戦争ごっこ |
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疲れきり、身体もほとんど動かせなくなっていた。トムは女巨人に手を振って、最期の別れを告げていた。やれやれ。少なくとも一人は、恐怖の「サバイバル・ゲーム」にも生存者がいたのだ。ビリーが勝利者だった。素直に祝福していた。 |
【訳者後記】 ヘディン氏の『GOTCHA』の全訳。原題は、アメリカの子供たちが、追い駆けっこをして相手を捕まえたときに、背中を「ポン」と叩いていう言葉だそうです。「ガッチャ!」。「やった!」という感じでしょうか。 ある別荘の裏庭の芝生。1000分の1のサイズに縮小して「サバイバル・ゲーム」をするというメインのアイデアが秀逸。自分でも試してみたくなります。普通の芝生が、ジャングルに変貌していきます。 著者名のヘディンは、北欧神話の登場人物の名前。明らかに、主に「クラッシュ」についてのフェティシズムがある作家。しかし、ヘディンのGTSフェティシズムの領土は、遥かに広大です。徹底的な細密描写ができるまでに、想像上の世界を「見る」ことができる強大な能力があるからでしょう。 笛地は、ジャスミンとルーシーに、青林ソマリさんのスタイルが良くて可愛いけれども、狂暴な窓香ちゃんや稟々香ちゃんという少女達に、イメージを重ねて楽しんでいます。 この作品では、別荘の裏庭の芝生の中に、1000分の1のサイズに縮小されて、閉じこめられた男たちの恐怖が、世界のリアリティのある描写によって、克明に追体験できます。2ミリメートルにも満たない身長の彼ら。相対的に千倍のギガ・サイズになった、二人のビキニの美少女の肉体。 圧倒的な破壊力を持って、青いゴムのビーチ=サンダルと木製のミュールが、困難な冒険の行く手に立ちはだかります。波瀾万丈。息を飲むような異様な迫力。ラブ・ストーリーの魅惑。 ヘディンについては、笛地は彼の愛好する「mighty」という形容詞を借りて、GTSフェティシズムの「強大な作家」と呼びたいと思っています。人間達の心理ドラマも「強大な作家」の握力によって、がっしりと捕まえられています。 「70マイルジェニー」はGTS物の名作。こちらはシュリンカー物。ヘディンの代表作でしょう。お楽しみください。 今回は素直に、自分の初読の感動を、再現する目的で訳しました。ところどころで、少しだけ手を入れている部分があることを、お断わりしておきます。より直訳に近い文章は、機械翻訳で容易に入手できます。個人的な思い入れのある訳にも、一定の存在理由がある。そう考えています。ご寛恕をお願いしておきます。 なお「だ・である体」の文体を採用しています。しゅりりん様のHPに投稿した、同じヘディンの『エルリコンド村物語』と比較して頂けたら幸甚です。こちらは「です・ます体」を採用しています。訳文の実験なのです。 今回、もっとも苦労したのは、各登場人物の会話の描き分けです。それぞれの文字に書かれた話し言葉を、日本語として別な口調にして区別することが、どうしてもできませんでした。端的にいって、様々な方との英会話の経験の不足でしょう。いろいろと、ご教示頂ければと思います。 「1」「2」と、「3」の途中までを訳して中断。残りの「3」と「4」を訳してから、また半年間の休止。今回「5」を訳して、ようやくに完成。足掛け二年がかりの訳文です。不統一がないように、全体に推敲の手を入れました。まだ、いろいろと不都合があると思います。ご指摘頂ければ、適宜、修正して行きたいと思っています。 なお随所に残酷で暴力的な絵画的描写があります。そういう作品が嫌いな方は、読まない方が賢明でしょう。(笛地静恵) @@@@@@@ 【ホームページ管理人後記】 こんにちは、みどうれいです。 ヘディン氏原作の『GOTCHA』の笛地静恵さんによる全訳、「戦争ごっこ」です。 「戦争ごっこ」は青林ソマリさんのサイトに笛地さんが投稿しておられたのですが、氏のサイトが休止中のため見れなくなっています。 私も、いくつかの海外作品を翻訳しようとしたのですが、英語が分からずに断念したことがありますので、翻訳作品には、特に思い入れがあるようです。笛地さんや、他の皆様の翻訳の苦労と情熱が分かるような気がします。 それで、ソマリ氏のサイトが復活するまで、この作品を私のサイトに置かせてもらうように、笛地さんにお願いしました。 「戦争ごっこ」の感想ですが、この翻訳を始めて読んだ時は、冒頭の設定に違和感がありました。トム君たちが、1/1000サイズになるのがあまりに無謀すぎると感じました。 いくらサバイバルゲームを楽しむためとはいえ、彼らは小さくなりすぎでしょう、風が吹いたらジープごと、みんな何処かへ飛ばされます。雨が降ったら、水滴の直撃でメンバーは全滅します。(もちろん、彼らは草の陰に隠れて危険から逃れようとするでしょうけど。) もし、私がこの話を書くのなら、トム君たちは事故でこのサイズになったという話にしたように思います。しかし、読んでいるうちに、この話の魅力に引き込まれ、違和感がなくなってきました。 ヘディン氏自身が、1/1000サイズの小人になって冒険をしたいと望んでいるようにも感じました。 自らが破滅してもいいから、巨大な女性の世界に行きたいと願っている(?)ヘディン氏の作品に、敬意を表します。 想像もしなかった展開になるのは、海外小説翻訳の醍醐味でしょうね。 なお、文章にいくつかのコラージュを作ってみました。(私の趣味です) イメージ画像なので、文書の内容と合致していません。(汗) 今回のコラージュは、特に苦労しました。(特に青いサンダルの画像がなかった〜。) ジャスミンちゃんの巨体の上の、ひと時の空想の世界を楽しませていただきました。笛地静恵さん、翻訳、お疲れ様です。ありがとうございました。
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