『夢』 試運転(最終章)

                     作 だんごろう

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最終章:女神への道

“霧・・?”

辺りは、見渡す限り、まるで雲海の様にみえる白い気体で覆われていた。
白い気体は、腰の高さで遠方まで続き、向こうで、そのまま白い水平線を描いている。
気体で足元は見えない。だが、そこは、脆弱な砂地の様。ブーツの下で踏み固められる。
その気体の中に手を差し入れてみる。その手に沿って、気体の濃淡が変化し、白い渦巻きができる。

“夢の中?”
そうも思えた。ただ、夢と思うには、空の青さがあまりにもスッキリとし過ぎていた。

ようやく、復讐が終わった。
長い道のりだった。
その思いを噛み締める。
色々なことがあった。
そして、今までに、小さく縮んだ3人の男を殺めてきた。

一人目は、政府系の研究所で行われた人体実験、その試験体だった。
縮小サイズは64分の1。チャンバーから出てきたのは3センチにも満たない男。
可愛いとは思えなかった。それでも物珍しさで、爪に乗せて持ち上げ、手の平の上に置いてみた。
だが、小さく縮んだ体は、あまりにも脆弱で、最後は、指で軽く挟んだだけで潰してしまった。

結果的には、一人の男を殺したことになる。だが、それはあまりにあっけない出来事で、それに相手は虫の様に小さかった。その男を殺したことに対する罪悪感が心に生まれなかった。

二人目は、その研究所で働いていた青年だった。テレビに映ったアヤに憧れ、彼女に会いたさにわが身を縮め、封筒に入れて送ってきた。
だが、タイミングが悪かった。当時、舞を殺した男に復讐することが最大の目標になっていた。
そして、その男をできるだけ残酷に殺す方法をいつも考えていた。丁度、そこに現れたのが、蟻のサイズの彼だった。

復讐を成し遂げるため、自分自身がどれだけ残酷になれるか知りたかった。その目的のために、彼の命を使った。
彼の一途な気持ちを知りながら、その命を弄び、最後は蟻と一緒に踏み潰した。
だが、彼の命を残酷に奪ったことを後悔はしていない。それが、蟻のサイズに縮んだ彼の運命だったのだから。もし、復讐の気持ちがなかったとしても、最後には何らかの行為で殺していたと思えてしまう。

三人目は、その復讐の相手。
その男に、二つのことをしたかった。一つ目は、一回だけの快楽のためにその命を使うこと。そして、二つ目は、その男を苦しませ、その中で命を奪うこと。
結果は満足できるものだった。その二つのことを達成できた。
そして、最大の目標、舞の復讐が終わった。

彩は、次の目標について思う。
それは、やはり、彩自身の店、『夢』である。
そこは、男たちを縮め、玩具として弄んでいく、その彼女の夢を果たす場所になる。
そして、男を縮める機械の試運転は終わり、店ももうすぐ完成する。
だが、彼女の胸に虚しさが去来していた。
自分でも、その虚しさが何なのか分からなかった。

物思いに耽っている彩の前、10メートルぐらいの所で、白い気体が上に膨らみ始めた。何かが下から現れてくる気配がする。
そして、白い気体がそれを包んだまま盛り上がっていき、彩の胸の高さで、その上昇が止まる。
その正体が分からないまま見つめていると、その周りを覆っている気体が元の位置に降りていく。

直後、彩が驚きの声を上げる。
「舞ちゃん!?」
舞だった。中等部の一年生のままの舞が、辺りに広がる白い気体から、胸より上を出していた。

舞は、大きな瞳をキラキラ輝かせている。
「彩先輩!舞、彩先輩に会いに来ちゃった!」
「でも、だって、舞ちゃんは・・・・」

舞が亡くなってから、既に歳月が経ち、その復讐も終わっている。
彩は、先ほど思った通り、ここは夢の中だと思った。そして、思ったことが言葉となって出てきた。

「ここは・ .・夢?」
舞は、彩の言葉に反応し、楽しそうな顔をして勢い良く話し出す。
「彩先輩!ここが夢の中だと思ったの?舞が出てきたから?
でも・ .ここは、夢であって夢でない場所なのよ
ここはね・ .・ウフフ、だめ、まだナイショ」

少し小首を傾けて喋る姿が可愛らしい。彩も思わず笑ってしまう。
「ナイショって何?教えてよ、舞ちゃん」
「それは、後でね。
それより、舞、彩先輩に会いたかった。
死んじゃったでしょ。それから、いつも閻魔様に、
”彩先輩に会わせて下さい”って、お願いしてたの
そしたら、閻魔様ねっ、いい加減にウンザリしたみたいで、
”一回だけだぞ”ってようやくオッケーしてくれたの」

「閻魔様・・・?」
「そう、とっても仲が良いのよ。
ちょっと顔が怖いけど、本当はとっても優しいおじさん。
一緒にピクニックに行ってくれるしね。
あっ、そうそう、舞がお弁当作るんだよ。
それをおいしいって、食べてくれるの」

彩の頭の中に、舞に手を引っ張られて、困った顔をしている閻魔の姿が浮かぶ。
ほのぼのとしていて、何となく可笑しく、クスッと笑ってしまう。
だが、やはり、舞がナイショと言ったことが気になってしまう。

「舞ちゃん、ナイショのことを知りたいわよ。教えて」
「分かった。ちゃんと話す。
閻魔様が会っても良いって言ったけど、
会う場所は、別の時が流れている場所じゃなければ、だめなの。
ここは、今の彩先輩がいる次元じゃないの」

彩は、その舞の言葉を考える。
”別の次元って、パラレルワールド?”
「何?その次元って。パラレルワールドのこと?」
「あっ、それ、それよ。さすが彩先輩、何でも良く知っているね」

彩は、“パラレルワールドぐらい、誰でも知っているわよ”と思いながらも、それは言わずに、舞に、同じ質問を繰り返す。

「それで、ここはどこなの?」
舞は、ニコッと笑う。
「じゃ、まずは、邪魔な雲を追い払いましょう」

舞は、白い気体の中に手を入れて、ゆっくるとグルグルまわし始める。
掃除機の中に吸い取られていく様に、辺りの白い気体が、そこに向かって集まってくる。
数秒も経つと、彩に、中等部の制服を着た舞の全身が見えるようになった。

「ほら、彩先輩、周りを見て!」
彩は周りを見渡す。足元は、グレーっぽい地面で、後ろを振り返ると、青い水が鏡の様に広がっている。

「ここって、どこ?」
舞は、いたずらっぽく笑い、
「ウッフ、じゃ、彩先輩、こっちに来て」
と、歩いていってしまう。
彩は、その後を追いかける。

足元のグレーっぽい地面は、歩くとそれがブーツの下で踏み固まり、足を上げると、足跡の中
は茶色の土色に変わっていく。

彩は、舞に声をかける。
「ねぇ、舞ちゃん、ちゃんと教えてよ」
舞は、笑顔のままで、返事をする。
「ウフフ、良いから、良いから、ついてきて」

数歩あるくと、グレーっぽい地面ではなくなり、5センチから10センチぐらいの緑色の緩やかな起伏が折り重る場所になる。
彩は、舞に続いて、その起伏を踏み固めながら歩いていく。
舞は、周りよりも多少は高い、茶色の土くれの傍らで止まり、それを靴の先で示す。

「ほら、彩先輩、これが何だかわかる?」
彩は、ちゃんと話をしてくれない舞が不満だった。
それに、”こんな土くれがどうしのよ”との思いが湧いてくる。

「えっ、どれ?」
と話しながら、ワザとそれをブーツで踏みつける。
舞は、驚いた様に声を出す。
「あっ! 踏んじゃった」

高さ20センチぐらいだった土くれの代わりに、それを踏みつけたままのブーツが、その場所に存在している。
彩は、舞のその言葉が可笑しい。クスッと笑う。
舞は、彩の顔を見上げ、少し困った顔をする。

「これぐらいしか、目印なかったのに・ .・」
彩は、舞の表情を見て、ちょっと悪かったかなぁと思いながら声を出す。
「舞ちゃん、ごめんね。でも、これが何だったの?」
そう声を出しながら、ブーツを持ち上げる。
多少、勢いを付けて踏んだので、そこには、ブーツの足跡がクッキリと残っている。
舞は、困った顔のまま、彩を見上げる。

「彩先輩、それ、富士山だった・・・の」
一瞬おいて、彩が驚きの声を出す。
「えっ、富士山!?それって、あの・・・高い山の富士山なの!?」
舞がコクリと頷く。

彩は、後ろを振り返り、青い水に隣接する地形を見ていき、息を呑む。
そう思ってみると、知っている地形が続いている。駿河湾、伊豆半島、相模湾、三浦半島、東
京湾、その向こうは房総半島。正に、地図のとおりの地形が足元から広がっていた。
ただ、それが現実的な大きさを持っていなかった。
さらに、自分達が歩いた後の足跡を目で追っていく。
足跡は、伊豆半島を横断し、相模湾に沿って点在していた。
修善寺、小田原、国府津、茅ヶ崎、藤沢の地名が浮かんでくる。

足跡の始まりの位置は、三浦半島の根元あたり。でも、そこまでの距離が5,6メートルしかない。
彩は、足元に視線を移す。
右足は伊豆半島の山地に、左足は平坦な場所を踏みしめている。
その左足のブーツの周りには、地面に小さな灰色の部分が点在している。
彩は、その部分が、何故、灰色に見るのか理解した。そこは、人が住んでいる街、建物や舗装道路が密集した場所だった。
そして、左足のブーツが踏んでいる場所が、伊豆半島と駿河湾の境、新幹線の駅がある『三島』
だと思えてきた。

自分のブーツが人々の住む街を踏みつけている。そう思うと、途端に足が動かせなくなった。
「舞ちゃん、ど、どうして? どうして? 周りがこんなに・ .・」
彩の驚きとは対照的に、舞は、あっけらかんと返事をする。
「どうして、周りがこんなに小さくなっちゃったって聞いてるの?
違うの。彩先輩と舞が大きいのよ」

舞は、喋りながら、元いた場所に向かって歩き出した。
その後を、彩は追いかけていく。だが、地表に小さな人々がいることが想像される。彩は、自分が付けた足跡の上に、ブーツを慎重に重ねて進むしかなかった。
だが、舞の足を見ると、お構いなしに、灰色の部分を踏みつけて進んでいる。

”何で?何で、気にならないの?”
彩には、地表の街を次々と踏みつける舞の行為が、あの優しい舞の行動とは思えなかった。

浮かんできた疑問を、舞に話す。
「舞ちゃん、ここには人がいないんでしょ?きっとそうよね」
舞は歩みを止め、後ろから歩き難そうにしている彩を振り返り、クスッと笑う。
そして、彩の方に手を伸ばす。
「いるわよ。見せてあげる。彩先輩、舞の手を握って。でないと離れ離れになっちゃうから」
彩は、言われたとおりに舞の手を握る。瞬間、辺りの景色が歪み、エレベータで下に降りる感覚が湧いた。

