『夢』 試運転(第十一 〜 十六章)

                     作 だんごろう

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第十一章:おもちゃ・・・へ

黒部は、パンティに押し付けられて息ができない。その苦しさで、頭の中がボーっとしてくる。
だが、彩の言葉は耳に入ってくる。悔しさが込み上げてくる。彩の言った“おもちゃ”として、このまま死ぬことが我慢できなくなる。くぐもった声で「ちきしょう、ちきしょう」と同じ言葉を繰り返しながら、両手を振り回して、身体の正面を抑え込まれているパンティを必死で殴った。

彩はそれを口元に軽い笑いを浮かべながら見下ろし、バッグに手を伸ばすために、黒部を恥骨に抑えつけたまま立ち上がり、横のベッドに向けて足を動かす。クリトリスをもう少し、テーブルの縁で擦っていたい思いもあったが、それよりも黒部相手にこれから始まる出来事に気持ちが高ぶってきていた。

恥骨に押し付けられている黒部は、床を踏みしめていた足裏に急にその感触がなくなったことに気付き、顔を無理に捻じ曲げて視線を下に向ける。その目に、自分の足が宙を掻いているのを、さらに、その先に、彩のストッキングに包まれた足が、グレーのカーペットを踏み締めているのが見えた。

黒部には、自分が置かれている状況がすぐには理解できなかった。そこにあるのは“ストッキングに包まれた女性の足”であることは見て取れたが、その大きさが咄嗟に理解できず、“高さ”のイメージが掴めなかった。だが、自分の小ささが頭に浮かび、カーペットを踏みしめる女性の足が、遥か先にある彩の巨大な足だと理解された。瞬時に、カーペットまでの“高さ”がイメージされた。
とてつもなく高い場所に、ぶら下がっていたのだ。
さらに、その“足”が動いている。黒部の体が左右に振られる。
黒部の手は、慌てて掴む所を求め、ロープが絡まっている様なパンティのレース模様を、震え始めた掌で握った。

彩は、ベッドのサイドボードの横に立ち、バッグを見る。
バッグを開けるためには両手が必要で、片手はスカートを押さえ、もう片手は黒部をパンティに押し付け、両手とも塞がっていた。
仮に黒部を手の平に乗せ換えたとしても、そちらの手が塞がってしまう。でも、解決は簡単。黒部をここからカーペットの上に落としてしまえば良かった。

彩は、バッグを開けるために、黒部をカーペットに落とすことに決め、
「ちょっとごめんね。良い子だから、床で待っててね」と声をかけ、黒部を抑えている指を離した。
だが、黒部は、パンティにしがみ付いている。抑えている指が離れても、そこに必死につかまっていた。そして、落ちる恐怖で「やめてくれ、彩さん、お、落ちる」と叫び始めた。

彩は、パンティにぶら下っている黒部を笑いながら見下ろし、
「フッフフ、大丈夫よ。武さんは小さいから、落ちても怪我しないわよ」と声を掛け、黒部をカーペットの上に払い落とすために、軽く腰を振った。
彩の耳に、黒部の慌てた様な声「あっ!あっあ!」が聞こえ、笑ってしまう。その笑い声の中、黒部は落下し、カーペットの上でリバウンドをした。

彩は、足元に転がった黒部をチラッと見て、バッグを開け、中から白いプラスチックの小さなボックスを取り出した。それは、その一面に、いくつかのボタンスイッチが付いている、何かのリモコンみたいな物だった。

***

彩は、縮めた黒部を楽しいおもちゃにするために、次の三つのことを、縮小機を作っている重工メーカに依頼した。
一つ目は、舞を傷つけた凶器と同じ物を、黒部と同じサイズにして用意すること。
彩は、黒部は凶器を持つことでより理性が失われるタイプだと思っていた。凶器を持たせ、舞をレイプした時と同じ様に気持ちを高ぶらせ、凶暴になった黒部を、翻弄し打ち砕くことを思い描いていた。

二つ目は、頭部へのマイクとスピークの埋め込みである。初めて出会ったコビトとしての研究所での縮小体、それと自らを縮めて来たコビト、そのどちらに対しても、彩は、言葉を交わすことができなかった。小さな身体から出る声が小さすぎて聞こえないのだ。
だが、彩は、黒部の恐怖に震える声を聞きたかった、いや、聞かなければだめだと思っていた。
そのため、縮小前の黒部の頭部に、小型マイクと、鼓膜を直接震わせる超小型スピークを埋め込まさせた。

三つ目は、今、バッグから取り出された小型のリモコンに関係している。
彩は、黒部が小さな身体になった時に、怖気で震ってしまうと思えた。恐怖に陥っている黒部を少しずつ壊していくのもそれなりに楽しいとも思えたが、やはり、それでは何か足りない気持ちもしていた。
“おもちゃを、もっと、おもちゃらしくしたい”
その結果、考え付いたのがこれだった。

人間の脳は、進化を続けて現在に至っている。太古、人の祖先が持っていた脳の表面に、さらに新しい細胞が増え、進化を重ね、脳の大型化を図ってきた。そのため、脳は、その奥側に原始的で本能的な部分があり、表面に近いほど、より知的で理性的な部分となり、それらの各部の働きが集合して、人間の“考え”を生み出す構造となっていた。
彩は、その脳の活動に目を付け、おもちゃとしての本質、即ち、彩自身を楽しませることにそれを役立たせることを思い立った。
男が女を求める気持ち、それは大脳の奥の一箇所が司っている。その部分が強く働くことで、女を求め、勃起し、身悶える。そこを自在に操ろうとしたのだった。

彩は、「夢現の会」の会員の中に、脳神経外科の第一人者である大学教授の名前を見つけ、その教授に連絡を取り、それを具現化するものを依頼した。高名な教授であったが、アヤからの依頼に狂喜し、その方法を考え、必要な物を作り、彩の期待に応えた。また、今回の黒部の頭部切開手術では率先して執刀もしていた。

全ての事が、彩の思惑通りに進み、黒部の頭部には、マイクとスピーカーを埋め込むのと同時に、ある種の興奮剤が入れられたカプセルが埋め込まれた。
彩が、リモコンのボタンを押すと、その興奮剤が少量ずつ大脳のその特定部分へ注入され、黒部は、自分の感情との区別も付かないままに彩に操られ、女を求める気持ちが際限もなく大きくなるのだった。

彩は、片手で、軽くウェーブが付いたきれいな髪をかき上げ、そのまま髪を手で抑えて、黒部を見下ろす。
黒部は、カーペットの上で、気絶したらしく、身体を伏せている。
その身体に、ストッキングに包まれた足先を近づけ、足の親指を、その身体に並べてみる。
“小さい!”
彩の足の指は、長めで形が整っている。その指よりも黒部の身体が小さかったのだ。

その黒部を起こすために、つま先で突っついてみる。
彩のヘッドフォンに、黒部の「うっう」と意識が戻ったらしい声がした直後、「あっわわ」と叫び、逃げ始めた。
だが、腰近くまであるカーペットの毛足に邪魔されてうまく進めない。転がっては立ち上がり、また転がりながら進む、その動きは可笑しすぎて、見下ろしている彩はクスクス笑ってしまう。

その黒部のすぐ後ろに、踵を着け、つま先をゆっくりと降ろしてみる。
黒部が、自分の頭上にある巨大な足に気付いたらしく、彩のヘッドフォンからは、「た、助けて、彩さん、助けて!助けて!」と命乞いの声がし始める。
彩は、浮かせているつま先の下にいる黒部に向かって、「ウッフフ、武さん、早く逃げないと踏んじゃうわよ」と声を掛ける。

踵を付けたまま、つま先をさらに降ろしていく、その下から、黒部が息を切らせながら転がり出て、さらに逃げようとする。だが、カーペットの毛足が邪魔で思うように進めない。慌てている黒部は、その毛足の中を四つん這いで進み始める。

カーペットの毛足の中で、見え隠れしながら、息を切らせ、呆れるほどの遅さで逃げている黒部。
その黒部の耳元に、彩のクスクス笑いが聞こえてくる。
“逃げないと!早く、逃げないと!”
四つん這いのまま、腰まである剛直な太い毛の中を、両手、両足を使って、もがきながら進んでいく。
その黒部の背中が、突然、上から押し付けられた。瞬間、息ができなくなり、手足をバタバタさせる。
黒部は、首を捻じ曲げて、後ろを振り返る。でも、上に乗っかっている、黒い網で覆われたものが何なのか、咄嗟に分からなかった。その目を横に向けて、巨大な足の指が並んでいるのを見て、ようやく自分の背中に乗っているものが“足の親指”と分かった。

黒部の耳元に彩のクスクス笑い響く。黒部は、息もままならずに声を出す。
「あ、あ、彩さん、た、助けて・・」

黒部の背骨がギシギシと悲鳴を上げ始めた。背中の重量が増加している。
“俺は踏み潰される”
自分は、このまま、クスクス笑い続けている彩に踏み潰されてしまうと思えてきた。
掠れた声で、必死に声を出して命乞いをする。
「あ、彩さん、た、助けて・・・、こ、殺さないで・・・」

カーペットの毛足に埋もれている黒部。彩は、その小さな背中に、足の親指を乗せている。その彩の耳に、黒部の命乞いが聞こえる。
“怖いのね。私に踏み潰されると思っているのね”
その足の指先に、恐怖で震える黒部を感じていた。
小さく、無力で、そして彩の思いのままになる男。その男に、彩自身が与えている恐怖。
それに思いを馳せると、身体の芯が熱く潤ってくる感じがした。そして、彼女の頭の中に、とても甘く、凶暴な思いが渦巻き始めた。

彩は、上を向き、垂れてきた髪をかき上げてから、また、視線を自分のつま先に戻し、その下にいる者に声をかける。
「ウッフフ、大丈夫よ。まだ、武さんを殺すことはしないわ。ウフッ、それはまだまだ先よ」

彩は、黒部を逃がすためにつま先を上げる。
黒部は、息を切らせながら、「助けてくれ・・・助けてくれ・・・助けてくれ」と声を出し続け、カーペットの毛足の中を這いずり始める。
その黒部の目に、天高く聳えている建造物が映った。それは、先ほど、黒部が乗っていたドレッサーテーブルだった。
黒部の本能が、その下に逃げ込むこと教える。黒部は、必死に、そこに向かって、剛直な毛足の中を這っていく。

彩は、まだ、つま先近くを這っている黒部を見下ろす。その黒部の這う方向から、ドレッサーの下に逃げ込むことも読み取れた。

彩は、片手に持っているコントローラをチラッと見て、カーペットの毛足の中を動く黒部に視線を移す。
彩の口元に、冷たい笑みが浮かんでくる。

“どこへでも逃げて良いのよ。
 でも、このスイッチを押したら・・・
私の身体に恋焦がれ、
私に触れたくて、どうしょうもなくなるのよ。
 そして、私の大きな身体を求めてくるのよ“

彩は、そのコントローラをベッドの上に軽く投げ出すと、ブラウスを脱ぐために、胸の谷間近くのボタンに手を掛けた。



第十二章:逃げる黒部

彩は、足元を這っている黒部を見下ろしながら、ブラウスを脱ぐ。
白いブラウスの中は、豊かな胸を下側から窮屈そうに支える黒いブラ。
それを惜しげもなくさらけ出す。

黒部は、彩のその姿を見上げることもなく、逃げ込む先だけをまっすぐに見詰め、カーペットの毛足の中を四つん這いで進んでいる。だが、その毛足は黒部に取って、剛直で、思うように進めない。

苦しい。息が「ぜぇ、ぜぇ」と切れる。でも、止まることはできない。

彩は、ブラウスから腕を抜きながら、黒部を見下ろす。黒部は、まだつま先からほんの少しだけ進んだだけ。
「邪魔はしないって約束をしたわ。でも、武さん、遅すぎるわよ」

片足をあげ、黒部の身体のすぐ上で、足裏を見せ付けるようにして前後に動かす。
その瞬間、ヘッドフォンから聞こえていた黒部の苦しげな息の音が途切れる。
「どうしての?怖くて息もできなくなっちゃったの?」

クスクス笑いが出てくる。
その笑いを続けながら、黒部のすぐ後ろに、少しだけ勢いを付けて、浮かせた足を床に打ち付ける。直後、黒部の驚きの声が、「あっわっわ」とヘッドフォンに聞こえてくる。
笑いが高まってしまう。上を向き、大きな笑い声をあげ、脱いだブラウスをカーペットの上に無造作に落とす。

黒部の耳に、彩の笑い声が聞こえ、さらに高まる笑いで辺りの空気が震える。
怖気付いた黒部の目に、空を覆うように、白い物が落ちてくるのが見え、思わず首をすくませる。その白い物は、黒部の横に広大な大きさで存在しているベッドとの間に、スローモーション映像の様にゆっくりと落ちてくる。同時に、香水の甘い匂いが気流となって黒部の身体を襲う。

彩は、脱いだばかりのブラウスの横を這っている、虫の様に小さな黒部を見下ろしながら、スカートを外して足元に落とし、片足で隅に寄せる。
さらに、黒部の頭上で、一旦、つま先をブラブラとさせ、それに驚く黒部の様子を楽しんでから、ストッキングを止めているガーターベルトを外し、それをスカートの横に落とした。

大柄で、豊かな起伏を持つ身体が、下着だけを身に纏った姿になる。
アスリートが持つ引き締められた筋肉が、柔らかく透き通る様な白い柔肌が覆っている。

彩は、黒部が逃げ込もうとしているドレッサーテーブルを振り返った。そこに据え付けられていた大きな鏡に、自身の身体が映されていた。

広い背中。絞り込まれるウェスト。
さらに大きな広がりと盛り上がりを持ち、同時にその高さを誇るヒップ。その頂から緩やかに繋がる張りのある太もも。
悪くはなかった。体を覆う黒い下着が、透けるような白い肌をより一層セクシーに装っていた。

身体を鏡の正面に向ける。豊かな乳房の下半分を隠している黒いブル。レース部分で陰毛を透かさせている小さめの黒いパンティ。さらに、パンティの下側に白い肉感的な太ももを覗かせ、その先の黒い網目のストッキングが、逞しささえ感じさせる長い太ももと、スッキリとした脛のラインを際立たせていた。

彩は、その自分の姿を黒部に見せ付けたくなる。
鏡から目を外し、両手を腰に当て、足元の黒部に、茶目っ気たっぷりに声をかける。
「うっふん、ねぇ、武さん、下着姿になったのよ。どう、セクシーでしょ?」

だが、黒部は、返事をすることもなく、一心不乱にカーペットの中を進んでいる。
「ねぇ、武さん、私を見てよ」
そう声をかけても、黒部はその声に反応することもなく、ひたすら逃げ続ける。
彩は、虫の様にカーペットの中で動いている黒部を見下ろし、口元で “フッ”と笑う。
“せっかく声をかけてあげたのに・・・良いわ、見せ付けてあげる ”

