《 真夜中の体育倉庫 》 第29話 ---------------------------------- 私は顔をあげて地面を見る。多くの人々が逃げまわっている。 必死で逃げているつもりなのだろうが、本当に遅い。 こんな小さな連中が、私と同じ人間なのだと信じられない。 私は起き上がって四つん這いになる。 地面の人間を観察したくなったからだ。 その動きでいくつかのビルを崩してしまったが気にしない。 私は巨人なの、巨人が動いたら小人の町は破壊される、それが真実。 ここは中央公園のある場所ではない。ビルが林立する都心部。 どうやら、車に乗って逃げた健一さんを追いかけてここまで来たみたい。 そうだ! 健一さんは何処に行ったの?? 私の巨人としての力を目覚めさせた健一さん! 健一さんこそが、私たち超能力者一族のリーダー「始祖」の生まれ変わり。 私は巨人の超能力で健一さんを探査する。すぐに見つかる。 多くの逃げる人々、都市は大混乱、アリよりも小さな人間たちが地面を右往左往している。 その中を走る一台の車が目につく。 真っ赤なポルシェ、 外国の高級車で一台数千万円するらしい。 こういう赤色は目立つ。 私には分かった、そのポルシェの中に健一さんがいる! 私はさらに探査をする。 巨人として目覚めた私の超能力は明確に状況を把握していた。 やはり、ポルシェを運転しているのは健一さんの友人の川田先輩らしい。 スマホもないのに、どうやって中央公園で合流できたのかは知らない。 私の知らない友情が、健一さんと川田先輩の間にあったのかしら? それにしても、友人を助けようとするとは、川田先輩は立派な人だと思う。 「ふううん、川田先輩、自分が危険なのに、健一さんを助けようとするとは、 褒めてあげてもいい友情ですね。でも、きっと後悔すると思いますわ。あははは」 私は四つん這いになって、ポルシェを追う。 200倍サイズの私。 私が人間だった時に時速10kmで走ったとすれば、 今は時速2000kmで走れる。 車の時速が60〜100kmでも問題にもならない。 とにかく、健一さんを確保しないといけない。鬼ごっこは終わっていないのだ。 すぐに私は健一さんの乗った車に追いつく。 「健一さん、追いかけっこは終わりにしましょう」 巨大な私は健一さんの乗った車に手を伸ばすのだった。 |