***

彩は、舞と手を繋いで歩道に立っていた。

人々が、歩道を、群れになって移動している。
車道では、渋滞に苛つき、クラクションを鳴らし続けている車がいる。
あちこちから怒鳴り声と悲鳴が聞こえる。

歩道を走っていた男が、舞にぶつかりそうになり、
「ばかやろう! 邪魔だ!」と、怒鳴り、走り去った。
彩は、舞の手を引き、人々の流れを避けるために、歩道の端に移った。

逃げ出している群衆の一人が、走りながら後ろを振り返り、大声を上げた。
「いない!いないぞ!巨人が!巨人がいなくなった!ほら、見てみろ!もう、巨人がいないぞ!」
その瞬間、人々の動きが止まり、その場にいる全員が後ろを見上げる。
「ほんと!」
「巨人がいない」
「いなくなった!」
「あれは何だったんだ」
「助かったのか!?」

沢山の人の声が重なり合い、ざわめきになってくる。
舞は、彩を見上げ、声を出す。
「ねっ、人がいるでしょ」

彩は黙って頷き、辺りの様子を見ていく。
沢山のビルが半壊し、その瓦礫が通りに散乱し、そこの間を、車と人々が逃げ惑っていた。
直接は踏んでいなくても、歩く振動で倒壊したビルによって、街は壊滅的になっていた。
そんな状況である。車は渋滞をおこして動けず、それにやけをおこしたクラクションがあちこちで聞こえている。

巨人の姿が消え、街を襲っていた破壊的な足音もなくなり、通りに溢れていたざわめきが収まり始め、人々の顔に安堵の表情も浮かんできた。
それらの人々を尻目に、舞は彩の手を引いて、まだ無傷で残っている近くで最も高そうなビルに向かう。そのビルに入り、既にエレベータは動いていないことを見て取って、近くの階段を駆け上がっていく。

二人は、その屋上に一気に出て手すりに掴まる。周囲の景色が一望できる。
直ぐに、地表を抉っている巨大なクレータが目に入ってくる。
300メートルぐらい離れた所に、その巨大な異形のクレータの端部があり、そこから遠ざかる方向に地表が断崖になって窪んでいる。
切立ったクレータの深さは百メートル以上あり、こちら側の外形は丸みを帯びていて、その幅が1キロメートルはあり、長さが数キロメートルにも及んでいた。
そのクレータが向こう側で途切れ、地表に小さく人家や畑が霞んで見える。でも、さらにその奥側にはよりくっきりとしたクレータがある。
クレータは、前側と後ろ側の二箇所になり、前側のその前端は丸みを帯び、後ろ側のクレータはより深く抉れていた。

彩は、自分のブーツを見下ろす。つま先の形が、クレータの前側の外形と同じ形をしていた。
さらに、ブーツには土踏まずの部分があり、その後ろに、太目で高さ5センチのヒールが付いている。
彩は足を上げて、ブーツの靴底を見る。そして、それと、屋上からの景色を見比べる。

“あれは、私の足跡!”
巨大だった。あまりにも巨大だった。
クレータは幅、長さとも、想像を絶する大きさで広がっている。その下に、どれだけの数の街が犠牲になっているのか想像も付かなかった。
そして、そのクレータが、遥か向こうに点々と存在していた。

「舞ちゃん、どうして、こんなことが・・・どうして・・・?」
自分たちがとても酷いことをしていた。その罪の意識が湧いてしまう。

彩のその気持ちを感じ取ったらしく、舞が、彩の後ろからそっと抱きしめてくる。
彩は、疑問だらけだった。さらに、舞から話を聞こうとして、振り返りハッとする。
そこにいるのは、先ほどの中等部の制服を着た舞ではなかった。そこには、少し身長が伸び、水色のワンピースを着て、髪を肩まで伸ばし、ハイヒールを履いた若い女性が立っていた。
彩には、一瞬、そこに立つ女性が誰なのか分からなかった。
だが、その顔に舞の面影を見て、その女性が、亡くなる直前の二十歳になったばかりの舞だと分かった。
「舞ちゃん・・・」

そこに立つ女性、舞は、思いつめた様な表情を浮かべて話しだす。
「彩先輩、舞は、ずっと彩先輩と会えることを願っていたの。そして、それが、今の舞の“業”になっているの。だから、舞は、生まれ変わることができないでいる・・・」
舞は、彩の胸に顔を埋めてくる。
「舞は!舞は!彩先輩が大好き!だから、この思いが残っているから、生まれ変わることができないの。そして、その思いがとても苦しいの。愛したいの・ .・彩先輩と、とっても愛し合いたいの」
舞は、そのまま、彩の顔を見上げる。

彩は、舞の大きな瞳を見下ろす。舞の瞳から涙がこぼれている。
“苦しんでいる。この子は、私を欲しがって苦しんでいる”
それが分かる。舞の頬に手を当て、その涙をぬぐう。
「舞ちゃん、私が・・・ほしいの?」
舞が目に涙を溜めて、頷く。

可愛い。その顔がとても可愛い。彩は、そう思ってしまう。
そして、その可愛らしさに誘われるままに、その顔に向け、自分の顔を降ろしていく。
舞が目をつぶる。彩は唇を合わせていく。

舞は、重ねた唇から、彩の舌が入ってくることを予期して唇を少し開ける。
そこから、期待したとおりに、彩の舌が滑らかに入ってくる。
舞に取って、長い間、待ち焦がれていたことがおき始めている。感動で、身体に力が入らなくなる。

彩は、ふらついた舞の背中に手を回し、舌を舞の舌に絡めていく。
キスを続けながら、舞のワンピースを脱がす。ワンピースはストンと足元側に落ち、舞は、水色のブラとパンティだけの姿になる。
彩も、自分の服を脱ぐためにブラウスのボタンに手をかける。
それを、「待って、舞が脱がしてあげる」と、手を伸ばし、押しとどめてくる。

少し震える舞の手が、彩のブラウスのボタンを一個一個外していく。
その下から、豊かな乳房が、下半分を覆う青いブラに包まれて現れてくる。
彩は、シャツから腕を抜き、傍らに落とす。
舞は、片膝を着き、彩のバンドのバックルを外し、さらに、ジーパンの前側のボタンを外してチャックを降ろす。そこから、ブラとセットの青いパンティが覗き見える。
舞の気持ちはときめいてくる。
だが、彩の日本人離れした高いヒップをピタッと覆うジーパンは、容易には脱がせなかった。
もたもたしている舞を見下ろし、彩は、「ちょっと、待って、自分で脱ぐから」と声を出し、ブーツとジーパンを脱ぐ。

彩と舞は、ブラとパンティだけの姿になる。そこでお互いに寄り添い、抱き合う。
彩は、舞の背中を、爪の先で羽が触れるように撫で上げ、唇を舞の耳に当て、そこに暖かい息を吹き込みながら囁く。

「ねぇ、どうして、私たちは、あんなに大きくなれたの?」
その息が、舞の耳に入り込む。舞は、思わずため息をついてしまう。
「それは・・・彩さんの力なの。舞は、今は、その力を借りているだけ。それに、ここは、私たちの地球じゃないのよ・・・・・。
彩さんは女神になるの。そして、この星は、女神になった彩さんが作った星・・・」
舞は、耳に入れられる息で身悶えしながらも、自分が彩と同じ大人の女性になったことを自覚し、“彩先輩”と言うのを、“彩さん”に変えていた。

“私が作った星!?”
彩は、舞の言葉に驚いていた。
そして、舞の身体へ愛撫を続けながら、屋上から辺りを見下ろす。
近くにJRの駅があり、その建物の入り口には、駅名が書かれた大きな看板があった。
彩の知っている駅の名前だった。
その駅には、上りと下りで、ホームが二つあり、それぞれに電車が止まっている。だが、電車は動く様子がなく、ホームと駅の周りは人々でごった返していた。

彩は、さらに、周りの景色を見ていく。
巨大な足跡と、倒壊している建物を除けば、そこには人間が住んでいる街が続いていた。
そして、この場所は、彩が住んでいる所とまったく同じに思えた。女神になった彩自信が作った星とは信じられなかった。

彩の手は、舞のわき腹に移り、そこを撫で上げる。舞は、その感触に身を捩りながら言葉を続けていく。
「そして、彩さんはここで何もしても良いの・・・・・・・。ここは彩さんが作った星だから。彩さんが作った星では・・・彩さんは何をしても良いの。それは・・・彩さんが決めた・・・ルールなの」

その時、後ろから、男の声がした。
「お前たち、何してるんだ!?早く逃げろ。また、いつ巨人が戻ってくるかも知れないんだぞ!それに、このビルだって、いつ倒れるか分からないだ!」
二人は、後ろを振り返る。
何をしに来たかは分からないが、中年の男が屋上に上がってきていた。
だが、その彼は、慌てた様子で、直ぐに屋上から降りて行ってしまった。
二人は顔を見合わせて笑う。
「ウッフフ、何、今の?」と彩。
「フフ、そう、そう、変な人」と笑う舞。

なんとなく、二人の気持ちが、性的な面からずれてしまった。
二人で、手すりに掴って、外を見る。
彩は、通りを避難する人々を見下ろし、ポツリと話す。

「巨人かぁ。そう言っていたわよね、さっきの人」
「そう、きっと、私たちがとんでもなく大きな巨人に見えたんでしょうね」
「そうよね。足跡だって、あんなに大きいんですもの」
彩は、地表に残る自分が付けた巨大な足跡を指差す。

舞は、笑いながら、声を出す。
「ウフフ、でも、舞よりも、彩さんの方が大きいでしょう。だから、皆さん、大きな彩さんにビックリしていたと思うわ」
「そんなことないわよ。舞ちゃんだって、とんでもなく大きいわよ」

彩は、舞の足跡を探す。遥かに離れた所に、それを見つけ、
「ほら、あれが、舞ちゃんの足跡。あ〜あっ、大変、ずいぶん街を踏みつけちゃって」
舞がクスクス笑う。彩もつられて笑う。

舞が、笑いを抑えて話し出す。
「どう?また、大きくなってみる?」
「そうねぇ、どうしようかしら。また、ずいぶん街を踏んじゃいそうだし。皆さんにご迷惑をお掛けしちゃうでしょうしねぇ」
「あら、彩さん、もう、ずいぶん、ご迷惑を掛けちゃったんじゃないの?」
「そうよねぇ、でも、舞ちゃんもでしょ」
二人は、声を上げて笑う。
彩は、その笑いを続けながら、街を見下ろし、先ほど舞が言ったことを考えていた。

“ここは、女神になった私が作った星・ .・たぶん、そんな未来がある・・
そして、その私が作ったルール、私の星だから・・・何をしても構わない・・・“

彩は、舞の顔に笑顔を向け、話す
「そうね、また、巨人になっちゃおうかぁ」
舞が彩の顔を楽しげに見上げる。
「ウッフフ、じゃ、いくわよ。さっきと同じ大きさになれば良い?」
「ちょっと待って、素敵に大きな姿を、皆さんに見せてあげたいでしょ。裸足はいやよね」
彩は、巨大になった下着姿の自分の姿をイメージした。そのイメージの中では、裸足よりも、やはり、ブーツを履いた方が、セクシーに見えるような気がした。

