(注)この物語は、成人を対象にして書かれており、未成年を対象にしていません。
もし、あなたが18歳未満ならば、この作品を読まないでください。


夢の中へ:終編

                     作 だんごろう


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気が付くと、戦闘機の攻撃が止んでいた。
辺りには、飛んでいるものがいない。
武器も尽き、守るべき群集がいなくなってしまい、ひとまず、基地に帰ったみたいだった。
その内、体制を立て直してから来るのだろうが、今は一機も飛んでいない。

身体を横向きに伏したまま、辺りを見渡す。
ここら一帯にあったビル街は消滅し、細かい瓦礫に覆われた灰色の平原に変り果て、所々に小さな火がチロチロと見える。

ブーツや素足で付けた沢山の足跡が重なっている平原を、目を細めて見ていく。破壊尽くし、何も残っていない場所。その足跡の中に点々と逃げている人が見える。
散々、踏み荒らした所に、まだ、生きている人がいることに驚く。

手が届くところにいる、その内の一つに向けて、黒いマニキュアをした人差し指を伸ばし、爪を地面に立て、その行く手を塞いでみる。
直前に黒い大きな壁ができ、驚いた小さな者は、慌てて、それから逃げようとして方向を変える。
そのまま、爪で追いたてようとしたが、瓦礫を乗り越えながら逃げる、その動きがあまりにも遅く、ゲームにもならなかった。

顔を近づけて、小さな者の動きを良く見ると、黒い爪から逃げようとして、爪の横の小さな瓦礫を必死に登っていた。
その慌て振りが可笑しく、思わず、口元に笑みが浮かんでしまう。
指を上げて、その瓦礫の上に爪を近づける。必死に逃げている小さな者は、指の影に入ったところで、頭上に迫るものに気付いたらしく、慌てて、瓦礫にできていた亀裂に入り込んだ。

「ウッフフ、そんなところに逃げ込んでも・・・無駄じゃないかしら」
小さなものに取っては、とても大きな瓦礫。その中に逃げ込めば大丈夫だと思えても仕方がない。
それが逃げ込んだ、精々2、3センチしかない瓦礫を、潰さないようにそっと指で摘む。
「ほらね、簡単に捕まえられちゃったでしょ」
瓦礫の亀裂を覗き込むと、その奥に身体を埋め込むようにしている。その怯える仕草が笑いを誘う。

“どうしようかしら”と思いながら、その瓦礫を手の平に乗せ、コロコロと転がし、周囲を見渡す。
5,60センチ離れたところに、ブーツの足跡でできた壁を登っている別の者がいた。
“ちょうど良いわ。あなたは的ね”
それを的にして、手の平に乗せている瓦礫を爪で弾くことした。

手の平の欠片に、優しく話しかける。
「ねぇ、怖くて出られないのかしら?・・・良いわよ。そのまま逃がしてあげる」
でも、脆い瓦礫が、弾く衝撃に持ちこたえるとは思えなかった。加減してそっと弾けば、的まで飛びそうもない。
瓦礫の横に爪を立て、“強く弾かないとゲームにならないわね”と、的に向けて勢い良く弾く。
瞬間、瓦礫は木っ端微塵になり、辺りに弾け飛んだ。
“やっぱり”と思いながら、瓦礫がふき飛んだ辺りに声をかける。
「ウッフ、ごめんなさいねぇ。強すぎたわね」

的にしていた方は、ブーツの足跡を登りきった所で、疲れたらしく動きが止まっていた。
それに向かって、「よかったわね。助かって」と声をかけてあげる。


寝転んだまま、逆側を振り返る。
お尻のすぐ後ろに、黒っぽく染みている地面がある。
そこは、快感を求めて、沢山の人々を陰部ですり潰した場所。
粉々になった瓦礫と混ざり合って、そこにあるはずの沢山の小さな骸は、見た目には分からない。そうかと言って、その小さな身体を、態々、捜す気にもならない。

染みている地面から、“恥ずかしい染み”と言う言葉が浮かび、クスッと笑ってしまう。


立ち上がって、大きく伸びをする。
パンティを拾うために身を屈めると、染みている地面から、一塊になって逃げている人々が見えた。百人以上はいるだろうか、運良く、陰部で押し潰されなかった人々だった。
折角、助かった人々、逃がしてあげたい気持ちもあった。でも、彼らには、有られもない自分の姿を間近に見せてしまった。
その塊りが動く先に、素足を着け、彼らに話しかける。
「ごめんね。逃がしてはあげられないの」
話しかけられ、驚き、散って逃げ始める人々。でも、瓦礫の平原、早くは動けない。
その上に素足を上げ、ゆっくりと踏み下ろした。

まだ、股間に疼くような感じが残っている。
拾ったパンティをそこにあて、拭うと、身体がビクッと反応する。

パンティの生地を見ると、今、拭った部分が赤茶色に汚れている。
群集を陰部で地面に押し付けた痕跡だった。

汚れが付いたパンティをまた穿く気にはなれない。
この場所に捨てることにしたが、先ほどの“恥ずかしい染み”にパンティを被せたくなった。

染みている地面を跨ぐようにしゃがむ。
この場所にいた万を越える群集は、自分が快感を求めた結果、今では、染みの中で瓦礫に混ざり合っている。
それを思いながら、捨てることにしたパンティで、股間の汚れを丹念に拭っていく。
その刺激で、あそこがジュッと、また潤ってしまうような感じがした。

股間の下を覗き込み、その染みに微笑み、話しかける。
「ウッフフ、とても気持ち良かったわ。ありがとね」
そして、染みの上に、墓標代わりにパンティを被せてあげる。


立ち上がってジーパンを拾うために腰を屈めた時に、尿意を感じた。
無理をすればがまんできそうだったが、その不快感がやはり気になる。
その気持ちを持ったまま、辺りを見渡す。
少し離れたところから、無傷のビル街が広がっている。

ここに来てから何回も見ているビル街。でも、立った位置から眺める街は、やはり不思議な感じがある。
小さなおもちゃ程度でしかないビルの広がりが、自分が住む都会のイメージと重なってくる。
高い山の上に登り、そこから青空に下に広がる都会を眺めている、そんな気分になる。

その中に沢山の人々がいて、仕事や生活をしている。
裕福な人、貧乏な人、無気力に生きている人、必死に生きている人、全ての人々が、ビルが続く都会の中で生きている。

“そう、人々が住んでいる街なのよね”
見下ろす、とても小さな街が愛おしいものに感じてくる。

瞬間、足裏で、クシャっと大き目の瓦礫が崩れる感触がし、その思いが中断された。
その感触、足裏で脆いものを潰した感触で、先ほど思ったことが頭に浮かんでくる。
“・・・そこを裸足で歩いてみたい”

とりあえず、ジーパンを拾うのをやめて、そのビル街の傍らに立ってみる。
手を腰にあて、ちょっと腰を屈めて、小さなビルが続いている街を見下ろす。
10階建て前後の踝までしかないビルが続き、所々に脛の中程までくる高いビルがある。

片足をビル街に持ち上げる。十数棟の小さなビルと、点々と放置された車がある通りが、足の下に隠れる。
その足をそっと下ろしていく。

足の裏にビルが接触した感触がする。素足でも大丈夫だと思うけど、足裏に何かが刺さるような気もして、慎重になる。
でも、ビルは足裏をくすぐる様な抵抗しか示せず、次々と崩れ始める。一旦、崩壊が始まったビルは、その自重によって崩壊が加速され、下ろす足が受ける抵抗はほとんどなくなってしまう。
ビル街にゆっくりと下ろす足が、物足りないぐらいの抵抗しか受けず、次の瞬間には粉々になった瓦礫を踏みしめていた。