黒部の前に聳えるドレッサーが、その存在を増しつつあった。だいぶ近づいた。もうすぐ、その下に逃げ込めると思えてきた。
“もう少しだ、もう少し・ .・”
少し、安堵の気持ちが沸いてきた瞬間、その黒部の斜め右に、彩のストッキングに包まれた左足が、次いで、斜め左に、彩の右足が床を震わせながら降ろされた。
黒部は、ギョッとして、動きを止め、自分の前に降ろされた足を交互に見やる。その足の間を通らなければ、ドレッサーの下に潜り込めない。そのまま動けなくなってしまう。

ドレッサーを背にした彩は、少し腰を曲げて黒部を見下ろし、声をかけた。
「大丈夫よ。邪魔はしていないわよ。足の間を通っていけるでしょ。それより、どう、武さん、今の私、セクシーだと思わない?」
話しながら、できれば、例のリモコンは使わずに、女の魅力だけで黒部の脳を蕩けさせたいと思った。

黒部は息を切らせ、彩の両足の向こう側にある、ドレッサーの下側の暗い影の部分に視線を向ける。黒いストッキングに包まれた巨大な両足の間を通れば、その暗い影の中に逃げ込める。
だが、黒部は、彩の “邪魔をしない”の言葉を信じられなかった。もし、動いたら、目の前の巨大な足に踏み潰される気がした。だが、逃げるためには、その言葉を信じるしかなかった。その迷いの中で、恐る恐る彼女の顔を仰いだ。

黒部の行く手に大きく聳えていたドレッサー。それよりも遥かに高く、這ったままでは顔を見上げることもできない彼女の巨大な身体。
その顔を見るために、上体を起こしながら視線を彩の身体に沿わせていく。
パンティ、さらに大きな乳房を支えるブラが見え、その豊かな乳房越し、信じられない位の高みの中で、彩の顔は絶対的な美しさを誇り、笑っていた。

彼女に対する、強い憧れの気持ちが思い起こされる。
彼女に触れたい気持ちが、絶望と同時に沸いてくる。
だが、彩のあまりにも巨大な身体に圧倒されていた。
怯えが身体中を駆け巡り、動くこともできなかった。
黒部は、真っ直ぐに上を見上げたまま、遥かな上空から見下ろす彩の瞳から、目を逸らすことさえもできなくなっていた。

彩は、その小さな体が自分のことを見上げていることを見て取り、
そこで固まった様に動かない黒部に、「あら、私の魅力にドギマギしているの?」と声をかけ、クスクスと笑う。
“どんな顔をして、私のことを見上げているのかしら ”
腰を曲げて目を凝らしてみても、立った位置からでは、小さな黒部の顔の表情は見えなかった。彩は、その小さな顔の表情見たさにしゃがんでみた。

呆然と黒部が見上げる中、その巨大な存在が突然動き始める。辺りに気流が巻き起こる。膨大な質量の急激な移動で床が揺れる。
黒部に向かって目の前の山が、一気に崩れる様な印象に襲われる。一瞬、驚愕の表情を浮かべた黒部は、思わず体を丸めて蹲ってしまった。

彩は、しゃがんだ姿勢で、顔の真下にいる黒部を見下ろした。広げた太ももの間、パンティのすぐ前に、黒部が怯えて体を丸めて蹲っていた。

丸まって蹲る体は信じられないぐらい小さい。まるで小さな虫の様だった。
“何だか、少し縮めすぎちゃったみたいね ”と思いながら、その小さな体に声をかける。
「どうしたの、武さん。そんなに丸まっちゃって。まるでダンゴ虫みたいよ」
だが、黒部は、頑なに蹲った姿勢を崩さない。
「ねぇ、武さん、顔を見せてよ」

何を言っても蹲るままの黒部。
彩は、蹲る黒部に片手を近づけ、その上方で、指を “パチン”と鳴らしてみる。だが、黒部は、その音の方に顔を向けるどころか、“ヒッ!”と驚きの声をあげ、さらに小さく体を丸めてしまった。

蹲ったまま、恐怖に耐える黒部。彩は、その黒部の恐怖に思いを馳せる。
“怖いの?私が怖いの?”
口元に笑みが浮かんでくる。心の中に悪の華が咲き、セクシーに心の中を満たしていく。
パンティの前で蹲るだけの小さな男に哀れさを感じる。そして、その哀れさが、彩の中にサディスティックな高ぶりを生んでいく。
軽く歯をかみ締めてその思いを味わい、黒いマニキュアが施された人差し指をその小さな身体に近づけ、ダンゴ虫の様に丸まっている小さな体のすぐ上にその指を翳す。
光の加減で、黒いマニキュアが血の様に赤く光る。
彩は、その爪の先で、黒部の背中にそっと触れる。黒部は “ヒッ”と悲鳴を上げ、反射的に自分の背中を振り返る。その黒部の驚きを無視して、小さな背中を愛撫する様に爪の先で撫でる。

黒部は背中を振り向いたまま。巨大な指が、自分の体に触れている。黒く光る爪の硬い感触が背中を上下に往復していく。
恐怖で黒部の心臓は早鐘を打つ。体が多量の酸素を求め、“アウッアウッ”と呼吸音が出てしまう。

彩は、小さな背中に触れていた指を持ち上げる。黒部の顔が恐怖の表情のまま、その動きを追っていく。
その指先を、黒部の直前のカーペットに着ける。指先がカーペットの毛足を押し分ける。
カーペットの毛足の中に隠れる様に蹲る黒部。その目の前に、彩の指先が降ろされている。

彩は、指先をカーペットに押し付けたまま、パンティで包まれた股間の下まで、カーペットをなぞっていく。カーペットの毛足が二つに割れ、蹲る黒部と彩の股間の下まで、真直ぐにその軌跡が残る。
「ねぇ、武さん、ほら、通り易くなったでしょ。早く、ここを通ったらどうなの?」

彩は話しながら、その指を股間に押し当てる。パンティに、ヴァギナの形が浮き彫りになる。
さらに、指でパンティの上から、ヴァギナの外周をゆっくりと撫ぜ、動けない黒部を見下ろしながら、その指を上にずらし、パンティの中に潜り込ませていく。
指は、陰毛の茂みを掻き分け、クリトリスに触れる。そこは既に充血し、刺激を受けることを待ち受けていた。
その感触を指先で確認してから、指はそこを通り過ぎて、グッショリと濡れたヴァギナの入り口に到達する。そして、その粘性の高い液体を纏まり付かせて指はクリトリスに戻っていく。

怯え、動くこともできずに、彼女の股間を見上げている黒部。彩は、その姿を見下ろし、指先でクリトリスを撫でていく。
黒部の怯えた姿が、彩の快感を高めていく。吐息が、軽く歯をかみ締めた口から漏れる。

黒部は、彩のパンティが、その中で動く指の形を浮き彫りにしているのを見上げていた。
彩の吐息が、黒部の気持ちを喚起するように、耳元に妖しく聞こえ始める。
浮き彫りにされた指が、彩の身体の真下に移り、 “グニュ”と彼女の体の中に埋まる。さらに、指がヴァギナを出入りする、 “グチュグチュ”といやらしい音が聞こえ出す。

彩は、黒部を見下ろし、指をヴァギナに出入りさせる。噛み殺した笑いと熱い吐息が漏れる。
快感の高まりが、さらなる刺激を求める。小さな黒部をヴァギナに入れたくなる。そして、その中で苦しげに動く黒部を味わいたくなる。
その思いのまま、彩は声をかける。
「フフッ、私のここが・ .・武さんを食べたいって言っているの・ .・」
その言葉が終わる前に、その小さな体を拾うために、逆側の空いている手を黒部に向けて下ろしていく。

黒部の視界に、上から迫るものが入ってきた。
直ぐに顔を上に向ける。彩の巨大な手が、黒部の体を摘もうとして、指を少し広げて近づいていた。
黒部は、咄嗟に目の前の彩の股間に視線を移す。
“俺は、あの中に入れられる! ”
どうにもならない思いの中で、恐怖が極限で弾ける。大声で吼える。
「おっおぅーーー!」
そして、力の限りで、目の前のカーペットに残る、彩の指が擦った跡を必死に這いずり始めた。

彩は、チョコチョコと動き始めた黒部を見下ろし、その体を摘もうとして指先で追いかける。だが、“逃げるのを邪魔しない”と約束をしていることを思い出し、手の動きを止め、進んでいく黒部を見送ることにした。

黒部の小さな体は、ドレッサーの下を目指して、彩の股間に下に入っていく。
彩は、その動きを見てから、パンティから手を抜いて立ち上がり、 “ふ〜”と溜息をつき、ベッドに腰を下ろした。

「そうよね。まだまだ先があるものね。ウッフフ、武さん、もっともっと楽しませてもらうわね」
彩は、こみ上げる笑いのままに、上を向いて大きな笑い声を出した。



第十三章:鏡の中の彩

黒部は、四本あるドレッサーの脚の内、壁際にある脚の後ろ側に逃げ込んでいた。
脚の太さは5センチ角ぐらい。その後ろの壁との2センチぐらいの隙間に入り込み、少し落ち着きを取り戻してはいた。

”おれは、騙された・・・”
彩のハッとする程の美しい顔が頭に浮かんでくる。
その彼女の言葉に有頂天になり喜んでいた自分が悔しかった。
元から彼女にはその気はなかったのだ。だが、自分は、あの身体を自由にできる。あの身体を舐めまわせる。あの身体にチンボコを突っ込めると喜んでいた。

“やつは、それを腹の中で笑っていやがった”
そう思うと、無性に悔しくなった。
「ちっきしょう!騙しやがって!騙しやがって!」

途端、彩の声が耳元から聞こえる。
「あら、失礼ね。私は騙してなんかいないわよ」
その声は、まるで、彩が横に立って話しかけている様に黒部には聞こえ、思わず、左右を見渡してしまう。だが、当然ながら、横に自分と同じサイズの彩は立っていない。
黒部は、今の自分の小ささを思い出し、また悔しさがこみ上げてくる。

「嘘だ!おまえが、俺を騙したんだ!」
彩には、小さな男の罵りの言葉が可笑しかった。その笑いを抑え、ベッドに座って、少しずれ落ち始めたストッキングを片足ずつ脱いでいく。先ほどまでのあそこが疼く感じは収まり、リラックスした気分で、 “あ〜あっ”と座ったままで伸びをしてから、ブラとパンティだけの姿でベッドに仰向けに倒れこむ。

さらに、ベッドの隣、足元側のドレッサーに向けて、身体を横向きにする。
ブラに包まれた、張りのある大きな乳房がずしりと、その重みで横にずれる。

大き目のベッド。その上に、横向きの彩の大柄な身体が、山脈の様に横たわる。
くびれたウェストと、それと対象的に張り出したヒップと太もものライン。それが、エロチックな尾根の曲線を描いている。
彩は、その姿勢で、ドレッサーテーブルの下に視線を移す。その奥側にあるテーブルの脚の裏側に黒部が隠れている。

「ねぇ、3センチに縮めて欲しいって言ったのは武さんなのよ。忘れちゃったの?」
黒部は、その時のことを思い出していた。
”そんなこと言ったような・ .・でも・ .・違う・ .・だから・・・ ”
思っていたことの続きが、怒りを含んだ言葉になる。
「だから、騙されたって言ってんだ!ちっきしょう!俺を騙しやがって!」

彩は、ベッドから長い足を伸ばし、ドレッサーテーブルの上にその片足をドサッと乗せる。テーブルが揺れ、その脚に寄り添っていた黒部の体が弾かれる。
「良いわ、騙されたと思っているのなら、勝手に思えば良いでしょ。それより、武さんはどうなの?言ったことを全部守ってくれるの?」

黒部は、自分が寄り添っている巨大な柱が揺れたことで、ショックを受けていた。それを、彩が揺らしたことは明らかだった。
黒部に取って不動に思えたこの柱も、単なるテーブルの脚だと気がつく。彩がその気になれば、このテーブルも簡単に退かされてしまうことが頭に浮かぶ。

黒部に先ほどの勢いはなくなる。でも、悔しさは心の中に残っている。彩に言われたままになることはできなかった。
「俺は、俺は・・・嘘をつかない・・」

彩は、黒部の言葉の勢いのなさで、黒部がビクつき始めたことが分かった。
もう一度、テーブルに乗る片足を持ち上げ、さっきよりも勢いをつけてテーブルにドサッと乗せる。直後、思ったとおりに、黒部の驚きの声が「ヒッ!」とヘッドファンに聞こえ、クスクスと笑いが出てしまう。
その笑いを続けながら、口答えをした黒部に、自分の立場を思い知らせてやりたくなってきた。

「ねぇ、武さん・・・」
彩は、片手を身体の後ろに回し、柔らかく盛り上がっているヒップの頂きを、その感触を確かめるように手の平で撫でる。
「私のお尻が好きなんでしょ?」
話しながら、人差し指でお尻の谷間に、パンティの上から沿わせていく。
「ウッフフ、武さん、そこの穴の中まで舐めてくれるって言ったわよね」

さらに、指の腹でパンティの上からアヌスに触れる。
「ここを舐めてもらうと、けっこう感じるのよねぇ・・・
でも、ウッフフ、中まで舐めてくれるってことは・・・武さんをこの中に入れても良いってことでしょ。そうよね、武さん」

彩は、暫くの間、ヘッドファンに耳を傾け、黒部の返事を待ってみる。だが、彩の言葉に対する返事はなかった。
「あら、返事がないわね。でも、武さんは嘘をつかないものね。フフッ、そうでしょ?」
彩は、ヒップにまわした手を、自分の身体を愛撫するように、ゆっくりとウェストの括れの部分に滑らせる。
そこから、その指先を、身体の側面の曲線に沿ってはわせていく。括れたウェスト、張り出した腰、それに続く太ももと指先は滑り、そこから内腿を伝い、身体の中心に向かっていく。
彩は、テーブルに乗せた片足を上げ、パンティに覆われた股間部分を広げ、そこに指先を滑らせ、そのまま、指先でクリトリスをパンティの上から擦る。
瞬間、ビリッとした電気が身体に奔る。
そこを弄びたい気持ちを抑え、さらに、その奥の尿道口に指を移す。

「それに・・・武さんは好きな女のオシッコを飲みたいんでしょ?
だから、私のオシッコを全部飲んでくれるのよね。ウッフフ、ここに口を直接つけて飲んでも良いのよ」

ヘッドフォンからは、黒部の押し殺した息が聞こえる。その息遣いで、黒部が怯えている様子が手に取る様に、彩には分かる。

「でも・・・ねぇ、その小さな体で、全部飲むのは大変よね。きっと、武さん、私のオシッコで・・・フフッ、体が破裂しちゃうわ」
彩は、自分の言葉に怯える黒部を想像し、笑いが込み上げてきた。でもまだ話の途中、その笑いを抑え、指をさらに身体の奥側に移す。ヴァギナ部分、押さえる指がパンティに窪みを作る。

