誘 拐 U (5)
みどうれい
----------------------------------
俺は悲鳴を上げ、絨毯の床を転がるように走った。
背後で巨大な足が持ち上がる気配がする。 それも、ゆっくりとだ。
おそらく彼女は俺を追いかけるのを、楽しむつもりなのだろう。
だがそれが分かったところで、俺には逃げる以外どうしようもなかった。
壁の端が目の前に来た。 行き止まりだ。
ずっと向こうに巨大なドアが見えるが、俺にそれを開けることはできない。
すぐに彼女の足が振り降ろさせるだろう。 俺は目を閉じた。
「あれ・・・?」 何故か、彼女は追いかけて来なかった。
俺は、おそるおそる振り返って、彼女を見た。
彼女はベッドに座って、彼女のパンティーをはこうとしていた。
何をやっているのだ・・・? 俺はいぶかしげに首をかしげた。
彼女はふと俺の方をみた。 壁を背にしている俺と目線があう。
はるか上に見える彼女の顔には、恥じらいの表情があった。
彼女の声が響く。
「ふふ、小人さん、追いかけっこをする前に、あなたにハンデをあげるわ。
彼女がこのパンティーをはいている間、あなたを追いかけないであげる。
あなたは、その間に遠くに逃げられるかもしれないわよ。」
俺は呆れかえった。
俺は、もうすでに壁際に追いつめられているのだ。
したがって、今さら、いくら時間をもらったとしても、何処にも逃げられはしない。
彼女の言っていることは明らかに支離滅裂な会話だった。
彼女も自分が変なことを言ったと後悔したのだろう。 ばつの悪そうな顔をする。
彼女は、自分の裸の身体を見られたくないらしい。
しかし・・・、自分から服を脱いでおいて、今さら何を恥ずかしがる必要があるのか?
そうこうしている間に、彼女はパンティーを身につけた。
巨大な彼女は再び立ち上がった。
恐ろしいまでの巨体だ。
俺の頭上にそびえる彼女は、俺を見つめて微笑んでいた。
俺は意を決して、彼女の方に歩き出した。
俺を元の大きさに戻せるのは、彼女だけだろう。
裸を恥ずかしがるのなら、彼女は、少なくとも俺を男だと意識している。
とにかく、彼女と話をして、元の大きさに戻してもらうように頼むしかない。
「なぁー、もうやめてくれ。 どうか・・・話をさせてくれ!」
もっと気のきいたセリフはないのかと思いながら、俺は彼女を見上げて叫んだ。
この時俺は、彼女の巨大な足のすぐ横を見て驚いた。
携帯電話ああーー!! 俺は心の中で叫んだ。
彼女に引裂かれたズボンが、ずたずたになって床の上に落ちていた。
そのポケットから、携帯電話がのぞいていた。
やはり、彼女が俺を小さくした時、俺の持っていた携帯もいっしょに小さくなったらしい。
さっき、俺はいきなり小人にされて胸の谷間に押し込まれ、放心状態になって、
何もできないうちに、部屋に連れ込まれ、携帯ごとズボンを剥ぎ取られた。
あの時、携帯は小さすぎたので、彼女は気がつかなかったようだ。
魔法で小さくされた俺が生きている以上、小さくなった携帯も使用できる可能性が高い。
その瞬間、俺の頭の中で色んな思惑が飛びかった。
常識で考えるなら、彼女が何もせずに、俺を元の大きさにするなど考えられない。
彼女は俺の言うことなど無視するだろう。
そして、俺の力ではどこにも逃げることはできない。
ならば、俺は彼女の隙をみて携帯を使い、外部の誰かに救援を求めるしかない。
必死で走り、携帯を握り、ベッドの下に駆け込むか?
いや・・・、すぐ彼女に捕まるだろう。
それに時間があったところで、何処に連絡するのだ、 警察か?
俺は彼女に捕まって、すぐブラウスの中に放り込まれたので、ここが何処だか分からない。
だが、携帯の位置情報履歴を見れば、ある程度の場所を連絡できるかもしれない。
しかし・・・、俺の言うことを、警察が信じてくれるだろうか。
電話で、警察にこう言うのか?
