《 彼を探して 》 その3
CG画像 June Jukes
----------------------------------
ふと見ると、地面を他の小人が走っている。柔道着を着ている、部活の途中だったのだろう。 他の小人よりも頭一つ分大きい、かなり体格がよく見える。
小人を指で摘みあげる。驚いたことに、その柔道部員は、私の指に正拳突きをくらわせてくれた。
知らない人のために説明しておくと、正拳突き(せいけんづき)とは、空手・拳法など徒手の打撃系格闘技で使われる突き技の一種で、正拳で相手を突く技なの。
しかも、この小人は180度の螺旋回転を加えながら、自分の拳を私の大きな指に叩きつけた、かなりの達人のようだ。
もちろん巨大化した私の体は強靭で、そんなコトされても、痛くも痒くもない。 しかし感心する。私の小指の大きさしかないくせに、なんと勇敢なのか。
そう言えば、私の彼も勇敢だった。彼と同じように勇気のある柔道部員に出会えて、私は少しだけ幸せな気分になる。
私はじっと小人を見つめる。
勇気ある小人は叫んでいた。
「このバケモノ、俺を地面に下ろせ!」 とか言っている。
私はがっかりする。 品格がない、私の彼は女の子が嫌がるような事を決して言わなかった、こんなの彼じゃない。
もう用はない、柔道部員を地面に捨てる。
やれやれ、彼はいったい何処にいるのかしら?
|