でも、降ろし終わった足裏の感触が心地よい。踏みしめた瓦礫は、潰れきり、砂浜の砂よりも、ソフトに足裏に感じる。
その感触に安心し、そのまま、ビル街に踏み入っていく。
ブーツで勢い良くビルの破壊を楽しんで歩くのと違って、やはり、素足だと、ゆっくりと足を降ろすことになる。でも、その分、“小さなビルの脆さとそれを自分が踏み潰している”という気分がより感じられる。

ビル街にだいぶ踏み入ったところで、ちょっと広めの通りがあった。通りの幅は約6センチで、片側2車線。その両側に、2,3センチ角で高さ7センチ前後のビルが密集している。
“ここまでくれば・・・、人がいるのかしら”
膝を着いて、通りに顔を近づけ、ハッとする。思った以上に小さな人々が沢山いる。
通りは、乗り捨てられた車を縫うように、避難している人々でごった返している。さらに、見下ろすビルの窓を通して、その中にも沢山の人影が見える。
“すごい人数”

やはり、3,4ミリの大きさしかない人々を見ると、同じ人間とは思えなくなる。自分の気分のままに扱う“おもちゃ”にしたくなってくる。
そして、あたり一面に散在する“おもちゃ”のあまりの多さに、自然に口元に笑みが浮かでしまう。

そのおもちゃ達に声を掛けるようとしたが、これから言うことで彼らが慌てることを思うと笑いがこみ上げ、話せなくなりそうだった。ちょっと、一呼吸置いて、気持ちを静めてから言葉をかけた。

「ねぇ、ここを・・・トイレにしても良いかしら」
言葉が終わると、案の定、おもちゃ達の動きが激しくなる。
“だめ、可笑しすぎる・・”
その慌て振りが余計に笑いを誘い、堪えきれず、声を上げて笑ってしまった。

小さな人々の動きは慌しい。幅広の通りから、ちょこまかと、そこと交差している道路にも逃げ出している。
「逃げないでね、ここでいて欲しいの」
声をかけてみたが、やはり聞いてもらえない。
できるだけ沢山の人を巻き添えにしたくなる。彼らを逃がすつもりはない。

通りの上に手を伸ばし、人々が逃げ出している道路を、順にその横に立つビルを崩して塞いでいく。
できるだけ逃がしたくないので、手際良く進めていたが、一本の交差点で、その横が公園になっていて、倒して道路を塞ぐビルがなかった。
そこは、足元にあるビルを拾って、それで塞ぐことにして、足元のビル街に手を降ろす。
適当なビルを選んで、その上で手の平を広げ、隣のビルを指で弾きながら、その側面沿いに指先を降ろし、そのまま、ビルの根元に爪を食い込ませると、小さなビルは、掌の中にすっぽりと収まった。

このビルは、崩して、道路を塞ぐ役目。でも、この中にも人がいるのか気になってくる。
ビルを傾けないように顔の近くに持ち上げて、窓から中を覗きこむと、各フロアーにかなりの人数がいるのが見える。
でも、ビルの中に人がいても、このビルの運命は変わらない。
もうすぐ、この人達は瓦礫の中に紛れていく人々。

“ここで、溺れていくのとどちらが良いのかしら”
手の中にビルに話しかける。
「ウフ、私のものを飲みたかった?」
そう話しながら、“何か、懐かしい台詞よね”と、SMクラブの女王様だった頃のことを思い出し始めた。


「聖水をください」とせがむ客を、タイルの上に仰向けに寝かせて、彼らが欲しがるものを与えていた。それが頭に浮かんでくる。
股間の下で、期待でいっぱいの客を見下ろし、その顔を挟むように立ち、大きく開かせた口を目掛けていた。その時の自分のポーズを思い出す。

“そうよ、立ってしていたんだわ。そうしてあげると、喜んで大きく口を開けていたのよね”

掌の中にすっぽり収まっている小さなビルに話しかける。
「そうなのよ。女だって、立ってできるの。知っていたかしら?」

窓越しに見える小さな人々、彼らのチョコチョコとした動きが可愛い。
「フフッフ、でも、急に言われても何のことか分からないでしょね。良いわ、ちゃんと教えてあげる」
少し崩れ始めたビルを股間の下に持っていき、ビルの中の彼らに“そこ”を間近で見せてあげる。


“本当に、あの時の客の顔って、情けなかったわよねぇ”
立った位置から見下ろす、大口を開けて待っていた、その顔が頭に浮かんでくる。
その口をさらに大きく開けさせ、口の奥を直接狙って勢い良く放出すると、落差の勢いも付けた“聖水”は、喉をこじ開けて気管に入り込んでいく。
客は、飛沫の中で咳き込み始め、苦しいらしく“聖水”から顔をそむけようとする。

「ほら、口をもっとしっかり開けないと、零れちゃうでしょ」
“聖水”の飛沫の中で苦しげに咳き込む客は、その言葉に必死に従おうとして、咳きを無理に抑え、顔を歪めて口を開け、ゴボゴボと音を立てて飲み込んでいく。

その時の客の情けない顔を頭に浮かべながら、股間の下で、掌で包んでいるビルに声をかける。
「ここから出す時にね、立ってしていたのよ」
あまりにもバカバカしいことを話しているので、声を上げて笑ってしまう。
その収まらない笑いを続けながら、掌のビルを握って瓦礫に変え、それを、人々が逃げている道路の上に落とした。
でも、笑った弾みで狙いがずれ、瓦礫は道路横の公園に広がってしまった。もう一回、足元のビルを拾い、今度は中を見ることもなく、軽く握って瓦礫にし、先ほどの道路に落として、そこを塞いだ。

この通りに交差する道路は全て塞いだ。
もう、ここから逃げることは、簡単ではなくなっているはず。
通り沿いに、人々の動きを見て、そうなっているか確認していく。

通りを見下ろしていくと、通りに面するビルのエントランス付近では、中に逃げ込む者と、外の通りに出てくる者でごった返している。でも、そのビルも、濁流に飲み込まれる運命。中に逃げ込んでも同じ気がする。

通り自体はまだ塞いでいない。
通り全体には、そこから逃げることができない群衆が、通りを波のように移動している。
後は、この人々の流れを止めるだけ。

身体を乗り出し、その流れの先に手を伸ばし、通りに面するビルを崩して塞ぐ。でも、崩した向こう側にも、人々が沢山いる。逃げていく彼らが、もったいない気がするが、塞いだこちら側にもかなりの人数がいるので、態々追いかけて集める気持ちにはならなかった。


時々、客を数センチの大きさに縮めたら面白いだろうなぁと、思っていた。
両足の間で寝転び、聖水をせがむ客の目を閉じさせて、その身体を数センチに縮めてしまう。
中腰の股間の下には、何も知らずに数センチのコビトになった客が、情けない顔で口を開けて“聖水”を待っている。
思わず笑ってしまいそうな光景。