「それに、ほらね、武さん、私のあそこが疼いているの。・・・覚えてる?
武さんの舌は長いから、その舌でここを奥まで舐めてくれるって言ったわよね。たしか・・・“舌で奥の方までグルグルかき回す”って言ったのかしら?」
テーブルに上に黒部が先ほどいた“部屋”の残骸がある。話をしている彩は、それに気付いた。
つま先を伸ばし、“部屋”の残骸をテーブルの端に押し出し、黒部の近くを狙ってテーブルから落とす。
テーブルの脚にへばり付き、彩の話に息を詰めて蹲る黒部の体のすぐ横に、上から大きなものが落ちてきて、ドッシャ!と衝撃的な音を立てる。
黒部は、その音に心臓が止まるほど驚き、ギャッ!と悲鳴をあげた。

狙い通りに驚いた黒部に、彩の抑えていた笑いが噴出してしまう。
「ウッフフ、やだ、武さん、可笑し過ぎ、フフフ、涙まで出ちゃう」
彩は、笑いが少し収まるを待ってから、テーブルの下を覗き込む。
「残念よねぇ。武さん、ご自慢の長い舌も、今じゃ、数ミリの長さしかないのよねぇ。武さんは約束を破りたくないから、その舌で、私のここを奥の方まで舐められるか、心配しているんでしょ?
でも、大丈夫よ。私が・・・ウッフフ、武さんを指で奥の方まで連れていってあげるから。
だから、武さん、私を少しでも気持ち良くしてね。一生懸命、それこそ、死ぬほど頑張らなければだめよ」

直後、彩は面白いことを思い付いた様に噴出す。そして、可笑しそうに言葉を続ける。
「あっはははは・・・“死ぬほど”じゃなくて、“死ぬまで”なのかしら。ねっ、武さん!」

彩は、テーブルの下へ送っていた視線を上に戻す。ドレッサーテーブルの上には、大きめな鏡があり、それが、下着姿の彩を、斜めに足元側から映している。
その姿が目に入る。彼女の笑いが止まる。

鏡に映る、ベッドから身を乗り出して、上目使いに自分を見ている姿がとてもセクシーに見える。
その姿に誘われる様に、彩はベッドから降り、ドレッサーテーブルの椅子を引いて、そこに座る。
そして、鏡に映る自分の姿に魅入っていく。

黒部が嗚咽を漏らしている。
彼女への憤り、自分自身への悔しさ、惨めさが混沌として、抑え切れない感情におそわれていた。

初めから彼女から愛されることはないと分かっていたはず。
それでも、彼女とのセックスを夢見ていた。
どうせ死刑になる身。彼女とセックスができるのならば死んでも良いと思っていた。

だが、今の自分は、彼女の周りでうろつきまわる虫以下の存在だった。
“彼女とのセックス”ができると思っていた分、落胆が大きく。そう思っていた自分がどんなに身の程知らずだったのか、彼女の言葉で思い知らされた。

勃起しても7センチの男根はさらに縮こまっている。蹲りながら、その男根を両手で包み込む。
気持ちが底なし沼に落ち込んでいく。何かに縋り付きたくなる。自分を助けてくれるものに縋り付きたくなる。

彩は、鏡に映る自分の姿に見入っている。少し顎を引き、片方の眉を持ち上げてみる。映画の看板に描かれたハリウッド女優みたいに、鏡の向こうの彩がポーズを作る。
ヘッドファンからは、黒部の嗚咽が聞こえている。
その声を聞きながら、彩は鏡に向かって、笑ってみる。鏡に映る顔が妖艶に笑う。
その笑みを浮かべたまま、黒部に向かって声をかける。
「そうねぇ、3センチしかない武さんに何をしてもらおうかなぁ。でも・・・そんな小さな体じゃ、長くは持ちそうもないし・・・どうしようかなぁ・・・ウッフフ、迷っちゃうわ」

彩は、表情を色々と変えて、鏡に映る自分の顔の変化に見入りながら、黒部の答えを待っている。だが、相変わらず啜り泣きの音しかヘッドファンからは聞こえない。
彩は、鏡の中の自分に向かって悪戯っぽくウインクをしてから、ブラに手を掛けてそれを外し、ドレッサーテーブルに乗せる。
ずっしりと重い二つの乳房が現れる。
大きく、しかも重力に打ち勝つようにその形を誇っている乳房。そして、少し先端が開いているピンク色の乳首。
両手の人差し指で、その乳首に触れる。さらに、指の腹で小さく円を描く様にその先端を撫でる。
淫乱なポーズを楽しむ様に、舌を出して上唇をセクシーに舐め、少し鼻にかかった甘い声で、独り言の様に言葉を出す。
「おもちゃは、私を気持ち良くするために・・・命がなくなっていくの・・・」

彩は、乳首の先端を撫でていた指を広げ、豊満な胸を両手の掌で下側から包み込む。大きすぎる胸は、手の平に収まりきらず、手の平から溢れている。
その姿を熱っぽく見つめ、鏡に映る自分に、声を出さずに話しかける。

“あなたは、とても綺麗。そして、とても残酷。それが、とっても素敵。
でも・・・美しさには犠牲が必要なの。犠牲があるから、美しさが輝くのよ。
だから、あなたは、この先も、あなたに憧れる男達のちっぽけな命を奪っていくの ”

鏡を見つめ続ける彩は、ふと、明日、テレビ収録があることを思い出した。そこでは、彩は、聖母マリアのイメージになる。

彩は、自問する。“今は何になろう?”
サディステックな気持ちが渦巻くこの瞬間に、最も相応しい姿になってみたくなる。心の中にイメージが浮かんでくる。それは、“悪と善を超越した、光り輝く天使”。そして、自分自身に、その美しさを投影したくなる。

彩は、その姿を想像し、メイクアップの道具を取り出す。
光り輝く天使の様な女性。それに向けて自分を変えていく。
手馴れたメイクアップが進んでいく。
抑え気味なファンデーションで、チークカラーはピンク。
形の良い眉はそのままにして、アイシャドウは、青系とピンク系を混ぜて薄く。
口紅は・・・

鏡の中の彩の顔が変わっていく。そのイメージに合わせて表情を変え、眩い笑みを浮かべる。

彩のヘッドフォンに、啜り泣きに混じって、子供の様に喋る黒部の声が聞こえ始めた。
「うっう、おばあちゃん・・・怖いよ、おばあちゃん・・・助けて」

どうにもできない感情に押し流された黒部。
崩壊しかけた感情は、子供の頃に戻るしかなく、そして、唯一、黒部を愛してくれた祖母の面影にすがり付いていた。
黒部の中学の制服姿を楽しみにして、その制服姿を見る前に亡くなった祖母。乱暴で、小さい頃から両親に見放されていた黒部。その黒部を可愛がっていたのは、同居していた祖母だけだった。
喧嘩をし、怪我をさせてしまった相手の親が家に怒鳴り込んでくる。それを平謝りにしていた祖母。その姿を見て、祖母にとても悪いことをしたと思っていた。
相手の親が帰った後、祖母は別に怒るでもなく、黒部の身体を抱きしめ、「武ちゃん、いい子になってね」と優しく話す。黒部自身も、その時は、もう二度と喧嘩をしないと子供心に誓っていた。
だが、相手の挑発に血が騒いでしまう。そして、懲りずに喧嘩をしてしまう。その繰り返し。それでも、見放さなかった祖母だった。

「おばあちゃん、助けて・ .・うっう、お姉ちゃんが僕をいじめる・・・」

彩は、黒部の言葉に噴出してしまう。
“やだ、おばあちゃん? おばあちゃんのことを思い出しているの? ”
恐怖に陥っている黒部の反応は楽しい。だが、怯えるだけの黒部に飽き始めてもいた。
彼女の視線が、ベッドの上にある、黒部の感情をコントロールするリモコンに向く。その耳にまた黒部の声がする。

「お姉ちゃんが怖いの。うっうう、おばあちゃん・・・助けて・・」
彩は、黒部の幼児言葉にクスクスと笑いながら、ベッドの上に手を伸ばし、そのリモコンを拾い上げる。
笑っている彩の顔が鏡に映る。その顔の前に、白いリモコンを持つ手が浮かぶ。
彩の指がそのリモコンをゆっくりと撫でる。そして子供に話しかける様に、黒部に優しく言葉
をかける。

「武ちゃんは、そのお姉ちゃんが嫌いなのかしら?」
彩のヘッドフォンに泣きながら話す黒部の声がする。
「お姉ちゃん、うっうう、僕は・・・お姉ちゃんが好き・・・でも・・・お願い、怖いことしないで」
彩は、リモコンを指先で撫でながら、黒部にまた話しかける。
「そう・・・でもね、しょうがないのよ。武ちゃんはお姉ちゃんのおもちゃなんだから」

黒部が弾けた様に、言葉を出す。
「いやだ! いやだ! いやだ! 僕はお姉ちゃんのお婿さんになるんだ!おもちゃじゃないよぉ!」
彩の顔が、天使の様に、とても優しげな笑みを浮かべる。そして、指先をリモコンの表面に滑らせ、黒部の心を変えるそのスイッチに乗せる。
「ごめんね、武ちゃんをお婿さんにはできないの。武ちゃんの役目はお姉ちゃんを楽しませることなのよ」
話し終わった彩は、その微笑を浮かべまま、指先に軽く力を加えてそのスイッチを押す。

彩のヘッドフォンから聞こえていた、繰り返される黒部の声、
「お婿さんになるんだ、おもちゃはいや、お婿さんになるんだ、おもちゃはいや・・・」
それが途切れ、代わりに絶叫が響く。

黒部が上げた絶叫は、頭部にある機械が作動した合図だった。
薬が効くまでには数分掛かり、また、脳には痛みを感じる痛点がないため、黒部が痛みを訴えることもなく、静かに変化が起こる。
そのため、リモコンのスイッチを押しても、それが作動したのか分からないまま、数分経ってからの黒部の様子で、ようやく、その作動が確かめられると、例の医学博士から説明を受けた。
彩は、スイッチを押してから、数分間待つ自分の間抜けな姿を想像してしまった。それは彩には許されないことだった。

大量に薬を投与して、スイッチを押したら、直ぐに黒部に変化が現れる様にしたかったが、それは脳細胞の死滅を招く危険があり、場合によれば、まったく考える力を失うと、医学博士から言われた。
おもちゃに少しは考える力を残しておきたかった彩は、それを止めることにして、その代わり、スイッチを押した瞬間に、黒部に悲鳴を上げさせることを思いつき、機械の作動開始と合わせて、強烈な痛みを黒部に与えることにした。

今、彩がリモコンのスイッチを押したことで、黒部の頭部に埋め込まれている装置から、中枢神経に電気信号がパルス的に送り込まれている。
痛みは続くと慣れる。そのため、信号には間隔があけられていた。
黒部は、経験をしたこともない痛みに断続的に襲われ、のた打ち回り、絶叫を上げる。
その声で、彩は、装置が動き始めたことを理解し、リモコンをテーブルに置き、断続的な絶叫が聞こえるヘッドフォンを頭から外す。

彩は、鏡に向かう。やはり、邪魔なヘッドフォンが無い方が、魅力的な顔になる気がしてくる。

一旦、手で髪をかき上げてから、ブラシを取り出して髪のブラッシングを始める。彩の髪がキラキラと光りだす。
外されたヘッドフォンからは、繰り返される悲鳴と、それに混じって、痛みを堪えて必死に出される言葉が小さな音で漏れていた。

「お婿さんに・・・おもちゃはいや・・・おもちゃ、いや・・・」
悲鳴の間でかき消されそうな言葉、それは、黒部の最後の希望。
彩は、その音を気にすることもなく、鏡の中の自分に見入っている。

パンティだけの姿で、ドレッサーの前に座っている彩。
澄んだ大きな瞳が光る。長い睫毛にくっきりとした切れ長の目。高目の整った鼻。少し厚めのセクシーな口元が微笑む。

彩は、天使の笑みを浮かべ、鏡に映るその顔に満足し、ゆっくりと髪を梳かしていく。



第十四章:黒部の変化

激痛が不意に訪れ、一気に迸る。
息が止まる。口が、裂けるぐらいに開く。
背骨に直接鉄の棒を突き入れられた様な痛み。
その痛みに襲われ、それから逃げるように体を捩る。
痙攣する両手が掴む物を求めて、カーペットの太い毛を握る。
痛みが身体を電光の様に駆け巡っていく。全ての筋肉が収縮する。
直後、肺の中の空気が、一気に喉を通り排出され、それが絶叫となる。

痛みに耐える体は、空っぽな肺のまま。急沸するアドレナリンが酸素を求める。
乾ききった口が、急いで空気を吸い込もうとする。だが、痙攣をしている体では満足な呼吸はできない。アッワワワと詰まった音を出し、少量の空気が肺に送り込まれが、十分吸収されない内、悲鳴となって排出される。

唐突に激痛が去る。痙攣をした筋肉が、そのまま体の震えになる。
絶叫で痛みつけられた呼吸器官が、ハアハアと苦しげな息をする。
去った激痛は、また襲ってくる。それが連々と繰り返されている。
次に来る痛みを体が待ち受ける。恐怖の坩堝の中でそれを耐える。

子供の頃に戻っていた黒部の意識は、その強烈な痛みでかき回される。
頭に浮かんでいた、優しかった祖母の顔が、痛みの中で白く弾け飛ぶ。
その心の闇にフラッシュバックする、鉄格子越しに仰ぎ見た彼女の顔。
だれよりも美しい彩。痛みに怯えながらもその姿に必死に許しを請う。
助けてくれ!・・・助けて!・・・

リモコンのスイッチが押され、黒部が発した初めの絶叫から、もうすぐ3分になる。
だが、繰り返される痛みに翻弄されている黒部には、時間の感覚がなくなっていた。
永遠に続く、痛みの中にいる様な。あるいは、それさえも考えられなくなっている。

痛みを余分に黒部に与える必要はなかった。数回の悲鳴を上げさせれば良かったのだ。
その悲鳴で、黒部の頭部の装置が作動したことを十分に知ることができるはずだった。
例の脳外科医でさえ、数回だけ、痛みを発する信号を出すことを、彩に提案していた。
だが、彩に取って、これは復讐でもある。やはり黒部に痛みをより味わわせたかった。
ただ、長時間の痛みは、黒部から考える力を奪い、そのまま廃人にする恐れもあった。
そのため、痛みを与える時間を3分間と決め、その時間で信号が止まる様にしていた。

