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 この小説は、セックスの描写・暴力的な表現があります。 そういう世界を空想として理解できる方のみお読みください。 (みどうれい)
 
 
 
 《 シャワー 》
 
 
 
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 「キャロルったら、はやく帰ってこないかしら」 リサが言う。
 
 「ほんとにそうね」 デビーがため息をつきながら言った。
 
 「あのいやな奴らが、ここに帰ってきたあの子に何もしないでくれたらいいんだけど」
 
 「あいつら、みんなケダモノよ!」
 
 「何があったのか、私にも教えて」 デビーは、妙に冷静な声で言った。
 
 「もうダメ。私、もー限界よ。もし、あいつらの誰か1人でもまた私に触ったら、どうにかなっちゃうわ・・・」
 
 その日は、アーカム・チームの消化試合が終わったばかりだった。
 
 チアリーダーのデビーとリサは、若いフットボールの選手達に破廉恥なイタズラをされて完全にキレてしまっていた。彼女達は思いつくままに怒りの言葉を吐き出していた。
 
 若い男の選手達はチームが負けたうさばらしに、一晩中ビールを飲み、それから女の子達にイタズラをした。
 
 全然勝てなかったのが恥ずかしいのか、彼らはまるで体がスポンジでできているかのように、ビールを飲み一日中酔って寝そべっていた。彼らはこれだけ努力したのだから、自分達は女の子の体に触っても許されると開き直っていた。
 
 その日は金曜の夜だったが、危険を感じたデビーとリサは街へ遊びに行くのを止め、二人で寮の部屋にいることにした。男達はそれが気にくわなかったのだろう。何度も彼女達の部屋のドアが叩かれ、あるいは外からガタガタ鳴るほど揺らされた。
 
 もちろん、彼女達はそれを無視した。
 
 しかし、すぐに彼女達は無視できない悲鳴を聞いた。誰かが廊下で悲鳴を上げ大声で叫んでいた。 そして、声を上げている女の子を取り巻いている男達の下品な笑い声が聞こえた。
 
 「キャロルよ!」 デビーが叫んだ。
 
 彼女はドアに走り、チェーンを外して錠を開けた。彼女が廊下に身を乗り出した時、リサは心配そうな顔で見守っていた。
 
 すぐにもっと大きな叫び声がして、彼女はキャロルを部屋に引きずり込んで、急いでドアを閉めてロックした。
 
 なんとか間に合ったようだ。
 
 鍵をかけたドアは、大きな音をたててその外枠までが震えた。それからドアは誰かに蹴飛ばされて、ぎしぎしと軋んだ。男達の口汚い脅し文句が、丈夫な硬材を通してそれに響いていた。
 
 二人はキャロルを見た。
 
 その顔には怒りと屈辱がにじみ出ていた。キャロルの髪の毛は乱れていてブラウスも破れていた。けれども彼女は悲しんだり怯えているようには見えなかった。
 
 それよりも彼女は怒っているようで、すぐにすごい剣幕で悪口を叫び始めた。
 
 リサはちょっとびっくりして彼女を見つめた。
 
 デビーは眉をひそめて言った。 「やってくれたわね。あいつら」
 
 「もう限界よ」 リサが言った。 「警察を呼ぶのよ」
 
 「ダメ!」 キャロルが厳しい口調で言った。 「いいえ・・・待って・・・」 彼女は少しだけためらっていた。 「もう1つの方法があるの」 彼女は話し始めた。 「おかあさんが、私に一度だけ見せたことがあったの・・・今まで、一度もそれを使いたいなんて思わなかったわ」 彼女は震えていた。そして彼女の目は、大きく開かれた。 「でも、今はもうそうじゃない!」
 
 「何言ってんの?」 リサが尋ねた。
 
 キャロルは、リサの緑色の目をちらっと見た。 「あいつらが想像もできないことよ。きっと、すべてを終わらせることができるわ」 彼女の目はきらめいていた。 「そして・・・とっても楽しいかもしれないわよ」
 
 ただならぬ雰囲気を感じた少女達は、寄ってたかってキャロルを質問攻めにした・・・。
 
 *  *  *  *  *  *
 
 試合の後の土曜の晩だった。
 
 チームの戦績は、いつものように暗澹たる有様だった。
 
 選手の男達は気分が悪かった。チームのほとんどのメンバーが帰った後だった。選手達の9人だけが不機嫌そうな顔をしてロッカールームの中に残っていた。
 
 彼らはシャワー室に入った。
 
 彼らの頭の上にシャワーが降り注いだすぐ後に、扉のわずかな隙間から白い霧のようなものが立ちのぼり始めた。それは奇妙な色にきらきらと輝き、濡れたタイルの上を走り、まるで男達の体に巻き付くように流れた。
 
