原作のイメージと合わない残酷な内容ですので、嗜好が合わない方、原作のイメージを
大切にされたい方は閲読をご遠慮ください。

                           作者


  《 ソラリスの街 》


                                 作  Pz



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敗走。
この二文字は、筆舌に尽くしがたい労苦を表す。
グランゼルもまた、数人の騎士と共にこの辛酸をなめていた。

東方蛮族大軍団との戦い。
傷ついた体。
激痛が全身を走り、苦痛に顔をゆがめる。
馬に乗る彼は、何とか止血には成功していた。
しかし、傷口が何時開くかわからない。
心臓の鼓動と共に襲ってくる激痛。
気が遠くなりそうであった。

あの大兵力はどこへ消えてしまったのか。
グランゼルは時に薄れる意識の中で思い返した。
東方蛮族の突然の襲来に、王侯諸国連合は大兵力を
東方防衛に送り込み、それを迎撃した。
しかしながら、各地で連合軍は撃破されていったのだ。
地平線まで続く大兵力の連合軍は、あっという間に
消耗し、消えてしまった。

完璧な奇襲を受けた。
グランゼル隊は、東方蛮族を前に大損害を瞬時に出してしまったのだった。
(まずい指揮だった・・・。)
グランゼルは悔やみ続ける。
蛮族の新兵器、「火筒」に彼の部隊は翻弄された。
鉛の弾丸を打ち出す鉄の筒。
大弓の数倍の威力をそれは持っていた。
彼自身、その威力に呆然自失となった。

蛮族・・・。
勝手に彼等がそう呼ぶ東方民族。
しかしその科学力、集団戦術、個々人の戦闘力は
彼等の想像をはるかに超えていた。

気力で馬を駆る。
若いころから数えて十数人の人間を切り倒した
太く逞しい彼の腕からは血が滴り落ちていた。
あたりは蛮族がすでに制圧を終えた森林地帯。
秋の気配を感じさせる森の木々。
陽が落ちるまで、その中を逃げ回る。
蛮族は主力を更に先に進めていったようであった。

彼は敗走中に通りかかった村を思い出していた。
グランゼル部隊が守備を受け持った平原にあった
その村落は凄まじい破壊と殺戮にあっていたのだ。
男達は残らず首を切り落とされ、子ども達は槍に
生きたまま串刺しにされる。
若い女達は全て強姦され、年老いた女たちは
股間に杭を打ち込まれ殺されていった。
焼き尽くされた村に、串刺しにされた領民達の死体が
案山子のように立っている。
信じられないほどの残虐性をむき出しにする東方蛮族たち。
傷つき倒れた彼の部下達も、その首を切り落とされていったのだ。
彼等を置き去りにしてきた自分に恥じ入るグランゼル。

「グランザル様!城塞都市が!」
イーゼムが叫ぶ。
辛くも生き残った数人の兵士の一人イーゼム。
弓を携え、馬を駆る彼もまた、右足に傷を負っていた。

命を永らえさせる希望が見えた。
城塞には、中立を示す水色の旗が翻っていたのだ。
「蛮族に攻略されてしまったのでは?」
皆がそう思ったが、誰もそれを口にしなかった。

日が落ちてしまい、あたりは闇につつまれる。
グランゼルたちが、城門にたどり着いたのは丁度そのときであった。


金貨15枚の税をとられ、彼等はこの城塞都市に
入ることを許された。
怪我の治療を求めたが、城塞都市の衛兵は中立を建前にして
その要求を拒否してきたのだった。
「治療師にでも頼むんだな!ただで死人も蘇らせるそうだぜ!」
でっぷりと太った警衛兵士が金貨を数えながら笑う。
「この街では、強く念じろ。何でも出てくるさ!」
彼はそういって、城門を閉めた。

「治療師・・・。エリザがここにいてくれれば・・・!」
グランゼルは心の底からそう思った。
街に入るや、兵士二人が絶命してしまったのだ!
二人は気力で馬を駆っていた。
槍を携え、馬上で息を引き取った若い兵士達。
イーゼムと部下が泣きながら彼等を馬から下ろした。
グランゼルは、自分が涙を流していることを
悟られまいとケープのフードを深く被った。