その3分が、今、経過している。

だが、それを知らない黒部は、蹲ったまま、頭の中に浮かぶ彩の顔に懇願を続けている。
“助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい。助けて下さい・・・・”

彩の顔が弥勒菩薩の様に微笑む。心の闇の中で、その微笑が光を発し、闇を払っていく。
黒部は、その瞬間、恐怖を持って待っている次の痛みが来ないことにようやく気付いた。

“俺は、助かる・・・? ”
彼女が、自分の全ての罪を許してくれた様な思いが湧き、涙がこぼれて止まらなくなる。
人を殺め、その罪で死刑と決められていた。だが、自分が悪いと思ったことはなかった。
その原因は、世の中にあると思い、むしろ、自分は夢を奪われた被害者だと思っていた。

だから、悪びれて生きてきた。それが夢を奪っていった世の中への復讐のつもりだった。
だが、心に浮かぶ、彩の神々しい微笑みの前では、それが通用しない気持ちがしてきた。
彩は女神だった。ちっぽけな自分の罪の許しを請い、その足元に平伏すべき女神だった。

今までの罪を罰するために、彼女は女神となり、巨大な姿で現れてきたとも思えてきた。
黒部に敬虔な心が芽生え、生まれたばかりの赤ん坊の様に、気持ちが純粋になってくる。
痛みは、彩が追い払ってくれた。頭に浮かぶ彩の姿に、泣きながら自分の罪を悔やんだ。

今までの自分の悪行が、次々と思い起こされ、それが、自分の罪深さをより認識させる。
あの夜、奥深い山の闇の中で、自分が殺めてしまった、可憐な若い女性の姿も思い出す。
悔やんでも悔やみきれない、絶望的な悔恨。自分の罪深さの中で、意識がもだえ苦しむ。

“ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・”
やがて、懺悔の気持ちは、自分を裁いて欲しい思いで、彼女の巨大な姿に向かっていく。
“巨大な彼女に裁いてもらう” その思いは、とても甘く、黒部の心の中に染込んでいく。

そして、黒部は立ち上がり、彩の前に出るためにドレッサーテーブルの脚の影から出た。
ドレッサーテーブルの前には、いすに座り、先ほどらいから鏡に見入っている彩がいる。
そこから投げ出される綺麗な長い足。その先端の巨大なつま先が黒部のすぐ近くにある。

大きい。とても大きい。足先の親指だけでも、自分を簡単に踏み潰せる大きさがあった。
でも、その足先に恐怖を感じなかった。むしろ、彼女の巨大さに誇らしさを感じていた。

「彩・・・、彩さん・・・、俺、俺・・・」

白い形の良い足。ワインレッドにきれいに塗られたマニキュアが、鈍く光を反射している。
黒部は、カーペットの毛足をかき分けながら、その先頭にある、足の親指に向かって進む。
彩の足からは、一日中履いていたハイヒールの皮の匂いと、甘い香水の香りが漂っている。
黒部が、その匂いを吸い取ろうとして鼻をヒクヒクさせる。頭の中が溶けていく気がする。
そしてに、その匂いに誘われるままにカーペットを踏みしめているつま先に近づいていく。
手を伸ばせば、その足先に触れる近さ。足指の指紋が、透明な肌に模様を浮かばせている。
その上の爪は、ちょうど黒部の胸の高さ。ワインレッドの色が女性らしく爪を飾っている。

黒部は、そこで、思わず跪いてしまう。
黒部の心の中、その全てを占める彩。黒部に取っては、女神としての存在。その彩の足先。

そこに向かって、顔を近づける。皮と香水の匂いが強くなる。
黒部の唇の直ぐそこに、透けるような白さの彩のつま先がある。
黒部の感情が渦巻いていく。悲しみ、喜び、自分に対する憤り、涙がこぼれてくる。

「俺、俺、彩さん・・・好きだ!好きだ!好きだ!」
心の底からの迸った思いが、大きな声になり、口から出てくる。
そして、躊躇いながらも、顔を前に出し、口を彼女の足の指先に着ける。鼻先と唇が、彩の皮膚に微かに触れる。

その瞬間、突然、黒部の体の中で、 ”熱”が沸きあがってきた。経験をしたこともない様な衝動が、体の中心から速度を持って広がる。
頭の中で、赤い火がチロチロと燃え、さらにその勢いを増していく。心臓が高鳴ってくる。体中の血管の中で、血が騒ぎ始めている。
叫びだしそうな感情のままに、彩のつま先に顔を押し付ける。

黒部は、今までになかった様な、渦巻く欲情に襲われ始めていた。その中で、自分自身が消えていきそうな気がして、一瞬、不安になった。だが、直ぐに、“熱”がその不安さえも飲み込んでしまった。
体の中を駆け巡る、熱さを感じる“熱”はさらに高まる。彩のつま先に押し付けた口で、ハァハァと息をする。性への衝動が沸騰し、さらに湧き上がる。
その欲求のままに、白い皮膚をベロベロと舐め始める。男根に向かって、体の血が集まってくるのを感じる。
その男根に片手を伸ばす。直後、その感触に驚き、慌てて顔を下に向けた。

「うっ!でけぇ!?」
そこには、信じられない様な物があった。
“15センチ、いや20センチはある!”
黒部のコンプレックスの根源であった、勃起しても7センチの物。それが、今までの数倍の大きさで、隆々とそそり立っていたのだ。
数秒間、それをじっと見ていた黒部の表情が変わってくる。嬉しさで頬が強張ってくる。気持ちが有頂天になってくる。
大きな男根は、黒部の萎縮した気持ちを変える。大声で笑いたくなるように気分が高揚してくる。

“彩に、これを見せてやりてぇ!”
彩が自分の前に跪き、物欲しげに、これを見つめる姿が頭に浮かんでくる。

”やりてぇかぁ?そうだよなぁ、お前は、俺とやりてぇんだよなぁ ”
すぐさま、彩の髪の毛を鷲づかみし、その口に、チンコを押し付ける。彩は、本当は、このでかいチンコを舐めたくてしょうないと思っている。でも、女だから、男の力で強引に口の中に入れられるのを待っているんだ。
そう思えてくる。

チンコをぐいぐいと押して、その口を無理に開けてチンコを押し込んでやる。チンコを喉の奥まで入れてやる。息を止められた苦しさで、彩に涙を流させてやる。
その涙を無視して、彩の髪の毛を掴んだまま、彼女の頭を前後に揺り動かす。彩も所詮は女。男に蹂躙される喜びで、自分からしゃぶりだしてくる。

頭に浮かんだ、その光景に興奮し、太い男根を握り、しごく。
先端からヌルヌルとした液が漏れてくる。
“やりてぇ!これを彩のおまんこに突っ込みてぇ!“
黒部の頭の中で、男の本能がどんどん膨らんでくる。手の平を、彩のつま先の上に置いて、その先に続く光景を見上げる。
彩は、少し太ももを広げて、浅めに椅子に腰をかけている。その彩の下半身が、上空に向かって広がっている。登ることが到底不可能な、とてつもなく長い脛が、斜め上に伸び上がっている。
その上空に、丸みを帯びた膝があり、そこから真横に、筋肉質だがむっちりとした白い内股が、圧倒的な大きさを誇ってアーチを描いている。その太ももの奥に、黒いパンティが、白い肌に食い込む様に、彩の股間を隠している。

欲望が渦巻いている黒部には、彼女の巨大さに怯えることはなくなっていた。そして、上空に広がっている、その巨大な姿が欲望の対象になってくる。パンティに浮き出ているヴァギナの形が、黒部の感情をさらに高める。衝動が際限もなく高まってくる。そこが恋しくて堪らなくなる。

“あの中に入り込みてぇ!”
頭の中が、そのことでいっぱいになり、「おぅ!おぅ!」と、自然に声が出る。

「我慢できねぇ!」
思わず、胸の前にある、彩の爪の先を口に含み、厚みのある爪を歯でガシガシと噛み始める。
さらに爪の先を舌で舐め廻しながら、怒張しきっている男根をしごく。

必死に見上げているパンティが、少し見えにくくなってくる。辺りが、急に薄暗くなり始めていた。そして、静寂の中でしか聞こえない耳鳴りが響き始めていた。
だが、性への衝動のままに、彩のつま先を舐めまわしている黒部には、その状況の変化を気に留める余裕はなかった。

黒部に訪れている変化は、脳に直接作用している薬によるものだった。
“性的な興奮度を高め、男の本能を際限もなく高めていく”その効果が、今の黒部に発揮されていた。だが、効果がある薬には、必ず副作用がある。この薬にしても例外ではなかった。

マウスを使った実験で、同時に五感の感覚に異常が現れることが確認されていた。特に影響を受けるのが、視力と聴力で、見ることと、聞くことができなくことが分かっていた。
彩も、その実験を見せてもらっている。

ガラスケースの中で繰り広げられる光景。薬を頭部に注入されたオスのマウスは目も耳も働かなくなり、鼻をヒクヒクさせ、メスの匂いを嗅ぎながら追い掛け回していた。
だが、そのオスは、メスに良いようにあしらわれる対象に成り下がり、逃げるメスを追いかけてガラスに衝突したり、障害物に足を取られて転がっていた。その動きはまるでコメディを見ている様だった。

彩は、執拗にメスを追いかけ続ける、オスのマウスを見下ろしながら、この小さなマウスよりもさらに小さく縮んだ、目も見えず耳も聞こえない男が、自分の体を必死に求めてくる姿を思い描いた。

楽しそうな光景が彩の頭に浮かぶ。マウスを見下ろし続ける彼女は、横にいる研究員に気づかれない様に、小さな声でクスクスと笑っていた。
彩は、その笑いの中で、黒部の頭部に埋め込まれる、会話を可能にする装置の別の使い方を思
い付いた。

鬼さんこちら、手の鳴る方へ・ .・ 目の見えない、虫の様に小さな男は、“手の鳴る方”さえも分からず、頭の中で聞こえる彩の声に翻弄され、目隠し鬼の様にひたすら彩を追い求めていく。

小さな男は、より、彼女を楽しませるおもちゃとなっていく。

黒部の周りで、闇が広がっていく。黒部は、それを気に掛けることもなく、彩のつま先を舐めまわし続ける。
ハァハァと口で息をしながら、今では暗くて見上げても見ることができなくなった、彩の黒いパンティを思い浮かべ、本能のままに男根をしごき続ける。

その時、彩のつま先が突然動き、黒部の体を弾いた。黒部は後ろに転がり、カーペットに倒れ込む。
弾かれた胸が痛み、そこを手で押さえているが、黒部の表情には、自分が跳ね飛ばされたことへの驚きや、恐怖を感じる素振もなかった。今の黒部に取っては、彩の身体に触れなくなることだけが恐怖だった。
黒部は、既にほとんど見えなくなっている目を見開き、彩のつま先のあった方向を見つめる。
目の前に広がっている暗闇の中、舐め続けていた彩のつま先が、うっすらと見えた。

「彩!彩!彩!」
痛む体で直ぐに跳ね起きると、四つん這いでカーペットをかき分け、その方向に進む。
伸ばした手が、しっとりとした皮膚に触る。黒部の顔が、安堵の表情に変わる。

「彩!」
一声叫ぶと、彩のつま先に顔を着けて舐め始めた。

彩は、足の親指の微かな感触に気づいていた。その感触で、黒部が、そこに来たこと分かり、それを軽く弾いてみた。
感触は一旦途切れる。だが、すぐに戻ってきた。
彩は、足の親指を少し持ち上げ、そこにいる小さなもの存在を確かめながら、その指で上から
触れていく。

黒部は、後ろに押し倒され、カーペットの毛足の中に仰向けになった。だが、彩の身体から離れたくはない。直後、自分の上に圧し掛かってくるものに必死に抱きついた。

彩は、そこにいる小さなものに、そっと、足の親指の腹を押し付けていく。小さなものが、その下に埋もれる。

黒部の顔が上から押え付けられて歪む。その歪んだ口から「彩・ .彩・ .」とくぐもった声を出し、自分を抑えつける大きなものを抱きしめようとして、両手を横に伸ばしていく。
だが、それは、小さな黒部には、とても抱えられない大きさだった。

もう、今の黒部には、何の音も聞こえなかった。
目を見開いても、真の暗闇しか入ってこなかった。
そして、彩の存在だけが、黒部の全てになっていた。

黒部は、拉げた唇から舌を出し、自分の上に圧し掛かっているものを必死の形相で舐め続けた。



第十五章:彩女王様

彩は鏡を見ながら、つま先に小さな生き物の存在を感じていた。
それが、テーブルの脚の影から、彩に触れるために出てきた黒部であることは、もちろん彩にも分かっている。
その生き物の上に、それを潰さない様に注意しながら、足の親指をそっと乗せた。小さな舌が、指先の皮膚を舐め回している感触が、ほんの少しだけ感じられた。
さらに、その小さな体が、自分の上にあるものに両手を回そうとして、もがいている動きも微かに感じられた。

それは、小さく、そして脆い生き物の動きだった。ほんの少し、足先に力を加えれば、その生き物がカーペットの染みに変わってしまうことが、容易に想像できた。

彩は、椅子から立ち上がり、その椅子を退けて、テーブルの下を覗き込んでみる。そこには、カーペットの毛足の間を、四つん這いでうろうろとしている虫の様に小さな生き物がいた。
彩の身体を求めているらしい、その動き。だが、当の彼女が、テーブルの下を覗き込んでいることさえ、分かっていない様子。

「ねぇ、武さん、私はここにいるのよ」
小さな生き物はその声が聞こえないらしく、同じように、カーペットの毛足の中をうろうろとするばかり。

彩の姿が見えていない。そして彩の声が聞こえていない。
その小さな生き物の動きで、十分に薬が効いていることが、彩にも分かってくる。
彩は、虫の様にうろつく動作が可笑しくてクスッと笑うと、テーブルの上から小さなマイクが
付いているヘッドフォンを取り上げる。
そのまま、鏡を見ながら、下を向いても髪が垂れてこない様に、ヘッドフォンをヘアーバンド代わりにして頭につける。

鏡に映る彩。これから始まる、黒部とのアソビを想像して楽しそうな笑みを浮かべている。

彩は、耳の横にあるヘッドフォンのスイッチを入れる。
直ぐに、そこから、音が聞こえる。

「彩!、彩!、彩!・ .・ .・」
それは、必死に彼女の名前を呼び続けている、黒部の声だった。
彩は、その声を聞きながら、テーブルの下を覗き込められる様に、椅子を引き気味にして座りなおし、黒部の前に片足のつま先を差し入れてみる。

