しいところを、じっくりと見せるんだ、って昨日から
いっていたの。ほんとにきれいだわ。」
賢一の隣に腰を下ろす藤原ゆかり。
ショートカットの髪型に控えめな化粧、どことなく妖艶な雰囲気をかもし出す女性だ。
ほんのりと香るコロンは、間違いなく外国製の有名ブランドのものだ。
「あの、これはどういった主旨の映画なんですか?女の子が怪獣みたいに
暴れるなんて。聞いたことがありません。販売しているんですか?」
賢一は恐る恐る尋ねる。
「ええ、需要・・・、映像そのものの需要はほとんどありませんよ。
一部のマニアさんがほしがるみたいですけど。基本的にこの映像は証拠品なんです。」
「証拠品?何ですか・・・?わけがわかりません。」
「私たちが持っている技術はこの世界には他に存在しません。私たちの
このスタジオ以外には。」
賢一は驚く。そりゃそうだろう。しかし、これだけの映像技術をハリウッドにでも
売りに行かないのだろうか。
「スピルバークなんか、この合成技術を見せたらいくら出すかわかりませんよ。」
「うーん、ハリウッドね。あちらもこのくらいのSFX技術を持ってるわよ。
でも、私たちと違って、ライブで撮影はできないでしょうね。」
「ライブで撮影?やっぱりデジタル処理ですか。よっぽど大型のスパーコンピューターが
あれば可能ではないかな・・・。」
「お待たせ!賢ちゃん!」
智美の明るい弾んだ声が映像ルームに響く。
着替えを終わり、ウールシャツにミニスカート、ブーツ姿の智美が立っていた。
「あ、オーナー!今日はありがとうございました。」
ペコリ、っと頭を下げる智美。
「こんなにいいんですか?ありがとうございますー!」
ちょっと驚いた声で礼を言う智美。
「今日のトモちゃんは良かったわ。あんなにポーズ決めてくれるなんて。
感謝の気持ちよ。」
えへへ、と照れくさそうに笑う智美。
「ところで、賢一さんにあのお話はしてくれた?」
藤原ゆかりが真顔で智美に言う。
ちょっとうつむく智美。
「あら、まだなの。お願いするわ・・・。ぜひともね・・・。」
藤原ゆかりは少し顔を曇らせる。
薄暗い映像ルームを揃って外に出る。
オフィス内の応接室に案内される二人。
ノックの音がし、コーヒーを持ってきた女性を見て賢一は仰天する。
外国の少女、それもワインレッドのメイド服を着て、光の加減か流れるように
紫に光る髪にカチューシャをつけた美少女が入ってきたのだ。
見とれる賢一を冷ややかな目で見る智美。
コーヒーを出すと、恭しく一礼し、お盆を持ったまま応接室を出ようとする少女。
ドアを開けると、ドア下のめくれたカーペットに脚をとられ、ものの見事に
転んでしまったのだ。
「ああ、まただわ、あの子。」コーヒーをすすり、小声で言う智美。
「あ、大丈夫?怪我はない?」
駆け寄る賢一。
「あ、大丈夫です。し、失礼しました。」
顔を真っ赤にして一礼し、小走りに出てゆくメイドさん。
また椅子に戻る賢一。
「へー、あんな社員さんがいるなんて、変わった会社だね。外資系かな。」
少し嫉妬した目で賢一を見る智美。
「でもいつもどっかで転んでるのよ、あの子。」
「ところで、智美。」
慌てて話題を変える賢一。
「智美はあの完成した映像見たことあるの?」
「ええ、あるわよ。私が巨大怪獣みたいに映ってるでしょ。」
少し照れたように笑う智美。
「どんな風に撮影してるの?」
「うーん、なんだか壊れやすい素材の小さな箱がディオラマみたいに
並べてあるのよ。その中を歩き回るの。多分、それがビルやお家になって
映っているんだと思うけど。あと、小さなミニカーがいっぱいあるのよ。」
コーヒーを飲みながら撮影の様子を話す。
「箱をけり壊したり、ミニカーを踏み潰すとき、なんだかすごく気持ちいのよ。
ほんとに巨人になったみたいで。ほら、私背が低いでしょ。いつも人を見上げなきゃならないから、町を見下ろす大女になるなんて快感なのよね。
撮影は、セットをみんな壊して終わりなのよ。」
「ふーん、でも小さな人間を踏み潰してることに気がついた?」
「え?人間?そんなの映ってるの?」
目を丸くし、賢一を見つめる智美。
「まさか、スタジオに小さな人間がいっぱいいるなんてこと・・・」
「あはは、まさか。SF漫画じゃあるまいし。」
「体に血とかついていたりしてね。」
顔を見合わせ笑う二人。
そのとき、ノックの音がして藤原ゆかりが入ってきた。
賢一と智美は椅子から立ち上がり、挨拶をする。