「エリザ!ここにいてくれれば!」
グランゼルは叫ぶ。

ランプの弱々しい灯りに薄っすらと浮かび上がる石畳の路上に、
一人の女の影が現れた。

「・・・エリザ・・・?」
グランゼルは目を疑った。

前線で行き別れになってしまった彼女。
薄暗い街の石畳。
窓から漏れる赤いランプの光にエリザは、ぼんやりと浮かび上がる。
紺の治療師服を纏った女を彼は凝視した。
青い十字の帽子・・・。

間違いなくエリザだった。
グランゼルは痛みも忘れ、走り出した。

「生きていたのか!エリザ!」
血まみれの腕で彼女を強く抱くグランゼル。
制服を纏った女は、その強い力に贖うこともなく
はにかむ様に笑った。
「グランゼル様・・・。」
幽霊ではないかと、一瞬グランゼルは思った。
しかし、暖かな彼女の温みが体に伝わる。
赤黒く固まった血がこびりついたグローブで、
エリザを抱きしめるグランゼル。
「部隊は壊滅してしまった。みんな・・・みんな俺の責任だ・・・。」
泣き声が混じるグランゼル。

エリザは頭二つも背の高いグランゼルを見上げる。
彼の傷にそっと手を当てた。

「ご自分を責めてはいけません。首領としての最善を尽くされたのです。」

泣き出したい気持ちをぐっと抑え、グランゼルはエリザを見つめた。
ぼろぼろの制服。
ブーツは泥だらけだ。
エリザの顔もまた、埃にまみれいくつかの傷がついていた。
「・・・なにが・・・あった・・・?」
グランゼルは思わず口に出してしまう。
エリザは悲しい目をして見つめ返す。
何も聞けなくなってしまうグランゼル。
エリザの治療は始まる。

傷が治癒してゆく爽快感。
彼は徐々に気を失っていったのであった。



数時間が経過した。
グランゼルは、安っぽい宿の藁の寝台の上で目を覚ます。
街の中が、人々の悲鳴と怒声でかき乱されていた。
「何の騒ぎだ?」
慌ててブーツを履き、身支度を整える。
イーゼムは早くも宿の外に出ていた。

「蛮族の襲撃です!けど・・・。」
言葉をのむイーゼム。
彼の視線の先には、巨大な女の姿があった。

「エリザ?」
グランゼルは絶句してしまう。
地響きを立て、城塞を跨ぎこすエリザ。
その身の丈は80メートルはあろうか。
満月が青く地上を照らし出す。
巨大なエリザもまた、月明かりに白く体を浮かび上がらせていた。

城塞の外からは、蛮族の気勢が上がっている。
巨大な女性、エリザが現れると、それがぴたりと止まった。
地響きを立て、彼女は城塞を跨ぎこし、蛮族たちの隊列を
両足の下に捕らえたのだ。

グランゼル達は城塞の上の望楼に駆け上がった。
そして、東方蛮族の大群を目の前にする。
夜に巨大化したエリザ。
信じられないことだ。
エリザは腰に手を当て、唖然とする蛮族兵士達を足元に見下ろしていた。
月明かりが白くエリザの顔をてらす。
グランゼルは、彼女の恐ろしい形相に息をのんだ。

優しく、美しい治療術師の顔は、いまや怒りに満ちて鬼のようだ。
ぼろぼろの制服が更に彼女を怪物風に見せている。
あちこちの破れ目からはエリザの輝くような白い肌が露出していた。
泥だらけのブーツがゆっくりと空に上がる。
無言のエリザ。
蛮族たちは一斉に弓を放った。
ズシーン、と大地を揺るがし轟音が上がる。
馬はいななき、蛮族たちが悲鳴をあげた。
エリザの黒革ブーツの底から血飛沫が噴だす。
一気に5人ほどの蛮族兵士が踏み潰されてしまった。
更にズシン、ズシンと足踏みをするようにエリザは
蛮族たちを踏み潰し始めたのだ。
グシャリ、ブチャリ、と馬ごとぺちゃんこに
踏み潰されてゆく蛮族騎馬隊たち。
深く巨大な足跡の底に、彼らは平べったい肉塊となり
埋め込まれてゆく。
エリザが蛮族を踏み潰すたびに大地が大きく振動し、
グランゼルは城塞が揺れるのを感じていた。