「ねぇ、そんな小さな口じゃ、こぼしちゃうでしょ。もっと大きく口を開けて」
コビトは、目をつぶったまま、小さな口を精一杯大きく開ける。
でも、それでも小さな口に変わりはない。数ミリしかない口に、こぼさずに飲み込ませるのは絶対に無理。それどころか、その小さな身体を“聖水”で瞬時に潰してしまう。
“そうよ、いきなり潰しちゃうのはだめ”
やはり、コビトと遊んであげたい。まずは、その身体の横のタイルを狙って、勢い良く放出する。水流は、コビトの傍で水しぶきを上げる。

目を閉じ、口に入る暖かい”聖水“を待っているコビトに、身体を揺るがす衝撃と、次の瞬間に身体を横に弾き飛ばす濁流が襲う。
コビトは、タイルの上を急流に押し流されながら、慌てて目を開ける。でも、しぶきが飛ぶ中では周りを良く見えない。
コビトは自分の身に起きていることが分からないまま、命の危険を感じ取り、タイルを流れる濁流の中で縺れる足で立ち上がり、駆け出し始める。
それを、「あら、飲まないのかしら」と、コビトが欲しがっていた“聖水”で追いかけてあげる。そして・・・

「ウッフフ」
頭に浮かぶその光景に笑いが出る。
その笑いを続けながら、通りの人々を見下ろす。
当時、思っていたことが形をかえて、もうすぐ実現する。
“聖水”から逃げまわる数センチのコビトは、通りにいる蟻よりも小さな人々に変わる。


しゃがんでいると、尿意が強まってくる。かなりの量が出そうな気がするし、そろそろ我慢ができなくなってくる。
もう一度、その的になる通りを見下ろす。

先ほど瓦礫で塞いだ、その手前側に人々が集まっている。逃げ道を塞がれ、それ以上進めない彼らは、怯えた様子でそこでかたまるしかなかった。
自分が振りまく恐怖の中に陥っている人々。その人々に、笑いながら言葉をかける。
「フフッフ、ねぇ、立ってするわね」

立ち上がりながら、水流の勢いでビルが砕け散る様を思い浮かべる。
ビルが弾け飛び、濁流が押し寄せ、人々を跳ね飛ばすしぶきが舞う中を、逃げ惑う人々を想像する。
自分の単なる排出物が沢山の命を奪っていく。その思いが、胸を歓喜で躍らせる。押し殺した笑いが漏れる。

やはり、立ち上がると、足元の小さな人々を見ることはできない。でも、通りを塞いだ場所の手前側は、何となく蠢く感じがしている。
そこを見下ろしながら、辺りのビルを踏みつけて、足を広げて通りを跨ぐ。

ちょっと中腰になり、跨いでいる通りを見下ろす。
立って出すと、股間の真下から、その前方にかけて小水が迸る。
中腰になって下を見る姿勢だと、ちょうど、顔の真下が直撃ポイントになる。その位置に蠢くものを合わせる。

そこから、小さな人々が恐怖の目で自分を見上げていることを感じる。そして、彼らが見ている自分の姿、ブラしかしていない裸の姿を想像してしまう。
“きっと、すごい光景が空を覆っているんでしょうね”

でも、自分の恥ずかしい姿を仰ぎ見ている彼らは、もうすぐ濁流の中に飲み込まれる、ちょっと可哀想な運命。
魅力的な笑みを浮かべて、ウィンクしてあげる。

太腿に垂らさないように出すには、コツがいる。お尻を後ろに突き出して、上体を曲げる。
そして、手の平を膝のちょっと上に付けて、跨いでいる部分を見下ろすポースを取る。
SMクラブで働いていた時の女王様に戻った気分がしてくる。足元に広がる小さすぎるビル街と、股間の下で聖水をせがんでいた情けない顔がだぶってくる。
その気分のまま、足元のビル街に声をかける。
「フフ、おまえの好きなものをあげるわ。ちゃんと飲むのよ」

「ウッフフ」
久しぶりの女王様の言葉、思わず笑ってしまう。
その笑いの中で、膀胱を緩める。

放出した小水は、落差の勢いを付けて、ビル街を直撃する。
水流にあたったビルが次々に押し潰され、あるいは瓦礫に変わりながら横に弾き飛ばされる。そこに存在する形があるものは次々に消え去っていく。
さらに、その下の地面が露出し、そこを汚泥にかえて抉り取っていく。

下腹に軽く力を入れる。小水が勢いを増す。
通りを塞いだ瓦礫の手前で怯えるようにかたまっていた人々の姿が頭に浮かぶ。
水流をそこに向ける。瞬時に、小水は、通りを塞いだ瓦礫を全て弾き飛ばし、ビルを崩し、通りを剥がし、陥没させ、一気に押し流していく。

溜まったものを身体から排出する心地良さ。次々と小さな建造物を壊していく破壊の楽しさ。同時に、それが沢山の小さい人々の命も奪っていると思う、蠱惑的な刺激。
交じり合った感情が、快感になる。口元に笑みが浮かんでくる。

自分の足に飛沫がはねないように注意しながら、腰位置を少しずらして、水流を、さらに人々が逃げ込んでいた通りのビルに沿わしていく。

通りの両側のビルが次々と消失し、その周りのビルも倒壊し押し流されていく。
放出した水流が、辺りの道路を濁流となって流れ、そこに面するビルを抉り取り、崩し、流れの中に巻き込んでいく。

股間の下のビルが、どんどん数を減らしていく。さらに、その付近に残っているビルを順に狙いを付けて消し去っていく。

僅か、10秒ちょっとのできごと。あっと言う間に終わってしまった。
跨いでいる場所にあったビル街は消失し、かわりに大き目の水溜りができている。

自分の身体から出たものだが、その量の多さに、“けっこう、出たわねぇ”と、変に感心してしまう。

脚を見下ろして濡れていないことを確認し、ちょっとホッとする。
自分が出したものでも、やはりきたないものには代わりがない。
でも、股間はちょっと濡れている。そこを拭くものがないか、足元に広がるビル街を見下ろすが、当然ながらその様なものはなかった。
さっきのパンティが離れた場所にある。でも、それを取りに行くと、途中で太腿に垂れてきそうな気がするし、それに、態々そこまで取りに行く気もなかった。

“う!”
滴が内腿を伝い始めそうな気がした。折角、脚がきれいなままなので、できれば汚したくない。
太腿に垂れてこないように中腰のまま足を動かし、しゃがんでみる。とりあえず、しゃがめば、太腿には垂れてこない。

ちょうど、両足の前には水溜りがあり、自然とそれに目がいってしまう。
少しいびつな円形で、その大きさは、5,60センチぐらい。巻き込んだ土砂で濁り、余計に“汚い水溜り”って感じがする。

その汚い水溜りを態々観察するつもりはなかったが、そこで、沢山の人々を犠牲にしたことを思うと、自分がやったその痕跡を見たくなってくる。
身体を乗り出して、水溜りを見下ろしてみる。

水溜りの中央付近は、ビルを狙って消し去ったところなので、建造物がまったくなくなっているが、そこから、周辺にいくについて、半壊や倒壊しているビルが残り、崩れたその姿を水面の上に現している。

水面全体はゆっくりと渦巻いていて、点々と浮かぶ、人なのかゴミなのか分からない小さなものを、その流れに乗せている。その中に、ひとつ、動いているものが見えた。
目を細めると、それが、手足をバタバタさせながら、必死に水面に浮かんでいる小さな人間だと分かる。
“すごい、あんな中で、生き残ったんだ”
ちょっと、驚いてしまう。