彩はブーツを履く。
「じゃあ、私も」と、舞もハイヒールを履く。
彩は、その格好で、片手を腰にあて、モデルの様なポーズをする。
「どう、綺麗?」

舞は笑顔で、「とっても素敵。舞は?」と返事をし、片手を胸の下にあてがい、水色のブラに包まれた胸を持上げるようにして、さらに逆側の手で髪を抑える仕草をする。
小柄だが、均整が取れている身体。その胸が強調される。
「舞ちゃん、グッド。とても可愛いし、キレイよ」

彩は、さらに思いついた様に話す。
「でも、さっきは大きすぎたと思うわ。富士山があんなに小さかったでしょ。いったいどのくらいの大きかったの?」

舞は、冗談ぽく、それに答える。
「1万5千倍でぇす。頭は成層圏に楽々入ってました!」
「ウッフフ、そんなに大きかったの。じゃあ、もう少し小さい方が良いわね。そうねぇ・・・」
彩は、富士山があった場所に視線を向ける。本来ならば西の方角に見えるその山は、既にそこにはない。彼女自身が踏み潰した結果だった。

その山を見下ろした時のことを思い出す。踏み潰す前、それは、土くれぐらいにしか見えなかった。その、自分が踏み潰したものよりは大きくなりたかった。

「富士山よりは大きい方が良いわよね・・・だとすると、最低でも2千倍かしら。おまけして、3千倍・・・」
彩は、そう言葉を出しながら、3千倍をイメージする。
1万5千倍だった自分が見た、地表の微細なデコボコでしかなかったビル、それは踏んだことさえ気がつかない物だった。それが、その5倍の大きさになる。

“少しは踏んだ時、感触がするのかしら”
それを試してみたくなる。
「舞ちゃん、3千倍が良いわ。じゃあ、皆さんの前に、二人の素敵なレディを、ウッフフ、登場させちゃって!」

舞は頷き、精神を集中させるために口元の笑いを抑え、軽く目を閉じる。
二人は光に包まれる。

***

二人は下着姿で、地表に、五千メートルの巨大な姿を現す。

彩は、少し濃い青いブラとパンティに、乗馬ブーツ風でエレガンスな膝下までのロングブーツ。長い髪が、上空の気流でたなびく。

舞は、水色のブラとパンティに、青いハイヒールのミュール。二十歳になっても可愛らしい顔つき、スレンダーな身体に胸の大きさが際立っている。ようやく肩まで伸びた髪を、指先でなでる。

二人は顔を見合わせ、ニコッと笑う。

彩は、自分が履くブーツを見下ろす。
そのブーツの周りには、米粒サイズの家々と、小さな消しゴムみたいなビルが散在している。
さっき見た、地表の細かいデコボコは、少しは形をもっていた。

彩は、先ほど思った、踏んだ感触を試してみたくなり、足を上げる。たくさんの家々とビルがブーツの影になる。
だが、通りにいた人々が思い出されてくる。その影の下で、怯え、逃げ惑っている様子が頭に浮かんでくる。
それが、そこに足を降ろすのを躊躇させてしまう。

横から舞が不安げな表情で見上げている。
そして、彩が、人々の街に足を降ろすのを躊躇っていることを見抜く。
舞は、片手を伸ばして彩の手を握り、自分の片足を持ち上げ、そのハイヒールのつま先を、彩の浮かせているブーツのつま先の上に重ねる。
そして、彩に声をかける。

「この星は・・・彩さんが作った星なのよ。だから・・・彩さんは、何をしても良いの。それが、彩さんが作ったルールなの」
舞は、彩のブーツに重ねたつま先を降ろしていく。

彩のブーツは、舞のハイヒールのつま先に押されるままに、びっしりと並んでいる米粒と小さな消しゴムの上に降りていき、それらを踏みつける。
その瞬間、彩は、ブーツの靴底でそれらがクシャッと潰れきる触感を感じた。
その感触自体は悪いものではなかった。だが、それ以上に、彩の心の中に湧き上がる何かがあった。それが、セクシーに心を捉えていた。

舞が、彩の身体の前に回り、彩の身体にピタッと寄り添ってくる。
舞は上を向く。舞の小さく形の良い唇が、彩を待っている。
大柄な彩に比べて小柄な舞の唇は、下の方になる。彩は、身体を屈ませようとして、舞の頭の上に浮かんでいる小さな物に気づいた。
一瞬、虫かと思った。だが、自分たちの大きさを思い、それが虫ではなく、飛行機、それも、500人以上を一度に運べる大型の旅客機であることを理解した。
そして、その小さな物に、彩の遊び心が刺激された。

彩は、ワインレッドにマニキュアされた人差指の爪を、それに近づけていく。
舞も、彩の手の動きに気づき、その先にいる旅客機と、それに近づく彩の人差指を見上げた。

旅客機は、全速で飛び去ろうとしていた。だが、その速度はあまりに遅かった。
彩は、指先でそれをゆっくりと追いかけ、さらに、その旅客機のパイロットを驚かすつもりで、その機体を追い越し、その前面で指を立てた。
その瞬間、旅客機は、彩の指の動きが作り出した気流に飲み込まれ、機体が斜めになり、そのまま、主翼が彩の爪に衝突し、片方の翼が分断した。
そして、片翼になった機体はコントロールを失い、ゆっくりとキリモミし、墜落を始めた。
彩は、別に、その旅客機を壊すつもりはなかった。指先で少し遊んだ後は、そのまま飛ばすつもりだった。
だが、呆れるほどに旅客機の動きが悪く、勝手に指先に衝突してしまったのだ。

「ごめんねぇ。大丈夫よ。今、助けてあげるから」
そう声を出し、指の腹を上にして、キリモミを続ける機体の下からそっとあてがい、機体を指の上に乗せる。
その指を目の前に持ってきて見つめる。大きさが2センチちょっとの大型旅客機は、片方の翼が折れた以外は異常なく、指先の上に無事に乗っていた。

彩は、その中に沢山の人々が乗っていることを思う。
旅客機に微笑み、「今、下に降ろしてあげる」と声をかけ、地表に視線を向ける。
その目が、見上げている舞の瞳と合う。

そのきれいで澄んだ瞳で、先ほど、舞が言った言葉が思い出されてくる。
この星は彩さんが作った星・ .・だから彩さんは何をしても良いの・・・

彩は、舞の耳に口をあてる。
「舞ちゃん、キスしてあげる。だから・・・舌を出して・・」
舞の頬が赤く染まる。そして、彩の言ったように、口を開け、ピンク色のきれいな舌を出す。
その舞の舌を彩は見下ろす。

“ここは・・私が作った星・・・”
人差指に乗る機体の残っている翼を、親指の爪でそぎ落とす。
両翼がなくなり、もう、飛べることができなくなった機体に目を向ける。

“だから・・・何をしても・・・かまわない・・・”
舞の舌の上に、胴体だけになった機体を、そっと乗せる。
彩は、舞の舌を見下ろす。沢山の人々が中にいる小さな物、それを乗せているピンク色の艶めかしい舌がとてもセクシーに見える。

その舌と、その小さな物を味わいたくなってくる。
その気持ちのままに、舞の舌の先端に自分の舌先をあてがい、舞の舌を口の中に押し戻す様に差し入れる。彩の舌は、舞の口に入る。舌に舞の口の中の温もりを感じる。
彩は、さらに舌を伸ばす。舞の舌に乗るとても小さな物に舌先が触れる。それを舌先で軽く抑え、ゆっくりと舞の舌の上に滑らせる。

彩の頭の中に、揺れ動く機体の中で、恐怖で泣け叫んでいる数百の人々の姿が浮かぶ。それが、彩の心を熱くする。
舞の口から吐息が漏れる。舞の身体から力が抜けてくる。彩は、舞の背中に回した腕で、その華奢な体を支え、機体を潰さないように舌先で動かし、舞の舌への愛撫を続ける。

二人の感情が高まってくる。息が荒くなってくる。
彩は、機体を自分の舌に乗せ、その舌を自分の口に戻す。舞が切なげな声を漏らし、彩の舌を追いかけるように、舌を入れてくる。
小さな機体は、今度は、彩の口の中で二人の舌で弄ばれる。潰さない様に、いたわる様に、二人の舌は、それを抱きかかえ、撫で、愛撫しあっていく。

舞が口を離し、少し熱を浮かべた様な表情で言葉を出す。
「唾、ちょうだい・・・彩さんの・・・唾が欲しいの」
そして、目を閉じたまま、ピンク色の唇を開け、舌先を少し出す。

彩は、機体と共に、舞の舌の上に唾を流し込み、甘い声で囁く。
「舞ちゃんの舌を見せて・・・」
舞がさらに舌を出す。翼がない以外、まだどこにも損傷がない機体は、彩の唾でグッショリと覆われ、舞のピンク色の舌の上にとても哀れな風情で乗っていた。

彩は、まだ、旅客機が無事だったことを確認し、舞の耳元に口をよせる。
「もっと・・・激しいキスが欲しくない?」
その言葉で、舞は体が熱くなる。舞の舌に乗る、彩の唾液まみれの機体が、次に彩が舌を重ねてきた時が最後になると思った。

“彩さんと舌でこれを潰す”
その思いは、舞をうっとりとさせる。舞は頷き、機体が乗った舌を口の中に戻し、彩が舌をネジ入れてくることを思って口を閉じる。

彩の唇が、舞の唇に触れ、彩の舌先が、舞の唇をなぞる。
直ぐに押し入ってこない彩の舌に、舞はじらされる。身体がさらに熱くなってくる。

舞は、思っていた。
今の彩は、事情を知らない。彼女自身が女神になる将来も知らないし、星を作るようになり、その星に巨大な姿で現れ、人々を相手に気ままな行動をすることも知らない。

人々を弄び、その命を奪い去ることに関しては、今の彩はまだ処女であり、
“舞が、それを手ほどきしてあげなくちゃ”と思っていた。
今さっきも、彩がブーツを人々がいる街に降ろすのを手助けもした。
そして、舞は、彼女にその助けができることに嬉しさと、ある種の優越感をも感じていた。だが、それは、束の間に終わってしまった。

舞は、やはりこの人には勝てないと思った。そして、その彼女のことをとても誇らしく思い、彼女のなすがままになっていく自分自身に喜びを感じ始めていた。

舞は、口を少し開き、吐息を漏らす。その隙間から、彩の舌がグッと力強く押し入ってくる。
さらに、その舌は、舞の舌の上を滑り、小さな機体を奪うように舌先に乗せてくる。

彩の頭の中に凶暴な思いが湧く。
数百人が乗っている機体を、舌で砕くイメージで身体が火照ってくる。
そのはやる気持ちを抑え、舌先に乗せた機体を、舞の口の上側に軽く当て、機体を潰さずに、口腔を滑らせていく。