一斉に悲鳴を上げ、彼らはエリザの足元から逃げ散った。
無言で彼等を追いかけ始めるエリザ。
ワンピースタイプの制服から真っ白な足がはみ出し、
逃げ惑う蛮族たちを次々に踏み潰しながらそれは交互に動く。
低い地鳴りと蛮族の悲鳴と。
グランゼルたちは揺れる城塞の上に立ち尽くす。

「見つけたわよ!」
エリザの怒声が轟いた。
騎馬隊を大方踏み潰し、後続の歩兵隊の前に現れたエリザ。
村人を切り殺し、子ども達を生きたまま串刺しにし、
年老いた女たちの股間に丸太を打ち込んで道端に晒してきた
汚い蛮族。
黄色い衣装を纏ったこの蛮族たちを見つけたとき、
エリザの正気は消えてしまった。

ちりじりに逃げ出す蛮族たち。
しかし、巨大なエリザの歩幅からは逃げ出すことなど
無理なことであった。
森の中に逃げ込んだ彼等をエリザは一人一人つまみ上げ
ワンピースの制服についているポケットの中に
放り込んでいったのだ。
森の木々の中に身を隠したつもりの蛮族たち。
彼等は聳え立つエリザの白い脚が大木をまるで雑草のように
踏み倒し、隠れていた兵士ごと踏み潰してゆくのを
恐怖に駆られながら見守っていた。
この無慈悲な巨人の大きな瞳は彼等をたやすく見つけ出し
次々と摘み上げてゆく。
大木のような白い指が木々の枝を選り飛ばし、
彼等をつまみあげていった。

巨大なタワーのように聳え立つ巨人女のブーツが森の木々を
蹴散らし、踏み倒す。
巨人女の目は、蛮族たちを一人も見逃さなかった。

グランゼルとイーゼムは、一部始終を眺めていた。
とてもあの優しいエリザとは思えない。
髪を振り乱し、森の木々を踏み倒し、木の実を拾うかのごとく
蛮族兵士を捕まえるエリザ。

更に、この後の彼女の行為は二人を恐怖に凍りつかせていった。

蛮族の長槍を拾い集めていたエリザ。
森の中で黄色い服を着た歩兵をあらかた踏み潰し、将校格の蛮族を
ポケットの中に入れると、彼女は槍を取り出したのだ。

ポケットから蛮族を一人つまみ出した。
片足をつまみ上げ、エリザの顔の前に持ってゆく。
槍を蛮族の顔の前に突き出した。
小さな蛮族は泣き叫ぶ。
おそらく命乞いをしているのだろう。

「恐ろしいの?あなた達が村でやってきたことをやり返してあげるだけよ。」
冷静に話すエリザ。
月の光に照らし出されたエリザの形相にグランゼルは息をのんだ。
蛮族の尻に槍が突き立てられ、胴体を貫通し口から飛び出してきた。
エリザは次々に蛮族を串刺しにしてゆく。

「痛い?苦しい?村の人達も貴方達にこうして殺されていったのよ。」
ほぼ即死であろう蛮族たち。
槍に四人の歩兵が串刺しにされていた。
しかし、エリザは彼等を許すことはなかった。

「死んでしまってはダメ。貴方達は永遠に苦しんで・・・。」

この串刺しにされた兵士達に治療術を施すエリザ。
なんと残酷なことか!
四人の蛮族は息を吹き返してしまったのだ!

苦しげにばたばたと手足を動かす蛮族たち。
エリザは彼等を地面に放り投げてしまう。

そして、次々と蛮族の串刺しを作っていったのだ。
「ウフ。まるでお料理を作っているみたい。」
両手を真っ赤に血で染め、エリザは笑う。
その顔をグランゼルは一生忘れることはないだろう。