“匂いで分かるかしら?”
そう思いながら、黒部から、2,3センチの所まで、足の親指を近づけてみる。でも、相変わらず、その小さな体は、ウロウロと動くことしかしなかった。

つま先で軽く、小さな体を弾いてみる。
一旦転がった、小さな生き物は、直ぐに体を起こして、辺りをキョロキョロとする。
その仕草が、彩には可笑しい。笑いながら、黒部に話しかける。

「ウッフフ、武さん、私はここにいるのよ。分からないかしら?」
ヘッドフォンからは、急に呼びかけられて、戸惑い、そして、その声に一所懸命に反応する黒部の声が聞こえ始める。

「彩!彩!どこだ?どこにいるんだ?・ .・ここは暗いんだ。真っ暗なんだ。彩の場所が分からない。頼む!頼む!彩!彩!教えてくれ!」

彩は、黒部から2,3センチの所に、つま先を置いたまま、話しかける。
「フフッ、教えてほしい?私がどこにいるか。でもねぇ、私のことを呼び捨てにする人には教えられないわよ」

すぐに、ヘッドフォンから、切なそうな声がする。
「た、頼む!教えてくれ!あや・ .・ .彩さん。いや、彩さま・ .・触りたい・・・彩さまに触りたい・・・彩さまの身体にキスをしたい・・・頼む!・・・頼む!・・・彩さま・・・」

彩は可笑しい。“私は彩さまなのね。なんだか昔の女王さまの時代に戻ったみたい”
彩は、以前に働いていたSMクラブのことを思い出し始めた。
そこは、所詮は嘘の世界。お金を払って奴隷になりたがる客を相手にする、虚構の世界。
そのことが、当時の彩には不満だった。

だが、今は違う。彼女自身は、この小さな男に対して、その生死も自由にできる絶対的な権力を振りかざせる存在になっていた。そして、どうせなら、もう一度、当時のプレーの中で、その権力を試してみたくなってきた。

「そうよ。私は、あなたにとって、女王様。彩女王様と呼ぶべきじゃないのかしら」
そう話しながらも彩は可笑しかった。“今更、女王様なんてねぇ”と、そのバカバカしさで噴出しそうになる笑いを抑えていた。
その声に応じて、黒部の「うんうん」と言う返事が、ヘッドフォンから聞こえる。
すぐさま、彩は叱責する。
「“うんうん”ではだめ!そこに跪き、頭を下にして、“はい、彩女王様”って答えるのよ!」
黒部は、慌ててその場で跪き、頭をカーペットの中に埋めて、「は、はい、彩女王様」と言葉を出す。だが、目が見えない黒部の頭の向きは、彩がいる方向とは逆を向いていた。

“だめ、可笑しすぎる”
奴隷の言葉で、真剣に受け答えをしようとする黒部が可笑しいし、それにも増して、こちらにお尻を向ける黒部の姿に、思わず声を上げて笑ってしまう。

当時、奴隷相手に気兼ねをする必要はなかった。むしろ、笑って蔑んでやった方が、裸の奴隷は、ぶら下げている男根をより大きくして喜んでいた。彩は、つま先の前で蹲る、小さな黒部に対して、当時と同じ気持ちになり始めた。

カーペットの毛足の中に蹲っている黒部の上に、つま先を持ち上げ、足の親指を軽く乗せる。
直後、「あ、彩さん!」の声と同時に、その指を小さな手がまさぐる感触がしてくる。黒部が、嬉々として、その指先に触れてきたことは明らかだった。

「ウッフフ、本当にばかね。“彩さん”ではなくて、彩女王様だって言ったでしょ。ちゃんと覚えてよ。それにどっちを向いているの?」
話しながら、黒部の上に乗せている足の指を持ち上げ、その指で、黒部の体を押して向きを変えようとした。だが、あまりにも小さな体。体が横に転がるだけで、その体の向きを変えることはできなかった。無理をすれば、そのままカーペットに擦り付けて、潰してしまいそうだった。

小さな体は、転がった姿勢から、また逆側を向いて蹲っている。
それに、言葉で指示をする。
「ほら、私はこっち。逆側を向くのよ」
小さな生き物は、「あ、はい、彩女王様」と声を出し、体の向きをすぐさま変える。

3センチの身長は、蹲ると2センチもない。それが、カーペットの毛足の中で平伏している。
彩は、つま先の親指と人差し指を広げ、その間に、その小さな生き物を差し入れる様に足先を近づけてみる。
黒部は、頭をカーペットに押し付けて蹲っている。そして、彩にようやく聞こえる様な小さな声で、「彩女王様・・・彩女王様・・・」と呟いている。

黒部は、彼女に触りたかった。そして、彼女の身体に頬すりをしたかった。その感情の高まりで気が狂いそうだった。
だから、彩の機嫌を損ねないように、言われるままに「彩女王様」と呼んだ。だが、そうやって呼んでいく内に、彼女を、自分を支配する女王様として心が受け入れてきていた。
黒部の「彩女王様・・・彩女王様・・・」と呟く声が、徐々に大きくなっていった。

黒部の体のすぐ近くから匂いがしてきた。汗の少し饐えた匂い、ハイヒールの皮の残り香、甘い香水が混じった匂い。黒部は分かった。彼女の足が、すぐ近くにきたのだ。黒部は、狂喜し、手を周りに伸ばす。すぐに彼女の皮膚に触れる。そこに、顔を押し付けようとする。

直後、頭の中で声が響く。
「だめ、武!触って良いって言ってないでしょ!」
黒部は、伸ばした手を引っ込める。だが、顔の直ぐ前に、彩の身体の一部がある。匂いがする。彼女の体温を鼻先に感じる。
“触りたい!触りたい!触りたい!・ .・”
その思いで、どうにかなってしまいそうだった。
彩は、黒部に立場の違いをはっきりと分からせるために、黒部の名前を呼び捨てに変えていた。だが、彼女の身体に触ることしか考えていない黒部には、それさえも気がつかなかった。

彩は、つま先の間、足の親指と人差し指の間にいる黒部を見下ろす。その黒部の気持ちは手に取る様に分かる。そして、それをじらすことが楽しかった。

「ねぇ、武。ちゃんとお願いをしなければだめなのよ」
小さな生き物は、「彩女王様・・・」と、“おあずけ”をされている犬のように切な声をだす。だが、それ以上、言葉が続かなかった。どうやって、お願いをすれば良いのか分からない様子だった。
彩は口元に笑みを浮かべながら、その様子を見下ろす。小さな生き物は、また、「彩女王様・・・」と切な声あげる。彩は、蔑んだように、つま先を見下ろし、
「本当に、武はばかだねぇ、私が一回だけ教えて上げるから、しっかり覚えるのよ。
“彩女王様、この卑しい奴隷におみ足に触れさせてください”ってお願いするのよ。分かった?」
と、黒部に話しかける。

黒部は、それを真似て話そうとするが、気持ちばかり焦ってうまく言葉が出てこなかった。
「あ、あ、彩女王様、こ、この奴隷に、お、足に触れ、触れ、触れ、触れ・・・」
彩は、その黒部の言葉に笑い出してしまう。
「フッフフ、武。おまえって、本当に面白いわね。“ふれ、ふれ、ふれ”って、運動会でもやっているの? まぁ、良いわ、触らせてあげるわよ」

彩は、黒部の両側の足の指を閉じて、そのまま黒部をつま先で挟む。黒部の驚いたような悲鳴がヘッドフォンから聞こえる。
それを無視するかのように、椅子に座ったまま、腰を後ろにずらして、その足をテーブルの上まで持ち上げ、そのテーブル面に踵をドカッと降ろす。
テーブルに置かれた彩の足。小さ過ぎる体は、その足の指の間にすっかり収まり、「ウッグッグ」とくぐもった苦しげな声を出すことしかできなかった。

「ウッフフ、ほら、武、おまえは、私の足に触りたいんでしょ、そこにキスしたいんでしょ、
フフッ、良いのよ、しても」

鏡に、彩の足の裏が映っている。その指の間に、上下逆さまになっている小さな黒部が見える。
黒部は、苦しげな声をあげながら、自分を挟んでいる足の指に顔を押し付け、舌を出し必死に舐め始めていた。
哀れを通り越して滑稽過ぎる、その小さな生き物。それが、彩をひたすら求めている。だが、彼女には、その求めに応じるつもりは毛頭ない。
もっと蔑んで、もっと侮辱を与えて、もっと苦しませて、自分が生きていることを呪うほど追い込みたくなってくる。
それが、復讐の気持ちからなのか、或いは元々彼女自身が持っている“業”なのか、彩には、はっきりと分からなかった。
だが、理由はどうであれ、足の指に挟まれてもがく小さな男に対して、セクシーに湧き上がってくるサディスティックな感情の高ぶりは抑えられなくなっていた。

彩は、横のベッドをチラッと見る。白いシーツがきっちりとかかり、薄手の毛布が足元側に折り畳まれている。
彩は、鏡に映っている、つま先の間にいる黒部に、鼻にかかったような甘い声で言葉をかけた。
「ねぇ、武さん、私とベッドに入りたいんでしょ。私とセックスしたいんでしょ。良いわよ」
彩は、一呼吸おき、言葉を区切りながら喋る。
「や・ら・せ・て・あ・げ・る」

そして、こみ上げるままに笑い声を上げ、椅子に座ったまま、つま先に小さな男を挟んでいる長い足をベッドの上に向ける。彩の白くきれいな足が、ベッドの上に長々と伸びる。彩は、そのまま、無造作に足の指を開いて、ベッドの上に小さな男を落とした。

彩は、椅子を引き、立ち上がる。そして、ちょっと、振り返って鏡の中の自分を見る。
天使の様な微笑。
透き通る様に白い豊満な胸。
筋肉を隠し、引き締まったウェスト。
小さめの黒いパンティが辛うじて覆っている大きめのヒップ。
それが、大きな鏡の中に浮かび上がっている。

鏡に映るこの自分の身体が、指先にも満たない小さな男を弄び、そして、その命を残酷に奪っていく。その思いに、身体の芯が潤ってくる様な、うっとりとした感情に包まれる。

ヘッドフォンに、悲痛なまでに彼女の名前を呼ぶ声がした。
その声につられてベッドに視線を降ろす。
白いシーツの上で、小さな身体が、またトンチンカンな方向に平伏し、「あ、彩女王様・・・お願い・ .・彩女王様・・・お、お願い・・・彩女王様・・・お願い・・・」と、呪文を唱える様に、彼女の名前を口から搾り出していた。



第十六章:アヌスへ

彩は、カーペットに膝を着き、ベッドの上に両肘を着いている。
ベッドに乗せた、たわわな両乳房の重みでクッションが窪んでいる。その胸近く、ベッドの窪みが作った傾斜で体が斜めになった小さな者が、蹲り平伏している。
「あ、彩女王様・・・さ、触らせてください・・・彩女王様・・・お、お願い・・」
一昨日の晩に見た、鉄格子に入っていた薄汚い男は、今、ベッドの上で、必死に彩の名前を呼ぶとても小さなものに成り変わっている。
その小ささが可愛いとも思えなかった。所詮は、彩の一時の快楽の対象でしかなく、用が済めば、押し潰して捨てるだけのものだった。
目も見えず、耳も聞こえない。その傍らに、触れたくて堪らない彼女の乳房があることも、頭上に、自分を眺めている彩の顔があることさえ分からない。
小さな体を丸める様に平伏し、少し掠れ始めた声で、同じ言葉を繰り返している。

「お願い・・・触りたい、触らせてください、あ、彩女王様の・・身体に・・・お願い・・・
彩女王様・・・」
彩は、“彩女王様”と繰り返す黒部に、少しうんざりとし始めていた。面白いかもと思って言わせてはみたが、ばからしくなってきていた。何よりも、黒部自身が奴隷の身に甘んじてしまっていることがつまらなかった。
“彩女王様”と言いながらも、もっと、“男”として、彩のことを求めて欲しかった。また、粗野な黒部ならそれができると期待もしていた。

彩は身体を少しずらし、黒部に口を近づけ、蔑むように、その思いを口にする。
「た・け・し、本当につまらない男よね、おまえは。やらせてあげる価値もないわ」

彩の話した声が、黒部の頭の中に響く。同時に辺りの空気が振動をする。蹲っている背中に、暖かい吐息を感じる。
周りの音は聞こえない。でも、頭の中に彼女の言葉が響き、体全体で彼女の声を感じる。それが、黒部の気持ちを熱くする。

「彩!彩さま!彩女王様!・・・・」
頭の闇に彼女の顔が浮かぶ。自分の体のすぐ上に、それがあることを直感する。
頭の中に浮かんでいる彼女の顔が、闇の中に輝きながら広がっていく。薔薇色に縁取られたセクシーな唇が、手を伸ばせば届きそうな近さに感じ、それが、頭の中で微笑む。
“触りたい!触りたい!”
直ぐに立ち上がり、彼女の唇に向かって両手を伸ばす。
“だめだ、届かない!”

