巨大美少女ミカ (21)

           (不運な泥棒 改題)

                           NEW2さん みどうれい作

第二部 不運な船員さん達(その6)

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 巨人の非情な言葉に、孝治は、呆然とした。
彼女の力は強すぎる。 どうやっても、剛を助けるのは不可能だ。


 だがすぐに、天空にミカの次の声が響いた。
「あらあら、こびとさん、何をしているの? 私は、あなたにお友達を助けることができたら、
あなたも食べないでおいてあげる って言ってるのよ。
この私が、せっかく優しい言葉をかけてあげているのに・・・、
あなたは、生き残れる最後のチャンスを、無駄にしてしまうつもりなのかしら?」

「うわあああああーー!!!!!」
 どうしようもない恐怖に孝治は、絶叫した。
剛だけではない、自分も、とんでもない死地にいるのだ。

 孝治は、必死になって、ミカの指を乗り越え、剛の肩を掴んだ。
そのまま、孝治は剛の腕を掴んで、彼を引っ張り始めた。

 ミカは、最初、孝治に希望を抱かせるためにわざと、彼女の指の力を緩めてみた。
しかし、剛の体がほんの少し動いた後、すぐに、ミカの指は再び強く締められた。

 やはり、孝治の非力な力では、どうする事もできない。
彼は、巨人の顔を見上げた。 ミカは、楽しそうに、孝治の無駄な抵抗を見つめていた。

 こんな状況にも、かかわらず、彼女は、驚くほど美しかった。
孝治は、何か言おうと努力したが、彼女の視線にすくんで、何も喋れなかった。


「3分たったわ。 時間切れよ、こびとさん。」
 疲れきった孝治の抵抗が弱まったころ、巨人の無情な声が響いた。
孝治は、目の前が真っ暗になるのを感じた。

 だがその時、何故か巨人は剛を捕まえていた指を広げた。

「うわっ!!」
 剛の腕を掴んでいた孝治は、支えを失い、剛といっしょにその場に倒れこんだ。
巨人が指を放した、 何故・・・? 孝治は、ぽかんとした。

 この時、行動を起こしたのは剛だった。
どこにそんな力が残っていたのだろう。 剛は飛び起きて、巨人と反対側に走り出した。

「あ、おい、ちょっ、ちょっと待ってぇ〜。」 つられて、孝治も走り出す。


 ミカが食事用に用意したキャンプ用のテーブルは、こびとの孝治達にとっては大きかったが、
ミカから見れば、それほど広くはない。 身を乗り出せば、端にまで手が届くほどの大きさだ。

 どこに逃げるというのだ? 孝治は、どうしていいのか分らなかった。
孝治は、すぐに巨人の手に捕らえられると考えたが、何故か、彼女は何もしなかった。

「うわ!!」 孝治は悲鳴を上げた。
 椅子に座っている巨人ミカと反対側のテーブルの端まで、全速力で走った剛は、
全くスピードを落とさず、そのまま、そこから飛び降りたのだ。 

し、死ぬぞ!」 巨人のテーブルの高さを思い出した孝治は、叫んだ。
 しかし、よく考えてみたら、このままここにいても、巨人に捻り潰されるだけだ。

 地面は、草原だったので、飛び降りても、もしかしたら、衝撃を吸収してくれるかもしれない。 
「えええーーーいい!!!」
 やけくそになった孝治も、剛を追って、テーブルの上からダイブした。

 はるか下に、地面が見えた。
これは・・・、死ぬな・・・。 自由落下する孝治は、そう直感した。

 巨人の楽しそうな笑い声が、聞こえたような気がした。


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 今郁 譲治は、岩山の中腹で、荒い息をしていた。
彼は、巨人ミカにいいように玩ばれ、そこに置いていかれたのだが、
結界の効果もあったのだろう、しばらく休んだ彼は、ようやく元気になってきていた。