串刺しにされた蛮族は、四つん這いになりながら地面を
這って逃げようとする。

冷たい目で彼等を見下ろすエリザ。
「ムカデみたいね。」
四人が串刺しにされ、這ってエリザの足元を逃げようとした。
エリザはそっとブーツを彼等の真上に翳す。
そして、ゆっくりと彼等を踏み潰し始めた。
巨大な革底が蛮族の体を地面に押し付ける。
這ったままの蛮族たちは必死にその重量に贖おうとしたが
無駄なことであった。
メリメリ、ボキボキと、体が潰れる音が響く。
やがて、エリザのブーツは、血飛沫を靴底の両脇から噴出させながら地面に
彼等を埋め込んでいった。
その膨大な体重を一気に足にかけるエリザ。
地面にめり込んだ足を、そっと動かし深い足跡の底に
ぺちゃんこに張り付く蛮族の死体を見つめる。
無言のエリザ。
ふと、顔を蛮族の本隊に向けたそのときだった。

火薬の破裂音。
それも物凄い数だ。
更に、エリザの服がパッ燃え上がった。
馬に引かれた大型の火筒がエリザに向けて
一斉に砲弾を発射したのだ。

服についた火を冷静にはたくエリザ。
ワンピースの裾は燃え落ち、白い脚が露出する。
右の胸にあたった砲弾は、ワンピースの生地を引き裂き
エリザの大きな乳房をぶるんと、震わせながらむき出しにした。

「私は貴方達を一人も・・・許しません。」
乳房を片手で隠し、裂けたワンピースタイプの制服を
繋ぎとめながらエリザが言う。

蛮族のパニックは頂点に達した。
秘密兵器の連発鉄砲が、巨人女の服を破いただけで
何の効き目もなかったのだ。
地響きを上げ、馬車を蹴り飛ばすエリザ。
東方蛮族の新兵器は瞬時に粉々のスクラップになってしまったのであった。

ぼろぼろの服で肌をあらわにしながら、エリザは
蛮族を追まわし、ことごとく彼等を踏み潰す。
森の木々はエリザにメリメリと踏み倒され、次第に荒地となってゆく。
野原と畑は彼女の大きな足跡だらけになっていった。
その深い足跡のそこには、平たい肉の塊となった
蛮族兵士の死骸が張り付いている。
悲鳴をあげ、逃げ惑う兵士達を次々に掴み上げ、両手で握りつぶし、その
遺体を丸めて団子のようにしてゆく。
巨大な蛮族兵士達の肉団子をいくつも作り、
それをエリザは地面に投げ捨てていった。

城塞の上で呆然とエリザを見つめるイーゼムとグランゼル。
目の前で凶暴な女巨人と化したエリザに言葉もない。
「あれが・・・エリザか・・・。」
イーゼムがつぶやいた。

時間にすると、ほんの30分ほどであったか。
蛮族はことごとく踏み潰され、ひねり潰されていったのである。
月の光を浴び、エリザは荒地となった森の中にまだ隠れている
蛮族を探し回っている。
時折、腰をかがめ蛮族兵士をつまみあげる。
兵士の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
顔の前まで蛮族を持ってきて、鬼のような形相で
じわじわと兵士を握りつぶすエリザ。
兵士の悲鳴と、その肉体が潰れてゆく音が
荒地に響く。

一人残らず踏み潰したことを確認すると
城塞に向き直った。
ズシン、ズシンと地響きを立てグランゼルたちの前に
彼女はその巨大な体を現した。


エリザの着衣は、胸と腰を隠すだけのように彼女の体にまとわりついていた。
白いタワーのようにそびえる脚は、剥き出しの状態で月の光に照らされ
そのしっとりとした素肌を輝かせている。
恐ろしい形相をしていたエリザ。
その顔は、いつもの優しさに満ちた美しい治療師の顔に戻っていた。
城塞の上に立ち尽くす二人を見下ろし、エリザは微笑む。
イーゼムが叫んだ。

「本当にお前はエリザなのか?」

さっと笑みが顔から消え、悲しそうな表情になるエリザ。
「私が・・・恐ろしく見えるのですか?」
ぼろきれのようになった服からはみ出しそうになる巨大な乳房を
片手で押さえ込み、やはりずり落ちそうになる腰に巻きついているだけの
布地を引っ張りあげながら、エリザが言った。
「私は・・・、皆さんが思っているとおりの私なんです・・・。」
二人を見下ろし、腰をかがめるエリザ。
長い髪が、ばっさ、と、垂れ落ちる。
その髪が二人をたたいてしまった。
ウワッと、声を上げ城壁にたたきつけられるイーゼムとグランゼル。
「あ、ごめんなさい!」
エリザは髪をたくし上げ、二人をそっと掴みあげようとした。
胸を隠すボロ布がずり落ち、巨大な乳房がゆっさゆさと、揺れながら二人の前に
現れたのだった。