 シャワーの水はその霧のようなものをかき混ぜ、その効果を目覚めさせているかのようだった。そしていきなり、床の上を漂っていた霧がシャワー室全体を満たす雲のようにひろがった。
 
 9人の男達は何か変だと気が付いたが、その時はもはや遅すぎた。彼らは彼らを取り巻く水蒸気のようなものに視界を遮られていた。
 
 互いがまるでずっと遠くにいるかのように、彼らの声はよく聞こえなくなった。さっきまで心地よかったシャワーの水は、土砂降りの雨のように強く凄まじい勢いになっていた。それはまるで重たいバケツサイズの大きさの水滴が、彼らの頭上に降り注いでいるかのようだった。
 
 すべすべしていた床のタイルは、彼らの足の下でいつのまにか、少しざらざらする感触になっていた。
 
 そして、まるで異変が起こった事を彼らが気が付くのを待っていたかのように、霧は消え去った。
 
 身長5センチに縮小された9人の男達は、巨大なタイルが敷き詰められた平原に立ち、ずっと遠くにいる仲間達を見つめた。
 
 *  *  *  *  *  *
 
 なんてこった!
 
 夢でも見ているのか、これは!
 
 俺達は互いに部屋の中とまだ降り注いでいるシャワーの雨を見つめていた。すべてがあまりにも大きかった。すぐに俺達は部屋の真ん中あたりに集まった。
 
 「ちくしょうめ。何が起こったんだよ?」 スティーブが叫んだ。
 
 「さっきの霧のせいだ」 トムが言う。
 
 「おい、えらいことだぞ」 ダグが叫んだ。 「どうすりゃいいんだよ?」
 
 「とにかく、ここから出よう」 デイブが言った。
 
 「そうだ」 リックが言った。 「助けてもらおう」
 
 「誰かが、俺達のことに気が付いてくれるかもしれない」 スティーブが願うように言った。
 
 「俺は誰かなんか待っていられない」 デイブは怒ったように叫んだ。 「俺は今すぐ、ここから出るぞ」
 
 シャワー室の出入り口は、水が外に流れ出さないように15センチくらいの高さがあった。そしてそれは、俺達の誰の身長と比べても3倍以上もある高さだった。
 
 この場所から出る方法は一つしかない。俺達はでかいタイルの壁の前に集まって、力を合わせてなんとか外に出ようとした。
 
 フロアは濡れていたので足場が悪すぎる。それで俺達は、ピラミッド状の組体操みたいな形になることにした。9人で力を合わせれば、誰かを一番上まで押し上げることはできるだろう。
 
 そして一番上になった俺は、ちょっとジャンプすれば外に出られる位置にまできた。そうなれば俺は俺の腕で仲間を引き上げてやろうと考えていた。
 
 しかし、そうはいかなかった。
 
 急にあたりが暗くなった。 俺たちの頭上を、何か大きな物の影が覆ったようだ。
 
 巨大な物が、俺の行く手を阻んだ。
 
 なんだ・・・これは・・・。
 
 どこかで見たような・・・。
 
 突然それは動いた。俺は悲鳴を上げる。俺の頭はのけぞった。
 
 俺の目はずっと上を見上げていた。俺はもう一度もっと大声で喚いて、ショックのため仲間の後に落ちて倒れてしまった。
 
 信じられない混乱の中で、俺はもう声をだすことができなかった。その代わりグレッグが叫んでくれていた。他の連中もそれを見上げて、恐怖に凍りついていた。
 
 そこに・・・ドアの前に3人の少女達がいた。
 
 大きな少女。
 
 巨大な少女。
 
 完全に裸・・・。
 
 あまりにも大きすぎる。
 
 俺達を見下ろして、余裕に満ちた表情で笑っていた。
 
 「なんてこった、くそ生意気なチアリーダーどもだ!」 デイブがうめいた。
 
 
 その時、俺達全員が頭上にそびえ立つ恐ろしい大女を見上げ、どうしようもない恐怖に怯えていた。
 
 
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