 譲治は、なんとか、ここから脱出できないかと周囲を見回してみた。

 彼が置かれていた岩山の中腹は高く、ほとんど垂直な崖で、とても降りられそうもない。
真下も固そうな岩場なので、飛び降りるのは危険すぎる。
足場がないので、崖を横に移動することもできない。

 ふと上を見上げた譲治は、彼のいるところから一本道のように、ずっと上まで崖がえぐれて
いるのを見つけた。 そこを足場にすれば、なんとか崖の上まで登れそうだった。

 さっき巨人が、彼女の太い指で、固い岩肌を削っていったのだ。

「ここを、登れと言うのか・・・。」 譲治は、ぼんやりとそれを見つめながら考えた。
 なんのためにこんなことをするのだ?

 しかし、きまぐれな巨人が帰ってきたら、今度こそ命がないかもしれない。
その前に、逃げなくては・・・。

 ふと見ると、譲治の足元の岩のでっぱりの上に、彼の靴が置いてあった。
さっき、巨人が彼を裸にした時、靴も脱がされたのだが、彼女はここを去る時、
靴だけ地面から拾って、譲治に返してくれていた。

 こびと譲治に、裸足で岩山を登らせたら痛いから可哀想だと、ミカは考えたらしい。

 譲治は、足場の悪い岩の上で、靴を履いた。
普通なら道具もなしに、こんな崖を登るなど危険すぎるが、とにかくやるしかなかった。


 ミカは二本の指だけで、岩を上下にえぐっていっただけなのだが、
彼女の小指くらいの大きさの譲治は、その間にすっぽり入ることができた。

 譲治は、巨人が岩を削った部分に、おそるおそる手を伸ばした。
岩はとても硬く、彼が体重をかけても、崩れることはなさそうだった。

 普通、岩を無理にえぐればひび割れし、崩れやすくなるので、そこを足場に登るのは危険だ。
ところが、この岩肌は、巨人の指が触った部分のみ、きれいにえぐれていて、
他のところは頑丈なままだった。 まるで硬い岩を、ナイフで切り取ったようだった。 

 力が強いとはいえ、どうやったら、指だけでこんな器用なことができるのだろうか。
巨人は、譲治が崖を登る時、岩が崩れて落ちないように気を配ってくれたとしか思えなかった。

 譲治は、ロッククライミングなどやったこともなかったが、なんとか要領は想像できた。
両手両足で踏ん張り、自分の体を支え、手足のどれか一本を動かし、少しだけ体を上にあげる。

 それを何回も繰り返すのだ。 時間はかかりそうだが、やるしかない。

 譲治は、崖を登り始めた。 彼の手に当たる岩壁は、とても硬かった。

 岩壁を登りながらも、譲治は、これからどうなるかを、想像しないわけにはいかない。
巨人は、さっき砂浜で「私と追いかけっこをして、遊びましょう」とか言っていた。

 先刻、彼女は岩山に譲治を置いて、胸で潰すと言って脅かしたが、彼を殺そうとはしなかった。
おそらく、彼女は、そこを必死によじ登る彼を見て、楽しみたかったのに違いない。

 巨人が「ただ遊びたい」だけなら、彼を置いて何処かへ行ってしまった理由も、想像がつく。
おそらく、この後、彼女は、譲治が苦労して岩山をよじ登り、もう少しで逃げられるという時に、
ここに戻って来て、譲治を捕まえて、彼の「無意味な努力」を大笑いするつもりなのだろう。