まだエリザは少女だと思っていたグランゼル。
彼は伸びてくるエリザの大きな手を、払いのける。
「いや、大丈夫だ!」
前かがみになり、二人を見下ろすエリザの巨大な乳房の谷間に目を
奪われてしまう。
エリザはそんな二人の表情を見逃さなかった。
「・・・・・・私の肌は・・・とっても熱いんです。
私の胸はこんなに・・・大きいのです。
殿方を一度に10人は抱いて見せます!」
顔を真っ赤にし、一気にそう言うエリザ。
彼女自身、そんな言葉が自分の口から出るとは思わなかったのだろう。

グランゼルとイーゼムはもっと驚いた。
凶暴な女巨人が、今はまるで初恋の人の前で始めて裸を見せる
少女のように顔を赤らめ、期待と不安の入り混じった目で
二人を見つめているのだ。
「エリザ、死んでいったものの無念は晴らした・・・。
もう、普段のお前に戻ってくれ・・・!」
グランゼルが叫ぶ。
ズズーン、と地響きを上げエリザが膝を地面につけた。
ぐらぐらと,城壁が揺れる。
「私は私・・・。もとの私も何もありません・・・。」
顔を更に二人に近づける。
目を瞑るエリザ。
グランゼルは自分の体とほぼ同じ大きさのエリザの唇を
抱きかかえる。
真っ赤な唇。
熱い息が彼の体にかかる。
そっとそれに口付けするグランゼル。
と、エリザは薄く目を開け、イーゼムを見下ろした。
「イーゼムさん・・・。」
小声でエリザはつぶやく。

イーゼムは、これがエリザだとは信じられなかった。
夜に巨人となり、蛮族とは言え数千人を踏み潰し、握りつぶして
殺した凶暴な巨人。
それが一転して、二人の前で見事な裸体をさらし
乙女のように愛を求めているのだ。
「お前はエリザじゃない!」
そう叫ぶや、イーゼムは城塞の階段を駆け下りていった。
はっとして顔を上げるエリザ。
突然顔を上げたエリザが起こした風圧で
グランゼルは、またしても尻餅をついた。
「イーゼム!」
エリザが叫んだ。
「エリザ!じっとしていろ!お前が今動けば・・・!」
グランゼルも同時に叫んだ。
彼を見下ろすエリザ。
イーゼムは城壁の昇降口から街の通路に走り出してきたところだ。
腕を伸ばし、エリザはイーゼムを摘み上げる。
「女に背を向けるのですか?」
手のひらの上にイーゼムを投げ出す。
「女に恥をかかせるのですね・・・?」
エリザは顔を近づける。

イーゼムは、赤い巨大な唇が目の前一杯に広がってゆくのを
なす術もなく見つめる。
手のひらの上に、横たわるイーゼム。
暖かなエリザの体温が全身に伝わる。
この手のひらの上で、数百の蛮族兵士が握りつぶされ
四肢をもぎ取られ殺されていったというのに
この優しい暖かさはなんなのだろう。
しっとりとした、エリザの指がイーゼムをゆっくりと包み込む。

軽くにぎられたこぶしから、上半身だけを出すイーゼム。
「エリザ、やめて・・・」
言いかけたイーゼムの上半身にエリザの巨大な唇が押し付けられた。
甘く熱いエリザの吐息。
暖かな湿った唇を全身に感じるイーゼム。
「愛して・・・くださいますか?」
顔を真っ赤にし、イーゼムを見つめるエリザ。
上半身を起こし、地面にぺったりとお尻を着いて座るエリザ。

