誘 拐 (14)


                        みどうれい

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 私はを見ていた・・・。

 それにしても、夢の世界で、自分が「夢を見ている」と自覚できるとは奇妙な話だ・・・。

 その夢は、ものすごくリアルだった。
まるで・・・、自分が過去に体験したことを、もう一度思い出しているようだった。


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 私は彼の上にゆっくりと足を降ろした。
投石器を造ったおじさんは、恐怖の悲鳴を上げた。

 その時、私の口の中に甘い蜜が沸いてきた・・・。

 あれ? 何だろう、これ・・・、 気持ちいい・・・。 
私の身体は、快感にぞくぞくした。


 私はその意味を考えてみた。

 私はよく草原の民の村を襲った。
逞しい男達を捕まえて玩具にするためだ。

 

 村には、たいがい野獣よけの木の柵があったけど、
せいぜい私の足首までの高さなので、そんなものは、私にはないも同様だった。

 彼らは、木で造られた小さな家に住んでいる。
森の木を切って、皆で一生懸命、作ったのだろう。

 しかし、強靭な肉体を持つ私にとっては、こんな家など、オモチャも同然だ。
その気になれば、指一本で、彼らの家を潰してしまえる。

 でもそんなことをしちゃ可哀想だから、たいがい屋根をめくって、
いいオトコがいないか覗き込むだけで、勘弁してあげる。

 私が屋根に触っただけで、家がひしゃげてしまうことも、たまにはある。
でも、それは大目にみてもらわないといけない。 私は強すぎるんだから。
そんな軟弱な家を造ったのが悪いのよ、きっと。

 村には、私に対抗できる戦士はいない。
彼らは、どんな方法を使っても、私には抵抗できない。
私は、誰に気兼ねすることもなく、自由に遊ぶことができる。

 でも、私の心は(ほんのちょっぴりだけ)痛むこともある。

 草原の民は、過酷な自然の中で、大地を耕し麦を植え、生活をしている。
彼らは畑を捨てたら、生きていけない。
山は自然の恵みが豊かだけど、血に飢えた野獣たちがいるから、
そこでは暮せない。 しかし、村を柵で囲めば獣も入ってこれない。

 彼らは、草原で暮すしかないの。
彼らは、そこで皆で力をあわせて、一生懸命生きている・・・。

 いくら私が大きくて強いからといって、
そういう真面目に働いている小人さん達を、玩具にしてもいいのかしら?

 心の優しい私は、いつもそう考えるの。
まぁ、そう思っても、結局、私は村を襲撃するから、結果は同じなんだけど・・・、
それでも、私は「こんなことしちゃ、彼らにわるいなー」と考えたりする。


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 しかし、今は状況が違う。
地面に転がっているおじさんは、寝ている私に石をぶつけた悪い小人さんだ。
彼になら、私は何をしてもいいような気がする。

 もう一つ、私が彼に興味を引かれたことがある。
このおじさんは、この世界の住人としては、とても知恵があるらしいということだ。

 私に闘いを挑んだ戦士達は、大勢いたけど、
彼らのほぼ全員が、あまり頭がいいとは思えなかった。
 巨大な私に槍で抵抗しても無駄だと、ちょっと考えたら、分かりそうなものだ。
戦士さん達が勇敢なのは分かったけど、あまりに無謀すぎるわ。
彼らは、どうしたら、私に勝てるかと考えるべきだったと思う。

 しかし、このおじさんは、自分なりに考えて投石器を造り、私と闘おうとした。
まぁ、結局、私には通用しなかったけど、努力するのはいいことだと思うの。

 私はとても知性的な女の子だから、頭のいい男は好きだ。
だから、彼とは念入りに遊んであげないといけないわ。

 


この私に戦いを


が踏みつけているのは







縛り上げられて


 でも、残念なことに、中年のおじさんだった。
どうせ生贄をくれるなら、私が玩具にできる若く逞しい男の方がいいのに。


 最初、私はおじさんを逃してあげようかと思った。
みんな投石器を造るのに賛成したくせに、私に負けたからといって、
彼一人だけが責任をとらされるなんて、彼はとっても可哀想・・・。

 だけど、彼の悲鳴を聞いているうちに考えが変わった。
彼の悲鳴は、私の中にある「本能」を呼び覚ました。


 私は身動きできないおじさんの上に、大きな足を上げた。

「この私に石をぶつけた悪いあなたは、踏み潰してあげる。」
 私は、無慈悲にも彼にそう言った。

 縛り上げられた男は転がって、私の足から逃れようとしたが、
もちろん、私がそんなことを許す筈はなかった。

 私が彼の上にゆっくりと足を降ろした時、彼の悲鳴はより大きくなった。

 私はくすくすと笑った。





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