ジャンプをする。でも、だめ。また、ジャンプをする。

「あ、彩女王様!彩女王様!彩女王様!・ .・」
名前を呼び続け、何回も、何回もジャンプをする。

彩は、顔の下で、ピョンピョンとジャンプをする、小さな生き物を見下ろす。それは笑ってしまいそうな動きだった。

「ほら、武、もう少しよ。がんばって」と声をかけ、上から吐息を吹きかける。
小さな生き物は、その吐息に向かって益々盛んにジャンプをする。
「あ、あや、彩女王、様・・・・あ、あや、彩、じょ、女王、さ、様・・・」

“だめ、可笑しすぎる!”
彩は、笑いを堪えて息を溜め、黒部がジャンプで飛び上がったタイミングで、その小さな体の横から、息を「フッ!」と強く吹きかけた。
水泳で鍛えた肺活量を試すように吐かれた息。それが小さな体を襲う。黒部は、悲鳴を上げる間もなく、ベッドの足元側に向けて弾かれ、一旦シーツの上でリバウンドし、数回、転がって、うつ伏せの状態で止まった。
彩は、その動きを見て、笑いが噴出した。息を溜めるために堪えていた分、その笑いが続いてしまう。
「ウッフフ、けっこう、飛んだわねぇ」
黒部を一気にベッドの足元側に吹き飛ばした、自分の肺活量にも満足していた。

小さな体にはベッドのクッションは硬すぎる。固まったコンクリートと同じだった。
わき腹が痛む。肋骨が折れたのか、息もするのも苦しく、小刻みな呼吸しかできない。
それでも、彩の笑い声に向けて、声を振絞る。
「あ、彩・・じょ、女王・・様・・・お、お願い・・・」

彩は、笑いを続けながら、ベッドの中央に腰を下ろして黒部を見下ろす。
苦しげな声を出している黒部の両側に、勢い良く、踵を落として黒部を驚かせたくなる。
その気持ちのままに、両手を後ろに着け、両足をスッと上げる。黒いパンティから伸びる肉感的な太ももが空中に向かって伸びる。
その足先を黒部の頭上に伸ばし、両足を少し広げ、踵を、黒部の両側に勢いを付けて落とす。
両足の踵は、瞬時にベッドのクッションに食い込み、直後、反発で浮き上がる。同時にベッドが揺れる。
小さな黒部に、それが、大きな衝撃となって襲う。沈み込むベッドで、一旦、宙に取り残された小さな体は、クッションの反発によって、上空に向かって叩き付けられる。

黒部の体に、その衝撃が突き抜ける。息が止まる。

彩は、黒部の体がつま先よりも高く飛んだのを見て、その落下位置に片足のつま先を合わせる。
落下を続ける小さな体は、彩の狙い通りに、ワインレッドにマニキュアされた足の親指の爪に衝突し、両足の間に転がり落ちる。
小さな体と硬い爪との衝突、ヘッドフォンから聞こえた黒部の絶叫。思わず、「痛そう」と言葉が出て、笑ってしまう。その笑いを続けながら、ベッドのヘッド側のボードに背を当てリラックスし、足を広げ、その足元に倒れている黒部に視線を向ける。

だが、小さな生き物に動きはなかった。それに、ヘッドフォンからも何も聞こえなかった。
“死んだのかしら?”と思いながらも、声をかけてみる。
「た・け・し・さ・ん、生きてる?」
黒部は激痛のあまり、息ができないでいた。でも、彩に呼ばれてしまい、返事をしなければと、ゼイゼイとした呼吸の中で無理に声を出す。「あ、あや・・女王・・さま・・」

「良かった、武さん、まだ生きていてくれたのね。そうよ、もっと、私を楽しませてくれるまでは死んじゃだめよ」
さらに、彩は、黒部を奮い立たせるために、優しげな声で話しを続ける。
「ねぇ、武さん、体力だけが自慢じゃなかったの?その体力で私を気持ち良くしてくれるって言ったじゃないの。ほら、私ねぇ、パンティだけの姿で、武さんを待っているのよ」
さらに、両手を乳房に近づけながら、「武さんのために、ブラも外しているのよ」と甘い声を出し、さらに、人先指の腹を乳首に当て、ゆっくりと乳房を揉みながら、少し声を鼻にかけてセクシーに話す。
「どう、私の胸って大きいでしょ?それにとっても柔らかいのよ。武さんも触りたいでしょ?」

黒部の痛みで薄れた意識に、彩の言葉が入っている。
頭の中に、彩の白い乳房が浮かんでくる。そこには、ピンク色に隆起している乳首も見える。
黒部は目を見開き、痛む体で無理に首を持ち上げ、左右を見渡す。だが、辺りは闇に閉ざされたままで、彼女の身体を見ることはできない。
“触りたい・ .・彩女王さまの胸・・・白くて、大きくて、柔らかい胸・・・触りたい・・・”
黒部は傷む身体を反転し、両手を着いて立ち上がろうとする。だが、上体を少し浮かせたところで左肩を激痛が襲い、前のめるに崩れる。
痛みで顔が歪む。だが、彩を求める気持ちが痛みを上回る。もう一度、右手だけで上半身を起こし、ゆっくりと立ち上がる。途中、左足首に痛みを感じたが、それを無視して遮二無二立ち上がった。

左肩は、脱臼をしているのか、それとも肩の骨が折れているのか分からなかったが、だらんとしたままで動かなかった。無理に右手を添えて動かそうとすると、耐えられない痛みが湧き上がった。
肋骨が数箇所折れているようで、わき腹は両側とも痛み、か細い息しかできない。声を出すのが苦しかった。それでも、心の中の欲求に従い、彩の名前を呼び続ける。
「あ・・あや・・さ・ま・・・あ・や・女・王・・さ・ま・・・」

周りは闇の世界。だが、彩の身体が聳えている方向を直感し、心が求めるままに歩き始める。
左足首が捻挫している。足をつく度に痛む。ビッコの足取りになってしまう。

彩が見ている前で、ベッドの足元側にいる黒部が立ち上がった。
目が見えないのに、勘が良いのか、あるいは偶々なのか、真直ぐに彩の両足の付け根を目指して、遅々と進み始めた。
苦しげな息の中から、途切れ途切れに彩の名を呼び続ける。
「・・あや・・・じょ・う・おう・・さ・・ま・・」

彩は、パンティに右手を差し入れる。
ヴァギナの周囲、大陰唇付近には、既にトロトロの液が溢れている。
指を少し広げて、その大陰唇をゆっくりと擦り上げる。粘液が指に絡みつく。
「ね、武さん、もうここがヌルヌルなの。そうよ、武さんの好きなところ、お・ま・ん・こ・がヌルヌルなの。ねぇ、武さん、ここにしゃぶりつきたいんでしょ?ここでがんばってみたいんでしょ?」

黒部の頭の中に、目が見える時に見た黒いパンティで覆われた彼女の股間が浮かぶ。そのパンティの内側、まだ見ぬ彼女の陰部、そこに思いが馳せる。
「・・あや・・じょう・・おう・さま・・・の・・お・まんこ・・」

彩は、トロトロの液がついた指でクリトリスを撫でる。熱い吐息が漏れそうになり、それを堪えて話を続ける。
「そうよ。私のいやらしい場所が、ヌルヌルになって、武さんを待っているのよ。ほら、早くおいで、私のここに」

“おまんこが・・ヌルヌル・・・彩女王さま・・の・・おまんこ・が・ヌルヌル・・・”
彼女の言葉で、欲望がかき立てられる。
彼女の名前を呼び続けながら、取り付かれたようにビッコを引き引き進んでいく。
「あや・・・あや・・じょう・おうさま、あや・じょうおうさま・・、あやじょうおうさま・・」
胸の痛みに少し慣れて喋るのは楽になってきた。だが、足の痛みは、歩く程、増してくる。
四つん這いで進むことも思ったが、動かない左腕ではかえって遅くなる。
痛む左足を引きずる様に前に出し、呼吸を一瞬止めて痛みを我慢し、そこに体重を乗せて右足を前に運ぶ。痛みで脂汗が滲む。
彼女の陰部が頭に浮かんでくる。“もっと早く、もっと早く”と、気持ちだけが急いでいく。

彩は、ベッドのボードに背を持たれ、パンティの中に入れた指でクリトリスを弄びながら、黒部の動きを見下ろしていた。
だが、その動きは、まるでカタツムリの様に遅く、広げた両足の間、膝付近にまでしか来ていない。足先あたりにいたものが、話している数分かけても、まだそこまでしか来ていないのだ。
“「早く、おいで」と言っているのに・・・“
小さなものの遅々とした動きが、彩をイラつかせる。

彩は、大柄でありながら身体は柔らかい。ベッドのボードから上体を起こすと、そのまま前に上体を倒す。伸びやかな身体が、屈伸のポーズとなり、足の間にいる黒部のすぐ頭上に彩の口が来る。その唇を黒部に触れそうなぐらい近づけて、自分の言葉で黒部がうろたえる様を思い描きながら、強い口調で叱責する。
「ほら、武!何をグズグズしているの!私のここが乾いちゃうでしょ!乾いたら、もうお前には触らせない、それでも良いの!」

黒部の体に、上から暖かい風が吹きぬける。彩の言葉の振動で体が震える。
立っていることもできず、そのまま膝を着く。その黒部の頭の中に、彼女の怒りの言葉が響き渡る。“もうお前には触らせない”
それは、黒部に取って死刑宣告よりも心に圧し掛かる言葉だった。

彩が上体を起こして、怒りのポーズでベッドのボードに背中を強く当てる。その衝撃が、ベッドを揺らす。小さな黒部は、その揺れで転がり、うつ伏せになった。
“早く立たなくちゃ。早く動かなけりゃ。早く!早く!”
焦る。彼女の機嫌をこれ以上損ねたら、本当に、その身体に触れさせてもらえなくなると思った。直ぐに右手を使って、上体を起こし、立ち上がる。
無理をすれば激痛に見舞われることは分かっていた。だが、歯を食いしばり、左足首の痛みを堪えて走り始めた。
必死に走る黒部の頭の中に、少し間をおいて、笑いを堪える彩の言葉が響く。
「本当にお前は馬鹿よね。どこに行くの?」

慌てて立ち止まる。
“進む方向が間違っている!?”
黒部は、先ほど転がった時に、方向がずれてしまったと思い、そのまま立ち尽くす。
途端に無理をした足首が激痛に襲われ、思わず声を出てしまう。
「うっうう」
痛みに耐えられず、両膝を着く。

彩が見下ろす中、黒部は、逆方向に走り出していた。
ピョコピョコ走る姿が可笑しい。少し、そのまま走らせてから、方向が違っていることを告げた。
そこで跪き、うろたえる黒部。その様が面白い。もっとオロオロとさせたくなる。

「ほら、武、こっちよ。こっちにおいで」
彼女の声が響く。

“彼女に、彼女に触りたい!”
黒部の思いは募るばかりだった。
また立ち上がり、彼女の股間に向かって進もうとした。だが、どっちに進めば良いのかわからなかった。痛む膝を堪えて立ち続け、募る思いのままに、彼女の名を呼ぶしかなかった。

「あ、彩さま・・・彩・女王様!・・・彩女王様!・・・彩女王様!・・・」
大きな声を出すと、わき腹が痛む。それでも、声を振り絞って彼女の名前を呼び続けた。

「ウッフフ、ほら、武、こっちよ。ここなのよ、ここに私のエッチな所があるのよ」
小さない生き物は、その言葉に反応して、彩女王様!彩女王様!と声を出し、同じ場所をグルグルと回りだした。
母親を求める子ネズミのような動き。だが、その体は、生まれたての子ネズミよりも小さかった。

彩は、ベッドに長々と伸びている、自分の広げた両脚を見下ろす。その間で、本当に小さな男が、行き先も分からずウロウロとしている。

「ねぇ、武、ちっぽけなおまえには、私の脚の間は広すぎるみたいね」
一旦は膝まで来ていたものが、逆走し、今はつま先近くまで戻っている。この先、パンティ近くまで来させるのは、この男には無理な様な気がしてきた。

”連れてこなければだめみたいね“
そうかと言って、ベッドのボードから上体を起こして黒部を拾うことは、億劫だった。
彩は、ちょっと、自分のつま先を見て、片足を上げた。そのつま先で、黒部をパンティに向かって押し出すことにしたのだ。

彩のつま先が、ウロウロとする黒部に向かってシーツの上を滑る。
黒部は、巨大なものが地面を擦れるような振動を感じる。さらに、その振動で足元が揺れ、立てなくなり、膝を着く。直後、黒部は何かに衝突される。驚きのあまり絶叫する。さらに押し出されていく。

黒部は、自分を押しているものが彩の足の親指だとも分からず、シーツの上を押されていく。
シーツと擦れる尻から太ももの後ろ側にかけてゴツゴツ感が連続し、その痛さで「あう、あう!あう!あう!」と声が出てしまう。

クリトリスを擦る彩は、その黒部の声で吹き出しそうになる。
“だめ、可笑しすぎる!”
快感が遠のかないように、笑いを堪える。

その時、彩の足の指に押されていた黒部は、突然の激痛に襲われ、悲鳴をあげた。シーツで擦られる部分を庇おうとしたのが原因だった。腰を浮かそうとした途端、体の向きが変わり、両脚が彩の足の指の下に入ってしまったのだ。
瞬間、黒部の体を下から上に激痛が突き上げていった。両膝が押し潰され、さらに、押し潰されながら引きずられていく。

黒部は、悲鳴を上げながら、自分の両膝を押し潰しているものの動きを止めようとして、それに両手を回そうとした。だが、彩の足の指は、小さな黒部の両手では回り切れない。細い毛糸くずのような両手は、彩の指の表面を虚しく引っかき続けるだけだった。

激痛に見舞われていた動きが、ようやく止まった。そして、黒部の両膝の上から、押し付けていたものが浮き上がる。
ちょっと間が空いて、巨大な物体が接地する、ズンとしたショックが伝わってくる。彩の足が黒部から離れて、ベッドの上に投げ出されたのだった。

黒部は、動けなかった。少しでも動けば、体中に、一気に痛みが迸る感じがした。息を止め、沸き始めてくる痛みに耐えるしかなかった。
だが、その状況でも、彩の顔が浮かんでくる。彼女の声が聞きたい。彼女に触りたい。その思いで心が満ちてしまう。

「あ、あやさま・ .・あや・・じょうおう・・さま・・」

黒部の体は、彼女のパンティの傍らまで来ていた。彩は、クリトリスに触れていた指をヴァギナに移し、その指を中にグッと入れ、そこで動かない黒部に声をかける。

「武さん、ほら、グチュグチュになっているここが、武さんのすぐ横にあるのよ」
指をヴァギナに出し入れをする。吐息が漏れる。
「あぁ・・・、そうよ、そこから、とっても、厭らしいグチュ、グチュって音がしているの」

仰向けで倒れている黒部の背中に、彩がヴァギナに指を出入りさせている振動が伝わってくる。
その振動から、彩の言葉どおり、粘性の中でグチュ、グチュと巨大なものが動く様が感じられた。
さらに、香水の香りに混じって、甘酸っぱい匂いが漂ってくる。

“あやじょうおうさま・・・の・・・おまんこ!”
自分が、そのすぐ傍にいることが分かる。

「あ・や・・じょうおうさま・・・」
黒部は体を動かそうとする。だが、その少しの動きでも激痛に襲われる。右膝が、さきほど、上から押し潰されたので、どうにかなってしまったらしい。でも、目は見えない。どうなったのか触って確かめるのも恐かった。その痛みに堪えるしかなかった。

歯を食いしばる。だが、その歯が痛みでガチガチと震える。
それでも、体を反転し、うつ伏せになり、動く右腕で上半身を持ち上げる。鼻をヒクヒクさせ、直ぐ近くから漂う甘酸っぱい匂いを嗅ぐ。“彼女の匂い”、その方向が分かる。気持ちが急いてくる。
這いずり始めようとして、蔦が絡んでいるようなゴツゴツとしたシーツに右膝が擦れる。むき出しの神経をゴリゴリと擦られたような鋭い痛みで、息ができなくなる。

彩は、黒部を見下ろす。右膝が変な方向に曲がっていた。そこが脱臼か、骨折をしているみたいだった。そして、パンティの傍らにいる黒部は、その痛みで動けない様だった。だが、それならば、この小さな者をもっと誘惑して動かすまでと思い、黒部に声をかける。

「ねぇ、武さん、私のあそこの音を聞かせてあげるわ」
彩は、空いている左手でヘッドフォンを外し、短く突き出たマイク部分をパンティの股間部分に向ける。蹲る黒部の横に、そのマイク部分が並んでいる。