一方、城壁の上で座り込んだままのグランゼルは、二人のやり取りを
唖然として見上げていた。
まるでおもちゃの人形のように騎士を掴み上げるエリザ。
イーゼムに口付けする彼女。
あのおとなしく、引っ込み思案な少女の面影はどこにもなかった。
大きく胸から盛り上がる巨大な乳房。エリザが動くたびにそれは
ゆらゆらと揺れる。細くくびれた腰は、良く発達した筋肉の上に
女性らしい脂肪でつつまれる。白いミルクの表面のごとくなだらかに
きめの細かい素肌。
丸く大きなお尻は、千切れかかった治療術師の制服が
ぼろきれのようにまとわり付、かろうじて秘密の部分を隠している。
城塞を一撃で蹴り壊せそうなほど巨大な脚はM字型に折り曲げられ
絶妙な曲線を作り、地面の上に聳え立っていた。

エリザは、イーゼムを摘み上げると、下半身をぱっくりと口に
咥えてしまった。
「お願いだ!喰わないでくれ!」
イーゼムが叫んだ。
クスっと笑い、エリザがイーゼムの上半身をつまみ上げた。
「もう。私は怪獣じゃありません!」
怒ったように笑いながらエリザがそういった。
イーゼムは唇に上半身を挟み込まれ、顔だけをそこから出していた。

分厚い胸板を、エリザの巨大な前歯が軽くかんでいる。
柔らかく、熱いエリザの口の中。
舌がイーゼムの全身を愛撫し始めた。
巨大軟体動物のようなエリザの舌は、あっという間にイーゼムの着衣を
剥ぎ取ってしまった。
ゴクリ、と、エリザがそれを飲み込んでしまう音と振動がイーゼムに伝わってくる。
恐怖が沸き起こったが、
優しく全身を愛撫するエリザの舌は、なんとも優しく感じられた。
無言になるイーゼム。

と、エリザはとろん、とした目つきで
城壁の上で腰を抜かすグランゼルを見下ろした。
二つの巨大な乳房を両手でそっと持ち上げ、パッと
両手を離す。
ぶるん、と空気を震わせ乳房が揺れた。

グランゼルは白い巨大な岩山のように聳え立つエリザを
見上げ、唖然としていた。
胸から突き出す巨大な乳房を凝視する。
丸く、納屋よりも大きな柔らかそうな乳房。
ピンク色の乳首は既に硬く隆起しているようだ。
そして、その二つの巨大な肉体の山が、ゆっくりと
グランゼルに向かって降下してきた。

目の前に迫る巨大な乳房。
グランゼルは両腕を翳し、それを支えようとした。
硬く隆起したピンク色の乳頭が、グランゼルにのしかかる。
物凄い重量だ。
「エリザやめろ!」
グランゼルが叫んだ。
ぴたり、と乳房は止まる。
グランゼルは城塞の石畳の上に寝そべり、乳房に押し潰される
寸前である。
顔を上に上げ、エリザの顔を見上げる。
長い髪が、カーテンのように垂れ下がりエリザは胸元のグランゼルを
見下ろしていた。
口にはイーゼムを咥えたままだ。
そっと上半身を上げるエリザ。
乳房がスーッと、上昇する。
グランゼルはあわてて逃げ出そうとしたが、
次の瞬間、彼の両側に肉体の白い壁が降ってきた。
エリザは、狙いを付け直し、乳房の間にグランゼルを
挟み込んでしまったのだ。
「うわー!」と、叫ぶグランゼル。
エリザは顔を下に向け長く垂れ下がる髪をそっと掻き揚げ
グランゼルを見つめる。
メリメリ、と、城塞の壁が崩れる音が聞こえた。
巨大な乳房は、城壁にのしかかると、ほんの少し
平たく形を変えた。
しかし、その膨大な重量は容易に城壁を崩してしまったのだ。
グランゼルは乳房の壁に挟まれ、肉の壁が彼を挟みこんで
来る圧力に必死で抵抗していたが、
城塞の上に乗っかるエリザの巨大な乳房が
その自重だけで城塞を押し潰し始めるのを見て驚愕した。
ガラガラと、城壁を壊し、巨大な乳房はグランゼルを挟み込んでいった。
凄まじい圧力で器を失いそうなグランゼル。
やがて、乳房に挟まれたまま、スーと、体が上昇して行く気がした。