「おかけになってください。」
椅子を勧められる二人。
「淵田さんは驚かれたことでしょう。私たちの技術に。」
笑いながら藤原が言う。
「ええ、そりゃもう。でもスプラッタシーンにはちょっと気分が悪くなりました。」
「正直な感想ですね。」
笑う藤原。
「私たちはこの映像で商売をしているわけではありません。」
突然ビジネスを切り出す藤原。
「クライアントの依頼で撮影を行っているのです。ですから、映像が外部に
漏れることは絶対にありません。」
ノックの音がして、さっきのメイド服の少女がコーヒーを持ってくる。
少しだけ不安げに彼女を見つめる藤原。
コーヒーをテーブルに置くと、一礼する。
「ありがとう、ステラさん。」藤原がメイド服の少女に礼を言う。
今度は部屋を無事に出る。
「クライアントが智美さんを指名して譲らないのよ。」
ちょっと誇らしげな智美。
「それに、智美さんは私たちの撮影条件にぴったりと合致しているし。」
「はあ、そうですか。あんなに費用がかかりそうな映像なのに。」
賢一は巨人となって暴れまわる智美の映像を思い浮かべ少し不快になる。
「それで、私からのお願いなのですが。」
藤原が真顔になる。
「今度はお二人が愛し合うところを撮影させていただきたいの。」
智美は顔を真っ赤にしてうつむく。
賢一は一瞬動きが止まった。
「ええ?何だって?」
怒気をあらわにする賢一。
「そのクライアントとか言うのはどんな人なんですか。大体、特撮映像を
しかもあんなに趣味の悪い映像を秘密に見ているなんて。救いようのない
マニアかフェチなんですか?」
語気を強め、一気にしゃべる賢一。
智美は下を向いたままだ。
「クライアントはいたってノーマルですよ。公共機関が主力ですけどね。」
予想どおりの反応だといわんばかりに平然とコーヒーをすする藤原ゆかり。
「お礼は十分にします。」そっと、藤原が紙切れを差し出す。
出演予算と、拘束時間が記入されている。
「一日で400万円?」
賢一は思わず声を上げる。
「一日あたりのギャラです。クライアントしだいでまだ予算は上げられます。」
賢一を見据える藤原ゆかり。
なんて金額だ。だが、自分と智美が愛し合っているところなど、人になんて
見られたくない。
賢一は考え込む。
「ねえ、賢ちゃん、私、賢ちゃんとだったら見られてもいい・・・。」
顔を赤らめ、智美が言う。
「せっかくですが、お断りします。」
きっぱりと返事する賢一。それを見て目を細める藤原。
「あら。そう。こんなに綺麗なカップルなんてめったにいないのに。残念ね。」
席を立ち、簡単に挨拶を済ますと、賢一は智美の手をひいて部屋の外に出る。
「失礼しよう、智美。」
オフィスビルのエントランスに向かう二人。
「ねえ、こんなにいい話なんてないのよ。一日のギャラとしては考えられないわよ。」
残念そうな智美。彼女は一時芸能界にもいたので、この世界の相場を知っているのだ。
「ニューヨークのトップモデルと同じ金額なのよ。」
黙って智美の手を引く賢一。
エントランスを出ようとしたとき、またあのメイド服を着た少女が立っていた。
「本日はお疲れ様でした。ボスからのお土産です。」
紫の髪をした少女は綺麗にラッピングされた箱を賢一に差し出す。
「あ、ありがとうございます。」
箱を受け取る賢一。
「中は生もので、壊れやすいので乱暴にしないでくださいね。」
それだけ言うと、少女は深々とお辞儀をして廊下に消えてゆく。
賢一はその後姿をぼんやりと見つめた。
愛車のランドクルーザーを地下駐車場から出して、家路に着く賢一と智美。
ハンドバックの上に箱を置き、智美は助手席で賢一の顔を見つめている。
「あんなにポーズとったのは、きょうが初めてですからね・・・。」
「わかってる・・・。」
低いディーゼルエンジンの振動がかすかに車内に伝わる。
「ねえ、もう一度考えてみない?」
「だめ!」
きっぱりという賢一。
CDを掛け、気まずい空気を少しでも解消しようとする賢一。
「私、またあのスタジオに行ってもいい?きょうなんか15万ももらったのよ。」
賢一は智美から撮影風景を聞きそれは理解していた。
「いいよ。でも、あれ以上肌を露出しないでね。」
やさしく言う賢一。
智美は賢一のひざの上に頭を寝かした。
ハンドルを握る賢一を見上げる。
「頑固ねー。でも賢ちゃんがいやなら私もいいわ・・・。」
賢一のひざをさする智美。
前編 終