黒部の頭の中に、彩の声が少し離れたところから聞こえる。「ほら、指が入っていくのよ」
直後、粘性の中に何かが押し入っていく、グニュっとした音が、頭の中心で響く。そして、連続する“グチュ、グチュ”に変わる。

「ねぇ、いやらしい音でしょ。でも、とっても気持ちが良いのよ」

“彩女王様のおまんこ!”
指がそこに押し入る振動も感じる。甘酸っぱい匂いも満ち溢れてくる。それが、黒部の痛みを凌駕する。

マイクの隣で、それに沿って、小さなものが這い進み始める。彩は、それを見下ろし、ヘッドフォンを持ち上げ頭につけなおす。
痛みを堪え、彩の名前を呼び続ける黒部の声が聞こえる。
「あやじょうおうさま!あやじょうおうさま!」
這い進む黒部の体が、何かに突き当たる。頬に触れた感じは、少しゴワゴワとした布地の様だった。

“彩女王様のパンティ!”
黒部は、パンティに沿って、上体をあげる。痛む右膝を立てる。堪えていても声が出てしまう。
そのまま、両膝を着き、パンティに沿って立とうとしたが、右膝が動いてくれない。立つのを諦めて、両膝を着いたまま、顔をその布地に押し当てる。

彩は、パンティにへばり付いた黒部を見下ろす。
黒い布地に表れているヴァギナの形、それに寄り添う黒部の小ささ。それが彩の加虐性を高ぶらせる。

「そうよ、それで良いのよ。武には痛みを感じる余裕はないのよ。もっと私を楽しませるの、もっと私を気持ち良くさせるの、もっと、もっとよ!」

腰を少し動かして、ヴァギナの中心を黒部に押し付けるようにして、さらに言葉をかける。
「武、匂いを嗅ぐのよ。顔を押し付けて、息をすって・・・私のそこの匂いで、お前の体、全てをいっぱいにさせるのよ」

彩の股間が黒部に圧し掛かるように動いた。膝がより曲げられ、右膝に激痛がおこる。
だが、彼女の言葉は、黒部に取っては絶対的なもの。その痛みを無視して、顔をさらにパンティに押し付ける。

彩のクリトリスを擦る指の動きに合わせて、その布地が脈動する。ゴワゴワとした感触が黒部の顔を擦っていく。
黒部は、顔を歪めながら、その脈動する布地にさらに顔を押し付け、深呼吸をする様に彼女の匂いを嗅ぐ。甘酸っぱい匂いが体中に浸透する。その匂いに感極まって、言葉が出る。

「あやさま・ .あやじょうおうさま・ .」
そのまま、そのゴワゴワとした布地に口を付けて舌で舐め、さらにそこに滲んでいるものを吸い取ろうとする。

「どうなの、武?私のパンティにへばり付いて、嬉しいの?そこを舐めているの?」
小さな男をパンティに纏わり付かせて、クリトリスを擦り続けている彼女自身。その淫乱さが刺激となって快感がより高まってくる。

黒部は、その彩の問いかけに、必死に声を出して答える
「あ、あやじょうおうさま。お、おれ、う、うれしい・ .です」
さらに、体をパンティに強く押し当てる。動く右手をできるだけ広げてパンティを擦り、すっかりと充血した男根を、そこに押し付ける。
心の底から、彼女を慕い、彼女のことだけが頭を占めている。
彼女の陰部を覆っているパンティ。そこに口を付けている。そこに男根を押し付けている。その嬉しさが体を駆け巡り、言葉となって出てくる。
「あやじょうおうさま!う、うれしいです!あやじょうおうさま!」

彩は、娼婦の様に淫乱なポーズをする。
パンティに忍ばせた手でクリトリスを弄り続け、空いている片手で自分の乳房を鷲づかみにし、舌を長く出して上唇を舐める。そして、パンティに寄り添う小さな黒部を見下ろす。

淫乱に、もっと淫乱に、この小さな男を翻弄したくなってくる。
黒部の体を押し付けているパンティが、彩の指の動きに合わせて、その脈動が大きくなる。
黒部の体が、弾かれそうになる。それに踏ん張って耐える。膝に負担が強いられる。
それでも、パンティにへばり続ける。

“この中、このパンティの中!”
この布地の向こう側に、彼女の秘肉があることが頭に浮かび、心臓の鼓動がパンクする程高まってくる。

“触りたい、触りたい!”
パンティに体を押し付けたまま、そこに沿って、膝立ちのまま体を横にずらす。膝を激痛が襲う。歯を軋ませながら、それに耐える。
黒部の伸ばした右手が、彩の肌に触れる。そこは、足の付け根の部分。滑らかなで弾力がある肌。そこに顔を押し付け、舌で舐めまわす。

「あ、彩女王様!お、お願い!お願い!・・・こ、この中!・・・この中!・・・この中!」
切望のままに、体の痛みを一切無視して、大声を張り上げる。体が千切れる様に痛む。

「この中に入れて! この中に入れて! この中に! 入れてください!」
黒部は、声を出しながら、パンティの端から中に顔を潜り込ませようとしてもがく。だが、パンティはピタッと肌に密着し、いくらやっても、そこに顔が入っていかない。黒部はもがき続ける。

彩は、快感に咽びながら、パンティに潜り込もうとしている黒部を見下ろす。
目を細めると、黒部の状況が少しは分かってくる。異常は右膝だけではなく、左腕は脱臼しているらしく、だらんとしたままだった。
それでも、ひたすら彩のことを求めている。

“そうよ、もっと、もっと私のことを求めるのよ。そして、私は、もっと、もっとお前を壊してあげる!”
足の付け根に、小さな舌がチロチロと舐めまわす感触がしてくる。
パンティに顔を潜り込ませることを諦めた黒部が、そこの肌をなめ始めていた。
彼女にひたすら憧れ、そこを舐めている小さなものに対して凶暴な思いが膨らんでいく。それがクリトリスからの快感と交じり合う。彩の声が上ずりだしてくる。

「武、ここに入りたいの?この中でグチャグチャになりたいの?そうなの?そうなの?」

黒部の必死な声がする。
「は、は入りたい!入りたい!お願い!お願い!」

彩は快感に喘ぐ。
「武、分かっているの?そこでグチャグチャになって死ぬのよ。私に殺されるのよ。そうなりたいの?そうまでして私のここに入りたいの?言って!言ってよ!」

彩のヘッドフォンから、黒部の悲痛な叫びが聞こえる。
「彩、彩女王様!お、俺、そ、その中で死にたい!死にたい!死にたい!」
そして、また、黒部は、パンティに顔を潜り込ませようとし始める。

股間の小さな者を見下ろす彩は、冷たい笑みを浮かべる。
“そうよ。武、それで良いの。お前にはそうなって欲しかったのよ”

彩は、頭に渦巻く快感の波を振り払うかの様に、上を向き、軽く頭を振る。
乳房を揉んでいた手を、ヘッドフォンに伸ばして、マイクのスイッチを切る。
彩のヘッドフォンは、頭に付けた時点で、聞く方のスイッチは自動で入る様になっていたが、マイクのスイッチは別だった。そのスイッチを切ったことで、彩のヘッドフォンは黒部の言葉を聞くだけの物になり、彼女の言葉を黒部の頭の中に響かせなくなった。

彩は、身体を屈め、股間でパンティに潜り込みたがっている黒部に顔を近づける。彼女自身の性器の匂いがしてくる。その匂いが、彼女の中に淫乱な血を滾らせる。

自分の力ではパンティに潜り込むこともできず、彩がその体をパンティに軽く押し付ければ、そのままパンティの染みと化してしまう小さく非力な男。それを見下ろす彩は、自分自身の内に、巨大で淫乱な女神の姿を見出す。そして、そのイメージのままに、黒部が聞くことができない言葉をかける。

「どう?武。怪我が痛いんでしょ?
それは、私が付けてあげた怪我・ .・たっぷりと苦しんでほしいわね。
フフッ、それに、ねぇ、武、とっても良い感じに怪我していると思わない?
お前は、歩くこともできないし、私の身体によじ登ることもできないでしょ。
ウッフフ、まるで、ベッドの上を這いずる・・うじ虫みたいよね」

話す言葉が彩の気持ちを凶暴に高めていく。
「そんな体になっても、私のことを求めてくるしかないの。武、ねぇ、そうでしょ?
お前は、私のここ、そう、私の・お・ま・ん・こ・に入りたくて仕方ないのよね。
そこに入れるんだったら・・・フフッ、死んでも良いんでしょ。
でも・・・私は、お前に、そうさせてやるつもりはないの・・・」

その言葉が空気の振動となって、小さな黒部の体を震わせる。だが、黒部には、彼女の話している言葉が聞こえない。パンティの中に顔を潜り込ませようとしてもがきながら、懇願の言葉を続ける。
「お、お願い!彩女王さま、パ、パンティの中!入りたい!入りたい!死んでも良い!入りたい!入りたい!」

彩は、冷たい笑みを浮かべて黒部の言葉を聞き、上体を起こし、ベッドのヘッドボードに背を当て、指をヴァギナにグッと入れる。思わず、彩の口から吐息が漏れる。

「武、お前は・・・殺してはいけない人を殺したのよ。
だから・ .・お前は苦しむしかないの・・・
私は・・・楽しむ・・・そうよ、お前の苦しむ姿を見て楽しむのよ」

ヴァギナからの粘液が、その中に入れた指を伝い、パンティに吸い込まれる。
脚の付け根で必死にその中に潜り込もうとしている小さな男。
「入りたい!入りたい!彩女王様の中!・・・入りたい!」

パンティに吸い込まれた淫液が、その外側に滲んでくる。それが、小さな黒部の横に、その体よりも遥かに大きな染みをつくる。
彩の顔が、さらに美しく、凄惨な笑みを浮かべる。
「お前は、私のそこに恋焦がれてる・・・ウッフフ・・・でも、お前に触れさせはしない・・・。お前は、もっと、もっと苦しむの・・・フッフフ・・・そう、死の瞬間まで・・」

彩は、ヘッドフォンのマイクのスイッチを入れてから、黒部に声をかける。
「武、ほら、パンティを脱ぐわよ」

彩のその言葉で、黒部の胸は歓喜で踊る。
“パンティを脱ぐ!?パンティを脱いでくれる!”
彼女のヴァギナに触れ、そこをしゃぶっている自分の姿が頭に描かれる。体の痛みを忘れるほどの喜びに包まれる。

黒部がへばり付いていた、彼女の股間が上昇していく。ベッドの上に取り残された黒部は、期待の気持ちでいっぱいになる。

彩が、ベッドの上で動き出したことで、ベッドが揺れる。黒部の身体が振られ、両膝に負担がかかる。その痛みで思わず右手を前に着く。
だが、黒部の心は、喜びで満ち溢れている。その痛みに耐えて、彼女の名前を呼び続ける。
「彩女王様、彩女王様、彩女王様・・」

彩はベッドの上に立ち上がる。パンティの両側に手をあて、膝まで下ろす。パンティは、その先、脚を伝って自然に落ちていく。
直後、両足の間にいる黒部の上にパンティが覆いかぶさったらしく、黒部の悲鳴が聞こえる。それを無視して、片足を上げて、もう片足の足首にパンティをかけると、そのままベッドの外に軽く蹴り出した。

その動作中、断続的な黒部の悲鳴が聞こえていた。足元を見ると、片足で立っていたので、その下でベッドが大きく窪み、その傾斜を黒部が転がっていた。
転がった黒部は、つま先に衝突し、また悲鳴を上げる。
とうやら、片足ごとに足を上げたので、その度に、黒部が右や左に転がっていたようだった。

彩は、つま先の内側で蹲っている黒部に、両手を腰にあてて見下ろし、声をかける。
「ほら、武、パンティを脱いだわよ。ほら、分かる? ウッフフ、お前の小さな体の上に、全裸の私が立っているのよ」
そして、黒部の傍らを踏みつけている足を持ち上げ、そこに蹲る黒部を、ベッドの中央に向けて、軽くつま先で蹴り出す。
ヘッドフォンから、また悲鳴が聞こえ、転がった黒部の体は、両足の間で止まる。
その両側に、足を大きく広げて両膝を着き、腰を下ろす。彩の太腿が低くアーチを描く、その中央のヴァギナの下、10センチの所に、小さな黒部がいる。

少し体勢が不安定なので、左手を伸ばしてベッドのヘッドボードを掴み、右手をゆっくりと、脇腹、下腹部と滑らせ、さらに、陰毛を越えてクリトリスに伸ばしていく。そのまま、十分隆起して敏感になっている所を指先で触れる。瞬間、ビリッと身体が震える。

手をそこにあてがったまま、身体を屈め、股の下を覗き込んでみる。
ふっくらとした大陰唇が少し開き、内側のピンク色の秘肌が覗き、粘性の淫液がそこにテカテカとした光沢を与えている。
その下に、小さな黒部が、まるで胎児の様に体を丸めて横たわっている。

彩は、少し腰を下ろしてみる。彼女の性器が、その小さな男を飲み込もうとして、涎を垂らしながら近づいていく、巨大で淫靡な生き物に見えてくる。
それは、見ている彩自身が魅了されてしまう、とても蠱惑的な光景だった。

さらに、腰を下ろす。倒れている小さな体を大陰唇で囲む様にしてから、彩は囁く様に声を出す。
「たけし、お前の直ぐ上、お前の体に触れそうな所にあるのが、何だか分かる?」
黒部は、体が弾き飛ばされたショックで、軽い脳震盪を起こし、横向きの体で膝を抱える様に倒れたまま、意識を失っていた。
その意識を、今の彩の言葉で取り戻した。だが、それと同時に、体中の痛みが噴出する。思わず、悲鳴をあげる。
「ウッ!ウッ!ウッ!ウウ」

彩は、その悲鳴を無視するように、言葉を続ける。
「そうよ。そこにお前が恋焦がれている、お・ま・ん・こ・があるのよ」

黒部は痛みに襲われながらも、その彩の言葉に強く反応する。
“彩様、彩女王様の・・おまんこ・・・”
直ぐに、彼女の性器の匂いが濃厚に満ち溢れていることに気づく。男の欲望を掻き立てる、強烈なフェロモンが含まれる甘酸っぱい匂い。その匂いに、心臓が高鳴り、黒部の体中の血管が沸騰しそうになる。
同時に、体の直ぐ近くに暖かさを感じる。彼女の陰部が、触れそうなぐらい近い所にあることを理解する。そして、そこに手を伸ばそうとする。だが、体の上側になっている左腕は脱臼している。途端に、伸ばそうとした左腕から肩にかけて激痛がはしり、思わず「うっ!」と声を出してしまう。