舞は熱い吐息を漏らす。膝から崩れそうになる。その背中を彩の腕が支える。
彩は、舌の動きを止め、舌先で押えつけている機体の中で、恐怖に震えている人々を思い描く。
その彼らに、もっと、恐怖を味わわせたくなる。
その思いのままに、舌に乗せた機体を、舞の上側の前歯に軽く押し付け、卵を割るように機体を縦に割る。

彩の舌の上に、縦に裂けた機体と、その中身がこぼれ落ちてくる。
それを、唾液と共に、舞の舌に向けて押し流し、さらに舞の舌の上で、中身をそこに撒く様に裂けた機体を舌先で押し広げていく。

舌先に、抵抗するような微細な動きが感じられる。それが、彩の性的な感情を高めていく。

舞の舌の上には、沢山のザラザラとした、さらに微かな動きを示すものが乗っている。舞は、そこにいる小さな人々の運命をチラッと思う。だが、それ以上に、彩の舌が欲しくて欲しくて堪らなくなっていた。
彩の舌に自分の舌を絡ませたい。彩の舌を強く吸いたい。その思いで、舞は、その蠢く沢山のものを舌に乗せたまま、彩の舌を求め、舌を伸ばしていく。

その舌に彩が舌を絡め、ザラザラした沢山の小さなものを、二人の舌の間に巻き込んでいく。

今までの軽いタッチで満たされていなかった分、二人の舌は、狂おしいまでの情熱でお互いの舌を求めていく。凶暴なその動きの中に、二人の唾液に紛れたザラザラと蠢くものが押し流され、押し潰され、数が減っていく。

彩が唾液を舞の口に送り込んでくる。舞はそれを感じ、彩の舌を強く吸う。そして、彩の唾液とともに、ザラザラとしたものをゴクリと飲み込む。

彩は、奥歯に引っかかる小さな物を感じた。
舞の口から舌を戻し、舌先でそれに触れてみる。先端の丸み具合で、機体の機首部分と分かった。
1階部分はファーストクラスで、2階部分にパイロットや乗務員がいる、とても展望の良い場所、その部分だった。

彩は、唇を少し開いて光を口の中に入れ、彼らに取っては絶望的に巨大な口の中を見せてあげる。
舞の舌が、彩の舌を求めて、その開いた口に入ってこようとする。それに、彩も舌を絡ませたくなり、小さなものを奥歯でクシャッと噛み潰して、舞の舌に舌を絡ませる。

機体を割ってからは直ぐだった。その残骸も含めて、二人の口には何も残っていなかった。
彩は、小柄な舞へのキスを続けながら、人々がいる街を見下ろす。
もっと、犠牲になってくれるもの欲しかった。犠牲があればあるほど、快感が高まっていく気がした。

彩のブーツの横に無傷の街並みが広がっている。そこには、立ったままでは小さすぎて見ることができない人々が、まだ沢山、逃げ惑っている。彩はそう思い、ブーツを持上げて、街を踏みつけ、タバコをもみ消す様に踏みにじる。

靴底の下で潰れる小さなものの感触で、股間がジワッと潤んでくる。そこを、舞に舐めさせたくなる。
舞を支えている腕の力を抜く。舞は崩れる様に身体を沈ませ、両膝を地表に着ける。
舞は喘いでいる。そして、喘ぎながら、直ぐに目の前にある彩の下腹部に唇を寄せ、
「彩さん・ .・」
そう声を出し、パンティの恥骨部分の膨らみに唇を付ける。

彩は、指を掛けてパンティを降ろす。
ブーツを履いているので、そこでパンティが引っ掛かったが、辺りのビル街を踏みつけながら強引に足を抜く。
そして、ブラを外す。
全ての下着を外し、裸にブーツだけの姿になった彩が、5000メートルを超える高さで、地表を圧倒する。彩の頭の中に、足元の彼らが絶望の面持ちで見上げる、その自分の姿がイメージされる。

舞は、彩が下着を脱ぐのに邪魔にならない様、ペタッと座ったまま、上半身を後ろに下げていた。
その舞の目の前に、彩の陰毛が現れていた。
彩の両手が上から伸び、優しく舞の顔を挟むと、
「舞ちゃん、今度は、ここにキスをして」と、下腹部に向かって、舞の顔を運ぶ。
舞は、その手の動きのままに、彩の陰毛に顔を寄せ、両手を回して彩の腰に抱きつく。
彩は、舞が股間に舌を入れ易い様に、片足を少し広げて、横の街並みを無造作に踏みつける。

舞は、視界の端で、彩のブーツが街を踏み潰す瞬間を見つめた。
舞は本来、優しい気質を持っている。心の中では、人々の街を踏み潰すことに抵抗があった。だが、彩に見せるために、心を鬼にして、平然と街を踏んで歩いていた。

舞は、彩には、慈悲深さを超越した女神になってもらいたかった。それが、舞の願いだった。
そして、たった今、彩のブーツが街並みを無造作に踏み潰したのを見て、舞の心臓はドキドキと高まってきた。

“もっと、彩さんが、街を踏むところをみたい”
舞の左足のハイヒールの斜め前、少し離れた所に小さな電車が止まっていた。建物もあるので駅の様に見えた。
そこには、避難している人が多くいる様な気もした。

舞は、彩を見上げ、その駅を指差して声を出した。その声は少しだけ震えていた。
「ねぇ、そこに駅があるの・・・彩さん、お願い、踏んで」
彩は、舞が指差す所をチラッと見る。
それは、先ほどビルの上から見た、人々でごった返していた駅の様に思えた。だが、小さすぎて、それがそうなのか分からなかった。

彩は、足を伸ばして、ブーツのつま先でそこを踏みつける。そのつま先だけで、駅とその周辺の建物は消え去る。
舞の心臓の高まりは増している。その舞の目の前に、少し足を開いている彩の股間がある。舞は、高まった想いのままにそこに舌を差し入れ、クリトリスを奥から手前に舐め始める。

瞬間、彩の身体に電気が奔り、思わず、舞の頭を上から押さえつけてしまった。
彩は、股間を舐め続ける舞を見下ろし、快感に咽びながらも、たった今、舞が言った言葉、
『彩さん、お願い、踏んで』 それが、気にかかっていた。
彩には、SMクラブで女王様の役割をしていた過去がある。そこで、奴隷になりたがる客の相手をしていたが、中には、コオロギとかを持ってきて、彼女にそれを踏んでもらうことをお願いする者もいた。
「女王様、お願いします。これを、卑しい私だと思って踏んでください」
彼らは、這いつくばって、興奮し、震える声でそうお願いをしていた。
それと、今の舞の言い方がとても似ている気がした。

“舞ちゃんは、マゾだったの?”
そう思えてくる。そして、それは、彩に取って悪いことではない様な気がした。
彩は、舞の頭から手を離し、話しかける。

「ねぇ、舞ちゃん、人が沢山いる場所を探して」
少し熱に浮かされた様な表情を浮かべ、舞は口を離す。
でも、何を言われたのか分かっていない風だった。
その舞を見下ろす彩の目に、舞の口元に一本の陰毛が見えた。

彩は、クスッと笑い、しゃがんでそれを取ってやり、その口に、自分自身の唇を重ねる。
そして、唇を重ねたまま、声を出す。
「舞ちゃん、私、人を踏んでみたいの。それも沢山の人をね。ねぇ、舞ちゃん、人が沢山いる場所を探してくれないかしら?」

舞は、その言葉で、彼女の中にある願望を見透かされた気持ちがして、心臓が止まるほど驚いた。だが、その直後、喜びで心が沸き立ってきた。
直ぐに、足元に目を向け、さらに、地表に顔を近づけて目を凝らす。そこを避難している、
0.5ミリの大きさしかない人々が見えてくる。
舞は顔を上げて、彼らの広域避難場所を探す。そこならば、人々が集まっている様に思えた。
でも、地表は、米粒の様な家々と、小さな消しゴムの様なビルでゴミゴミとしていて、周辺に広域避難場所らしい所を見つけることはできなかった。

舞は外周を見渡していく。その目が、関東平野の中心に向く。
そこに向かって、ビルの数がどんどん増えている。そして、中心には、夥しい数のビルが所狭しと並んでいた。
舞は、彩を、その方向に連れ出したくなる。
その方向で、2,3歩、離れた場所に、一箇所、ゴミゴミしていない場所を見つけた。
舞は、そこに向かって四つん這いで進む。地表に着けた両手と両膝が、細かいものを押し潰していく。でも、自分が潰すものは気にならなかった。もうすぐ、彩が、それ以上に沢山のものを踏んでくれると思っていた。

舞が見つけた場所は球場だった。横に高速道路があったが、封鎖されたらしく、その上には既に車は走っていなかった。
舞は、その球場に顔を近づける。球場の中と外に、小さな人々が溢れるぐらい群れていた。
舞は、慌てて声を出す。
「彩さん、こっち!こっち! ここに人がいっぱいいるのよ!」
彩は、ブーツで街を踏み締めながら、そこに向かい、そして、横に立って見下ろす。

“保土ヶ谷球場かしら”
学生だった頃、友達と、他校の野球部の試合の応援に来たことがあった。
あの時、広いと感じたその球場は、今の彩に取っては、5センチもないとても小さなものに変わっている。
そこにいる人々が、どの程度、密集しているか見下ろしてみる。だが、たった位置からでは、その球場の形が分かるぐらいで、そこにいる小さな人々の姿までは見えなかった。
それより、横にいる舞を見ている方が可笑しかった。四つん這いになり、顔を真っ赤にさせて、彩のブーツを見つめていた。

彩は、笑いながら、舞に声をかける。
「ウッフフ、ここが舞ちゃんのお勧めスポットなのね。じゃあ、遠慮なく踏ませてもらうわ」
彩は、ブーツを翳す。ブーツのつま先は、その球場と隣の高速道路をその下に隠す。
足を上げたまま、舞に話す。
「どう、下はどんな状況なの?実況中継をしてみて」
舞は顔を下げて、彩のブーツの下を覗き込む。

「ほんとう、ちっちゃな人たち。でも、怖がっているみたい。固まっちゃってるし・・・ あっ、彩さん!逃げてる人が沢山いるわよ!」
「フフ、大丈夫よ、逃がさないわ」
直ぐに、ブーツを地面に降ろし、舞の目を意識して、ワザと残酷な感じで踏みにじる。
さらに足を上げ、その辺りの建造物を、地面に強く擦っていく。

舞が息をつく間もなく、それは終わってしまった。恐怖で固まった人々、必死に逃げ出していた人々、物陰に隠れていた人々。それらが、一瞬で球場ごとブーツの下に消え、さらに、そこが踏みにじられた。
舞は、顔を地面に着けたまま、彩を見上げる。裸の彩が、天まで聳えている。上空で、形良く豊かな乳房が揺れ、その向こう側に、笑みを浮かべて見下ろしている、とてもキレイな顔があった。
うっとりしてしまう。“素敵な彩さんは、やっぱり、何をしても許される”そう思う。