 まったく、とんでもない性格の女巨人だ。
譲治は、もっと速く登ろうと努力したが、体を支えながら登るのは、時間がかかった。


 巨人が気を使ってくれたのか、途中に彼が休めるように、岩が大きく削ってある部分もあった。
疲れ果てた彼は、そこで座って休んだ。 崖の上は、まだずっと遠かった。

 譲治は、ぼんやりと足元を見た。 地面は、はるか下だった。
「ここから・・・、飛び降りようか・・・。」 弱気になった譲治は、そう考えた。

 巨人は恐ろしい力を持っている。 どうやっても逃げられないように思う。
それなら、いっそのこと、崖から飛び降りて、楽になったほうが・・・。

 だがその時、彼は、二毛山副長が携帯で「最後まで諦めるな」と言っていたのを思い出した。

「ちくしょーおおお!!! 負けないぞ!!」 譲治は叫んだ。
 彼女が、どんなに恐ろしい怪物であったとしても、好きなように玩具にされるつもりはなかった。
譲治は、再び、岩壁を登り始めた。 


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 二人のこびと、孝治と剛が、テーブルの上から決死の「飛び降り」を敢行した時・・・、

「ふふふ、逃がさないわ、こびとさん。」
 ミカは、彼女の右手をあげて、ぱちんと指を鳴らした。

 孝治は、何か柔らかいモノの上に、うつ伏せの格好で落ちた。
うべぇ!!」 したたかに顔と腹を打った孝治は、うめいた。

 しかし、それは致命的な衝撃ではない。 彼は怪我ひとつしていなかった。
いったい、どうしたのだ? 地面に落ちたのなら、こんなものではすまない筈だ。
 相棒の剛もすぐ横に着地していた。 

「うわあああー!!!」 自分達がどこにいるのかを知った孝治は、悲鳴を上げた。
 なんと、彼らは二人とも「巨人の手のひら」の上にいたのだ。

「ふふふふ、もう一度、逃げてみる?」 巨人が、余裕で笑っていた。

 そ、そんな!? たしかに下は草原だったのに! 孝治は焦った。
しかし、よく考えてみれば、夜明け前に、彼らはこれと「同じ経験」をしている。

 先刻、第二こびと丸が、巨人の術のために、彼女のいる場所の方に引き寄せられた時、
乗組員の全員が、逃げるために船から飛び降りた。

 女巨人は、まだずいぶん遠くにいた筈なのに、砂浜に飛び降りた彼らは、何故か、
砂浜に寝そべる彼女のお腹の上に囚われてしまった。
 彼女がその気になれば、人間を、自分の身体の上に、呼び寄せることができるようだった。

 余談ではあるが、第二こびと丸が、ミカの島に迷い込んでしまった理由は、
遊び相手が久太郎一人では、満足できなくなった彼女が、もっと大勢のこびと達を望み、
無意識のうちに術を使ったのかもしれなかった。

 空間をねじ曲げて、別の場所に移送する技・・・、
それは、この事件の発端となった久太郎が迷い込んだ「次元の裂け目」の術の応用なのだろう。

 自然界に存在しない「次元の扉」を、好きな場所に作り出せるこの技は、
絶大なるパワーを誇る彼女達一族にとっても、極めて難しい術の一つであった。

「あはっ、誰も私からは、逃げられないのよ。 私が許してあげないかぎりはね。」
 手のひらの上の無力なこびと達を見つめながらミカは、微笑んだ。


 絶対に逃げられない。 孝治は、そう確信した。
彼女は、ものすごく大きくて、強いだけではなかった。

 催眠術?で、人間の精神を操る。 空間転移の術?で、逃げる者を捕らえる。
船を宙に浮かせることができる。 信じられないくらい美味しいサンドイッチを作れる。

 常識では考えられないことが彼女には可能なのだ。
こんなバケモノに、抵抗できるわけがなかった。

 まいった! もう降参だ。 許してくれ! もう充分遊んだろ。
お願いだ。 潰さないでくれ。 何でも言われたことをする。
頼むから、俺をサンドイッチにして、喰うのだけは、勘弁してくれ!
腹がへっているのなら、自分が作った玉子サンドを食って、それで我慢しやがれ!
いや、我慢してください。

 パニック状態になった孝治は、心の中でそう叫んだ。
すでに、彼の口は、恐怖のために引きつり、満足に喋ることすらできなかった。


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「さあて、あなた達を、どうしちゃおうかな。」
 ミカは、くすくす笑っていた。 自分の力を知ったミカは、楽しかった。

