巨大美少女ミカ (11)
(不運な泥棒 改題)
NEW2さん みどうれい作
第一部 不運な泥棒(その11)
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リィナは、何かいやな胸騒ぎがしてならなかった。
彼女は結界を強化し、妹を屋敷内から出られなくしたのだ。
これだけやればもう安心出来るはずなのに、何か忘れているような気がしてならない。
(もしかして……)
あることを思い出したリィナは、妹のミカの部屋の前にやってきた。
しかし、まったく物音が聞こえてこない。 静か過ぎるのだ。
リィナは妹の部屋の戸をノックした。
「ミカ、困ったことになりそうなの。 戸を開けてちょうだい。」
何度かノックと呼びかけを繰り返したが、返事が無い。
「入るわよ!」
ドアのカギはかかっていなかった。 ミカがかけ忘れたのだろうか?
リィナは、そこで信じられないものを見てしまった。
妹の部屋の奥に、超空間に作られた島に通じる扉があることは知っていた。
本来、それは閉じた空間として独立しているはずなのに、他の世界とつながってしまっていた。
しかも、よりによってこびと達の世界へ。
妹の部屋の奥の扉は、開け放たれたままだった。
つながった世界、その空には、こびと達の世界から見える月が輝いていた。
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波舞雄船長のすぐ横に、巨大な足がもう一本、下ろされた。
「うわあああーー!!!!」
再び衝撃で地面に転がされた彼は、携帯電話を落としてしまった。
「うふふふふ、こびとさんがまた増えたぁ。 さぁーて、何して遊ぼうかなぁ。」
ミカは、足元の彼を楽しそうに見つめた。
ミカがほんの少し足を動かすだけで、彼を踏み潰してしまうのは簡単なことだろう。
そう言えばまだ足を使って、こびとさんと遊んではいなかったわね。
ミカは船長と足で遊ぼうと考えて、微笑んだ。
それにしても変ね。 このこびとさんは、自分からここに来たみたいだけど?
そう考えたミカはちょと気になったのか、テレパシーで波舞雄の心を探ってみた。
どうやら、船長の彼は、仲間を助けるつもりだったらしい。
「ふぅーん、勇敢なんだぁ。 船長さん。」
状況を甘く見ていたようではあるが、それでも、
仲間を見捨てないという勇気を、非力なこびとが持っているとは、ミカも少しだけ驚いた。
彼女は、少しかがんで、船長にも息吹をかけて、結界の術をかけた。
勇敢な船長さんも、簡単に潰してしまうわけにはいかなかった。
「ふふふふ、あなたが助けたかったのは、このこびとさんかしら?」
ミカは、船長のすぐ横の地面に、左手に握ったままだった逞夫を下ろした。
「せ、船長ぉ・・・。」 地面に転がった逞夫は、息も絶え絶えだった。
ようやくショックから立ち直ったのか、波舞雄は逞夫を抱き起こそうとした。
しかし、再び、巨人の無情な、そして無茶苦茶な内容の声が響いた。
「ふふふ、勇敢な船長さん。 私は、あなたに逃げられるチャンスをあげるわ。
私の足と、追いかけっこをしましょう。 1時間以上、走って逃げることができたら、
私はあなた達を潰さないでおいてあげるわ。 あぁぁん、私って残酷〜。」
同時に、天空に伸びる脚が持ち上がり、彼らのすぐ上に、ゆっくりと運ばれた。
巨大な足の裏は、船長たち二人くらいなら、楽に踏み潰してしまえるサイズだった。
「ふふふふ、小さなあなた達は、私の重さに耐えられるかしら?」
「うわーーー!!」 船長は悲鳴を上げて、逞夫を連れて逃げようとした。
しかし、地面に倒れた逞夫は、よほど疲れきっていたのかほとんど動けない。
船長の力では、体格の良い彼の体を、担ぎ上げるのも困難だった。
「ほーら、ほーら。 踏み潰しちゃうぞぉ。 あはははははっ!!
勇敢な船長さんは、どうするのかなぁ、 仲間を置いて、自分だけ逃げるのかしら?