でも、ちゃんと泳いでいるようには見えない。苦しげに手足をバタバタさせている。
せっかく助かった命、でもこのままでは、水中に没していくのは明らか。

“助けてあげようかなぁ・・・”
でも、どうやって?と、考えてしまう。
指でその中から掬うのは汚くて嫌。何かを使って助けるのも面倒そう。
やはり、助からないことが、この小さな生き物の運命と思えてくる。
それに、小さな生き物の頼りない動きが、気持ちを疼かせてもいた。

自分が出した“汚い排出物”の中でもがき、それを飲み込みながらゆっくりと溺れていく、その最後の瞬間を見たくなる。
でも、そう簡単に溺れ死にしてくれそうにも見えない。
“最後まで待つのも厭きるし・・・”

ちょっと口元に笑みを浮かべ、水面に浮かぶ者に優しく声をかける。
「可愛そうに、苦しいでしょ? でも、大丈夫よ、すぐに終わらせてあげるわ」
でも、その言葉とは裏腹に、どうやって、溺れさせようかを考えていた。
そこに浮かぶものを指で突くのは汚い。上からものを落とすのも味気ない。
少し考えた末、その身体に唾液を落とすことを思いつく。

口に唾液を溜めながら、その小さな者を見下ろしていると、SMクラブでの客達のことを思い出してくる。

奴隷扱いに嬉しがって、唾液を欲しがる客達。足元に跪き、大きな口を開けて、その瞬間を持っている。
その奴隷に「私を見ていて、絶対に目を閉じちゃだめよ」と、その目を閉じることを許さない。
唾液を欲しがり、口を精一杯開いて両目を必死に見開いている顔は、やはり間抜けな顔にしか見えない。
その顔を見下ろし、立った位置から、その口ではなく、見開いている目を狙って唾液を落とす。
狙いとおり、唾液は、ベチャっと、その片目を直撃する。
奴隷は辛そうに顔を歪めて、目を閉じるのを堪える。可笑しすぎる顔。

それを思い出しながら、首を前に出して、水面で必死に浮かんでいる者に狙いを付ける。
“あなたにそんな悪戯はしないわ。だって、小さすぎるものね”
そう思うと、笑ってしまいそうになるが、それを堪えて、唇を僅かに開ける。

水面を浮かんでいる者は、こちらの意図を感じ取ったみたいで、よりバタバタと動き始めた。
でも、少しも進んでいない。あまりにも遅い動き。その動きに同情をしてしまうが、身体の中で燻るものがそれを許さない。

溜まった唾液が、下唇を伝わって、水面を目指して落ちる。そして、小さな身体に重なっていく。
一滴の唾液よりも遥かに小さな身体は、直撃された衝撃ですぐさま水中に押し込まれ、一瞬後、水中でもがきだす。

一回で命中したことと、水中でもがく姿が可笑しくて、堪えていた笑いが噴出す。
嬉しそうに唾液を口で受け止めていた奴隷と、水中に沈めた小さな生き物が頭の中で重なる。
「ウッフフ、良かったわねぇ、これで苦しむのはすぐに終わるものね。フフ、私の唾をもらったことを感謝してもらえるかしら。だって、それを喜んで飲み込む人だって沢山いるのよ」
また、その奴隷達の間抜けな顔が頭に浮かんでくる。笑いが出る。
その笑いを続けながら見下ろしていると、小さなものは、もがきながら沈み込んでいき、濁った中に紛れ込んで見えなくなった。


水面に目を戻す。
水溜りの周囲、波打ち際には、道路を侵食するように押し流された雑多なものが打ち上げられている。そこにも、動いている小さな人々がいたが、身体がまともに動かないらしく、その動きがぎこちない。
足元のビル街まで目を移すと、ようやく、必死に避難を続けている人々が見える。また、直撃によって弾き飛んだビルや瓦礫が飛び込み、破壊されたビルもあり、それで道路が塞がれ、立ち往生している人々もいる。
さらに跳ねた飛沫が、ビル街に点々と広がっていて、小さな通りを逃げている人々の傍らに、その飛沫で跳ね飛ばされたのか、その水滴の中で動かなくなっている者もいる。

所詮は単なる生理現象の末にできた、小さな水溜りである。
でも、蟻よりも小さな人々に取っては、それが“信じられない天変地異”になっている。
自分の気まぐれが、沢山の人々を死に追いやっている。その痕跡を見ていくと、身体の芯が濡れていくようなうっとりとした思いで心が満たされていく。

足先のすぐ前の道路に、崩れたビルで塞がれ立ち往生している、十数名の人々がいる。
自分の姿が、彼らの目には、気まぐれで巨大な悪魔に映っていると思えてくる。
巨大で、無慈悲で、気まぐれで、美しい悪魔。心の中に、セクシーにそのイメージが浮かび上がる。

足先にいる彼らに、声をかける。
「ねぇ、私のことを、悪魔だと思っているの?」
彼らは、急に声をかけられ驚いたらしく、慌てて瓦礫に寄り添い、固まってしまう。

足先を上げて、人々の前を塞いでいる崩れたビルを踏みつける。
彼らの目前には、崩れたビルのかわりに、足の指先が占拠する。
その指と、取り囲むビルと崩れた瓦礫の間、3,4センチの中に、彼らはいる。そして、どこにも逃げ出せない。

「だめよ。話しかけられたら返事をするのが礼儀じゃないの? 手を上げるとかできるでしょ。もう一度、聞くわよ。私って悪魔みたい?」
でも、彼らは手を上げない。
「じゃぁ、悪魔じゃないと思っているのね。フフ、私は天使なの?」
と聞きなおしてみたが、それでも反応はない。

「ウッフフ」
笑ってしまう。怖くて、返事もできないみたい。
“お仕置するしかないかしら”
そう思っていると、彼らの内の数名が、足の親指の先端に駆け寄りピタッと身体を寄せてきた。その直後、残りの人々も、同じように指先に身体を貼り付かせてくる。

怒られている子供が、急に母親に縋り付いてくるような、ちょっと意外な彼らの反応に戸惑ってしまう。
助かりたい気持ちからの行動とも思えるが、寄り添ってくる小さなものは可愛らしくも思えてくる。
「ウッフフ、私の足が好きなのかしら?」
その自分の言葉で、また、女王様だったころの記憶が蘇ってくる。


長いすに座って、足を組んで、床に四つん這いになっている奴隷を見下ろす。
奴隷は、目の前で揺れるハイヒールを見詰めている。
「ウッフフ、私の足が好きなのかしら?どうなの?足にキスしたいの?」
その言葉に嬉しがる奴隷を眺めながら、その鼻先に、ハイヒールに包まれた足先を伸ばす。
その瞬間、奴隷は犬になる。鼻先にある足先を見詰め、その皮の匂いに興奮し、ハァハァと鼻息が荒くなる。
「おまえはまるで犬ね。どのくらい舌が長いのかしら。ほら、舌を出して見せてごらんなさい」
奴隷は、その言葉に従おうとして、犬のように口で息をしながら、必死に舌を伸ばしてくる。
その舌に、ハイヒールのつま先を着け、「良いわよ。舐めても」と言うと、奴隷は一心に舐めてくる。
でも、ハイヒールの上からでは、何も感じない。つま先を上げて靴底を舐めさせながら、犬になりきっているバカくさい顔を見下ろすだけだった。