彩は、舞の反応を楽しんでいる。そして、舞がマゾの気質を持っていることを確信する。
球場を踏んだばかりのブーツを持ち上げ、そのつま先を、地面に接している舞の顔に近づける。
そのつま先に向かって、舞が舌を伸ばしてくる。

ブーツの汚れを舞に舐めさせれば、二人の関係は変わる。舞を奴隷として扱い、その舞に底知れぬ喜悦を与えることもできる。

彩は、そう思いながら、ブーツを舞の舌に近づける。だが、彩の目に舞のつぶらな瞳が映る。
そして、水色のブラとパンティを着けた小柄な舞は、やはり、とても可愛らしい。

“この子を奴隷にはできない”
彩は、ブーツを戻し、代わりに手を差し出す。その手に、舞が掴まり、立ち上がる。
地面に顔を付けた舞の髪と顔に汚れが付いていた。それを払ってあげ、舞の口に軽く口付けをする。

彩は、そのまま舞を両手で抱き上げ、二人の身体を重ね合わせる場所を探す。
直ぐ横に、海に隣接する横浜のベイサイドがある。
ゴミゴミとした陸地に比べて、太陽の光を受けて輝く海の青さがとてもきれいに見える。

彩は、ベイサイドに沿って舞を横たえさせることにし、数歩、歩いてそこに行く。
ブーツの靴底の下で潰れる街の感触が心地よい。
抱き上げられている舞は、これから始まることへの期待で顔を真っ赤に染めている。

彩は、舞を降ろす場所を見下ろす。
足元に、ベイスターズ球場、ランドマークタワー、そして、港の中に、大黒ふ頭とそれを結ぶベイブリッジが見える。さらに、中華街やマリンタワーも探してみたが、ゴミゴミとし中から、それらを見つけることはできなかった。

彩は、舞を降ろすために腰を屈める。辺りは、米粒の様な家々と、小さな消しゴムの様なビルが隙間なく並んでいる。
彩は舞に声を掛ける。「舞ちゃん、降ろすわよ」
舞が恥ずかしそうに頷く。
初めに舞の足を降ろす。本牧辺りの倉庫街がハイヒールを履いた足でつぶれ、横浜の山の手が、脹脛から太ももの下になる。
舞のヒップを地面につける。お洒落な街、元町、石川町がその下で潰れる。
背中をゆっくりと地面につけていく。関内周辺、ベイスターズ球場が消え去る。
頭を静かに降ろす。桜木町がその下になる。舞の顔の横に辛うじて、ランドマークタワーが残っている。
横浜の主要スポットが、海に隣接する場所を除き、ほとんどが舞の体の下になった。
彩は、笑いながら、舞に言葉をかける。

「ウッフフ、舞ちゃんの身体、ずいぶん、街を潰しちゃったわよ」
舞は恥ずかしそうに、「彩さん、早く・ .・」と声を出し、仰向けになったまま、彩に向かって、両手を差し出す。

彩は、最後に残っていたブーツを脱ぎ、それを振り返った場所に置く。横倒しになったブーツはあたり一帯を圧壊する。
さらに、膝をついた姿勢で、舞のブラを外す。舞の細身の体に不釣合いな大きな乳房が顕わになる。彩は、まだ蕾みのピンク色の乳首を見下ろし、
「舞ちゃんの胸、とってもステキよ」と声をかけ、舞のパンティに指をかける。

舞は、彩にパンティを脱がされるのは恥ずかしかった。
「待って、自分で脱ぐから」
と、彩の手を押しとどめ、初めにハイヒールを脱ぎ、両足分を揃えて左側のスペースに置いた。
みなとみらい地区がその下になる。大観覧車が弾かれ、パシフィコ横浜とその周辺の建造物がハイヒールの靴底に消えた。

さらに、腰を上げてパンティを脱ぎ、グッショリと染みが付いた部分を彩に見られない様に手早く丸める。そして、先ほど、彩が脱がしたブラと一緒に、彩から離れる方向に軽く放る。
フラッとブラが飛び、すぐそこにある横浜駅とその周辺を覆い、丸められたパンティは、その向こう側、JRの東神奈川駅を直撃し、駅と付近の建物を粉砕した。

小柄でスレンダーな舞は、まったくの全裸になった。とても可愛らしい顔をして、横の彩を見上げている。
彩が、舞の顔の横に左の手の平をつく。瞬間、その手の下に、市営動物園がある野毛山が消える。
その姿勢で右手を伸ばし、舞の乳首に指先で軽く触れる。
舞の体がビクンと反応する。

彩が、舞の乳首を弄びながら、体を舞の上に重ねていく。
もうすぐ、舞は、彩の愛撫の中に引き込まれ、悶絶する。舞は、彩の瞳を見て、そう思った。
だが、舞は、そうなる前に自分から彩の身体に触ってみたかった。そして、彩に感じて欲しかった。

彩の瞳を見上げ、「彩さんの背中に・・・・触りたいの」と懇願する目をする。
彩は頷き、舞に背中を向ける様にして、舞の隣に横になる。
山手、伊勢佐木町、日の出町、黄金町、阪東橋、と順に横浜の市街地が彼女の身体の下になっていく。
沢山の建物が、肌に触れながらプチプチと潰れていく。それが、彩の心がザワつかせる。

彩は、身体の右側を下にしたまま、舞が背中に触れるのを待つ。顔は地表近くになり、ビッシリと並んだ家々と、その間を逃げる、1ミリの大きさもない人々が見えてくる。
この大きさになって、初めて見る人々である。その小ささが哀れでもあり、可笑しくもあった。

“ちょっと遊んであげるね”
人差指と中指を立て、その住宅街に降ろしてみる。
ワインレッドにマニキュアされた爪の先が、家々を押し潰す。
人々は、その指に驚いた様子で逃げる方向を変える。
彩は、住宅街に立つ自分の指を見ながら、彼らに取っては、この指も200メートルの長さになってしまうことを思う。

“まるで怪獣映画ね”
そのイメージで、怪獣が歩くように、指を交互に動かして、米粒サイズの家を次々に潰して進む。指先の周りに、必死に逃げている人々があふれてくる。
その人々を、指の先で追いかけ始める。ワインレッドのマニキュアがとてもセクシーに映える。
その時、背中に、軽いタッチを感じた。舞が、指先で背中に触れ、そして話し始めてきた。

「ねぇ、彩さん、舞、昔から、この背中に憧れていたの。彩さん、水泳部だったでしょ。彩さんの水着って、背中が大きく開いていて。とても広くてステキだった・・・・舞、その彩さんを見たくて、良くプールに遊びに行っちゃった・・・」

舞は、目の前に広がる彩の背中に口を付ける。
彩は、水泳の練習の時に、時々舞が来ていたことを思い出した。
だが、その思い出は、背中に伝わっていく舞の舌の動きで中断され、身体が疼き始める。

その彩の目に、群れて逃げ惑う人々が映る。
その群れを潰すつもりで、群れの真ん中に爪を降ろしてみる。直ぐに、人々が蜘蛛の子を散らすように、爪の周りに散開する。
爪を上げてみると、爪の先がほんの少し汚れていた。でも、人々は小さすぎて、爪に潰した感触もなかったし、その爪の下で、どのくらいの人数を潰したのか分からなかった。

“もっと沢山の人を一度に潰せば、潰した感触があるのかしら”
彩は、そう思い、一箇所に群集を集めてみることにした。
中央にある通りを集結場所に決め、予め一端を塞ぎ、逃げ惑っている人々を集めだす。
別の方向に逃げている群衆には、爪の先で通せん坊をする。群衆は、慌てて向きを変える
集団で固まったままの群衆を爪で弾く。弾き飛んでしまった分は損失になるが、残りは、慌てた様子で動き始めてくれる。

通りに人々が集まってきた。それがビッシリと固まってくる。
彼らに取っては、広い通りでも、彩が見る限りは、幅は1センチもない。
その通りを4センチぐらいの長さで塞ぐ。
幅1センチ、長さ4センチで区切られた空間、その中に、隙間なく人々が押し込まれている。
彩は、それを見下ろし、その成果に満足する。さらに付近の建物を手の平で押し出し、その周りに“壁”を作る。これで、人々はそこから完全に逃げ出せなくなった。

顔の前以外に、どれくらい人々がいるのか気になった。集めた群衆をそのまま放置することにして、自分の胸の前に向けて視線をずらす。
横向きになっているので、下側になった右の胸が、ビルや家々を圧壊している。その胸の近くの地表に向けて目を凝らす。
だが、顔の直前ならばともかく、あまりにも小さな人々を、そこで見つけるのはできなかった。

舞は、背中への愛撫を続けている。
彩は、舞の指、唇、舌の動きを感じながら、視線を自分の足先に移す。
その自分自身の身体に沿って、足先まで続く沢山のビルや家々の連なりを見て、自分自身の身体の巨大さを改めて実感する。

彩は、自分の身体の大きさを想像する。
この身体の長さは、人々から見れば5000メートルを超える。そして、横臥している彼女自身が作り出す起伏は、腰の部分で1000メートルの高さになる。それは、身体の前にいる人々に取っては絶望的に長大な山脈になってしまう。

彩は、後ろにいる舞には聞こえない様に、身体の前にいる人々に向かって囁く。
「ねぇ、あなたたち、私の身体が怖いのよね。そこで、必死に逃げているんでしょ」
人々の小さな鼓膜では、囁き声でも十分聞こえる様な気がし、乳房の前の地表に手の平を近づけ、また小さな声を出す。

「あなたたちを、この手で潰しちゃおうかなぁ」
その下で、慌てている人々の様子が浮かび、声を上げて笑ってしまいそうになる。だが、後ろに舞がいる、クスクス笑いに抑える。

彼らの頭上に翳したその手を、わき腹の上に置き、彼らに向かって、そっと話しかける。
「ウソ、大丈夫よ。何もしないから、早くお逃げなさい」

顔の直前で、先ほど、囲った人々にも、同様に声をかける。
「あなたたちもよ。逃げて良いのよ」

そして、微笑を浮かべ、彼らに囁く。
「ほらね、私って、とっても優しいでしょ」

その時、後ろから、舞の声がした。
「彩さん・ .・うつ伏せになって・ .」
彩は、身体の前の地表に目をやり、「ウッフフ」と笑ってしまう。
その笑いを聞き、舞が「彩さん、何が可笑しいの?」と聞いてくる。

「フフ、何でもないの。ちょっと優しいことができなかっただけ。じゃあ、舞ちゃんの言うとおりにうつ伏せになるわね」
横向きで上側にしていた左膝を上げる。腰を回転しながら、その膝を前に出す。
膝が、地表の上空を移動していく。陰毛が覗く下腹部が、人々が逃げ惑う街の上を覆っていく。

さらに、乳房を見下ろし、胸を前に倒し始める。そして、彼女自身の身体の下で潰れる運命の人々に小さな声で囁く。
「ウッフフ、ごめんね。舞ちゃんの頼みだから、諦めてね」