それとも、二人いっしょに、潰されちゃうのを選ぶかなぁ?」
巨大な足の裏は、ゆっくり、ゆっくりと彼らの上に降りてきた。
ミカの足の裏は、もうほとんど船長たちの体に触れるところまで、降ろされていた。
しかし、船長は悲鳴を上げながらも、動けない逞夫を見捨てられないのか、
それともただ腰が抜けただけなのか、とにかく一人で逃げようとしなかった。
ミカが足を下ろそうとしているのに、船長が全然逃げようとしないので、彼女も少し驚いた。
もしかして、このこびとさん、すごい大物なのかしら? ミカはふとそう思った。
しかし、だからと言って、ミカは彼女の遊びを止めるつもりなど無かった。
どうでもいいことだ。 ミカにとってこびとはただの玩具なのだから。
「ふーん、まだ逃げないんだ。 せっかく助かるチャンスをあげたのに。
それじゃ遠慮なく、二人とも踏み潰してあげるわ。 ふふふふ、
足の下で、こびとさんが同時に二人も潰れるのって、どんな感触なのかしら?
それは、きっと、とても気持ちがいいと思うわ。 きゃー、私って残酷ぅ。」
ミカは、楽しそうに笑った。
多分、船長さんはまだ自分に何が起こっているのかを、理解できないのだろう。
彼らの上に足を降ろして、ゆっくり力を加えてあげれば、彼らも自分達の非力さを知るだろう。
そうなれば船長さんは泣き喚いて命乞いをするかもしれない。 それはきっと面白いだろう。
「何をしているの! ミカ!!」
その時、リィナの声が周囲に響き渡った。
リィナは、ミカのすぐ近くの砂浜に立っていた。
彼女は、ミカが今まで見たことのないような厳しい、そして悲しげな顔をしていた。
「い、いけない。(-_-;)」
こびとに夢中になっていたとはいえ、姉の存在に気がつかないとは・・・、
そして、姉が本気で怒っているのを感じたミカは、焦った。
最初のこびとは同族だし、泥棒をしようと彼女たちの屋敷に忍び込んだので、
そこでヒドいめにあったとしても、それは、まあ自業自得だと言えないこともない。
しかし、今、彼女が踏みつけているのは、真面目に働いている船員さん達だ。
彼らに巨人として力を使うなど、掟から言えば、許されないことだった。
ゴメンナサイ。 ちょっと遊んだだけなのよ。 もう二度としません、だから許して。
ミカは、姉に、謝ろうと思った。
しかし、ミカの口からでたのはもはや完全に開き直った言葉だった。
「あーら、お姉さまぁ、どうなさったのー。 何をそんなに怒っているのかしら? ほほほほほ。」
「すぐにバカなことは、おやめなさい。」 リィナが厳しい表情で言う。
「いくら、お姉さまのお言葉でも、従えませんわ。」
その時ミカは、その唇よりふっと息吹を放った。 彼女の力を使ったのだ。
「そ、そんな!?」 リィナは思わず驚愕の声を上げた。
ミカとリィナの間に、半透明の壁のようなものができていた。 それは、結界の壁だった。
元々、結界は、精神の力に反応して体を守るバリアーのようなものであったが、
その力をうまく使えば、強固なエネルギーの壁を、瞬時に作り出すこともできた。
リィナの知る限り、妹はこんな高度な術を使えない筈だった。
突然出現した結界の壁に阻まれて、リィナはミカの方へ行けなくなった。
「ほほほほ。 私の楽しみを誰にも邪魔はさせませんわ。
だって・・・、こびとさんを地面に踏みつけるのって、とても楽しいんですもの。」
この時ミカはふたりのこびとを、片足で軽く地面に踏みつけて、その自由を奪っていた。
ミカはあまり力を入れていなかったし、結界に守られていたので、
彼女の足の下の船長と逞夫は、潰れることはなかったが、
彼らは、巨大な肉の天井に押さえられて、身動きすることもできなかった。
「あぁ、気持ちいいわ。 私の足の下でこびとさんが二人もぴくぴく動いている。
ふふふふふ、ねぇ、ねぇ、聞いて、お姉さまぁ、とっても面白いのよ。
今、私の足の下にいる船長さんは、仲間を助けるためにのこのこやって来たのよ。
あはははは、さっさと自分だけ逃げていれば、助かってたかもしれないのに〜。」
この時、何故かミカは、姉に見られている場所で、
こびとにイタズラをするというシチュエーションに興奮していた。
自分の作った壁は頑丈なので、姉にも破れないと、彼女は考えていた。
「船長さん達が、どんなに頑張っても、私の足には勝てないの。
私は大きくて、とっても強いんだもん。 誰も私の力に抵抗できないわ。
私がほんの少し足に力をこめただけで、こびとさんはプチっという音をたてて潰れちゃうの。」
もはや、興奮したミカは自分でも何を言っているのか分からなかった。
「私の足の下の船長さんたちは、今、何を考えているのかしら。
自分たちがいつ潰されるだろうか って、怯えながら、想像しているのかしら?