匂いに誘われる、傍らの暖かさに誘われる。そこに触れたい気持ちは高まってくる。
何とか動く右腕を使って、上体を持ち上げようとする。だが、先ほど弾き飛ばされた衝撃で右膝がさらに悪化し、体をほんの少し動かしただけで、耐えられない痛みが沸き起こってくる。

動けなかった。だが、諦めることもできなかった。
「彩、彩女王様、彩女王様、お願い・ .・お願い・・・」
彩は、少し腰を浮かせ、クリトリスを撫ぜていた中指を、体の中心に沿って動かし、ヴァギナに挿入する。グチュと音がする。

パンティを脱いだことで、指をその中で自由に動かせられる。膣の中の肉襞をなぞりながら、ゆっくりと指を奥に入れていく。疼いてくる快感が、背骨を伝わり頭の中で弾ける。

差し入れた指が、ネットリと中に吸い込まれるような感じを受ける。
彩は、ヴァギナを入れている指の下にいる、その指よりも遥かに小さい黒部を見下ろす。
もうすぐ、訪れるクライマックスを予感する。そして、その時を黒部の最後の瞬間にしたくなる。
“いく”瞬間に、その小さな体を押し潰して、もっと大きな快感を得たくなる。
その思いで吐息が漏れる。指の動きが大胆になる。陰液が迸る。

「武、ほら・・・・、私の指より・・小さい・・ちび・・武・・」
快感の中で出る言葉は、途切れ途切れになっていた。

黒部の周りは、彩の指の動きで、空気さえも振動している。
彼女の匂いがより強まっている。
見えない目を見開き、自分のすぐ上にあるはずの彼女の陰部を必死に見上げる。

そこに彩の陰部があることを感じる。そこに触れたい、そこに頬ずりしたい、そこを舐めてヌルヌルを飲み込みたい、その中に入りたい、そこでグチュグチュにされたい、彩のそこを求める気持ちは際限もなく高まってくる。

立とうして、すぐに激痛に襲われる。感情が溢れ、悲痛な叫び声をあげる。
「あ、あ、彩女王様、あ、彩女王さま、彩女王様・ .・お願い、お願い、入りたい、入りたい、
お願い、お願い!」

彩の陰液が、黒部の体に、そして顔にかかる。
“彩女王様・・・の!”
動く右手を伸ばし、顔にベチャッとかかっている粘性の液を口に運び、さらに、その液が付いた手で男根を握る。

男根は、この極限状態の中で、充血し、怒張しきっている。それが、黒部の掌の中で、脈々と鼓動を打っている。

小さいことをいつも気にしていた。女にバカにされる物だった。小さすぎて握ることさえもできなかった。
それが、掌に収まらない程に、大きく勃起していた。信じられなかった。嬉しかった。そして、それを彩に見せ、自分を認めてもらいたかった。
「すごい!大きいわね」と、彩から言ってもらいたかった。その一言が聞ければ、自分の人生が終わっても良いと思った。

快感に咽び、喘ぎ声の中で途切れ途切れになっている彩の言葉が頭に響く。
「ちび武・・・私の・・ここに入っている・・指よりちいさな・・ちび。ほら、そのちっぽけな体で・・・私のここに入りたいんでしょ・・ねぇ・・ちび・・」

7センチしかなかった短小すぎた男根。それが、今では掌で握りきれない大きさになっている。
だが、彩の言葉が頭に響く。“おれは・・・ちび・・・3センチしかない・・・”

黒部は泣き出してしまった。
彩の身体への渇望が体中を駆け巡っている。だが、それとは相容れない自分の運命を呪う何かが心の片隅に蠢いていた。その蠢くものが、感情を混沌とさせ、抑えきれない気持ちにさせていた。
短小の呪縛から逃げることはできない。その運命がどんよりと心を占めていく。
だが、その混沌とした気持ちは、心の中に僅かな引っ掛かりだけを残し、彩への思慕の情に飲み込まれ、より黒部を渇望させていく。
彼女に触れることだけが、黒部に取って救いになる。その救いを求めて、大声を張り上げる。
「あ、彩、彩女王様!」

彼女の身体は、自分のすぐ上にある。そこに向けて、遮二無二なる。右手で強引に上半身を持ち上げる。さらに、左足だけで立とうする。
無理に立とうする左足首に、引きずる右足の膝に、激痛が湧き、叫び声をあげる。それでも、強引に、左足を体に寄せる。右足は斜めに力なく投げ出されたままだったが、左足だけを着いてしゃがむことができた。

“飛ぶ!”その姿勢から、飛び上がるつもりだった。
彼女の性器の匂い、空気を振るわせる粘性の動きの気配を感じる。すぐ上に、彼女の股間がある。それが頭の中で思い描かれる。心臓の鼓動が高まる。アドレナリンが噴出する。

「彩女王様!」と雄叫びを上げ、歯を食いしばり、動く左足だけでしゃがんだ姿勢から飛び上がった。
瞬間、左足首に、左肩に、右膝に、体が引きちぎられる痛みが奔る。
まっすぐ上に伸ばした右手が何かに触れる。一瞬の歓喜。直後、どこに触れたのか分からないまま落下。

足を着いて降りてはいけなかった。それは分かっていた。ジャンプする前は、尻から着地しようと思っていた。
だが、彩の身体に触れた喜びでそれを忘れ、本能のままに両足を着いてしまった。
途端、絶叫を伴う激痛が、右膝から体を伝播していく。足で踏ん張ることもできずに、体が下に崩れていき、正座した様に足が折りたたまれる。そのまま、上半身は前に崩れ、顔からベッドに倒れこむ。
痛みが体を上下に往復していく。それが、断裂的な麻痺となり、体が痙攣する。
折りたたまれ、正座したようになっている脚を解くこともできない。息を止め、耐え続ける。

彩は、いきそうだった。
黒部がジャンプして、ヴァギナに入れている手の甲に触れてきた。でも、もうそれはどうでも良いことだった。頭の中では、どうやって、この小さな体を使えば、いく瞬間の快感を高められるか、その思いだけが占めていた。

“アヌスで押し潰す”
その背徳的なイメージが頭に沸いてくる。それは、快感をより高めそうだった。
黒部の頭部に注入された薬は、女性を強く求める作用があり、さらに、時間が経つにつれて薬の効果が強まり、より直接的に、女性の生殖器を追い求めるようになる。
彩はそれを知っている。知っていながら、黒部を苦しめるために、アヌスで押し潰すことを選んだ。

渦巻く快感で漏れる吐息を堪えながら、小さな男に向かって言葉を出す。
「武・ .・私の・秘密の場所に・・キスさせてあげる・・・うれしい?・・・どう、うれしいの?」
彩は快感に咽びながらも、黒部の反応が知りたくなる。
足元の黒部を見下ろす。ヘッドフォンからの音に集中する。

股間の下の小さなものは、両足を正座の様に折りたたんだまま、上半身を前に投げ出すようにして倒れていた。
彩の口元に笑みが浮かぶ。それは、奴隷が女王様にお願いをする時のポーズだった。
さらに、ヘッドフォンからは、苦しげな息遣いの中で、途切れ途切れの言葉が聞こえてくる。

「あ、あや・・じょう・・おう・・さま・・、う、うれ・・しい・です」
奴隷のポーズで、奴隷の言葉。
この小さな男を、身も心も蹂躙し尽くしている思いに囚われる。心の中に淫蕩な笑いが溢れてくる。

ヴァギナを往復する指からは、激しく、グチュグチュと音がする。
快感が前のめりになってくる。熱くなっている身体の中で“いく”瞬間が近くなっていることを感じる。

彩は、ベッドのボードを掴んでいる左手を離し、その手の人差し指を動かない小さな体に近づける。
その指で、大きさの対比を楽しみながら、黒部を弄びたい気持ちが湧く。でも、もう時間がなかった。クライマックスがどんどん近づいている。

爪で小さな体を軽く弾く。黒部は、悲鳴を上げ、転がり、仰向けになる。
彩は、転がった黒部が上を向いたことを確認してから、アヌスがその体の上になるように足の位置をずらす。小さな体は、股間の下を覗かないと見えなくなる。
さらに、左手をお尻の谷間に差し入れて、指先でそこを押し広げ、ピンク色でシワが放射状になっている部分を露出させる。

黒部の小さな体の上で、彩の肛門がヒクヒクしている。
腰をゆっくりと降ろし、小さな体に、そこが密着するように、指で押し広げたままの肛門を近づけていく。

頭の片隅で、今日、研究所で借りたトイレにウォシュレットが付いていなかったことを、そしてまだシャワーも浴びていないことを思い出していた。今のそこを、恋人ならば、舐めさせることは絶対にできなかった。

仰向けに倒れ、痛みで意識が薄れがちの黒部。
今もまた、彩に爪で弾かれ、折った肋骨に激痛が湧いていた。
それでも、彩の言った言葉、“秘密の場所”が、繰り返し頭の中に浮かび、そこへの思いで心がいっぱいになる。

“あや女王さまの・ .おまんこ・ .”
その中で感じる甘い匂い、暖かさ、体を押し包む肉襞を思い描いていた。

そして、唐突に“匂い”を感じた。だが、それは、思っていた匂いとは違っていた。
甘いような、苦いような、原始的な匂いだった。
その匂いがどんどん強まり、上からペチャっと圧迫された。

彩は、降ろした肛門に触れる小さなものを感じる。
その感触が、快感に咽ぶ頭の中に駆け上ってくる。思わず、声がでてしまう。
でも、まだ潰したくはない。
肛門から力を抜き、腰を小さくローリングさせ、その感触を楽しんでいく。

小さな体は、上から押し付けられたまま、さらに擦られていく。
体の様々の場所から、痛みが噴出する。
だが、黒部は、その痛みよりも、自分が押し付けられている場所に驚いていた。

“違う!おまんこじゃない!”
黒部は、もうすぐ死が訪れるのを感じていた。そして、さっきの彼女の言葉で、その最後は、膣の中で押し潰されると思い、それを納得もしていた。
だが、実際に押し付けられているものは違っていた。その思いが、拉げた口から、言葉になって出てくる。
「違う!・ .おまんこに!・ .・お願い!・・お願い!」

彩は、快感に咽びながらも、思わず笑ってしまう。
「フフッ、武、そこを・・舐めてくれるって言ったわよね・・・穴の中まで、舐めてくれるって・・約束したわよね・・・約束を守ってくれないんだったら、このまま、お前を押し潰すわよ」
彩は、少しだけ、小さな体への圧迫を強める。
黒部の悲鳴が聞こえる。そして、屈服をしたのか、やがて、そこでチロチロと動く、黒部の舌を感じる。
その感触が、一人の男の身も心も全て征服した実感をうむ。さらに、身体が熱くなってくる。

黒部は、ここで、彩の肛門で、死ぬことを予感した。
悲しさが込み上げてきた。
“おまんこに入りたかった。おまんこに・・・”
そして、それが、できずに終わってしまうことが分かってきた。
それが辛かった。
でも、諦めるしかなかった。
舌を出して、顔を押し付けているものを舐め始めた。

彩の声が聞こえた。
「もっと、ちゃんと、舐めてよ」
黒部は、折り重なっているシワに舌を這わせ、そこにネットリと付着しているものを、舌で掬い取り口の中に入れる。噎せ返りそうになりながらも、必死にその苦いものを嚥下する。
それが、“彩女王様の身体が出たもの”との思いが、僅かに救いになった。

彩は、全身を襲ってくる歓喜の中で喘ぎながら、肛門に触れる小さなものの感触を感じている。
神経を集中すると、その柔らかい肌に、数ミリの丸く硬いものを感じる。
“黒部の頭”
そのコリコリとした小さな丸いものを中心に合わせていく。肛門からもっと力を抜く。
黒部の体が擦られる。顔が弾力のある肌に押し付けられて拉げる。
そのまま、顔全体が、その中心に押しつけられる。
頭が自然と持ち上げられる。おでこから、グニュッとその中に押し込まれる。頭部全体がその中に密着するように侵入していく。

僅かな隙間から入る空気を吸い込み、舌を、顔を圧迫する皮膚に強く押し当て、そこに付着するものを舐め取る。
動く右手を伸ばし、肌が折り重なりシワになっている部分を、残っている力で擦っていく。

黒部は、彼女の生殖器には触れずに終わる辛い現実を認めていた。その上で、彼女の求めるままに、必死に彼女の肛門に奉仕をしていた。
そして、彼女に少しでも気持ち良くなってもらいたかった。朦朧とした意識の中で、黒部はそれだけを願っていた。
彼女に対する強い憧れ。それが、そう仕向けていた。
だが、切なかった。彼女の名前を叫ぼうとし、口を開ける。その口を犯すように、ドロドロとした固まりが入ってきた。それを無理にゴクリと飲み込み、言葉を搾り出す。
「彩・女王様・・・!」

彩は、肛門に小さな生き物の動きを感じる。そこで、自分の名前を必死に呼ぶ生きものを感じる。
ヴァギナに、2本の指を入れ、中を掻き回す。陰液が垂れ、身体の下を伝い、肛門にも流れていき、そこから胸から下が出ている小さな生き物がグッショになる。

彩の頭の中で、快感が、次々に弾けていく。しゃがんだ姿勢でいることができなくなる。ベッドの上に倒れ伏し、さらに転がり、仰向けになる。
右手は股間に伸ばしたまま、左手で豊かな乳房を揉みほぐす。

淫らに声を上げる。身体全体が突っ張るような力が入る。つま先がまっすぐに伸びる。
肛門に捉えている小さなものを、そこで押し潰す瞬間が強くイメージされる。激しい歓喜が身体を襲う。

お尻を浮かせながら、左手をその谷間に差し入れる。
肛門に首を挟まれ、そこでぶら下がっている小さな生き物が指先に触れる。それを、肛門の力を抜いて、指先で押し込んでいく。
弱すぎる体は、指で押されて団子状になる。ヘッドフォンから、くぐもった悲鳴が聞こえる。
彩の身体を快感が貫いていく。

身体全体でブリッジをつくり、反っていく。
さらに指で押し込む。小さなものの叫びが断続的になり、ボコッとその中に全てが収まる。
ヘッドフォンから、くぐもった掠れた声がする。それが“彩女王様”と言っている様に聞こえる。

次々と弾けている快感が、一つの塊となって、彩の身体を揺さぶる。
膣で、ギュッと中に入れた指を強く締め付ける。同時に、肛門の周りの筋肉が収縮し、その中にいる小さなものを潰しきる。黒部の最後の悲鳴が聞こえる。
頭の中が光で満ち、真っ白になる。
彩が、一際、大きな声を上げる。

・・・・・・・
彩の身体から力が抜ける。
そして、左手の指が、もう形あるものが何も残っていない肛門を撫でる。



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