馴染みの客には、ハイヒールとストッキングを脱いで、素足を舐めさせてもいた。
でも、奴隷扱いには変わりはない。興奮し、喜んだ客は、足の親指を口に含んだり、指の間に必死に舌を伸ばしてくる。
「そんなに、夢中にならないの」と、その顔を蹴り、「もう、舐めるのはおしまいね」と言うと、客は泣きそうな顔で目の前の足先を見る。
その顔の前で足先をゆっくりと振る。客は、舐めさせて欲しいと懇願する。
間抜けな、その顔に笑ってしまう。笑いながら、足を客の鼻先に伸ばし、鼻を足の指で摘む。
客は、鼻を挟む足の指に、舌を伸ばそうとする。
それを、「おあずけ」と、犬に言うように叱咤する。
客は、情けない顔で、鼻先を挟む足先を見続ける。
今、思い出しても、やはり笑える光景。

足を舐めたくて、舐めたくて堪らないその顔を見ていると、その身体を縮めてみたいと思ってしまう。その縮めた身体を使って、足先を舐めさせたら、楽しいだろうなぁと思っていた。

足先を、這い蹲る奴隷の目の直前でゆっくりと振りながら、声をかける。
「ねぇ、死ぬまで、私の足を舐めていたい?」
もちろん、奴隷は、首を縦に何回も振る。

「本当に命の限り舐め続けるのよ。できるの?」
奴隷は、“目の前の足に口で触れられる”と、ただそれだけを思い、言葉の裏の意味に気付かず、嬉しそうにさらに首を縦に何回も振る。
間抜けな顔。笑ってしまいそう。

「その願いを叶えてあげるわ」
興奮する奴隷の顔が熱に浮かされたようになり、目の前の足先に舌を伸ばそうとする。
それを、「まだ、だめよ」と押し止め、立ち上がるように指示をする。
奴隷の頭の中は、“憧れの足に、もうすぐ口で奉仕できる”、その考えでいっぱいで、何の疑問も持たずに、フラフラと立ち上がる。

長いすに座り、その奴隷を見る。
縮めなくたって、小さな身体。その身体の前に立てば、ハイヒールを履いている背丈では、上からその顔を見下ろすようになってしまう。
自分の胸までしか届かない、貧弱な身体が、裸で、勃起している男根を両手で隠して立っている。
そこには、男の威厳も、人間としての誇りもまったくない。
“あなたって、小さなおもちゃになることしかできないわね”
もうすぐ、間抜けな奴隷は、間抜けに人生を終わらせる。そう思うと、笑ってしまう。

その奴隷を、一歩前に出させて、床に投げ出している両足の真中に立たせ、目をつぶらせてから、その身体を一気に数センチに縮めてしまう。

床の上に、縮み終わった小さなコビトは立っている。
何も知らずに目を閉じているコビトの姿は、笑いを誘うほど可笑しい。
その笑いを堪えながら、そのコビトに向けて足先を伸ばしていく。

コビトの頭に、足の親指を近づける。その小さな頭よりも、足の指の方が遥かに大きい。
コビトの顔を、足の指で軽く突こうとしたが、顔が小さすぎて胸も同時に突いてしまう。
コビトは、途端に床にしりもちを着き、思わず目を開ける。
コビトの身体の前にあるのは、“足の親指”、でも、コビトは自分が見ているものが何なのか分からない。
ただ、その大きさに驚き慌て、尻を床に着けたまま後ろにずり下がる。それを逆側の足の裏を近づけてブロックする。

「ねぇ、足にキスをしたかったんじゃないの?」
話しかけられたコビトは、その声の方向、こちらを見上げ、表情が瞬時に変わる。口が大きく開き、驚愕の表情になる。その表情の変化が可笑しい。
コビトは、その驚きの表情のまま、振り返って辺りを見渡す。
背中は、巨大な足裏で押さえられ、目の前には、大きすぎる足の親指がある。
腰が抜けてしまったコビトは、四つん這いで、足先の方向にチョロチョロと逃げ出し始める。

「足にキスをしないんだったら・・・、分かっている?」
四つん這いのコビトの身体を、両足の足裏で挟み、少しずつその力を強めていく。
足の間から、キーキーと鳴く小さな悲鳴が聞こえてくる。

少し痛めつけてから、そっと足を離してみる。コビトはその場所で蹲り、逃げ出す素振はなくなっていた。
逃げようとすれば、“憧れの足”によって潰されることを理解したみたい。
でも、怖がっているようで、蹲ったまま動かない。

そのコビトの横に、つま先を置いてみる。身体を丸めて怯えているコビトは、足の親指と同じぐらいの大きさしかない。
足の爪は、少し伸ばして、丸みを持った鋭角に中央を尖らせて、ワインレッドにきれいに塗っている。
男達に取っては憧れの足、その手入れは怠っていない。

蹲ったままのコビトの身体に、足先を近づけ、その身体を軽く突いて正面を向かせる。
身体を固くして蹲ったままのコビトの前に、足の親指をおき、声をかける。
「ねぇ、きれいな足でしょ。そう思わない?」
でも、コビトは顔を上げようとしない。

大きくてもきれいな足であることを、コビトに分からせてあげたくなる。
足の親指の爪を、コビトの顔の下に差し入れ、その顔を持ち上げる。
苦痛に歪む顔が、爪で起こされる。
「ちゃんと見て、あなたの憧れの足でしょ」

コビトの顔の下から爪を抜いてみる。コビトはこちらを見上げたまま、口をパクパクさせている。
命乞いをしているのかも知れないが、慌てて喋っているらしく、声が出ていない。
その顔の直前に、コビトが指先を舐められるように、足を置く。
「ウッフフ、足を舐めてくれないのかしら?」
その言葉は、コビトへの質問ではない。コビトが従うべき指示。

コビトの顔の前にある、大きすぎる足の親指は、コビトにとって恐れ敬うもの。
そして、コビトへの指示は、絶対に従わなければならないこと。
それをようやく理解したコビトは、目の前の指先に向かって怖ず怖ずと両手を伸ばし、顔を近づけていく。
やがて、足の指先にチロチロと動く、コビトの舌の感触がしてくる。

コビトを思いのままに、屈服させる楽しさがある。
もっと、楽しんでみたくなる。

「ねぇ、指の間も舐めて」と言って、足の指を広げる。
コビトの舌の感触が、足の親指の先端から、その横に廻り、そして、指の間に入ってくる。
コビトの顔の大きさは1センチもなく、それよりも遥かに大きな足の指に、両側がはさまれる。

コビトの顔が指の付け根に触れる。そこを舌で一生懸命に舐めだす。
指の付け根で、チロチロと動く舌がくすぐったい。思わず、その指を閉じてしまう。

突然、顔を横から締め付けられたコビトは、思うように動かなくなった口を開け、痛みのあまり悲鳴を上げる。
その声がキーキーと微かに聞こえる。でも、ちょっと耳障り。
コビトの顔を挟む指の力を、少し強くする。声が出せなくなったみたいで、その声が止まる。