エリザは乳房にグランゼルを挟み込むと、上半身を起こしたのだ。
左の腕で乳房を寄せ抱え、右手でイーゼムを
ちゅポッ、と、抜き出す。
無言のエリザ。

この美しい巨人女を止めることは誰にも出来ないのか。
理性を失い、欲望をさらけ出す美しい巨大治療術師。
今度はグランゼルが口に咥えられ、イーゼムが乳房に挟まれる。
熱い。
グランゼルは、まるで風呂の中に入っているような気がした。
唇がぱっくりと彼の体を挟み込み、軽く巨大な前歯で
上半身を固定さえているのだ。
巨大な舌が、彼の体を弄び、着衣を剥ぎ取る。
物凄い力で、エリザの舌はグランゼルの脚をこじ開け、
股間を愛撫しているのだ。
やがて、恐怖にもかかわらず、グランゼルの股間は隆起してしまった。
エリザは、その股間にいきり立つ突起物の小さな抵抗を楽しむように
舌を優しく動かしていた。

一方、熱いエリザの口の中から開放されたイーゼムは
巨大な乳房の谷間で揉みしごかれていた。
城壁を押し潰すほどの膨大な重量を持つ乳房は、しかし
エリザの両手で優しく制御されていた。
いとおしそうな目でイーゼムを見下ろすエリザ。
イーゼムはなす術もなく、柔らかな肉の谷間の中から
エリザを見上げていた。


やがて、グランゼルもエリザの口の中で果ててしまう。
ぐったりとするグランゼル。
歴戦の騎士も、この巨大な美しい治療術師の
凄まじい欲望には勝てなかった。
「私は・・・おとなしい、いい子なんかじゃないんですから・・・。」
手のひらの上に並べられた二人を見下ろし、エリザがそういった。

膝立ちをするエリザ。
ズシン、と、膝を動かし、股を開く・・・。
「まさか!やめろエリザ!」
グランゼルが叫んだが、
二人を乗せた手のひらは、加速を付けてエリザの秘密の部分に
進んでゆく。
凄い速度で宙を跳ぶ二人。
魔法のじゅうたんの上に載ったような気分だ。
しかし、その行き着いた先は・・・。
標準サイズの数十倍の大きさの女性の秘密の部分。
じっとりと濡れているのが見て取れた。
「今度は私を愛してください・・・。」
エリザが二人を見下ろし静かに言う。
二人は、巨大な洞窟の中に押し込まれてしまった。
地響きを立て、エリザは体を寝そべらす。
背中で城塞を押し壊し、長く伸ばした足は街の中の建物を一気に
つき壊してしまった。
あふれ出るエリザの蜜の中で、グランゼルとイーゼムはもがき続ける。
満足するまで、エリザは二人を取り出す気がないようなのだ。

30分も二人は洞窟の中で暴れ続けた。
エリザのあえぎ声が、彼女の体を伝わって聞こえてくる。
吹き出す蜜の水位が一気に増してゆき、洞窟の外に流れ出す。
巨大な指が、洞窟の出口に現れ、二人を押し付け、撫で回す。
やがて、エリザの絶叫が聞こえた。
流れ出す蜜の水流に乗り、二人は洞窟から地上に滑り落ちていった。

呆れたことに、城塞都市は半壊していた。
エリザが寝そべり、感じるたびに身悶えしたので、
その巨大な体で多くの建物を押し潰していたのだ。
巨人の力をまざまざと見せ付けられる二人。
女の子が性欲を満たそうとしただけでこの有様なのだ。
焦点の定まらぬ目をして横たわるエリザ。
その背中は都市の庁舎をペシャンコに押し潰してしまい、巨大な乳房は
そこから逃げ出そうとしていた役人とその家族を下敷きにしていた。
折り曲げられている太ももは商店が並ぶ目抜き通りに聳え立ち
その足首が城壁を押し倒している。

グランゼルとイーゼムは、裸のまま、瓦礫の中を逃げ出した。
巨人のおもちゃはもう沢山だ。
エリザが恍惚としているうちに、城塞を抜け出し、彼女に踏み荒らされ
荒地となった森の跡に逃げ込む。


やがて目を覚ましたエリザが、二人の名前を叫びながら、
その巨大な体で半壊した城塞都市を探し回るのを
恐怖に引き攣りながら見つめる。
家の一軒一軒を、屋根をむしりとり、壁を指で突き壊して
探して廻っているエリザ。
「私、踏み潰しちゃったのかしら・・・。」
泣き声交じりで、地響きを立て探し回るエリザ。
逃げ惑う住人達をつまみ上げ、二人でないと判ると
そっと地面に下ろす。