膝が、脛が、足の甲が、沢山の小さなものを潰していく。さらに両乳房で、沢山の小さなものを潰していく。両膝を地表につけ、そして両肘、両胸を地表につけた。
最後に、少し浮かせていた下腹部を地表に押し付ける。恥骨の所で、その下の沢山の建物をパキパキと潰す。その感触がクリトリスを擽る。

舞は、うつ伏せになった彩の背中に乗り、彩の身体に沿って自分の身体を下にずらしながら、舌を這わせていく。
彩は、腰の辺りに、舞の舌を感じる。さらに、舞の舌は、下にずれていく。

舞は、彩の左右のヒップの頂きを両手で撫で、さらにそのヒップを左右に軽く押し広げる。
舞の目の前に、彩のアヌスが現れる。そこは色素の沈着が少なく、とてもきれいなピンク色をしていて、ヒクヒクと僅かに動いていた。

舞は、そこにキスをしたくなる。
でも、彩をじらしたくなる。アヌスの横を舌で素通りしていく。その瞬間、彩が、「あっ」と小さく声を漏らす。
舞の目に、彩のヴァギナが見えてくる。そのヴァギナの唇が少し開き、ネットリとした陰液がそこで光を受けて照かっている。舞は、左手の中指で、ふっくらとしたその唇に触れていく。

彩が「舞ちゃん・・・」と、喘ぎ始めた声を出す。
舞の指は、ネットリとした液に濡れる。その指で、ヴァギナの周りをゆっくりと撫でながら彩に声を掛ける。
「彩さん、気持ち・・良い?」
彩は首を縦に振る。舞は、その彩の動きを見て、指先をクリトリスに伸ばし、そこに指をあてる。
「だめ、ちゃんと言葉で言って!彩さん、どう、気持ち良いの?」
彩が、かみ殺した口から、声を出す。
「まいちゃん・・・気持ち、気持ち良いわよ・・・」

舞は、大きな彩を征服した気持ちになってくる。もっと、彩を感じさせたくなってくる。
舞は、辺りに目をやり、彩を感じさせる道具を探す。先ほど脱ぎ置いたハイヒールの横に、周りよりも遥かに高いビルを見つける。

“あっ、これ知っている”
それは、ランドマークタワーだった。地上300メートル以上の高さを誇る、ビルとしては国内最高のものだった。
そのビルに手を伸ばす。ビルは、舞の指の長さよりも少し長く、太さは舞の指よりは大きかった。

そのビルの根元に爪を刺し入れ、地上から切り離し、傾けない様にそっと持ち上げる。
顔の近くに持ってくると、窓を通して、中に小さな点が動いているのが見える。
舞は、空いている手の指を彩のヴァギナの中にゆっくりと入れ、声をかける。

「ねぇ、彩さん、ランドマークタワーを彩さんの中に入れても良い?それに、ちゃんと、中に人もいるのよ」
彩が首を縦に振る。舞はクスッと笑い、また、声を掛ける。
「だから、彩さん、言葉で言って、どうして欲しいの?」

「舞ちゃんのいじわる・・・・それを、それを・・・私の中に・・入れて・・」
悶えるように、彩が言葉を出した。それを聞き、舞は嬉しくなる。

“そうよ、もっと、もっと、彩さん、感じて”
そう思いながら、ヴァギナに入れていた指をクリトリスに移し、手に持つビルを、彩のヴァギナに近づける。
だが、そこに、手に持つビルを入れようとして、躊躇してしまう。
このビルの中には男が沢山いる。そして、彩のそこは、舞に取ってとても大事な場所。
その中に、例え小さくても、男を入れることに抵抗が出てきた。
それに、ビルがその中で壊れ、散らばることが、あまり衛生的でない様にも思えた。

舞は、その上にある、アヌスを見る。そっちだったら、ビルを入れても問題ない様に思えた。
だが、舞の指よりも太いビルは、その中に入れるには、少し太すぎる様に思える。

舞は、ビルの人たちに声をかける。
「ねぇ、ちょっとだけ、ビルを細くするから、真ん中の方に寄っていてね」
そして、ビルを縦にしたまま、軽く握る。
力を入れていないのに、思った以上の脆さで、ビルが細くなる。その脆さが、舞には、遊び道具に適さない様に思えてくる。でも、他に、使えるものはない。これでやることに決め、口をあけ、その中にビルを傾けない様に入れ、唾液をベットリ付ける。
これで、準備が終わったと思って、もう一度、唾液にまみれたビルを、顔の前に持ってきて、ビルの様子を見てみる。

外壁が壊れ、中が部分的に覗ける様になっていた。そこに小さな人の姿も見られる。もうすぐ、このビルは、彩の快感の中で消え去る。舞自身がそう仕向ける。
舞は、その自分の決意を、ビルに向かって話す。
「舞は、彩さんを気持ち良くするためなら、何だってするの。どんな残酷なことだってやるのよ。あなたたちは、その犠牲になるの」
そして、ビルの根元を、ピンク色のアヌスにそっと押し付ける。

途端に、彩の身体がピクンと反応し、声を出す。
「舞ちゃん・ .・!?」

舞は、彩に声をかける。
「彩さん、お尻の力を抜いて。ランドマークタワーをここに入れることにしたの。だから・・・力を抜いて」
さらに、舞は、彩の足を押し広げ、そこに、うつ伏せのままの身体を滑り込ませる。
本牧の倉庫街を押し潰していた舞の足は、海上に伸び出し、海に浸かる。
舞は、舌を伸ばし、彩のヴァギナにその先を入れていく。

彩が吐息を漏らす。
さらに、舞は、彩のアヌスに軽く押し付けているビルを、その中に押し込めようとする。

「舞ちゃん・・・そこは・・・だめ」
彩は、そう、切なげな声を出す。瞬間、アヌスは固く閉じられ、無理に入れれば、ビルは崩壊しそうになる。

舞は、彩のヴァギナから口を離し、彩に話しかける。
「彩さん、舞のお願い。お尻の力を抜いて。お願い、力を抜いて」
彩は、返事をしない。でも、アヌスはヒクヒクしながらも、柔らかさを取り戻している。
舞はそれを見てから、また、彩のヴァギナに唇を押し付け、舌をその中に入れていき、ビルをアヌスに押し込み始めた。

***

彩は、切なげなため息を漏らしている。
ここまで、舞にやられるとは思わなかった。
舞に攻められ、それが続けられていた。
アヌスから力を抜くと、下半身全体が無防備になる。
さらに、ヴァギナに舌を入れられ、その舌で中をかき回されている。
何の抵抗もできなくなる。
快感に咽ぶ彩の頭の中に、地上300メートルを超えるランドマークタワーがイメージされる。
そのビルが、沢山の人々を内在させ、アヌスにゆっくりと、押し込まれている。
それも、幼稚園の先生になるのが夢だった、とても優しい舞がそれをしている。
そう思うと、益々、彩の快感が高まってしまう。喘ぐ声が口から漏れ続ける。

彩の少し焦点が合わない瞳が、顔の下の地表を見つめる。
そこは、先ほど、指で住宅地を弄んだ所。
彩の視線が、1センチの幅で4センチの長さの中に人々がビッシリと集まっている場所を捉える。
さっき集めた人々が、そこからまだ逃げ出していなかった。彼らに取っては数百メートルの高さになる周りに作った“壁”が、その逃亡を許していなかったのだ。

彩は、快感に喘ぎながら、囁く。
「いい子、うっふふ・・・待っていてくれたの・・ご褒美を・・あげなくちゃね」
舌を出し、上唇を淫乱に舐め上げる。
「ほら、舌を絡ませるキス・・・・それをしてあげる・・・ねっ、嬉しいでしょ?」

舌先をゆっくりと地表に着け、そのまま舐め上げる。
人々は一瞬で消え去り、代わりに、地表にナメクジが這った跡の様な唾液が残る。

ヴァギナに舞の舌の動きを感じる。アヌスに押し付けられるビルを感じる。そして舌に付着する沢山の蠢くものを感じる。
舞から攻められる刺激。自分が人々を苦しめている感覚。その相対する感情が心の中に渦巻き、快感を高めてくる。
そして、痺れる様な快感の中で、舌にビッシリと付着したものを唾とともにゴクリと飲み込んだ。

***

舞は、舌を彩のヴァギナに挿入し、左手でヒップを押し広げ、右手でビルを彩のアヌスに押し付けていた。
舞の目の前に、彩のアヌスがある。その部分は、押し付けられる感触に耐えられず、ヒクヒクと動き、その動きがビルを少しずつ崩し、細かい瓦礫に変えていく。
舞は、アヌスの周り、ピンク色で放射状のシワが広がる部分に、瓦礫の間を動いている沢山の点を見つけた。それは、ビルからの脱出を謀っている人々だった。
直後、彩のアヌスが、クチャッと窄まり、細かい瓦礫と逃げ惑う人々をそこに飲み込んだ。そして、彩のため息と同時に、窄まっていたアヌスが開く。アヌスが包み込んだものは跡形もなくなり、僅かにシワの間にその残渣があるばかりだった。まるで、そこが人々を咀嚼している様に見えた。

“彩さんのアヌスが人々を食べた!”
舞はそう思い、うっとりとしてしまう。そして、舞は、彩がこの光景を知れば、もっと興奮してくれると思って話しかける。

「彩さんのお尻、そこにいる人達を・ .・クチャッと食べたのよ」
彩が、上体を持ち上げ、後ろを振り返る。その反った背中のラインが、舞にはとてもきれいに見える。
舞は、彩が見ていることを意識して、アヌスからビルを持ち上げ、そこに付着している残渣を舌で舐め取る。瞬間、彩が「あっ!」と声を出し反応する。

舞は、アヌスがきれいになったことを確認し、少し崩れて短くなったビルを、またアヌスに当て、そこに押し入れようとする。
しばらくすると、ビルから逃げ出す人々が見え出し、さらに、アヌスのピンク色の肌の上に、人々が溢れてくる。舞がビルをアヌスから一旦離し、声を出す。

「ほら、彩さんのここに、こんなに沢山の人がいるのよ」
後ろを振り返っただけでは、そこにいる小さな人々は見ることはできない。
でも、舞にそう言われると、そこで人々が蠢く感触がしてくる。そこがムズムズしてくる。
自分のアヌスによって、押し潰され跡形もなくなってしまう人々。そのイメージは、とてもイヤラシイかった。

“上の口で食べて、下の口でも食べている”
その卑猥な思いの中で、彩は、口元に笑みを浮かべた。

***

人々は、逃げる先を探していた。
左右は遥かに高いヒップの頂きがある。下に行けば、直ぐに断崖になる。彼らが進む先は、一箇所、背中に向けたルートだけだった。
そちらを目指す。お互いに助け合う様子で、集団で進み始める。

その動きを見ていた舞は、視線を、振り返っている彩の顔に向ける。快感に喘いでいるその顔は、とてもセクシーだった。舞は、その彩を、もっと気持ち良くしてあげたくなる。
そして、その思いを持って、逃げている一団を見下ろす。彼らは、アヌスのピンク色の皮膚の部分を脱出し、深い尻の谷間を背中側に向かっていた。

