《 あこがれ 》
絵 : WarzWarsさん
文 : みどうれい
----------------------------------
「それじゃ、図書館に行ってきます。」
僕はそう言って家を出る。
「行っておいで、コウ、よーく勉強するんだよ」
おばあちゃんが優しく、僕を見送ってくれる。
僕の名前は藤堂光一(とうどう こういち) 十二歳、中学生だ。
夏休みのその日も、僕は教科書を持って図書館に行く。 家にいると、弟とペットのミケが「遊んで〜」と、うるさいからだ。
そりゃあ、僕だって遊んでいたいさ。 でも僕には夢がある、 いっぱい勉強をして、立派な医者になるんだ。 僕がそう考えたのには理由がある。 僕の小さいころに、母さんが難病にかかって・・・そして、二度と帰ってこなかった。 僕は、いっぱい泣いちゃった。 小学校でも、僕だけ母さんがいないので、いつも寂しい思いをしていた。
だから僕は誓ったんだ。 大きくなったら医者になろうって。 僕が、大勢の患者さんの病気を治してあげる。 僕みたいに寂しい思いをする子供達がいなくなるようにするんだと・・・。 天国の母さんも、きっと僕のことを応援してくれているに違いない。
だから僕には遊んでいる時間なんか、ないんだ! 医者になるためには、中学の今からでも勉強をしなければいけない。 夏休みなんか関係ないんだと、
・・・・・・あれ? なんか変だぞ。
僕は図書館に行って勉強しなければならない・・・のだが・・・何故か、僕は別の方向に歩いていってしまう。
何か妙な予感がする。
何かが僕を呼んでいる。
僕の家から図書館までの途中には、剛竜院高校のサッカーグラウンドがある。 夏休みの今、本当なら、この時間は高校のサッカー部員の先輩達が、そこで練習をしているはずなんだけど・・・、誰もいない。
剛竜院高校には、僕の通っている中学からも大勢が進学しているので、僕の知っている先輩も多い。 何か起こったのだろうか?
いや、それよりも誰かが僕を呼んでいるような気がする。 はやく行かなければいけない。 いつの間にか僕は走り出していた。
百合の花のような、甘い香りがする。 何かいる! 感じるんだ、この向こうに、何かとんでもない存在がいる。
恐ろしい胸騒ぎがしたけど、コワイ物見たさというか、僕は、高校運動部のプレハブの部室の影に隠れながら、その場所を見る。
「うわっ!」 僕は驚いて、声を上げる。
サッカーグラウンド横の芝生の上に、彼女がいた。
とんでもない大きさの彼女が・・・。
|