《 恐怖のトンネル 》



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 ゴオオオーーー、


 俺の車はトンネルに入った。


 周囲は暗くなり、車が走る震動音が響く。


 その日俺は仕事で、山一つ隔てた隣町に車で行く途中だった。
大きな山をくりぬいて造ったそのトンネルは、とても長かった。

 向こうの方が明るくなってきた。
もうすぐ出口だ。 ここを出れば目的地まであと少しだ。


 夕方までには仕事を終えて家に帰りたいな。
俺は愛車のセダンを運転しながら、そう考えた。


「・・・ああ・・・??」

 前方を見た俺は驚いた。


 何か巨大なモノが出口をふさいでいるのだ。

 俺の車がそれに近づくに連れて、それが何か見えるようになってきた。



「うわあああ!!!」 運転席の俺は悲鳴を上げた。




 だ! 女の巨人だ!!


 なんということだ。 とても信じられない・・・。


 トンネルの出口で、巨大な女性がかがんで、中を覗き込んでいたのだ。









 彼女はとても美人で知性的な顔をしていた。


 一瞬だが、俺は彼女に見惚れてしまう。
だがすぐに俺は正気に戻った。


「い、いかん!」 俺は反射的にブレーキを踏む。
 しかし、何故か車は止まらずに、そのまま彼女の方に走っていく。

 俺は慌ててハンドルをきろうとした。
だが、車の進行方向を変えることができない。

 周囲を見ると、他の車も止まらずに彼女の方に進んで行く。

 彼女は、ものすごく大きかった。
片手で俺のセダンを握りしめることだって、できそうだ。

 彼女に捕まったら、何をされるか分からない。


「うわっ、わわわああー! や、やめろぉおー、 止めてくれえ!」

 俺は情けない声で悲鳴を上げる。

 だが車は止まらずに、まっすぐ出口に走っていく。


 俺は恐怖に引きつりながら、前を見る。





 トンネルの出口では、巨大な彼女が嬉しそうに微笑んでいた。




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