やっぱり早く逃げるんだったって、後悔しているのかしら?
こびとさんに今できることと言ったら、この私に、泣いて命乞いをすることだけなのよ。
どうか僕たちを潰さないでくださいって、言ってね・・・。
ふふふふ、心配しないで、私は慈悲深い女の子なの。 命だけは助けてあげるわ。
そして、こびとさんたちはみんな、これから私の玩具として生きるのよ〜。」
その時、パリーンという音がして、ミカの作った『結界の壁』が砕け散った。
「あれ?」 とミカが思った瞬間、彼女の顔に鉄拳が飛んできた。
「そ、そんな、私の結界の壁を、破れるなんて・・。」
ミカがそう言うよりも先に、リィナの拳骨がミカの顔面に炸裂した。
ミカの「結界の壁」は、リィナのパワーの前に、簡単に砕かれていた。
「きゃいぃーん。」 リィナの強烈な顔面パンチに、ミカは、あっけなく吹っ飛ばされた。
リィナは砂浜の上を見た。 そこには船長と逞夫の二人が倒れていた。
彼女は素早くしゃがんで、彼らに指を伸ばした。
リィナは妹との闘いを決意していた。 彼らをそれに、まきこむことはできなかった。
船長と逞夫は、今まさに彼らを踏み潰そうとしていた巨大な足から解放され、
呆然としていたら、突然、他の巨人の指が迫ってきたので、また恐怖の悲鳴を上げた。
説明している時間は無かった。 リィナは彼らを優しく摘んだ。
「え!?」 リィナは驚きの声を上げた。
二人のこびとが指に触れた時、未知の感覚が彼女の背中に走ったのだ。
それは、ぞくぞくするような気持ちのいい感触だった。
考えてみれば、リィナが直接こびとに触るのは、これが初めてだった。
彼女は、このまま彼らを手の上に乗せていたいような気がしてきた。
しかし、早く彼らを安全な場所に移さねばならない。
リィナは戸惑いながらも、船長と逞夫を拾い上げ近くの岩陰に運び、そこに下ろした。
(早く逃げなさい。) リィナは、彼らに合図をした。
突然巨人がもう1人現れたのに船長達は驚いたようだったが、
彼らも自分達が助けられたことを理解したのだろう。
彼らはリィナに頭を下げると、よろめきながらも船の方に走り出した。
地面に降ろしたこびと達が走りだすのを見た時、リィナは何故か寂しく感じた。
この時彼女は自分が感じた寂しさの意味を・・・まだ理解してはいなかった。
それから、リィナは妹の方を振り返った。
「いったぁーい。」
ミカは、ゆっくりと立ち上がった。 彼女にダメージは無かったが、
まさか姉が本気で怒るとは思っていなかったのか、ミカも少し戸惑っているようだった。
しかし、妹を見たリィナは驚いた。 ミカの体に、オーラのようなものが見えるのだ。
特に腕力が強くなったという感じではないが、明らかにミカは、今までの妹ではなかった。
そう言えば、「結界の壁」は、リィナのパワーを止められる程頑丈ではなかったが、
今日術を見たばかりのミカが、そんなものを、瞬時に作れるとは驚くべき技の進歩だ。
油断しては、ダメ! リィナの直感が告げていた。
「何をするのですか、お姉さま?」
ミカは自分のやったことを棚に上げて、「ひどいわー」という口調で言う。
「何をする ですってぇ! それはこっちが言いたいわ。 あれを見なさい。」
リィナが指差す海のむこうの方向には、街の明かりが見えていた。
「あららら、とっても夜景がきれいですわね。ほほほほほ。」
ミカは、寝ぼけたセリフを言っていたが、それは時間かせぎだった。
この時、姉の力に驚いたミカは、彼女の「超感覚」を使って姉のパワーレベルを測定していた。
興奮しまくっていたが、元々ミカは頭のいい娘だった。 なんと彼女は、
もし自分より姉が強いのなら、素直に謝って許してもらおうと考えていたのだ。
もちろんその場合も、ただ姉の目をごまかす段取りをするつもりだっただけで、