やがて、城塞都市は完全に瓦礫の山となった。
二人は不思議な光景を目撃する。

巨大なエリザの姿が徐々に薄くなってきたのだ。
夜の闇の中に解けるように消えてゆくエリザ。
「グランゼル様!イーゼムさん!」
エリザの叫び声が響くのと、彼女の姿が
完全に消えていったのはほぼ同時だった。



空が明るくなる。
鳥の囀りが、うるさいぐらいだ。
グランゼルは目を覚まし、あたりを見回す。
適当に拾ったぼろきれを身に纏った二人は
エリザが踏み荒らした森の中で眠り込んでいたのだ。
昨夜の出来事が夢ではないことがすぐにわかる。
蛮族の死体はあちこちに散らばる。
折り飛ばされた生木の臭い。
掘り返された土のにおい。
肉団子のように丸めて潰された蛮族兵士の血の臭い。
瓦礫となった城塞都市。

二人はトボトボと歩き出す。

と、騎馬の足音が聞こえてきた。
グランゼルは森の樹の間から、連合軍旗を翳す
竜騎兵の姿を認めた。
王侯諸国連合の応援部隊が到着したのだ。
「イーゼム!反撃だ!皇帝陛下の反撃が始まったぞ!」
二人は踊りあがって喜んだ。
裸足でボロを纏ったまま、騎兵に向かって走っていく。

騎兵の先遣隊と合流し、グランゼルは名乗りを上げ
騎兵隊の指揮官と面会を求めた。

「いったい何が起こったのです?」
ウランカと呼ばれる絹のダブル短ジャケットを着込んだ
若い騎兵指揮官はグランゼルに聞いた。
金色の親衛隊ゴグレットを首に巻いている。
襟には骸骨の紋章が飾られていた。

女の蜜の匂いを全身から挙げる二人をいぶかしがる指揮官。
彼は、さらさらとした金髪を右手で掻き揚げる。

「蛮族が、一晩のうちに引き上げていったのです。
それと、ここは奇妙な蛮族の死体だらけだ・・・。」
槍で串刺しにされた蛮族の死体を指差す指揮官。
「まるで巨人が大暴れしたようだが。」
破壊しつくされた城塞都市を見やる。

「その通りですよ・・・。」
イーゼムが言った。
「欲望と復讐の女神が現れたのです・・・。」
グランゼルが続けた。

何か狂人でも見る目の指揮官。
「治療術師を保護しています。腕が良いですよ。
お二人には必要でしょう・・・。」

二人は後方の陣地に送られていった。

まぶしい陽の光の中、幕営の中で治療術師たちが
忙しく動き回っていた。
その中に、二人はエリザを見つける。

驚きで固まるエリザ。
「生きていらっしゃったんですね!」
二人に駆け寄る。
「もう、戦死されたとばかり・・・。」
泣き声になるエリザ。

イーゼムは喜びはしたが、夕べの体験が頭から離れない。
そんなイーゼムを見てグランゼルが言う。
「陽の光の中のエリザは元のエリザだ。闇のエリザではない。
誰にでも心の中に闇はあるものだ・・・。」

イーゼムが、恥ずかしそうに笑った。

そんな二人を交互に見上げ、いぶかしがりながらも
喜びのあまり流した涙をエリザはぬぐっていた。

イーゼムはそっとエリザを抱きしめる。
「光の中のエリザはやはり良いな!」
エリザは顔を真っ赤にし、驚いてイーゼムの胸板を
押し返した。
「なっ何するんですか・・・!私、仕事がありますから!」
小走りで幕営に向かうエリザ。

「ふふ。本物のエリザだ。」
イーゼムがつぶやいた。
グランゼルも、そんなエリザを目でおい、一人微笑む。

「さあ、蛮族の追撃だ。故郷に帰って再編成をするぞ!」
グランゼルはそう叫んだ。
二人は進む騎兵の隊列と逆方向、故郷に向かって
歩き出したのであった。
                                  
                                  
                                     完




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