 彼女は、二人のこびとがテーブルから飛び降りた時、彼らを逃したくないと願った。
ただそれだけで、剛と孝治は、ミカの手のひらの上に、瞬間移動した。
次元の扉をくぐって、この島に来たミカは、いつのまにか、空間をねじ曲げる技を体得したらしい。

 剛と孝治は、ミカと比べて小さすぎるのに、彼女はこんな術まで使えるのだ。
これでは、どうやっても彼らは逃れられない。

「私がいっぱい遊びたいって思っているのに、あなた達は、私から逃げようとしたわ。
本当に悪いこびとさんね、あなた達は・・・。
悪いこびとさんは、お仕置きよ!(^-^)」
 ミカは、好きなことを言う。

 ミカに力で抵抗できない剛は、彼女が「こびとさんを捻り潰す」と言ったので、
テーブルから飛び降りて、逃げるしかなかったのだ。 したがって、それを理由に
「お仕置きをする」など、理不尽な話なのだが、彼女は全く気にもしていなかった。

 それから、ミカは、二人のこびとを乗せている手のひらの指を閉じ、彼らを片手で握り締めた。
そのまま、彼女は、悲鳴を上げる彼らを無視して、彼女の手を、ゆっくりと下に降ろした。

 そこには、椅子に座ったままの巨人ミカの二本の太ももが、彼らを待っていた。
彼ら二人は、巨人の手から開放され、彼女の巨大で長い太ももの上に、乗せられた。

 剛と孝治は、そこから逃れようと、立ち上がったが、彼らの置かれている状況は悪すぎた。
彼らが踏みしめていた大地は、巨人ミカの「むちむちした二本の太もも」なのだ。


 すぐに、世界一大きな太ももが左右に大きく開き、その谷間に、剛と孝治は転げ落ちた。

 彼らは、立ち上がり、そこから逃げようとしたが、そうはいかなかった。
ミカの太ももは、高く、はりがあり、すべすべで、彼らの大きさでは簡単に登れなかった。

 一度開かれた太ももは、ゆっくりと、閉じ始めた。

 恐怖の悲鳴を上げる剛と孝治は、なすすべもなく、巨大な肉の柱の間に挟まれた。
「ふふふふ、今度は、私の太ももを楽しませてもらおうかしら。」

 ミカはそう言うと、彼女の太ももで、剛と孝治の二人を、ゆっくりと絞り上げ始めた。
剛と孝治は、必死になってもがいたが、無駄だった。

 さっき彼らは、二人で力をあわせても、巨人の指一本にすら、抵抗できなかったのだ。
彼女の引き締まった太ももは、彼女の指よりも、ずっと大きくて、力があった。

 巨大で美しい二本の太ももの前では、剛と孝治の力など、全く問題にならなかった。

「あふう・・・。 きもちいい・・・。」
 とろんとした目で、ミカは言う。 

 彼女の太ももの間に囚われたこびと達の「無駄な抵抗とあがき」は、とても心地よく、
それは、ミカの全身に伝わり、彼女を夢見心地にしてくれた。
 ミカの股間は濡れ、そこから甘い香りが漂っていた。

「あ、あん、こびとさん、 あなた達は、そこから出たいのかしら?
ふふ、ダ・メ・よ。 だって、私の太ももが、あなた達と遊びたがっているんですもの。
 でも、私が、これから何をするつもりなのかを知ったら、
あなた達は、そこに挟んでもらっている方が幸せだと、思うわよ、 きっと・・・。
だって・・・、もし、私の太ももが、あなた達と遊ぶのに飽きたら、
その後、あなた達は、私の朝ごはんになる運命なんですもの。」


 剛と孝治の悲鳴は、さっきより、ずっと大きくなったようだった。




(その22に続く)


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