「駅前で人待ちをしていたら、見知らぬ女が前に来て、身長15センチの小人にされ、
無理やり胸の谷間に押し込まれ、「静かにしないと乳房で揉み潰す」と脅迫されて、
知らない部屋に連れ込まれ、容赦なく服を引き裂かれ、握り締められ、
巨大なおっぱいに押しつけられ、床の上に降ろされました。
速く助けに来てください。 さもないと大きな足に踏み潰されてしまいます!!」
そう言ったら、「ふざけるな!!」と怒鳴られるか、電話を切られるだけだろう。
どうする!? 俺は焦った。
「誘拐された!!」とだけ叫んだら、警察は驚いて、話を聞いてくれるだろうが、
それでも、身長15cmの男を本気で探すとは思えない。
この時、俺は熱い視線を頭上に感じた。 ふと見上げると、彼女が俺を見ていた。
「し、しまったああ!!」 俺は心の中で悲鳴を上げた。
俺は愚かにも、彼女の見ている前で、床の上の携帯をじっと見ていたのだ。
なんという大失敗だ。 いったい、俺は何をやっているのか・・・。
すでに彼女は、俺の目線を追って、床の上の携帯に視線をやっていた。
彼女は俺が外部に連絡しようと考えていたことを察したに違いない。
彼女はくすくす笑っていた。
俺は瞬時に理解した。 彼女が、俺をそのままにしておく筈がないことを・・・。
そびえ立つ彼女の長い脚が持ち上がり、巨大な足が迫ってきた。
新幹線の車両が、空を飛んできたようなものだ。
逃げようという気が起こらないほど、彼女の足は速かった。
俺は、俺の身体が、彼女の足に蹴飛ばされて砕け散ると確信した。
しかし、彼女の足は、俺のほんの少し前で静止した。
ほっとするヒマもなく、足は再び動き出し、俺は足指の先で蹴倒された。
「☆うどおるりゃー★!」
俺は言葉にならない悲鳴を上げた。
相撲取り50人にぶちかましをくらったようなものだった。俺はあっけなくぶっ飛ばされた。
#@ばっ””}@☆★#=☆ぐどddど& #$θ!℃☆★#=☆星ーs!
目から火が出ていた。 頭の上に星が飛ぶ。
彼女は俺を傷つけないように、手加減してくれたのかもしれないが、
小さな俺は、淡いグレーの絨毯の上をひとたまりもなく転がった。
あまりのパワーに、受身をすることさえできない。
床に叩きつけられた俺は、軽い脳震盪を起こして、そこにぶっ倒れた。
しかし、彼女は俺が起き上がるのを待ってくれるほど親切ではなかった。
仰向けに転がった俺の体の上に、巨大な足が迫る。
彼女の足は、キングサイズのベッドのように大きかった。
俺の小さな身体は、彼女の足に踏みつけられた。
彼女はすぐにも俺を踏み潰すかもしれない。
俺は死を予感した。
「やめろーー!!」 俺の必死に叫んだ。
もちろん彼女は俺の叫びなど、全く気にしない。
俺は必死になって、彼女の足を押し上げようとしたが、無駄だった。
俺を床に押し付けた肉の天井は、ぴくりとも動かなかった。
1700倍の体重を持つ女の足を、どうやったら持ち上げることができるのか?
俺の非力な抵抗は、彼女にはくすぐったいだけなのだろう。
ずううん!! その時、床が振動した。
彼女は、床の上に座り込んだようだ。
彼女の尻が降ろされた衝撃で、俺は改めて彼女の重さを恐怖した。
だが、その瞬間、彼女の足の裏と俺の間に、わずかな隙間ができた。
俺はもがいて、そこから這い出そうとした。
俺の上の足にぎゅっと力がこもる。 俺は悲鳴を上げる。
彼女はくすくすと笑っていた。
今、彼女は体重のほとんどを、ヒップにかけている。
俺の上には、軽く足を置いているだけだ。 それなのに、俺は動くこともできない。
ピンク色の足の裏以外は、何も見えない。
彼女の足の裏の肌を感じる。 それはとても暖かかった。
俺は本当に彼女の玩具だった。
彼女は俺をどうしてしまうことだってできる。 俺は彼女の足の力の前に全く無力だった。
「ねぇ、女の子の大きな足に踏みつけられるのって、どんな気分?
あなたは今、全身で私の足の裏を感じているのね。
それって、誰も想像したことのない素晴らしい体験だと思わないかしら。」
巨人女の勝手な声が響く。 だが、俺はどうすることもできない。
悲鳴を上げる俺を無視して、彼女は無慈悲な言葉を続ける。
彼女には、俺の言うことを聞く必要など全く無かった。
「私は今からあなたを踏み潰してあげようと考えているの。
あなたは、自分の力で私を止めることができると思うかしら?」
俺は恐怖のため、意識が遠くなっていくのを感じた。