舞は、彩にも聞こえる様な声で、彼らに話す。
「可愛そうな人達。だめなの、どこにも逃げる先はないのよ。あなたたちは、彩さんを気持ち良くするために消えていくしかないの」
そして、彼らの進んでいる先に、舌先を降ろす。

彼らは、一箇所に寄り添い合って固まる。怯えるだけのその姿は、とても哀れだった。
“可愛そう、怖がっている”
舞は、そう思いながらも、その彼らに向けて、舌先を滑らせていく。一団は、一瞬の躊躇の後、彩のアヌスに向かって戻り始める。

舞の舌が、人々を追って、ヒップの谷間を滑っていく。その感触が彩に伝わる。
その舌の前には、小さな者達が集団で走っているはず。だが、あまりにも小さな人々、その動きを感じることができない。彩は、舞の舌に追われている人々の恐怖を想像した。それが、舞の舌から受ける快感に花を添える。

逃げる人々は、アヌスの横を通り過ぎようとしていた。彼らを追いかけていた舞の舌は、一旦、ヒップを駆け上り、また、彼らの前面に滑り降りてくる。
人々は、それ以上、その方向には進むことはできない。またアヌスに戻るしかなかった。
それが、何回も繰り返され、彼らは、シワがすり鉢状になっている穴の淵で動けなくなった。その周りを舞の舌が、同心円を描いて、彩の皮膚の上を滑っている。

その時、彩が快感に咽びながら、声を出してくる。
「舞ちゃん・・・お願い・・・じらさないで」
舞の舌は、彩のアヌスの周りを滑っている。それが、彩には焦らす行為となっていた。
彩は、その穴の中に、舞に舌先を入れてもらいたくて、堪らなくなっていた。

彩に急かされて舞の遊びは終わる。舌先で描く同心円を縮める。人々は、その舌に押される様に、次々とすり鉢の中に落ちていく。

彩は、穴の淵を動く舞の舌先の感触で、咽ぶ声を上げる。
「早く、舞ちゃん、お願い!」
舞は、全ての人が落ちたことを確認し、舌の先を尖らせて、その穴の中心に入れていく。軽く押した舞の舌先に、沢山の小さなものが蠢く感触がわく。

彩にも、そこに挿入された舞の舌が小さな者達を圧迫していることで、その彼らの蠢く触感をはっきりと感じ取ることができた。思わず声を出し、腰を上げて、舞の舌をより深くに導こうとする。
舞は、彩の腰の動きに合わせて、舌先をグイグイと奥に押し込んでいく。

彩が腰を振る。舞が舌先を押し込む。直ぐに、彩のアヌスで蠢く人々が消え去る。
舞は、舌をスポンと抜き、また、ビルの残りを、彩のアヌスに押し付ける。
だが、彩は、もう焦らされる快感に耐えられなかった。
「舞ちゃん、もう、そこは終わりにして」
と声をかけ、ヒップに力を入れ、盛り上がるヒップの谷間で脆いビルを潰し去り、身体を起こし、舞の体をベイサイドに向けて反転させた。
山下公園が舞の体の下敷きになり、さらに舞の体は港を斜めにはみ出し、太ももから下側が海上に出た。

彩は立ち上がり、お尻の谷間に残っている物を払ってから、仰向けになった舞の顔の両側に、舞の頭の方を向いて両足を着ける。そして、その姿勢で舞の顔を見下ろす。二人の瞳が合う。舞が少し恥ずかしそうな表情をする。

彩の瞳が舞の可愛らしい唇に向く。そこに彩の股間を被せたくなる。
「舞ちゃん、ちゃんと舐めて」
と声をかけ、舞の唇を目掛けて腰を降ろしていく。

舞の鼻先に、彩の恥骨の下側、クリトリスが触れる。さらに、彩のヴァギナが舞の唇に重なってくる。彩の両手が、舞の頭に降ろされ、その頭を上から抑えつける。
彩の体重を顔で受ける舞。その苦しさが快感になり、
“彩さん、気持ち良くなって!”
との思いで、舌をできるだけ伸ばして、彩のヴァギナの中に舌を伸ばしていく。

彩は、舞の舌をヴァギナで捉えたことを感じ、腰を細かく前後に動かし、舞の鼻でクリトリスを擦る。
舞は、鼻が拉げ、さらに口を塞がれ、息ができない。それでも、彩の快感のために、舌で中をかき回していく。

彩の身体の中を快感がうねっていく。頭の中が真っ白になる。喘ぎながら、言葉を出す。
「舞ちゃんも、舞ちゃんも・・・一緒に・・・・」

彩は、舞の顔の上で、身体の向きを変え、舞の身体の上に彼女自身の身体を重ねていく。二人は、シックスナインの形になる。
そして、舌を、舞のクリトリスに伸ばし、右手を舞の太ももの下側から回し、その手の指で、グッショリと濡れているヴァギナのふっくらとした唇をなでる。

彩の腰は、舞の顔から少し浮いた状態になっている。舞は、咽び声を漏らしながら、彩のクリトリスを求めて舌を伸ばし、両手で彩の腰に抱きつく。彩は、腰を沈めてその舌にクリトリスをあてる。

お互いの舌がお互いの敏感な部分を攻め、お互いの両手がお互いの身体を貪っていく。

彩が、シックスナインのポーズのまま、左側、ベイサイトに、身体を反転しようとする。
横向きになった彩の身体が、ベイサイトにかかる高速道路、大桟橋、赤レンガ倉庫を次々に押し潰し、海上にはみ出す。さらに、倒れていく彩の背中が、沢山の車が放置されたベイブリッジに圧し掛かり海に沈める。

さらに、彩は海上に向かって、身体を回転させる。
彩の身体の背面が海を砕き、押し立てられたうねりと波が辺りに広がっていく。
彩の踵だけは陸に残り、横浜駅周辺を押し潰している。広がった波は、その踵をも濡らしていく。

その彩の身体の上に、舞が重なっていく。二人の身体で、横浜の海は全て塞がれる。
上になった舞がさらに回転を続ける。舞の形良いヒップが、大黒ふ頭を押しつぶす。
その舞の上に彩が身体を乗り上げさせる。舞の頭を股間で挟む彩の両足は神奈川区に乗り上げる。

彩の髪から、海水が滴り落ちる。
彩は、片手で髪をかきあげ、舞の股間に舌を這わせ、そのまま視線を横にずらす。少し離れた所に、海に突き出た平坦な一角があり、場所的に、そこが羽田空港と思い、さらに関東平野の中心に視線を向ける。

そこには、高いビルが密集している首都東京の街並みが広がっていた。
そして、それが、彩に向かって、
“こっちにおいでよ。一緒に遊ぼうよ”
と誘っている様に見えてきた。

彩は、その街を見つめる。そして、そこを、二人の身体で押し潰すことを思い浮かべる。
“きもち良くなれそう・・・”
その街、首都東京を、自分たちの快楽への行為の中でメチャクチャにしたくなる。

彩は、そちらに向けて体を回転させる。豊かな尻の肉と背中で鶴見区を押し潰す。さらに、舞の身体を下から押し上げる様にして、回転する。
舞の体が陸地に乗り上がり、その全身で、川崎市を押し潰す。舞は、身体の背面のあらゆる所、背中、ヒップ、太ももの裏側、脹脛、踵、その全てで、沢山の小さな建造物を押し潰す感触がした。

“彩さんと一緒に、とても沢山の人を押し潰している”
その思いは、舞の快感をより高ぶらせる。

舞は、彩のクリトリスを唇に挟み、ジュルジュルと音を立てて吸う。
上になっている彩は、2本の指を舞の中に突き入れる。舞の身体がビクンと反応し、その指をネットリと締め付けてくる。
彩は、その指で舞のGスポットを探りながら、ゆっくりと出し入れする。舞が声を上げる。
彩は、横にある小さな曲がりくねった水の流れを見る。それは、東京都との境、多摩川。

彩は、首都を二人の快感の中で壊滅させることを思いながら、そこに向けて、さら身体を回転
させる。

***

二人の身体は、多摩川を地表に埋め込み、大田区と品川区に乗り上げる。舞のつま先は、羽田空港を押し潰す。

上になっている舞が、彩の陰部に口を付けたまま、感極まった様に声を出す。
「うっ、・・・もう、だめ・・・」

彩が慌てた様に声を出す。
「だめよ!まだ、だめ!」

舞は、彩の身体の上で腰を横に振って悶える。
「もうだめ、彩さん!彩さん!彩さん!許して!・・・うっう!」

さらに、あまりの快感に耐えられなくなった舞は、彩の指から逃げる様に腰を動かす。
その腰を彩の腕ががっしりと抑え付ける。

彩は、まだ絶頂を迎えていない。だから、舞の『いく』瞬間を遅らせたかった。だが、舞の快感をより引き出すのは、『今』だった。
逃げようとする舞の身体を片手で抑え付け、充血しコリコリとしているクリトリスに舌をあて、片手の指でGスポットへの刺激を続けた。
舞は、快感のうねりの中で、彩の手から逃げようと身を捩る。だが、その手から逃げようもなかった。彩の腰を抱き、声を張り上げて、次々と波の様に襲ってくる快感に耐えるしかなかった。
そして、強い快感の中で、渦巻く意識がはじけ飛んだ。
彩の身体の上の舞は、声を出さなくなり、その身体は痙攣を始めた。舞は、快感の中で気絶してしまった。

彩は、舞の身体を下から押し上げて転がし、その上側になり、片手を自らのクリトリスに伸ばした。そして、そのクリトリスを指で撫で、快感を求めて声を上げる。
「だめ、まだいけないの・・もっと!もっと欲しい!・・・私の生贄!」
彩は、首都の中心を見る。高いビルが乱立している。
だが、まだ多摩川を越えたばかり、二人のいる場所は東京の端。周りには、大きなビルがなく、米粒サイズの家がびっしりと並んでいるだけ。

彩は、悔しさを感じる。
それでも、クリトリスを撫でながら、逆側の手の指を地表につきたて、手前に引いていく。5本の指が小さな家を次々と押しつぶしていく。

彩の脳裏に、そこで逃げ惑い、そして指の下になっていく人々の姿が浮かぶ。凶暴な想いが湧き、それが快感を高め、絶頂が近づいてくる感覚がおき始める。
その凶暴な想いは膨れ上がり、頭の中を駆け巡っていく。瞳が妖しい光を帯び、避難をしている人が多そうな場所を探し求める。
手の届く所に、公園らしい場所があった。広域避難場所だと思われた。
そこに手を伸ばし、地面ごと、その周囲のビルも含めて毟り取り、その手を顔に寄せる。手の平には、小さな人々が細かい瓦礫と共にビッシリと乗っている。

それは、彩が”いく”ために必要な犠牲だった。
彩は彼らの絶望を思い描きながら、彼らに声をかける。

「あなたたちは、私を気持ち良くするための生贄になるのよ」
自分が発したその言葉が、快感となってフィードバッグしてくる。そして、彼らに、ワザと淫乱な微笑を見せ付けてから、その手を下に持っていく。