こびとと遊ぶのを止めるつもりなど全く無かったのだが。
そして、ミカの探査によると、姉よりも自分のパワーの方が大きかった。
勝てる!お姉さまよりも私の方が強いわ。 さっき、結界の壁が破られたのはまぐれよ。(^-^)
ミカは、にんまりと笑った。
妹が、自分の力をスキャンしていることを知っているのかいないのか、リィナは言う。
「ミカ、こびと達がこの島に来たらどうするつもりなの?」
「ほほほほ。 望むところですわ。 みんな玩具にして、この島で遊ぶのですわ。」
自分の勝利を確信したミカは、もはや姉に遠慮などしなかった。
「あなたは掟を破るつもりなの!!」 リィナは叫ぶ。
「掟? あぁ、『こびとさんを傷つけてはいけない』とかいうあれね・・・。
はっ、何を寝ぼけたことを言っているのかしら。
大きな女の子は、こびとさんを玩ぶものなのよ。
お姉さま、私はこびとさんと遊びたいの。 だから、そんな掟なんか知〜らないの。」
ミカは、きゃっきゃっと笑った。
「ミカ!!」 リィナが叫ぶ。
「ねぇ、ねぇ、お姉さま。 これを見て。」
ミカは彼女の胸に両手をあてて、その谷間を少し開いた。
その谷間に、久太郎の上半身が見えた。 彼は、さっきからずっと挟まれたままだった。
「私は今まで、自分が何をするために生まれてきたか、考えたこともなかったわ。
でも今日、私はこの子と遊んで理解したの。
私は、こびとさんを玩具にして遊ぶために、この世に生まれてきたの!!」
ミカの目は完全にイッテしまっていた。
「こびとさんを玩ぶのは、巨大少女の宿命なの。
誰も運命には逆らえないの。 だから私は自らの運命に従って生きるの。
な〜んで、この私が掟なんかに縛られなければ、いけないのぉぉ〜ん。」
「そんなこと私が、許さない! 力ずくでも止めてみせるわ!!」 リィナが叫ぶ。
「あはははははは! お姉さまに、今の私が止められるかしら。」
そう言って笑うミカの顔に、いきなり平手打ちが飛んできた。
そのあまりの速さに、ミカは避けることもできなかった。
「そ、そんな!? 私の方が、パワーレベルは強い筈なのに・・・。」
そう言うよりも先に、リィナの右手が、ミカの頬を思いっきり引っ叩いた。
「きゃいぃーん。」 強烈なビンタに、ミカは、あっけなく吹っ飛ばされた。
ずううううんん!! 轟音と共に、ミカの巨体は砂浜に倒れこんだ。
「いでででで・・・・。」 まともにビンタをくらったミカは、彼女の頬を手で押さえていた。
もちろん巨大少女であるミカにとって、この程度のダメージはなんともない。
しかし、今彼女は、自分の力が全く姉に通用しなかったことにショックを受けていた。
さっき超感覚で姉のパワーレベルを探査してみたら、自分の方が強かったのだ。
それなのに、何故こんなにも簡単に、はり倒されるのか?
戸惑いながらも、ミカはもう一度姉の力を計測してみた。
「えっ??」 ミカは驚いた。
姉のパワーが、さっきの4〜5倍にも増大しているのだ。
愕然としながらもミカは、すぐに状況を把握した。
「私達は、結界の術で自分たちの本当の力を何万分の1以下に抑えている。」
昨日、姉はそんなことを言っていた。
彼女達は全てを破壊しつくす力を持っているから、そうしなければならないのだそうだ。
もしその言葉の通りだとして、姉がその本当の力とやらを解放できるのなら、
姉は、いくらでも強くなれるということになる。
「や、やば〜いいい。 (-_-;)」 ミカは焦った。
もちろん、ミカは自分の力を解放する術など知らない。
それはすなわち普通に姉と闘えば、ミカが確実に負けるということだ。
「このままではお姉さまに勝てないわ。 ど、どうしたらいいの。」
生まれて初めてのピンチに、ミカは動揺する。
何か、何かないのかしら! 起死回生の一発は??
ミカは必死で考えた。
(その12に続く)