足を見下ろすと、指の間からコビトの頭の天辺が垣間見える。
そこに向かって声をかける。
「あら、もう、舐めてくれないのかしら」

指の付け根に、また、チロチロと動く舌を感じる。でも、顔の両側を挟まれて、思うように舌を伸ばせないらしく、くすぐったい感じもしなくなる。

「ウッフフ、もっと、がんばって、死ぬまで舐めてくれるんでしょ」
コビトを挟む足先を、上に持ち上げる。

コビトの頭が上に引っ張られて足が床から離れる。首に経験をしたこともない激痛が奔る。強く挟まれた顔、出る悲鳴は籠る。
そして、身体がぐんぐん上昇していく。

長いすに座ったまま、ダンサーのように、足を斜め上方にまっすぐに伸ばす。白いふとももから、足先までがピタッと決まる。
そのつま先に、コビトがぶら下がっている。でも、小さなコビトは、足先に隠れてしまい、その様子が見えない。
ちょっと、足を曲げると、苦しさのあまり、バタバタと動くコビトが見えてくる。
コビトの手が、掴まるところを求めて、必死にもがいている。頭を挟んでいる足の指に手を回して、そこに掴まろうとしている。でも、小さなコビトには、足の指は大きすぎて手が回らない。
“無理よ。小さいんだもの。足の指だって抱えられないでしょ”
それでも、コビトの両手は、そこに手を絡めようともがき続ける。可笑し過ぎる動作。堪えきれなくなった笑いが溢れてくる。

コビトは足を舐める所ではないみたいで、舌の動きが止まっている。
「フフッ、ちゃんと舐めて」
ちょっと足の指に力を入れて催促する。
でも、何も感じない。もうちょっと強めてみる。
やっぱり感じない。
それにこれ以上強めると、コビトの頭がパチンと割れちゃいそう。

つま先を立てて、その指先を覗いてみると、コビトは必死に小さな舌を伸ばしていたが、顔が挟まれ押え付けられているので、その舌が届いていなかった。

「一応、努力はしているのね。大丈夫よ。舌が届くようにしてあげるわ」

長いすの上から、片手を伸ばし、その指で、コビトの頭を、足の指の付け根に押し付ける。
手を離してから、もう一度、長いすに深く座って、コビトを挟む足を斜め上にまっすぐ持ち上げてみる。
とても、セクシーな気分。

でも、まだコビトの舌が止まっている。
「だめよ。舌が休んでいるわよ」
軽くコビトの頭を、足の指で挟む。

コビトの首は引きちぎれそうに痛い。手は空しく掴まるところを求めている。
さらに、顔が押し付けられ、鼻がつぶれ、息もままならない。
無理に口を開けて、舌を出そうとするが、顔が圧迫され、できなかった。
その最中、頭を挟む力が強まる。激痛が奔る。
早く舌で舐めないと、さらに、頭を締め付けられるとパニックになる。
口を無理にこじ開けようとする。でも、できない。
自我が崩壊したパニックの中で恐怖が体を駆け巡っていく。

まだ、コビトは舐めてこない。
「どうしたの?私の足を舐めたかったんじゃないのかしら?」
コビトの顔を指の奥に強く押し込めすぎたかもと思うが、もう一度、コビトの頭を挟み直すのは面倒。
コビトの頭を挟む力を強くして、強引に舐めさせてみようと思う。
でも、それで、コビトの頭が潰れることが頭を掠める。

セクシーな気分のまま、コビトを挟む、まっすぐに上げた足を眺めると、その足先にいるコビトがどうなっても構わない気持ちになってくる。
むしろ、自分がコビトを苦しめていると思うと、気持ちが疼いてくる。
湧き上がる笑いをかみ殺して、コビトの頭を挟む指の力をさらに強める。

顔を押さえられ、悲鳴も出せないコビトは苦しみの中に埋没している。
パニックの中で恐れていたとおり、頭を挟んでいる力がさらに強まった。
全身を揺さぶる痛みで息ができなくなる。
頭蓋骨がギシギシと音を立て始める。
頭の中で甲高くハウリングしている耳鳴りの中に、その音が衝撃を持って響いてくる。
そして、頭蓋骨の耐性が限界を超える。バキっと顎の骨が折れ、瞬間、激痛がコビトの身体を貫く。
口がありえないぐらい、パッカリと縦に開く。
極限の痛みの中で、もう二度と閉じることができなくなった口から、舌を出す。

足の指に挟んでいるものが少し壊れた感触があって、その直後にチロチロと動く舌が指の付け根に触れてくる。
「ウッフフ、良かったわね。私の足を舐められて」

自分が与える、コビトの苦しみ、コビトの恐怖、その思いが快感につながる。
そして、約束どおりに、コビトの息が続く限り、そこを舐めさせあげる。


背徳的で魅惑的なイメージ。ウットリとしてくる。
その思いのまま、足元に広がる小さすぎるビル街を見下ろす。
そこには、“何をしても許される、そして何の抵抗もできない小さな世界”が広がっている。
甘美で凶暴な想いが、頭の中で渦巻いていく。口元に笑みが浮かんでくる。

先ほどから、足先にいる蟻よりも小さな人々に視線を移す。
小さいことが可愛らしくも思えるが、所詮はおもちゃ。
命惜しさに、自ら、足にへばりついてきた彼らをからかいたくなる。
「あなた達、私の足が好きなのよね。良いわよ、そこを舐めても」

言葉をかけてから、少し待ってみたが、チロチロと舐める舌の感触は伝わってこない。
見下ろしてみても、彼らの小さすぎる舌が見える訳ではない。彼らが、その言葉とおりにしているのかも分からない。
でも、彼らにとっては小山のような大きさの指にへばり付き、怖さのあまりビクビクしながらそこを舐めていることは想像がつく。

“小さすぎる舌じゃ・・・何も感じないわね。でも、指の付け根だったら、少しは感じるのかしら”
小さな人々を、指の間に追い込み、そこを舐めさせてみたくなる。

人々を、そこに追い込むために、足を動かそうとして、彼らにとって見上げるような足の指が急に動く様子がイメージされる。
“きっと、驚くわよね”
彼らの驚き、慌てる様子が見たくなる。
笑いを抑え、「ほら!」と短く声を掛け、彼らに圧し掛かるように足位置をずらす。

彼らが寄り添っていた、足の指が急に動いたことと、その声で、案の定、人々は慌てだした。
後ろに転ぶ者、一目散に逃げ出す者、それぞれが驚いた様子でバタバタと動き出す。
でも、彼らの半数近くは、その場にしりもちを着いたり、後ろに転んだりして、その場でもがいていた。
その小さな者達の慌しい様子に笑いが出る。その笑いを続けながら、一旦、足の親指を上げて、そこで、まだもがいている者達をまとめてその指で踏みつけてから、その足の指を引きずり、逃げ出した残りの者達を追いかけていく。
だが、彼らの行く手は瓦礫で塞がれている。急ぐ必要なない。
足の指を広げながら、彼らを指の間に誘い入れるようにゆっくりと追い込んでいく。

足の指先は、すぐに、彼らの後ろにある瓦礫に接する。
どこにも逃げる先がない彼らは、足の指の間に入ってくるしかなかった。

足の親指と、その隣の指との間に、生き残った、7,8人がいる。
怖いらしく、その中央あたりに、固まるように寄り添っている。
ちょっと、指の間隔を狭めてみる。人々は、さらに、中央に固まろうとして慌しくチョコチョコと動く。その慌て振りに、また笑ってしまう。

SMクラブの客達の憧れだった“私の足”。その指の間で、怯える、蟻よりも小さな人々。
「ウッフフ、ねぇ、クラブのお客は、私の前で奴隷に成りたがっていたわ。どう、あなた達もそう成りたい?」
そう質問をしたが、その返事を彼らからもらうつもりもない。
“でも、無理よ。あなた達は、それにも成れないわね。小さな身体の小さな命は、私との遊びで消えていくしかないのよ”
笑いが込上げる。