彩は、充血しているクリトリスに、その手の平を当てて擦り付ける。そこで潰れる沢山のものの感触を、敏感なクリトリスで感じる。

舞は気絶から目覚め、自分の目の前でおこなわれている光景を見つめる。
彩の手が、小さな人々をクリトリスに擦り付けていた。
舞は、その手の指の間に舌をねじ入れ、すり潰されたもので塗れるクリトリスを舐めあげ始めた。

彩の頭の中が真っ白にはじけ飛ぶ。
快感が大きなうねりとなって、身体を揺り動かす。それをむさぼる様に味わっていく。

***

しばらくその余韻に浸っていた彩は、舞の身体の上から横に転がり、仰向けになる。
舞が、身体を起こし、彩の横に横たわる。
二人は、横になったまま向かい合い、唇を合わせる。

舞が恥ずかしそうに言葉を出す。
「舞、気持ちよかった」
彩も、舞の瞳を見ながら、微笑み、言葉を返す。
「舞ちゃん、私もよ」
舞も微笑み、少し首を上げて、後ろを振り返る。
横浜から品川にかけて、ローラで押し潰した様な地表が続いていた。
「ずいぶん、壊しちゃったね」
と舞が、少し驚いた様な声を出した。

「ウッフフ、でも、半分は舞ちゃんのせいだから」
と、彩が笑いながら返事をする。

ふと、舞が辺りを飛び回る、1センチの大きさもない物に気づいた。
「彩さん、何か飛んでる」
彩も、舞に言われて見渡し、それに気付いた。

地表に寝転ぶ二人の上に、小さなものが、数え切れない程浮かんでいた。
「そうねぇ、ジョット戦闘機かしら?」
数機が編隊を取って下降し、舞の乳房のすぐ上を飛んでいく。次の瞬間、舞の乳房の一箇所がチカチカと小さく光った。戦闘機が、そこを攻撃したみたいだった。

彩は、直ぐに舞いに声をかける。
「舞ちゃん、大丈夫?」
「ぜんぜん平気。当たっていることも分からないぐらいよ」
次に、彩の腹部が小さく光った。その横を、また、小さなものが飛んでいた。

彩にも、その攻撃が、まったく感じることができない程、非力なものだと理解された。
辺りに散開している編隊の様子から、彼らは、先ほどから攻撃を仕掛けていたと思われた。だが、それに、二人ともまったく気付いてはいなかった。

彩は、疑問が湧き、鼻先を飛ぶものを無視して、舞にそれを聞いた。
「ねぇ、舞ちゃん、私は女神なのでしょ。だったら、ここの人は、何で、女神を攻撃するの?」

舞は、彩の顔の上を飛ぶものを手で払って、それに答える。
「それはね、彩さんがそうさせているの。この星にいる人は、この星が、彩さんが作ったものだとは知らないの。だから、彩さんのことを、敵だと思って攻撃をしてくるのよ」

彩は、“何で?”と聞こうとして、その答えが自分で分かり、聞くことをやめた。
その方が楽しいから ― 万物の霊長類だと思っている人々に、そうではないことを思い知らす、そして、それを彼女自身がすることがとても楽しさからだ。

別の戦闘機の編隊が、彩の顔の前に来る。“顔”が急所だと思い始めたみたいで、払ったばかりなのに、新手がやってきたのだ。彩は、それに、声をかける。
「ねぇ、あなたたちは女神を攻撃しているのよ。分かっている?」
だが、編隊はその言葉に反し、彩の鼻をミサイルで攻撃をしてくる。

鼻先がチカチカ光る。それを見る彩の目が寄り目になる。
その表情が可笑しくて、舞が、笑いながら話しかけてくる。
「ウッフフ、ねぇ、彩さん、天罰しちゃう?」

彩も、笑いながら、声を出す。
「フッフフ、そうしちゃおう。じゃあ、舞ちゃん、立って」

今まで横になっていた5千メートルの身長が、戦闘機が飛び回る中で急に立ち上がる。
巻き上がる気流で、きりもみして墜落を始める機体がある。避けらずにそのまま二人の身体に衝突する機体もいる。

整然としていた編隊は乱れる。
だが、まだ、沢山の戦闘機が、二人の身体の周りで飛び回っている。

二人は、機体ができるだけ密集している所で身体を近づける。逃げようもない戦闘機は、二人の裸の肌、乳房に、下腹部に、太ももに、次々と衝突し、チカっと光って消えていく。さらに二人は、彼らを挟み込むように体を寄せて接吻をする。

キスを続ける舞の目に、まだ辺りを飛んでいる戦闘機が入ってくる。
舞は彩から離れ、几帳面に、一機、一機、追いかけて、両手で蚊を叩くように潰していく。

彩は、横に広がる関東平野の中心に向かって歩く。
たった2歩で、ビルが乱立する場所になり、そこを素足で踏みしめる。足元に品川駅がある。
さらに、そこから、3メートルも離れていない所に、緑色のポッカリとした部分、皇居が見える。

そして、その皇居を中心にした2,3メートルの範囲が、高いビルに囲まれた首都の主要部分になり、それが、沢山の小さな凸の並びとなって、彩の足元に広がっていた。
彩は、そこにある高い建物を思い浮かべる。東京タワー、新宿都庁ビル、池袋サンシャイン60、六本木ヒルズ、さらに建設中のスカイタワー。
それを目で探しながら、もうちょっと舞が堪えてくれたら、ここで、二人で快感を味わえたのにと、残念な気持ちになる。

“舞ちゃんをここで押し倒して・ .・もう一回、しちゃおうかしら”
そう思うと、彩の下半身がまた熱くなってくる。
その時、後ろから舞の声が聞こえた。

「彩先輩!」
振り返った彩は、そこに、セーラー服を着た、中等部の一年生の舞の姿を見出す。

「舞ちゃん?」
さらに、突然、自分の身体の肌に触れるものを感じ、視線を下に向ける。
彼女自身が、元と同じに、シャツ、ジーパンを着て、ブーツを履いていた。

二人で愛し合うことは終わった。彩はそう思い、名残惜しい気持ちで足元に広がる首都の街並みを見下ろし、そこにある小さな塔を踏みつけた。東京タワーと周辺の建物がブーツの下に消えた。

「彩先輩。今日は、どうもありがとうございました!」
彩は、その舞の声で、地上の小さな建物から視線を移して舞に向ける。舞がペコリと頭を下げていた。
舞は顔を上げ、さらに話し続ける。
「舞は、ようやく、思い残すことがなくなり、彩先輩の娘になれます」
彩は、なんと返事をして良いのか分からなかった。
ただ、この子みたいな可愛い女の子が、自分の娘になるのは悪い気分ではなかった。

舞は話し続けている。
「もうすぐ、彩先輩の夢が実現しますよね。でも、その夢よりも、女神になっちゃおうって思いませんか?」

彩は、自分の夢、男たちを縮めるクラブのことを思う。それは、舞の言ったとおりにもうすぐ実現する。だが、今、舞と一緒にしてきたことに比べたら、その夢は見劣りするものに感じていた。

舞は、彩の反応を確かめる様に言葉は出す。
「もし、彩さんが、今の夢を諦めてくれたら、彩さんは、女神になる道を行くようになるんです」

彩は、舞の言葉をさえぎる。
「今の夢を諦めるって?」

「そう、諦めてもらわなければならないの。そして、彩先輩は、過去からやり直しをするの」

「過去から?」

「そうなの、今の彩先輩には、女神になるチャンスはなくなっているの。そのチャンスがあった時から、もう一度、やり直すのよ」

「やり直すって、何を?」

「舞は、彩先輩の気持ちが分かっていたの。彩先輩の夢は、舞の復讐のためにもやり遂げるって決めていたでしょ。だから、彩先輩が女神になれるチャンスがあった時に、舞達はなにもできなかったの。そして、その時は、今では、過去になってしまったの」

彩には、舞の言っていることがまったく分からなかった。
記憶のどこをみても、女神になれるチャンスがあったとは思えなかった。
「いつ、そんな過去があったの?まったく検討もつかないわよ。それに、舞達って何? 他にだれがいるの?」

その時、遥かな高みで、稲妻がピカッと光った。
舞がそれを見上げて、声を出した。

「閻魔様!もうちょっとだけ待って、もうすぐ終わるからね」
そして、彩の方を向き、少し慌てた様子で話し出した。
「彩先輩、時間がないみたい。だから、急いで喋るから、聞いて。彩先輩が女神になるんだったら、舞は、彩先輩の過去を変える。でも、今の夢は諦めてもらうしかないの。舞の復讐もできなくなるの。そして、彩先輩は、自分の夢が実現できなくなる苦しさを味わうことになってしまうの。でも、それでも良いって、彩先輩に言って欲しいの」

また、稲妻が光る。
舞が、上空に向かって声を出す。
「もうちょっとで終わるから、待ってよ。だから、おじさんは嫌い!」
また、舞は、彩を向き、話す。
「ねぇ、彩先輩、舞は女神の娘になりたいの。だから、今の彩先輩の夢は諦めるって言って欲しいの」

彩は、苦笑をする。
「舞ちゃんは、女神の娘になりたくて、私を女神にするの?」

舞も笑う。
「ウフフ、そうかも。でも、絶対、彩先輩もその方が良いって!」

彩は、そう断言する舞に引きずられるように、返事をする。
「分かったわ。今の夢を諦める。そして、私は女神になるわ」

「ちょっと、辛い時期が来るけど、良い?」

彩は、頷く。

舞はホッとした表情になり、彩に声をかける。
「じゃあ、彩先輩、そろそろさよならするね。次に会うときは、彩先輩の娘になる時だね」

舞の姿が霞んできて、彩の目の前から消え始める。そして、消えた直後、舞の声が少し離れた所から聞こえきた。
「舞は、学校に入って彩先輩に会えたことが、とても良かったと思っているの。彩先輩、ほんとうにありがとう・ .・」

彩は、舞が消えた所を見つめ、立ち尽くす。
やがて、眠りから目覚めていく様な、不思議な感覚に包まれてくる。

“ここは夢の中だったの?”
だが、辺りは、夢の中とは違い、リアリティに満ち溢れている。
“現実?それとも夢?私は、夢の中で舞ちゃんにあったの?”

考えがまとまらないまま、意識がおぼろげなものに変わり、同時に自分が別の場所で目覚める予感がし始める。

彩の心の中に、その先、どうなるのか、不安が湧いてくる。

“辛い時期がある”
それが、どんなものかも分からなかった。

頭の中に光が溢れてくる様な感覚が湧く。その中に舞の笑顔が浮かんでくる。

“私は・・・女神になる・・そして、娘を産む・・・”
薄れいく意識が光の中に拡散し、同時に身体がフワッと浮く感覚にみまわれる。

そして、意識が光の中に溶け込んだ。




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 彩(アヤ)さんのもう一つの物語 「夢の中へ:前編」を読む