「ウッフフ、助かりたいでしょ? ねぇ、ここに舐めてもらえないかしら」
話しながら、指の根元を指差して教える。でも、彼らは、指の間に固まったまま、動こうとしない。
“怖いのかしら”

恐怖で動けない者を動かすには、さらに、恐怖を見せ付ける必要がある。
「ねぇ、お仲間のようになりたいのかしら」
足の親指をちょっと持ち上げる。その下には、すり潰されて染みになっている、彼らの仲間がいる。それを見せ付けてから、その指を、勢いをつけ地面に戻す。指の間にほこりが舞う。
そのほこりの中を、小さな人々は慌てて、指差している足の指の根元を目指して駆け寄る。
笑える動き。

指の付け根の皮膚にはりつき、一塊になる。
そこで、彼らが、皮膚を舐め始めている様子が窺えるが、でも、何も感じない。

「やっぱりだめね。何にも感じないもの。ウッフフ、ねぇ、助けるのをやめても良いかしら」
小さな人々は、さらに必死に舐め出したみたいだが、やはりだめ。
その様子を見下ろしながら、彼らがいる指をゆっくりと閉じていく。
彼らに逃げる先はない。ここで必死に舐めることしか助かる術はない。それが分かっている彼らは、少しでも感じさせようと、両手を慌しく動かして肌をこすり始めた。でも、無理。感じないことには変わらない。

「ごめんね。使えないおもちゃは、いらないの」
そう、彼らに話しかけ、そのまま指を閉じ、足を前側に引きずる。足先は、瓦礫やビルを潰して、前に移動する。


微かにアンモニアの匂いがしてきた。やはり、嫌な匂い。
“そろそろ、服を着に戻ろう”
立ち上がろうとして、股間にまだ残っている滴が、太腿に垂れる気配を感じた。

慌ててしゃがみ直す。
“やっぱり、拭かなくちゃ。でも、ビルしかないし・・・それで拭くしかないってことよね”
脆いビルを崩しながら、そこを拭けば、滴を取れそうな気がしてきた。

どうせ拭くならば、水溜りから離れたビルの方が良さそうに思える。
後ろを振り返ると、大きめで白くてきれいなビルがあった。それが、ティッシュかわりにするのに、丁度良く見える。
しゃがんだまま身体の向きを変え、そのビルに手を伸ばす。
ビルを壊さない様に、その根元に爪を食い込ませて、そっと摘んで持ち上げる。
“良かった。うまく持ち上げられたわ”
切り離したビルを、傾けないようにして、逆側の手の平に乗せてから、顔の近くまで持ってくる。
ビルの大きさは、約4センチ角で、高さは10センチもない。1階で切り離されていて、残りの階数を数えると、12階。さらに、ビルの側面の大きな窓から中を覗くと、各階に小さな人々が沢山いるのが見え、覗き込んでいる目に驚いた様子で、慌てて物陰に隠れる者もいる。
“けっこう、人がいるわね”

その人々を見ていると、彼らが、一所懸命に濡れている股間を拭く姿がイメージされる。
それはとても楽しそうなイメージだった。
そのイメージを持ったまま、ビルに声をかける。
「そうでしょ、あなた達も私の役に立ちたいのよね」
声をかけられ、ビルの中で固まり怯えている人々の姿で笑ってしまう。

さっそく、手の平に乗せているビルを包むように、指を立ててから声をかける。
「ねぇ、あそこが濡れているの。何か拭くものを持って、屋上に上がってきて欲しいの」
ビルを包む指に少し力を入れる。ビルの壁は弱い。軽くやっているのに、指が外壁に食い込んでしまう。
でも、ビルの中では、ビルが軋んでいる音が響いているはず。それを意識しながら、彼らに声をかける。
「助かりたいでしょ?上手にできたら、もちろん助けてあげるわ」

声を掛け終わってから、手の平を広げる。ビルの外壁は、指の形で陥没していた。
手の平を顔に近づけて覗いてみると、ビルの中の人々は、指示に従うべく、人々が走り始めていた。
「そう、そう。がんばってね」と優しく声を掛けてあげる。

でも、遅い。屋上に出てくるのは、ポツリ、ポツリって感じで、イライラしてしまう。
待つ時間が長く感じられる。
「早くしてもらえるかしら」と声を掛けながら、“何か、このまま乾いちゃいそう”と思えてくる。でも、このまま乾いたら、肌が荒れそうな気もするし、やはり、早く拭いてもらいたい。

遅々とした人々の動きにイライラして、手の平に乗るビルを握りつぶしたくなる。その気持ちを抑えて、しばらく待つと、ようやく、屋上に100人近く、びっしりと集まってきた。
でも、拭くものが見当たらない。
カーテンを剥がしたり、大きな布を持ってくると思ったのに、何を勘違いしたのか、どうやら手にしているのは、小さすぎて分からないような雑巾だった。
ビルの中を覗いてみると、まだ屋上に来ていない人々が各階で動き回っていたが、大きな布を運んでいる様子はなかった。
“最悪ね。頭が悪すぎだわ”と、小さすぎる人々の頭の悪さに呆れてしまう。
改めて、カーテンとかを持ってくることを指示すれば、さらに時間が掛かる。それこそ、あそこが乾いてしまう。

手の平のビルを包み込むように軽く指で握り、腰を少し浮かせて中腰になり、ビルを傾けないようにして股間の下に持っていく。
そして、彼らに、自分達が拭くべき場所をはっきりと見せてあげる。
「ねえ、分かっている?ここを拭くのよ。どうやって、そんなもので拭けるの?こうなったらあなた達に飲んでもらうしかないわね」

まだ滴が残るそこに、百名近くが乗っているビルの屋上を軽く当てる。
若干、その部分がもぞもぞするような感触がし、彼らが、恐怖の中で必死に飲み込んでいることが感じられた。
でも、彼らが全員で飲み込んでも、一滴もなくならない気がする。
やはり、初めに思ったとおりに、ビルを崩して、水滴を取るしかなさそう。

「やっぱり、あなた達を助けるのは、無理ね」
ビルを股間に押し付ける。ビルの屋上がベコッと陥没する感触がする。
そのまま、ビルを握りつぶしながら、股間に擦り付けていく。ビルは、瓦礫に変り、滴を吸い取りながら落ちていった。

思った以上にビルの瓦礫が水分を吸い取ってくれたらしく、もう、濡れている感じはなかった。
瓦礫が広がっている足元を見下ろし、「何とか、私の役に立ったわね」と声を掛け、手の平に残っている残骸を払い落としながら立ち上がって、ふ〜っと溜息を吐く。排出し終わったすっきりとした気分になる。

散らばっている服のところまで戻る。
バンドを拾ってジーパンに通し、そのジーパンをノーパンのまま穿く。ちょっと股間がヒリヒリする。
ブーツを履いて、タンクトップを拾う。持ち上げたタンクトップから、ジェット戦闘機の残骸が落ち、瓦礫に覆われた地面に衝突し、チカッと小さく爆発する。
タンクトップを軽く叩こうとしたが、その胸の所に、まだヘリコプターが付いていたので、叩くのを止めてそのまま着る。


「あ〜あっ」と、辺りを見渡しながら、もう一度、大きく伸びをする。
たっぷりと遊んだ。もう思い残すことはなかった。
ニッコリと笑って、「さぁ、帰ろう」と独り言を言い、緑色の場所に向かう。

また、無傷のビル街に足を踏み入れる。
ブーツで、そのビル街を踏みつけ、靴底に伝わる破壊の感触を楽しみながら、進んでいく。
歩くにつれて、動いている車が多くなる。道路にも避難している人が多いように思われてくる。
せっかく来た小さな世界。できるだけ、壊してから帰りたくなる。

大き目の交差点がある。蠢く感じから、避難している人々で溢れていそうに思える。そこを狙って、ブーツを降ろし、踏みにじる。足を上げると、全てがすり潰され、土砂と混じっている。
素足と違って、ブーツを履くと、より破壊力が出るのが楽しい。
動いている車ごと、踏みつけるビル街は、瞬時に靴底の下で潰れ去り、ブーツの周りで埃が舞う。
蹴り上げた大きめのビルは、ブーツに触れた瞬間に爆発するように砕け散る。

途中、線路で立ち往生している電車を見つける。
十両連結ぐらいはあるだろうか、一気に踏み潰すつもりで、その上にブーツを翳してみると、ブーツは、そのほとんどの車両を靴底の下に隠す。本当に小さな世界。
“中に人がいるのかしら”
できればそこにも沢山の人がいてほしい気がする。でも、態々、しゃがんで確認することは面倒だし、それよりも、電車が動いていないことが残念だった。“動いていたら、ブーツで追いかけたりして、面白かったかも”と思ってしまう。
ブーツの破壊力を試すように、振り上げている足を電車目掛けて踏み降ろす。ブーツからはみ出した先頭車両と、途中の土踏まずの部分の車両が横に弾け飛び、ビル街に飛び込んでいく。足を上げると、地面を陥没させてくっきりと付いた足跡の中に、ペシャンコになった残骸があった。

沢山のものをブーツで踏み躙っていく。
同時に人々の命を容赦なく奪っていく。
世界を、全て自分の足の下にしたような優越感が湧き上がり、心が躍る。

「か・い・か・ん!」
テレビで見た、昔の映画の台詞まで出てしまう。

とても、爽快な気分。自然に笑ってしまう。

漸く、緑の場所についた。
小さな緑色の木々を踏みながら、その中央付近に行き、そこで、空に浮かぶことをイメージする。
手を広げると、身体が浮き上がる。
さらに、身体がゆっくりと回転し、上昇が始まった。

その身体の回転によって辺りが見渡せる。
鉄塔のあった場所が見える。壊れた町並みがあり、その中央に、元は鉄塔だったものが散乱している。
そこから、ビル街を踏み荒らすように、沢山の足跡が点々としている。
携帯を置いた、公園だった場所があって、その周囲のビル街も踏み固められている。
その手前に、広い範囲でビル街が消滅している場所があり、その真中辺りに、紫色のパンティが置かれている。
さらに、その横のビル街にも足跡が点々と続き、その足跡の先に、ビル街の一角を沈み込ませたような水溜りがある。その水溜りが光りを反射して、きれいに輝いている。

上昇していくにつれて、見える景色が広がっていく。自分が壊した部分は、この都市全体の一部であることが分かってくる。

足元の都市に向かって話しかける。
「ウッフフ、もっと、身体が大きければ、もっとたくさん壊せてあげたのに。残念だったわね。今度来る時は、もっと大きな身体で来るから待っていてね」

やがて、雲の中、乳白色に包まれ、周りの視界が遮られていった。


      ***


気が付くと、マンションの玄関にいた。
頭の中が、霧が掛かったようになり、何も考えられなかった。
それに、とても疲れていた。
白っぽく汚れたブーツを脱いで、自分の部屋に入る。
時計は午前5時を示していた。そのまま、ベッドの上に倒れ込んだ。


      ***


彩は、ベッドの上で目覚める。
時計を見ると、午後2時。

ジーパンとタンクトップを着たままで、寝ていた。
“何で?”と思って、それを考えようとすると、頭に白いベールが掛かったようになる。
何か楽しいことがあったような気がする。でも、それが何だったのか思い出せない。
それが心に引っかかったまま、シャワーを浴びに部屋を出て行く。

キッチンで、彼に会う。
「ポチ、おはよう」と声を掛ける。
いつも通りに、彼も挨拶を返し、彩のコーヒーを入れるために立ち上がる。

「先に、シャワーを浴びたいの。その後でお願いね」

彼は、「分かった、後で入れるよ」と言いながら、椅子に座りなおす。
その座った彼の目に、彩の胸に何か付いているものが見え、何気なく話す。
「何か・・胸に付いているよ」

彩は、胸を見下ろし、そこに引っかかっているものを、指で摘んだ。
「ヘリコプターの小さなオモチャね。どこで付いたのかしら。おまけに少し潰れているわね」

彩は、彼の目の前に、その指先を持ってくる。
老眼が進んでいる彼には、近くのものは見難い。顔を引きながら、彩の指先を見る。
その仕草が彩には可笑しい。
「ウフフ、ポチ、大丈夫?見える?」

彼は、慌てて、テーブルの上にあっためがねを掛ける。
漸く、彩の指先にあるものがはっきりと見えた。
親指と人差し指に挟まれた、2センチぐらいの小さなヘリコプターだった。多少潰れていたが、とても精巧で、オモチャとは思えなかった。

黒いマニキュアが鈍い光沢を放つ爪、白くきれいな長い指、それが挟んでいる本物が縮んだようなヘリコプター。それは、とても、セクシーな組み合わせだった。彼は、心臓の高鳴りを感じ、顔をさらに近づけながら、小さなものを見つめた。

そして、彼の息が止まった。中に小さな人がいた。彼に向かって、助けを求めるように必死に手を振っていた。
信じられない光景だった。
“ヘリコプターの中に閉じ込められている人”
心臓が止まりそうな驚きの中、彼の理性は、それを教えた。

彼の口から、思わず、言葉が出る。
「中に・・・人がいる・・・」

彩も、彼に言われて、顔の近くに指を持ってきて、中を見る。
「本当、二人いるわね」
それと同時に、何かを思い出したような顔をして、クスッと笑う。

椅子に座り、驚いた表情をしている彼を、悪戯っぽく笑いながら見下ろして話しかける。
「ねぇ、ポチ、これを・・・指で潰してほしい?」

彼は、その彩の言葉に驚き、体中の血が沸騰したようになった。
何かを慌てて言おうとしたが、口がパクパクするだけだった。

その様子を彩は笑って眺め、彼の目の前に指を持ってくると、ゆっくりとその指先に力を加え始める。

心臓が高鳴って、何も言えなくなっている彼の目に、彩の指の間で潰れていく機体と、中で窓を叩いている人影が見え、直後にクシャっと、指の間で潰れきった。
瞬間、彼の耳は、そこから、小さな悲鳴が聞こえたような気がした。

テーブルに、彩がたまに吸うタバコ用に置いてある灰皿がある。
彩は、彼の驚きの表情を可笑しそうに見ながら、灰皿の上にその指を持ってくると、その上で指を擦り合わせる。粉々になった残骸が、指の間から毀れてくる。

彩は、彼の目を笑いながら、覗き込み、
「ウッフフ、ポチ、ボーっとしないでよ。じゃあ、シャワー浴びてくるから、後でコーヒーお願いね」
と、何事もなかったように、キッチンを出て行く。


彼は、白昼夢を見ている思いだった。
腑抜けのように、灰皿の底にある、粉々になっているものを見続けていた。








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